今の時代、後輩やメンバーをうまく育てるためには「褒める」スキルが欠かせません。褒めることにはさまざまなメリットがあり、相手のモチベーションアップや円滑な人間関係につながります。ただし、不自然な褒め方ではメリットが得られないほか、逆に信頼関係を失ってしまう可能性があるので注意が必要です。
当記事では褒めることの効果、モチベーションを高める褒め方のポイント、褒めるときの注意点を解説します。
<目次>
褒めることの効果とメリット
後輩やメンバーを褒めることにはさまざまなメリットがありますが、大きく分けると以下のようなメリットが挙げられます。
仕事へのモチベーションが向上する
後輩やメンバーは、褒められることで承認欲求が満たされ、仕事に対するモチベーションが向上します。人は誰しも承認欲求を持っており、相手に認められることで「もっと成長したい」「もっと役に立ちたい」という意欲が湧いてくるものです。
特に近年の若者は、少子化やSNSでのコミュニケーションなどを通じて承認欲求が強まっている傾向にあるため、人材育成のうえでは、褒めるという行為を効果的に用いることが大切です。
自信を持たせることができる
自分に自信を持つためには、自己肯定感や自己効力感を高めることが必要です。褒めることは何かを達成した事実を感じさせるとともに、自己肯定感や自己効力感を高め、自分や業務に対する自信につながります。
新卒社員や若手社員は仕事に対して自信を持てない人も多いので、成果を出したタイミングや目標を達成したタイミングなどでしっかりと褒めることが大切です。
また、人には「ピグマリオン効果」と呼ばれる心理効果があり、期待されることが自信やさらなる成長につながりトます。褒めることは、ピグマリオン効果の活用にもつながります。
褒められた行為が習慣化する
褒めることはモチベーションアップや自信につながると同時に、人材育成の手段でもあります。ある姿勢や行動を褒められることは、承認欲求が満たされたり自己効力感が高まったりして、褒められた行為が強化・習慣化されやすくなります。
したがって人材育成のためには、習慣化してほしい行為や思考などを褒めることが効果的です。
モチベーションを高める効果的な褒め方5選
後輩やメンバーのモチベーションを高めるためには、ただ褒めれば良いというわけではありません。以下の褒め方をしっかりと理解し、感情をこめて褒めることが大切です。
肯定語で褒める
褒めるときには必ず肯定語を使いましょう。人の脳は否定語が理解できないといわれており、褒める際に否定語を使ってしまうと、褒められているということが相手に伝わりづらくなってしまいます。
- 納期に遅れなくて良かった → 納期に間に合って良かった
- 失敗しなくて良かった → 成功して良かった
脳は否定語が理解できないため、否定形で褒めると、相手の脳には「納期に遅れる=良かった」「失敗=良かった」という誤った情報をインプットしてしまうため注意が必要です。
相手の名前を呼ぶ
固有名詞である名前は呼びかけるだけで強い承認につながります。したがって、褒める際は「あなた」や「君」ではなく、「○○さんのおかげで」などと名前を呼ぶのが効果的です。自分の名前を呼ばれれば「自分が褒められている」ということを実感しやすくなり、承認欲求が高まります。
また、名前を呼ぶことで親近感が感じられ、信頼関係がより深まりやすくなります。特に普段あまり接点のないメンバーや新人社員などは、名前を呼ぶことで「名前を憶えてくれている」と思うため、積極的に名前を呼ぶようにしましょう。
自分の感情も伝える
褒める際は、自分の感情を一緒に伝えるとより信憑性が高まります。「自分が〇〇になった」という“Iメッセージ”で褒めることで、相手は「影響を与えることができた」という感覚が強まり、自己肯定感やモチベーションアップにつながります。
- 〇〇さんが□□をしてくれて、私はとても助かった。
- 〇〇さんが□□という成果をあげて、私はとてもうれしい!
シンプルに伝える
まわりくどい褒め方は「褒められている」という実感が湧きづらくなります。例えば「期限内の目標達成は難しいと思っていたけれど、なんとか達成できて助かった」という言葉は、あまり褒められている感じがしません。
一方で、「目標を達成できて助かった」とシンプルに伝えると褒められていることが実感しやすくなります。したがって「褒める対象が何か+達成したことをどう評価しているか」にIメッセージを加えるぐらいの、シンプルな伝え方が効果的です。
褒め言葉の「さしすせそ」
基本的な褒め言葉として「さしすせそ」というものがあります。会話のなかでさりげなく使うとよりうまく褒めることができるので、知っておくと便利です。ただし、使いすぎると逆効果になるので注意しましょう。
- さ:さすがだね
- し:知らなかったよ
- す:すごいね
- せ:センスがあるね
- そ:そうなんだね
メンバーを褒めるときのポイント
いくらメンバーを褒めても、褒めていることが相手に伝わらなければ意味がありません。以下では、基本的な褒め方のポイントに加えて、メンバーを褒めるときに意識するべきポイントを4つご紹介します。
具体的に褒める
褒める際は抽象的な内容ではなく、具体的に褒めましょう。例えば、「素晴らしいね」だけよりも「○○さんの取り組みは計画が綿密で素晴らしい」などと具体的に伝えたほうが、相手は何を褒められているのかを理解しやすくなります。
また、具体的に褒めることで「仕事をちゃんと見てくれている」「評価されている」と実感を待たせることも可能です。行動や思考の強化、習慣化を図るうえでも、どの思考や行動が良かったのかを具体的に伝えるようにしましょう。
人前や大勢の人の前で褒める
人前で褒められることは上司だけでなく、他のメンバーからもお褒めの言葉をかけてもらえる可能性があり、よりモチベーションが上がりやすくなります。また、周囲の人も「負けていられない」という意識を持ち、組織全体の相乗効果が期待できます。
ただし、人前で褒められることを苦手に感じる人もいるため、相手によっては面談や1on1を実施した際に伝えるようにしましょう。
成果以上にプロセスや姿勢を褒める
成果を褒めることは問題ありませんが、成果そのものには再現性がありません。したがって、成果につながる再現性のある言動や具体的なプロセス、取り組み姿勢、強みなどの内面を紐付けて褒めることが効果的です。
また、最終的な成果につながっていなかった、結果は満足いくものではなかったとしても、プロセスや良かった点などを褒めてあげると次の挑戦、行動につながりやすくなります。
本人も自覚がないポイントや成長箇所を褒める
いつも褒められているポイントだけでなく、本人も自覚がない点や成長箇所を褒めてあげると、よりモチベーションアップにつながりやすくなりますし、今まで気付いていなかった強みを知る良いきっかけにもなります。また「自分のことを良く見てくれている」という気持ちが生まれるため、信頼関係の構築にも効果的です。
褒める際に注意すべきこと
褒め方には効果的なポイントがある反面、やってはいけないこともあります。以下では、やってはいけない褒め方の例を3つご紹介します。
無理して褒めない
無理やり褒めようとしたり、実際にあげてもいない効果を褒めたりするのは意味がありません。嘘をつくと言葉に信憑性が欠けてしまうほか、相手が嘘だと気付けば信頼関係も失ってしまいます。
また、不自然な褒め方は相手にも伝わりやすいので、本当に褒めたいことがあるときだけ褒めるようにしましょう。
一方で、上司はメンバーのことをしっかりと観察し、褒めるポイントを探すことが大切です。最終成果だけでは褒めるポイントを見つけにくいですが、プロセスや努力、成長箇所を見ていれば、褒めるポイントはたくさん見つけられるはずです。
第三者と比較して褒めない
他人と比較して褒めるのではなく、メンバー自身を褒めることが大切です。誰かと比較してしまうと、比較した当人の耳に入った場合にモチベーションを大きく下げてしまう可能性があるほか、褒められている当人もポジティブに受け取れません。
難易度が低すぎることで褒めない
たとえ褒めるポイントであっても、あまりに難易度が低いことを褒めてしまうと「自分のレベルが低い」と思わせてしまう可能性があります。またメンバーによっては嫌味にとらえ、嫌悪感を抱いてしまう可能性もあるので注意が必要です。
ただし、上司からすれば「絶対的な合格基準に達していない」場合も、「基準に向けての成長箇所」などは褒めるべきポイントとなります。したがって上司は、褒める内容や伝え方、相手がどうとらえるかなどを考慮したうえで褒めてあげることが大切です。
まとめ
メンバーや後輩を褒めることはモチベーションアップや自己肯定感、褒められた行為の習慣化といったメリットがあります。特に近年の若手は承認欲求が強まっている傾向にあるため、育成するうえでは褒めることが必要不可欠です。
ただし、無理に褒めようとすると逆に相手のモチベーションが下がったり、信頼関係が崩れてしまったりする可能性があります。
また、褒める内容の難易度があまりにも低いと「自分はレベルが低い」と思われてしまうため、「プロセス」「成長箇所」などのポイントをよく見て効果的に褒めてあげることが大切です。今回ご紹介したポイントを参考に、メンバーや後輩を積極的に褒めるようにしましょう。