コロナ禍でリモートワークが浸透した次のフェーズとして、ハイブリッドワークという働き方が注目されています。予期せぬ形でリモートワークが当たり前となった今、組織の新しいマネジメント方法の答えの一つがハイブリッドワークです。
本記事ではハイブリッドワークの基礎知識や導入のポイントを紹介します。
<目次>
ハイブリッドワークとは?
『ハイブリッドワーク』はリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせた働き方のことです。ハイブリッドワークをうまく活用すれば、両方のメリットを得られるだけでなく、それぞれのデメリットも解消できます。
注目される背景
ハイブリッドワークが注目される背景には、新型コロナウイルスの蔓延によりリモートワークが一気に広がった点があります。今までリモートワークに消極的だった企業も、いざ導入してみると多くのメリットがあることに気付いたことでしょう。
一方、リモートワークの導入が一気に進んだ結果、オフィスワークの重要性が再確認されたことも事実です。リモートワーク一辺倒だと弊害も生じるため、双方を組み合わせたハイブリッドワークが注目されるようになりました。
Googleをはじめとした世界的に有名なIT企業においても、完全なリモートワークから、オフィスワークとリモートワークを週2~3日ずつ組み合わせたハイブリッドワークへと切り替える事例が増えています。
ハイブリッドワーク導入のメリット
オフィスワークとリモートワークを組み合わせた働き方には、いずれか一方のみでは得られないメリットがあります。ハイブリッドワークの導入により得られる主なメリットを見ていきましょう。
最適な働き方で生産性の向上が期待できる
ハイブリッドワークを導入すれば、仕事内容に応じて働く場所を変えられます。業務効率が上がる場所や最適な場所で働くことで、生産性の向上を見込める点がメリットです。
例えば個人で集中する仕事をリモートワークで行ない、コミュニケーションやコラボレーションが必要な作業をオフィスワークにすれば、業務の効率化を図れます。
リモートワークが適していない人に選択肢を柔軟に与えられるのも、ハイブリッドワークのメリットです。在宅では家族がいて業務に集中できない人も、ハイブリッドワークなら家庭の状況に応じて在宅と出社を自由に選べます。
業務の効率が上がる場所は人それぞれです。より高いパフォーマンスが発揮できる場所を社員に決めさせることで、成果を出しやすくなるため生産性の向上につながります。
社員の満足度向上につながる
リモートワークとオフィスワークを選べるハイブリッドワークを導入すれば、最適なワークライフバランスを実現しやすくなります。仕事とプライベートの両立を図れるため、社員の満足度向上につながるメリットがあります。
リモートワークとオフィスワークのいずれか一方に固定すると、働き方に関する全社員のニーズに応えるのが難しくなります。育児や介護などの理由からリモートワークを望んでも、出社が義務なら働きにくさを感じやすくなり、やる気も下がりかねません。
他方、リモートワークのみに振り切ると、オフィスで仕事をしたい人のモチベーションが低下する恐れがあります。ハイブリッドワークの導入により、オフィスワーク派とリモートワーク派の双方が働きやすくなるため、満足度の向上を図れます。
優秀な人材を確保するチャンスにもなる
ハイブリッドワークを導入すれば、オフィスから離れた場所に住んでいる人でも、月に数回出社すれば済むようになります。
家庭の事情で出社が難しい人材の退職を防げる点もポイントです。働き方に柔軟性を持たせることで、今後も長く自社で活躍してほしい優秀な人材の流出を防止できます。
多様な働き方ができる会社として選ばれやすくなるため、採用の観点からもメリットがあるでしょう。ハイブリッドワークを導入していることを、自社の大きな魅力としてアピールできるため、優秀な人材を獲得するチャンスが広がります。
導入における課題
ハイブリッドワークには、メリットだけでなくデメリットやリスクもあります。運用を成功させるためには、導入における課題と適切な改善策を理解しておくことも大切です。
勤怠管理が難しい
オフィスワークとリモートワークが混在するハイブリッドワークでは、誰がどこで仕事をしているのかが見えにくくなります。勤務状況の正確な把握が困難になりやすい点は注意点です。
オフィスワークの勤怠管理はタイムカードで行なえますが、リモートワークは社員の自己申告により労働時間を把握するケースが多くなるでしょう。自己申告制は社員の労働時間が実態に合っているか確認しにくく、過少申告や長時間労働が発生する恐れもあります。
ただし、ハイブリッドワークにおける勤怠管理の課題は、勤怠管理ツールの導入によりほとんど解決が可能です。機能を柔軟にカスタマイズできる勤怠管理ツールを活用すれば、複雑化しやすいハイブリッドワークの勤怠管理を効率よく実行できるでしょう。
コミュニケーション格差が生じやすい
ハイブリッドワークの導入において考えておくべき課題の一つに、コミュニケーション格差が生じやすくなる点も挙げられます。完全なリモートワークであれば、すべてのコミュニケーションはオンライン上で実施されます。絶対的なコミュニケーション量などの問題は発生しますが、ある意味では平等です。
しかし、ハイブリッドワークになると、オフィスで働いている社員とは気軽にやりとりできる半面、オフィスにいない社員とのコミュニケーションや情報共有に課題が生じがちです。
たとえば、会議をする際に、全員が対面もしくは全員がオンラインであれば問題は生じませんが、半分の人が同じ会議室で、残り半分がリモートワークでオンライン参加という状況を想像してみてください。
うまく進行しないと、会議室にいる人たちでのコミュニケーションが活性化して、オンライン参加組には疎外感が生じてしまいます。ハイブリッドワークでは同様の状況が生じやすいということです。
コミュニケーションが減少する課題を解決するためには、事前にある程度のケースを想定して、連携の手段を検討しておくことが大切です。
人事評価が難しい
ハイブリッドワークを導入すると、オフィスワークとリモートワークの間で出社頻度に差が生じます。リモートワークはオフィスワークに比べ、働くプロセスを評価しにくいため、人事評価では成果重視の評価になりがちです。
リモートワーク中心の社員が思うような成果を上げられない場合は、オフィスワーク中心の社員より評価が低くなる恐れがあります。出社した方が評価されやすいのであればオフィスワークを選ぶ社員が増え、ハイブリッドワークは形骸化してしまうでしょう。
公正な人事評価を行なうためには、評価者である管理職の教育がポイントです。リモートワークでは見えづらいプロセスの部分をどのように扱うのか、評価者研修で学んでもらうのも一つの方法です。
ハイブリッドワークを成功させるには
働きやすい環境を整えたり、社内でルールを整備・徹底したりすることが、ハイブリッドワークを成功させるための重要なポイントです。また、セキュリティ対策についても気を配る必要があります。
働きやすい環境を整える
ハイブリッドワークの導入にあたり、社員が働きやすい環境を整えておきましょう。社内規定を見直し、リモートワーク時や急な出勤要請時のルールを決めておけば、トラブルを未然に防げます。
勤怠管理ツールを導入して、公正な管理を実現する取り組みも大切です。どのような働き方をしても、社員に納得感が生まれるような管理ができなければなりません。
リモートワークをはじめて導入する際は、就業環境の整備に対して社員が費用を負担するケースもあります。手当が出る仕組みを作っておけば、働きやすい環境構築をサポートできるでしょう。
オフィスに関しても、リモートワークで出社人数が減る分、コミュニケーションやコラボレーションがしやすくなるレイアウトに変更する、オンライン組も混じっての会議を実施しやすい環境を作るなどすることで、働きやすさが向上するでしょう。
社内でルールを整備・徹底する
社員がさまざまな場所で仕事をするハイブリッドワークでは、情報共有やコミュニケーションに関するルールの整備も不可欠です。スムーズかつ確実な情報共有が実現できるかを考慮し、対策を講じなければなりません。
ルールは、社員の間で不公平感が生じない設定が重要です。勤怠管理ツールを含めたルールを整備できたら、社内での周知を徹底し、日々の作業として社員に確実に実践してもらう必要があります。
同時に、チャットツールやバーチャルオフィスなどを導入し、円滑なコミュニケーションを支援しましょう。これらのツールを社内でうまく活用することで、電話やメールよりも気軽で円滑なコミュニケーションが実現できるでしょう。
セキュリティ対策を講じる
ハイブリッドワークのうち、リモートワーク部分は社外で仕事を行ないます。情報漏洩を防ぐためには、しっかりとセキュリティ対策を講じることが大切です。
例えば、リモートワークを行なう社員にデバイスを貸与する場合は、万が一紛失した際に情報を抜き取られないよう、ロックがかかる仕組みにする必要があるでしょう。業務で使用するネットワークも、セキュリティを強化しておかなければなりません。
ツールやインフラを整備するだけでなく、社員のセキュリティに対する意識を高める教育も非常に大切です。社内研修を実施し、社員のセキュリティリテラシー向上を図りましょう。
導入における注意ポイント
ハイブリッドワークの導入時に注意しておきたいポイントを紹介します。評価制度の見直しやルール作りについて、気を付けておくべき点をチェックしましょう。
評価制度の内容・運用を見直す
ハイブリッドワークにおいては、従来の評価制度では公正な評価ができない可能性があります。働き方に関係なく適正な評価を行なうためには、評価制度の内容や運用を見直しておくことが大切です。
リモートワークで見えにくいプロセス部分をいかに把握・評価するのかの検討が重要です。成果のみでの評価にならないよう、工夫を凝らす必要があるでしょう。また、運用しながらきちんとPDCAを回して改善していきましょう。
出社日数などのルールをあまり細かくしない
ハイブリッドワークを導入する際、ルールを細かく設定しようとなりがちです。しかし出社日数などのルールは、過度に細かく設定しないほうがよいでしょう。
出社日数などのルールをあらかじめきっちり決めてしまうと、働き方の自由度を制限してしまうと、ハイブリッドワークの魅力が低下します。
目安を決めたうえで、業務に支障がない限りは柔軟に運用できるようにするのがおすすめです。出社日数などのルールは、部署ごとの都合に応じて、また導入後の状況を見ながら決めていくことがよいでしょう。
まとめ
リモートワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークを導入すれば、最適な働き方で生産性の向上を見込めます。社員の満足度向上につながる点や優秀な人材を確保しやすくなる点もメリットです。
一方、ハイブリッドワークには、勤怠管理が難しくなったりコミュニケーション格差が生じたりするリスクもあります。運用を成功させるためには、働きやすい環境を整えた上で、運用しながらPDCAを回していくことが重要です。