ジョハリの窓とは?具体的な意味と自己分析や他者コミュニケーションで活用するやり方を解説!

更新:2023/07/28

作成:2022/03/15

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

ジョハリの窓とは?具体的な意味と自己分析に使うやり方を解説!

ジョハリの窓とは、自己開示の状況や周囲とのコミュニケーションを客観的に把握できるようになる心理学モデルです。
 
周囲との関係性を改善したり、コミュニケーションにおけるストレスなどを減らしたりするうえでは、コミュニケーション力などのスキルを高めて自己成長することも非常に役立ちます。同時に、ジョハリの窓などを活用して自己認識を深めたり、自己開示を増やしたりしていくようなやり方もおススメです。
 

記事では、ジョハリの窓の概要と、ジョハリの窓を自己分析や組織のコミュニケーションで用いる方法、ジョハリの窓を描くやり方や活用ポイントなどを詳しく解説します。

 

<目次>

ジョハリの窓とは?

ジョハリの窓とは、自己分析・他己分析で用いられる心理学モデルです。米国の心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが1955年に発表しています。「ジョハリさん」が開発したモデルと誤解されがちですが、2人の名前を組み合わせ「ジョハリの窓」と名づけられています。

 

ジョハリの窓を用いると、自己理解が進むとともに、周囲とのコミュニケーションや自己開示の状況を客観的に把握できるようにもなります。

ジョハリの4つの窓

ジョハリの窓では、「自分は知っている/自分は気付いていない」「他人は知っている/他人は気付いていない」という2つの軸で、自分の特性や価値観、強みや言動などを分類します。2軸の組み合わせで4つの窓(領域)があります。本項では、個々の窓の特徴を紹介します。

ジョハリの窓

【開放の窓(open self)】
自分と他人の両方が知っている性質です。自分の性格や能力、言動などのうち、自分でも認識しており、他人にもオープンになっている部分になります。「あの人は◯◯な人だ」「〇〇という行動をしがちだ」「〇〇が強みだ」という他人の目から見た自分と、「自分は◯◯な一面がある」「〇〇という行動をしがちだ」「〇〇が得意だ」といった自分の主観が一致している状態といえます。

 

【盲点の窓(blind self)】
他人は知っている一方で、自分では気付いていない性質や言動です。盲点という言葉が指すとおり、相手に言われて初めて気付く以下のようなものとなります。

  • 自分の知らない癖
  • 自分の知らない得意分野
  • 自分の知らない長所
  • 自分の知らない短所 など

盲点の窓に入っているのが、得意分野や長所などのポジティブな性質であれば、問題ありませんし、知ったことを機会に積極的に活用していきましょう。

 

一方で、自分の知らない悪い癖や短所の場合、癖や短所が原因で仕事の問題が頻発したり、周囲を不快にさせたりしている可能性もあるでしょう。自覚することで修正や対応しやすくなりますので、成長課題として取り組んでいきましょう。

【秘密の窓(hidden self)】
自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない性質です。秘密の窓が大きいということは、周囲の人に開示していない自分がいる状態を意味します。具体的には、以下のようなものが該当しがちです。

  • 苦手意識
  • 過去のトラウマ
  • コンプレックス
  • プライベートの趣味 など

すべての情報をオープンにする必要はありませんが、「隠している」「仮面を被っている」「自分を使い分けている」ような意識はストレスや人間関係の妨げとなる部分もあります。周囲と共有できる範囲で公開することで、「自然な自分」「本来の自分」でストレスなく周囲とコミュニケーションできる比率が増えるでしょう。

【未知の窓(unknown self)】
自分と他人のどちらも知らない性質です。一般的には、秘められた才能などが入る領域です。互いに知らない状態から数年経つと、後述する自己開発や自己開示によって開放の窓が広がり、未知の窓は小さくなると考えられます。

 

また、例えば、まだ仕事に携わったことがない新入社員は、新人本人と先輩や上司、双方が以下のことを知りません。

  • どの作業が向いているか
  • どの作業が苦手か
  • 今の仕事をやってどう感じるか
  • どのスキルなら伸ばせそうか など

上記は本来のジョハリの窓のニュアンスとは少し異なります。ただ、ジョハリの窓の考え方をわかっていると、取り組んで共有することで未知の窓から開放の窓へと移していくことで人間関係や連携がスムーズになる、ということを思考しやすくなるでしょう。

ジョハリの窓を自己分析で用いるメリット

メリット・デメリットのイメージ

 

ジョハリの窓を自己分析で用いると、以下3つのメリットが生まれます。

 

「他者から見た自分」を知ることができる

4つの窓のところで紹介したとおり、「自分の知る性質」と「他人が知る性質」は、必ずしもイコールであるとは限りません。しかし、ジョハリの窓を使えば、普段は自分でわからない「自分は他者からどう見られているのか?」を把握可能になります。

 

我々は「自分のことは自分でわかっている」と思いがちですが、意外と自分で気付いていない価値観や言動の癖があるものです。他者から見た自分を知ることは非常に有益です。

自分の心の解放度や自己開示を把握できる

4つの窓の大きさは、自分が周囲に対して「どれぐらい心を開けているか?」という心の開放度や自己開示レベルを示すものでもあります。例えば、「秘密の窓」が大きい場合、周囲に対して十分に心を開いていない、自分の一部しか見せていないようなことが考えられます。

 

自己開示のレベルから、普段のコミュニケーション傾向を推測することも可能です。自己開示とコミュニケーションの関係は、心理学の「返報性の法則」から推測できます。

 

例えば、「開放の窓」が大きく、何でもオープンに話す人の場合、返報性の法則が働き、コミュニケーションの相手も同じように自分を開示してくれることが増えます。互いに自己開示し合えば、信頼関係は高まりやすく、仕事での連携や意見交換などもしやすくなるでしょう。

 

これに対して、例えば「開放の窓」が著しく小さい一方で「秘密の窓」がとても大きい場合、ほかのメンバーに心を開いていない状態です。

 

そうすると、返報性の法則から相手の自己開示も減りがちとなり、周囲との関係は縮まりづらくなります。ある意味で「自分を偽っている」「隠している」こともストレスの要因となるでしょう。

 

ジョハリの窓を使うことで、自分のコミュニケーション傾向や他者との信頼構築などへの気付きも得て、改善を図れます。

周囲とのコミュニケーション、関係性を改善できる

チーム内でほかのメンバーとの間に生じる意見の衝突などは、自分と他人の認識や価値観のギャップが原因で生じることも多くあります。
ジョハリの窓を使って、自己認識したり自己開示していったりすると、周囲との相互理解が深まり、コミュニケーションや関係性も改善されるでしょう。

 

自己開発に取り組める

「盲点の窓」に出てくるのは「自分自身ではそう思っていないけど、他人からはそう見えている自分」です。盲点の窓をきちんと認識して、開放の窓に統合していくことは、人間関係やコミュニケーションの改善につながります。

 

また、盲点の窓に入ってきたものが短所やネガティブなものである場合、自覚することで自己開発に取り組めるようにもなります。

 

盲点の窓に出てくる内容は、ほかのメンバーの主観や思い込みである可能性もあります。一方で、自分では「できている/やっているつもり」でも、他メンバーからすれば「できていない/やっていない」のかもしれません。相手や内容によっては「そんなのは自分ではない」と反発したくなることもあるでしょう。

 

ただし、真実がどうであれ「相手からそう見えている」ことは事実です。「相手からそう見えている」という事実を受け入れて相手に歩み寄り、ギャップやズレを解消しようと努めることで、成長のきっかけやメンバーとの関係改善につながっていくでしょう。

ジョハリの窓を組織のコミュニケーションで用いるメリット

前章では、ジョハリの窓を自己分析で用いるメリットを解説しました。本章では、自己分析に加え、ジョハリの窓を組織のコミュニケーションで活用するメリットを紹介します。
 

自分と他人の認識のズレを可視化し、コミュニケーションの改善を図れる

ジョハリの窓のワークを、周囲の誰かと一緒に行うことで、自分と相手の認識のズレを可視化し、コミュニケーションの障害や誤解の原因に気づく機会が生まれます。また、相手を深く理解することで、相手により適した言葉遣いや態度を取れるようにもなるでしょう。こうした積み重ねでコミュニケーションの改善が期待できます。

 

自己開示を通じて、信頼関係を強固にできる

ジョハリの窓では、自分が知っているが他人は知らない「秘密の窓」、あるいは自分も他人も知っている「開放の窓」といったことについて、双方が積極的に共有していきます。相互理解が深まれば、信頼感や親近感を一気に高められる可能性があります。信頼関係や協調性が高まれば、チーム内のコミュニケーションが活発なものに変わることでしょう。

 

組織全体の活性化につながる

ジョハリの窓を活用することは、個人やチームのパフォーマンスが向上するだけでなく、組織全体の活性化にも繋がります。なぜなら、ジョハリの窓を通じて、社員同士がお互いに尊重し合い、多様な価値観や意見を認めあえる文化が生まれるからです。社員が自分の強みや可能性を発揮しやすくなり、より主体的に仕事に取り組む姿勢を組織全体に育むメリットもあります。

 

ジョハリの窓を描くステップ

ジョハリの窓を描く方法として、最近では、以前から行なわれている大きな紙や付箋を使うやり方のほかに、アプリやWebを使うものも登場するようになりました。

 

基本的なやり方や考え方、手順は、どの方法を使ってもだいたい同じです。本項では、ジョハリの基本的なやり方として、大きな紙と付箋を使う方法と各ステップのポイントを紹介します。

 

1.4つの窓を書く

対象者1人につき1枚の大きな紙を用意し、以下4つの窓を書きます。

  • 左上:解放の窓(自分も他人も知っている)
  • 左下:秘密の窓(自分は知っているが、他人は知らない)
  • 右上:盲点の窓(自分は知らないが、他人は知っている)
  • 右下:未知の窓(自分も他人も知らない)

ジョハリの窓を写真に撮ってデータとして残すなら、大きな紙の代わりにホワイトボードを使ってもよいでしょう。

2.対象者の印象や性格を洗い出す

分析対象者の特徴や性格、印象を一つずつ付箋紙に書いていきます。1人の対象者に使う時間は5~10分程度です。独自の言葉を考えるのが難しい場合は、性格や能力を並べたリストを使うこともおススメです。

 

Webアプリは選択式になっているものが多くありますし、「長所 一覧」「強み 一覧」「価値観 一覧」などで検索すれば、性格や能力をあらわす単語をリストアップしたものも多く見つかるでしょう。

 

なお、前向きな言葉とするために、表現をポジティブワードに統一することがよいでしょう。対象者に十分な心の準備ができている場合は別ですが、一般的には以下のように明らかなネガティブワードは避けましょう。

  • ネガティブ
  • 暗い
  • 自信がない
  • 傲慢 など

3.4つの窓に並べる

特徴を書いた付箋紙を、4つの窓に貼り付けていきます。

  • 本人も周囲も書いている⇒開放の窓
  • 周囲だけが書いている⇒盲点の窓
  • 本人だけが書いている⇒秘密の窓

※付箋型で実施する場合、未知の窓に貼り付けられる付箋はありません。

なお、盲点の窓に貼り付ける付箋については、記入した人から理由などを説明すると、本人の理解度が深まりやすくなりますし、ギャップの解消にも役立ちます。

4.気付きを共有する

付箋をすべて貼ってジョハリの窓が完成したら、自己分析を掘り下げるために、対象者からの質問や気付きを共有していきます。

質問や気付きの例)

・どうして僕のことを〇〇だと思うの?
・自分自身では〇〇だと思っているけど、どう見えている? など

秘密の窓などに関しては、対象者からの質問以外に、周囲から質問するのもおススメです。お互いの認識に興味を持ち質問することで、相互理解を深めることにもつながります。

ジョハリの窓の活用方法

ジョハリの窓をメンバー個人の成長や人材マネジメントに活用するには、「開放の窓を広げる」という視点がポイントです。

 

本章では、秘密の窓・盲点の窓・未知の窓の3つの状態からわかることと、開放の窓を大きくするために実践してほしいポイントを紹介していきます。

 

秘密の窓が大きい場合

開放の窓が小さく、秘密の窓が大きい場合、自己開示や外向的なコミュニケーションが行なえていない状態です。であれば、周囲に自己開示することで信頼を得たり、自然体の自分で過ごしたりできるようになります。

 

なお、秘密の窓に入ったものの中には「自分はできているつもり/しているつもりでも、周囲からはそう思われていない」というケースもありえます。

盲点の窓が大きい場合

盲点の窓が大きい場合は、自身の性格や能力、言動を自分で把握できていない割合が大きいということです。ですから、周りから見た自分を理解して、長所や強み、できることなどを意識的に有効活用していきましょう。

 

なお、自分が把握していないことが不足や改善点であれば、成長課題として取り組んでいくことも大切です。いずれにしても、自己開示・自己認識を通じて、開放の窓を大きくしていくことを心がけるのが大切です。

 

未知の窓に取り組む

未知の窓は、自分も他人も知らない、眠っている資源や可能性の領域です。未知の窓を開いていくためには、まずは、秘密の窓、盲点の窓を小さくするアプローチが有効です。

 

まずは、周囲から見た自分と自分自身で認識している自分のギャップをなくしましょう。結果として、人間関係が円滑になったり、自然体の自分で過ごすことでストレスがなくなったりします。

 

そこから、未知の窓に取り組むためには、新たな挑戦や体験をすることが大切です。新しい挑戦や体験に取り組むなかで、新たな才能や性格が見出され未知の窓に眠っていた可能性が解放されていくかもしれません。

まとめ

自己分析のイメージ

 

ジョハリの窓は、自己分析・他己分析で用いられる心理学モデルです。自分の特徴や印象を以下4つの窓に分類する・してもらうことで、自己理解が深められます。

  • 開放の窓(open self)
  • 盲点の窓(blind self)
  • 秘密の窓(hidden self)
  • 未知の窓(unknown self)

自己分析にジョハリの窓を使うと、以下のメリットが得られます。

  • 「他者から見た自分」を知ることができる
  • 自分の心の解放度や自己開示、普段のコミュニケーションを把握できる
  • 周囲とのコミュニケーション、関係性を改善できる
  • 自己成長につなげられる

ジョハリの窓には、紙や付箋を使う方法以外に、Webやアプリを通う描き方もあります。基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 対象者の印象や性格を洗い出す
  2. 4つの窓に並べる
  3. 気付きを共有する

自己認知を高めたり、メンバーとのコミュニケーションを円滑にしたりするために、ぜひジョハリの窓を活用してみてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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