以下のような社会背景によって、多くの企業がウェルビーイングに注目するようになっています。
メンタルヘルス問題の増加
冒頭でも紹介したとおり、ITの発達で処理しなければならない情報量の増加、また、仕事で求められるスピードの上昇、感情労働に従事する人が増えるなかで、人々が仕事のなかで感じるストレスが増加しています。実際に、過去と比べてメンタルヘルスの発症者なども増加しています。
こうしたなかで、メンバー個人やチームの生産性を向上させていくには、メンバーそれぞれが健全な心身状態を維持するウェルビーイングの取り組みが大切になってきます。
働き方改革
働き方改革も、ウェルビーイングとの関連性が高い施策です。先ほど紹介した厚生労働省による就業面におけるウェルビーイングの定義には、働き方改革につながる以下の文言が入っています。
働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより……
働き方改革とは、働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革の総称です。働き方改革によって、企業には、以下のような制度や施策に合った対応が求められることになります。
- 残業時間の上限規制
- 勤務時間インターバル制度の導入促進
- フレックス制度の拡充
- 高度プロフェッショナル制度を創設
- 同一労働同一賃金 など
仕事におけるウェルビーイングを考えるうえでは、やはり「適切な勤務時間」「適切な休息」といった要素は、基盤となる部分です。
出典:平成30年度 雇用政策研究会報告書(案)~人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて~(厚生労働省)
参考:雇用政策研究会報告書 概要(案)資料1 (厚生労働省)
参考:働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~(厚生労働省)
価値観の多様化
過去の日本では、終身雇用が一般的でした。昭和の時代には、新卒一括採用で正社員として就職して、年功序列のウェイトが強い人事制度にしたがって、会社で定年まで働くようなモデルが一般的でした。
しかし、終身雇用が崩壊して転職も当たり前のものとなり、また、フリーランスや副業、複業などの多様な働き方も増えるようになりました。さらには、ワーク・ライフ・バランスを大切にする人も増加しています。
こうしたなかで多様な人材に活躍・定着してもらうには、表現は悪いですが「馬車馬のように働けば、勤め上げた先に昇格や高給が待っている」という制度ではなく、ウェルビーイングの視点で労働者が主体的に働き方を選択できる社内制度や環境づくりが必要となってきます。
企業の社会的責任への注目
近年、企業の社会的責任に対する社会の感覚も変わりつつあります。社会における企業の存在感が増すなかで、従来以上の社会的責任を果たすことが企業に求められています。
企業にはビジネスにおけるコンプライアンスの遵守などと併せて、企業が事業活動をするなかで社会的な負に加担しない、マイナスの影響力を発揮しないといったことが求められています。
こうした企業の社会的責任のことを、CSR(Corporate Social Responsibility)と呼びます。CSRとは、企業が利益至上主義に傾倒することなく、自社のメンバーやお客様、地域住民、株主などのステークホルダーや、社会全体への責任を持ち、戦略的かつ自発的に行動を起こしていくことです。
企業のメンバーが、健康的な職業人生を送れるようにするウェルビーイングも、CSRの一つだととらえられるようになっています。