採用条件の作り方と決め方を徹底解説

採用条件の作り方と決め方を徹底解説

採用条件とは、企業が人材を採用する際の「判断軸」「合否基準」です。採用条件や採用基準を明確化し、また採用選考と連動させないと、採用活動の効率が下がったり、面接官によって合否が変わったり、採用してはいけない人材を入社させてしまったりといったことが起こります。

 

記事では、採用条件の要素および、明確にするメリットを確認したうえで、採用条件を決めるステップや作り方のポイントを解説します。

<目次>

採用条件の要素とは?

冒頭で触れたように、「採用条件」とは企業が人材採用する際の「判断軸」「合否基準」の事を指します。採用条件にはどんな要素が含まれるのでしょうか。採用条件に一般的に含まれる要素を紹介します。

 

実務経験・資格

中途採用、とくに即戦力のキャリア採用では多く用いられる採用条件の要素です。実務経験や資格があるからといって入社後のパフォーマンスが保証されるものではありませんが、初期教育を圧縮できることなどが期待できます。また、採用ポジションによっては資格や一定のスキル(プログラミング言語やソフトウェアの利用経験など)が必須となる場合もあるでしょう。

 

実務経験などは、応募条件にしたり書類選考で判断したりしやすい項目ですので、“足切り”条件として設定する場合も多くあります。その場合には、実務経験をベースにして、これまでの実績や成果、また、次に紹介する能力やコンピテンシーなどを面接などで見極めていくイメージです。

Ex)
・法人営業経験1年以上
・国家資格キャリアコンサルタントの有資格者
・Salesforceの管理者経験

能力

能力はキャリア採用、ポテンシャル採用・未経験者採用のいずれでも使われます。たとえば、以下のようなものが能力として挙げられます。

Ex)
・論理的思考力
・コミュニケーション力
・地頭

能力を見極めるために、新卒の場合は能力検査や地頭検査などが行われることがよくあります。また、論理性などは、比較的面接での受け答えなどを通じて判断しやすい部分でもあります。

 

中途採用でも能力面の要素を参考にするケースもありますが、検査などを通じて見極めるよりも、面接での実務経験のヒアリングを通じて判断することが多くなるでしょう。

コンピテンシー(行動特性)

行動特性は、行動に見られる特徴的な要素です。たとえば、「クイックレスポンス」「徹底性」「傾聴」「計画策定」「率先」といったものがコンピテンシーの例としてあげられます。一種のポータブルスキルであり、業種や職種を超えて成果創出に影響を与える要素です。

 

自社(採用ポジション)で成果をあげるために必要なコンピテンシーを応募者が持ち合わせていれば、入社後に必要スキルや知識を身に付ければ、活躍できる可能性が高いと考えられます。キャリア採用などで行われるエピソードのヒアリングなどは、能力と同時に、コンピテンシーを見極める目的もあります。

 

性格特性・価値観・動機

コンピテンシーが行動に現れている個人の特徴だとすると、性格特性や価値観、動機などはコンピテンシーを生み出す源泉となる内面部分です。たとえば、「達成動機」が強い人材であれば、目標に向けた「徹底性」などのコンピテンシーが生まれやすいわけです。

 

新卒や中途ポテンシャル層など、社会人として組織の中で働いたことがない人の場合は、コンピテンシーを見極めることが困難ですので、性格特性や動機をしっかりと確認することが大切です。ただし、性格特性や動機は内面的な要素ですので、面接だけで見抜くことは難しく、適性検査などと併せて見極めていくことが有効です。

キャリア志向、仕事への価値観

終身雇用が崩壊して転職が当たり前になった中で、キャリア志向や仕事への価値観の一致を採用条件に入れる企業も増えてきています。

 

志望企業で期待できるキャリア、また、成長や昇格スピードなどが、応募者が求める要素と一致するかどうかが採用のポイントとなります。ここがズレると、数年で離職してしまったり、逆にストレス過多で期待するパフォーマンスを発揮できなかったりするといったことになりかねません。

 

少し乱暴な例ですが、「仕組みやビジネスモデルが整った企業でのんびり働きたい」と思う応募者と、「スタートアップで働いてIPOの立役者になりたい」と思う応募者では、キャリア志向や仕事に対する価値観が大きく異なるでしょう。

 

また、近年は企業側もキャリアパスを明確にして、ジェネラリストとプロフェッショナルの双方を目指せるようにするといった動きも生まれています。このような中で、中途のキャリア採用においては、企業側で採用ポジションがどういう位置づけで、その先にどんなキャリアを描いてほしいのかを定めていることも増えており、その内容と応募者のキャリアプランが一致しているかどうかも大切になってきます。

採用条件を明確にすることのメリット

採用活動において採用条件を設定することはなぜ重要なのでしょうか。本章では、採用条件を明確にするメリットを4つ解説します。

 

メリット① 採用可否の基準を統一できる

採用条件を設定する重要性のトップは、採用可否の基準を統一することです。採用人数が少ないうちは、面接官は1人だけかもしれません。しかし、採用人数が増えていくと、徐々に複数の人が面接官を務めることになります。

 

人間の感覚は先入観やその時々の気分などによって揺らぎますので、1人の面接官でもタイミングが変わると合否基準が変わってしまうことは十分あり得ます。ましてや、面接官が複数になれば、そもそもの価値観や経験、ものの見方が各自で異なりますので、判断基準も完全に違うものになるでしょう。

従って、もし採用条件が明確になっていなければ、面接官の価値観や主観によって採用基準が変わってしまいます。

 

また、採用活動では、現場のマネージャーと幹部陣、人事担当者の間で、求める人物像にズレがあることは珍しくありません。求める人物像が食い違ったまま、採用活動をおこなうと、現場で必要としている人材とは異なる人を採用してしまうといった事態にもなりかねません。

 

採用条件を明確に言語化して、関係者間で共有することで、面接官による主観や求める人材象のズレを防ぐことができます。

メリット② 採用活動を効率化できる

採用条件を明確にすることにより、企業は適切な人材を選定することができ、採用活動の効率化が図れます。例えば、書類選考を効率的に進めたり、面接でも採用条件に基づいて評価したりといったことができるようになります。

 

採用条件が明確であれば、「人事が合格にした人を現場マネージャーの面接ですべて不合格にされてしまう」といった効率が悪い状態もなくなります。

 

また、母集団形成の時点でも採用条件を提示することで、完全にミスマッチな人の応募を排除することもできるでしょう。

メリット③ ミスマッチによる早期離職を防止できる

採用条件が明確になっていない、また、適切でない場合、ミスマッチによる早期離職が起こるリスクが大きくなります。後述しますが、採用基準は実際に入社して定着・活躍している人の性格特性やコンピテンシー、能力などをしっかりと見極めて反映することが大切です。これによりミスマッチによる早期離職などを防ぐことが出来るでしょう。

メリット④人材へのアピールと求職者の理解促進

採用条件が明確であれば、求職者も自分が企業の求める人材像に合致しているかどうかを判断しやすくなります。例えば、自分自身のスキルや経験が企業の求めるものと合致しているかどうか?あるいは、自分の人柄や性格が求人企業の風土や文化と合致しているかどうか?といったことを見極めることも容易になるでしょう。

 

また、採用条件が明確であれば、企業は求職者に対しても明確なメッセージを伝えることができます。採用条件をある程度公表していくことで、求職者に対して自社が求める人材像を明確に伝え、来て欲しい人材に絞ってエントリーを促すことが可能になります。

採用条件の作り方|5つのステップ

採用条件を設定する際は、どのような手順を踏んで進めていけばいいのでしょうか?本章では5つのステップに分けて、解説していきます。

 

ステップ① 採用部署と経営陣にヒアリングする

採用条件を設定する上では、まず、採用したいと考えている部署へのヒアリングから始めていきましょう。現場へのヒアリングでは主に、

  • 必要な人数
  • 業務に必要なスキルや知識、資格、経験、能力
  • 望ましい性格や価値観
  • 入社後のキャリア

などを確認していきます。

 

また、トップや役員陣は現場スタッフよりも中長期の視点で物事を考えていることが多いでしょう。経営陣へのヒアリングでは、組織の中長期的なビジョンを踏まえながら、今回の採用ポジションに何を期待しているかを確認しましょう。

 

現場は「即戦力になればいい」と思っているが、経営層は「幹部候補になれる人」を求めているといったズレは往々にしてあるものです。

 

社内でのヒアリングを通じて、まずは求める採用条件をリストアップしましょう。

ステップ② 活躍している社員の特徴(コンピテンシー)を把握する

採用基準を決める際には、どのような人材であれば自社で活躍できるのか?を明確にすることが大切です。現場でのヒアリングと順番は前後してかまいませんので、いま実際に活躍している社員のコンピテンシーや性格特性などを確認しましょう。

 

「採用条件をつくる」といった名目で適性検査や能力検査を社内実施して、活躍している社員の共通項、活躍している社員と活躍していない社員の違いなどを把握することが必要です。

 

適性検査や能力検査の分析から見えてきたことと、現場でヒアリングした能力や性格、価値観要素をすり合わせていきましょう。

ステップ③ 優先順位を設けて採用条件を決める

上記の①と②で把握した内容を基に、採用条件を具体的に設定していきます。この時、出てきた要素に優先順位を設けることが大切です。

 

①と②のステップを進めていくと、得てして求める要素は数多くなり、“スーパーマン”のような人物像、「こんな人は市場にそうそういないし、居たとしてもうちの会社に来てくれないよ」といったものになりがちです。

 

無理に妥協する必要はありませんが、必須(MUST)と希望・歓迎(WANT)の2つで考えて、優先順位をつけていきましょう。なければ絶対に採用しない必須能力やスキル・要素を「MUST」、できればあったほうがいい/あったら嬉しい能力やスキルを「WANT」として、条件の優先順位を明確にしていきます。

ステップ④ 採用条件を基にペルソナを用意する

ペルソナとは、企業が求める人材像を具体的な架空の人物像として表現したものです。

 

採用条件は、あくまで採用基準であり、あまり人物をイメージさせるものではありません。採用条件だけでもよいのですが、具体的な人物イメージとして肉付けすることによって、「どんな人か?」という共通認識を持たせることができます。

 

また、ペルソナを作成することで、求人広告でどんなメッセージを発信すればいいか、面接などでどんな話をして魅力付けすればいいかも考えやすくなります。

⑤ 決定した採用条件を選考フローに反映する

採用条件を作成したら、各選考フローに採用条件を落とし込んでいきます。選考フローとは、採用活動における選考プロセスのことで、書類選考、適性試験、一次面接、最終面接などが一般的です。

 

選考フローのどの段階で、採用条件のどの要素を見極めていくかを決めていきます。例えば、「一次面接ではコミュニケーション能力、最終面接ではチャレンジ精神を重視する」といった具合です。

 

また、選考面接においては採用条件の要素をどのように見極めていくかも大切なポイントです。実務経験や資格などは確認すれば分かりますが、能力や行動特性、コンピテンシーなどは、採用条件自体に抽象的な要素、たとえば「主体性」などになりがちです。

 

従って、もし選考で「主体性」を見極めたいというのであれば、主体性とは何を意味していて、面接でどのように確認するのかを客観的に言語化して落とし込む必要があります。

採用条件を決める上で大切な5つのポイント

記事の最後では、採用条件を決める上で参考になるポイントを5つ解説します。

 

ポイント① 新卒採用における採用条件のポイント

新卒採用と中途採用では、重視する採用条件が異なります。新卒者は、社会人経験がないため、実務能力を評価することが困難です。そのため、入社後の成長可能性、つまりポテンシャルを重視することになります。

 

最近は、中途でのポテンシャル採用、新卒での即戦力採用もありますので、新卒と中途というだけではくくれませんが、いずれにしてもポテンシャル採用の場合には、「能力」や「性格特性・価値観・動機」といった要素に重きを置くことが大切になります。

 

なお、ポテンシャル採用でも「コンピテンシー」を確認しますが、ポテンシャル採用の場合には正社員として組織内で実際に発揮されてきたものではないため、「性格特性・価値観・動機」の発揮状態を確認するための要素と考えるのが良いかもしれません。

ポイント② 中途採用における採用条件のポイント

すでに社会人としてスキルや経験を積んでいる中途採用の場合、即戦力として活躍することが期待されるため、実務経験や専門スキルを評価基準に置くことが多いでしょう。

 

ただし、実務経験がある人の場合には、「なぜ転職するのか?」が重要です。実務で高い能力があり、成果を上げている人であれば、現職でも高く評価されて優遇されているはずです。転職するには、何らかの理由があるはずです。

 

経験者の場合、実績として語っているものが、すべてその人の貢献によるものではない場合もあります。“嘘をついている”ということではなく、主導的なポジションで関わったのか、どこまでその人が意思決定したのか、周囲の環境はどうだったのかなどといった要素です。

しっかりとエピソードや事例のヒアリングを通じて、能力やコンピテンシーなどを見極めていくことが大切です。どうやって成果をあげたのか、トラブルや困難な目標をどう切り抜けたのかといったことを面接で確認することが大切です。

 

また、戦力として活躍してもらうために、もちろんスキルや経験は大切です。しかし、それらを備えている人材でも、自社の社風やカルチャーとマッチしていない場合、離職に至ったり期待通りのパフォーマンスを出せなかったりというケースも少なくありません。

 

また、能力が高く、自社の社風とマッチしない人ほど、組織に大きな悪影響を与えます。したがって、中途採用の場合も、自社の組織風土との相性を採用条件に盛り込むことを忘れないようにしましょう。

ポイント③ 組織のステージ変化に応じて、採用条件を見なおす

事業内容や組織体制などは時間の経過で変化し、これに伴って採用部署や担当業務の人材要件も変わってきます。したがって、企業の事業内容や組織体制の変更に応じて、採用条件も見直すことが必要です。

 

たとえば、組織や事業の立ち上げ段階と、拡張段階、成熟段階で求められる人物像や能力は変わってきます。組織のステージに応じて、適切に採用条件の見直しを行いましょう。

ポイント④ 採用条件に合った求人媒体や選考方法を工夫する

採用条件を決めたら、それに合った求人媒体や選考方法を工夫することもポイントです。求人広告では、採用条件や応募資格を明確に伝えることで、ターゲット層にアピールしやすくなります。また、選考方法では、採用条件に沿った評価基準や面接質問を適切に設けることで、候補者の適性や能力を正しく判断できます。

 

求人媒体や選考方法は、採用条件の実現に向けた重要なツールですので、十分吟味したうえで効果的に活用しましょう。

 

 

ポイント⑤ コンプライアンスに準拠した採用基準にする

採用基準は、コンプライアンスに準拠した基準を設けることが求められます。特に採用基準をもとに求人広告を作成するにあたっては、法律などで定められていることをしっかりと守り、偏見や差別とならないよう十分配慮しなければなりません。

 

HRドクターでは、採用基準をもとに求人広告等を掲載する際の、記載義務事項および記載禁止事項について解説した記事を用意しています。以下のリンクより「法律で定められた求人広告への記載義務事項および記載禁止事項」を参考ください。

 

 

まとめ

記事では、採用条件をテーマに、採用条件を明確にするメリットや、作り方の流れ、ポイントについて解説しました。適切な採用条件を設けることは、企業の採用活動において非常に重要です。採用条件を明確にすることで、ミスマッチや早期退職を防ぎ、来て欲しい人材のエントリーを促し、選考を効率的に進めることができるようになります。本記事が参考になれば幸いです。

著者情報

稲本 太郎

株式会社ジェイック|シニアマネージャー

稲本 太郎

新卒で入社してから一貫して、新卒・中途の採用コンサルティング、キャリアカウンセリング、マネジメントを経験。計15年以上に渡って、採用支援の第一線で活躍している、社内でも有数の経験豊富な現役採用コンサルタントでありながら、自社採用の面接官も兼任。新人賞、トップセールス賞、MVT、社長賞、特別賞、ベストプラクティス最多ノミネートなど数々の受賞実績有り。

著書、登壇セミナー

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