求人募集においては、業種や職種の人気度、また労働人口の絶対的な減少、有効求人倍率の上下動といった要素が大きな要因を占めますが、それでも同業・同規模の中に「人が集まる企業」と「人が集まらない企業」があります。
求人に人を集めるためには、求人広告代理店の提案に従うだけでは十分ではありません。自社に応募が来ない理由を検証し、新しい訴求やチャネルを積極的に試していきましょう。この記事では、求人に応募が来ない理由、応募を増やすために明日からできる5つの対策をご紹介します。
<目次>
求人募集に人が集まらない、同業・同規模でも差がつく5つの理由とは?
最初に求人に人が集まらない、同業・同規模でも差がつく5つの理由を見ていきましょう。
1. 求職者のターゲティングができていない
求人募集に人が来ない理由の1つに、求職者のターゲティングができていないことが挙げられます。必要なスキルや事業内容を羅列しただけの求人募集は、誰の目にも止まりません。どのような人に向けた求人募集かを明確にすることが大切です。
まずは、必要としている人材を現場とすり合わせしょう。必要なスキルを列挙するだけではなく、「求める人物像」を具体的にすることが重要です。また、ターゲティングに際しては、母集団形成力や口説き力など、自社の「採用力」を客観的に把握することも大切です。自社の採用力に見合わない能力や経験値の所有者をターゲットとしても、応募を集めることは困難です。
例えば、外資系や大手企業で仕事してきた方が独立したり、家業を承継したりしたケースでは、それまでの経験から「これくらいのことができるのは当たり前」「これくらいの学歴や経験は欲しい」などの思いを持つことがあります。このような場合に、ターゲティングと自社の採用力にズレが生じることが起こりがちです。
2. ターゲットが求める価値・魅力を伝えられていない
求人募集に人が来ない理由として、“ターゲットが求める価値や魅力を伝えられていない”こともあります。ターゲットは求人媒体に掲載された無数の求人から応募先を選んでいます。就職する価値や企業の魅力をターゲットに見出してもらえるような求人募集を掲載しなくてはなりません。
景況感の変動がありますが、いつの時代も「自社で採用したい人材」は他社でも内定を獲得する人材であり、その中でいかに選ばれるかが重要です。特に中小企業の場合には、他社と比べて独自の魅力的な要素があるにも関わらず、魅力を抽出して言語化することができていないケースもあります。
「うちの会社は、魅力的な要素なんてないよ。BtoBで商材もわかりにくいし、知名度もないし、福利厚生で特別なものがあるわけでもないしね…」
このような表現は、中小企業では実際によく聞きます。理念やビジョン、社風、組織風土、事業の社会性、商品の魅力、あるいは仕事のやりがいなど、様々な側面で「ターゲットに響くような自社の魅力はどのようなものがあるか」をしっかりと洗い出し、求人募集に落とし込みましょう。求人募集に写真を掲載するならば、どのような写真を使うかも重要です。
リクナビNEXT元編集長の黒田真行氏がtwitterに紹介している事例は1つの典型です。
本当にあった、
蕎麦屋の「そば打ち職人」の
求人広告のキャッチコピー。掲載1回目
「創業120年、愛され続ける老舗です」応募0名
掲載2回目
「遠方からのお客様も多い人気のお店です」応募0名
掲載3回目
「一日中誰とも話さなくていい仕事」応募50名→いい人が採用できました!本当にありがとう!
— 黒田真行◆採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ (@damadama777) February 14, 2020
3. 求職者に提供している情報量が少ない
価値や魅力を伝えられていない以前の問題として、求人情報のボリュームが少なく、どんな人材を求めているのかわからない、仕事内容がイメージしにくい、などの理由で求人に人が集まらないケースもあります。事業内容や仕事内容を箇条書きで数行程度、サラッと書いてあるだけの求人募集は中小企業に多く見受けられます。
企業の知名度が低く、ホームページなどで発信している情報量が少ない中小企業ほど、求人募集には自社の魅力や仕事のアピールポイント、求める人材、待遇面でのメリット、選考の方法などをしっかりと書き込むべきです。
求人募集に記載する内容を検討する際には、競合他社の求人情報にどんな要素が盛り込まれているかをチェックすることもおすすめです。また、他の業界の求人情報も参考にすることで、ユニークで人目を引く求人情報を作成できることもあります。
4. 募集方法が適切ではない
求人募集に人が来ないのは、募集方法が適切ではないことも理由となります。例えば、「求めているターゲットが応募して来ないにもかかわらずハローワークに求人を出し続けている」、あるいは「競合が多い大手の求人媒体に低予算で求人を出し続ける」など、最適とはいえない方法で求人募集をしているケースは少なくありません。
企業の規模感や業種といった自社の母集団形成力、あるいはターゲットの年齢層や経験、採用難易度などに合った方法で募集する必要があります。
5. 他社より募集の条件・待遇が明らかに劣っている
同業他社より条件などの待遇面で明らかに劣っていることも、求人に人が集まらない理由となります。待遇に関しては近年では、給与面だけではなく、勤務時間や残業、年間休日、転勤や勤務地の希望が通るかなどの「働き方」も重要性を増しています。
条件や待遇は、特別な好条件、高待遇にする必要はありません。
ターゲット人材が見る同業他社の求人と同等程度、あるいは大きく劣らない水準であれば問題ないでしょう。
「人が来ない…」を解決!応募を増やすためにできる5つの施策
1. 自社にマッチした採用ターゲットを定義する
応募を増やすためにまず重要なのは、自社にマッチした採用ターゲットを定義することです。業務上、資格が必要な場合等は止むを得ませんが、募集が集まらないのであれば、なるべく応募条件は拡げた方が良いでしょう。もちろん、入社後に定着・活躍してくれる人材を採用する必要があることは言うまでもありません。
しかし、入社後に定着・活躍してくれる人材に必要な要件を見ていくと、多くの場合は業界経験や経験ではなく、性格特性や地頭であるケースが大半です。
2. 求人募集の原稿を見直す
求人情報の原稿を見直すことも、応募を増やすうえで効果があります。求人情報は、「短い方がわかりやすい」というわけではありません。
前述したとおり求職者は、理念やビジョン、社風、事業の社会性をはじめとする企業の魅力、あるいは仕事のアピールポイントや求める人材、待遇面でのメリットなどの詳細な募集内容、さらには企業内の人間関係や休日の交流などの職場環境までも詳細に知りたいと思っています。現在掲載している求人情報を見直し、企業の魅力や募集内容をしっかりと伝えられる内容を再考しましょう。
3. 募集チャネルを見直す
募集チャネルを見直すことが、応募を増やすために有効となる場合もあります。現在利用している求人媒体が、自社の採用力やターゲット層に合っているかを精査しましょう。
採用する人数やターゲットによっては、大手の求人メディアを利用するよりも、人材紹介サービスや特化型の媒体を活用したほうが、人材確保やコスト面で有利になることもあります。
4. ターゲットや採用時期、エリアを変える
競争の激しい市場ではなく、自社の勝てる市場で戦う、というのも改善策の一つです。例えば、求人の条件で「営業経験必須」としていたものを外すと、応募者をグッと増やすことができます。採用基準を下げるのではなく、「自社の営業に必要な要素は何か」を深堀りすることにより、「営業経験はないけれど活躍してくれる人」を採用することが可能です。
また、「新卒」にこだわるのではなく、「既卒」や「中退者」などの未経験者層に拡げるなど、市場を変えることも応募を増やすためには有効です。採用時期やエリアも同様です。退職者の欠員募集であれば時期をずらすのは難しいですが、新卒採用であれば時期を変えるだけで募集人数が変わることもあります。
またエリアによって採りやすいエリアと採りにくいエリアも存在します。採用が難しいエリアで頑張るよりも、「採用しやすいエリアで採って、引っ越し代の補助を出す」ことが有効な場合もあります。「9月卒業の新卒を狙う」とか「3月に多く発生する中退者を募集する」といった方法もあります。
5. 採用体制を整える
応募を増やすためには採用体制を整えることも重要です。会社として成長を志向し、採用人数が一定数以上であれば、採用の担当者をしっかり配置して、体制を整えて採用ノウハウを蓄積していくことは必須です。
今や世界的IT企業であるGoogleが、「創業者2人とエンジニア1人という社員3人の時に、組織の成長を意図して人事担当者を採用した」というのはよく知られた話です。Googleの4人目の社員であるヘザー・ケアンズが「Google最初の200人」の採用にコミットしたからこそ、Googleのその後の急成長があったともいえます。
一方で、採用人数が少ない場合は、採用の専任者を置くことは現実的に難しく、採用担当が経営陣の兼務になることも多いでしょう。その場合には、採用戦略やターゲティング、自社の魅力発掘などを支援してくれる信頼できる採用コンサルタントを見つけること、あるいはターゲティングや魅力付けを肩代わりしてくれる人材紹介会社を利用することも効果的です。
まとめ
求人募集に応募が集まらないのは、求職者がいないからではありません。多くのケースで、募集方法や採用体制に問題があることが原因です。応募を増やすためには、まずは従来のやり方に疑いの目を向け、採用ターゲットや採用方法を全体的に見直すことが重要です。
ただし、採用についての問題点は、自社の知見のみでは把握できないケースも多くあります。その場合は外部の採用コンサルタントや人材紹介会社などを使って、客観的な視点から課題を発見してもらうことも1つの方法です。