「国籍不問の“社員の定着率を高めるキモ”」【知見メール176号】

国籍不問の“社員の定着率を高めるキモ”

 

 

皆様、ジェイックの知見寺(ちけんじ)でございます。

 

 

 

 

先月の末、上海に出張しました。

これまでは、自分で

飛行機やホテルの手配をしていたのですが、

旅行代理店のHISを初めて使いました。

いくつか特典がありましたが、

そのひとつで10元分の交通カードをもらいました。

交通カードは、パスモやスイカと

同じ電子マネーカードで、地下鉄・バス・タクシーと

ほぼ全ての交通機関に使えますから、

1枚持っていると便利です。

 

上海・浦東空港のHISカウンターで、

交通カードをもらった時に、驚きました。

交通カードの表面に、日本語で

「トイレはどこですか?」と書かれていて、

同じ意味の中国語が更に

大きな文字で書かれていました。

 

 

前々号のメルマガにて、

上海の地下鉄でトイレがみつからず

困ったというエピソードを書きました。

 

このカードをもっていれば、

駅員さんに提示してトイレの場所を

教えてもらうことがスムーズにできるはずです。

HISのスタッフの方が自らの体験で作ったのか、

顧客の声から作ったのかわかりませんが、

思わず「さすがだな~あ」と

独り言を言ってしまいました。

 

トイレが見つからないのは、

相当困っている状況のはずですから、

それを助けるカードをくれたHISには、

感謝・感動を覚えるだろうと思います。

 

本当にちょっとしたことですが、顧客目線での工夫が、

顧客満足を高めることが

できる事例としてご紹介しました。

 

 

さて、今回は、上海でお会いした総経理の方々との

お話から気付いたことをご紹介させていただきます。

 

 

今年に入ってから、上海に3回出張していますが、

延べ34人の総経理の方にお会いして

お話をお伺いしました。

 

皆さん、それぞれ悩みや課題をお持ちでしたが、

共通して仰っていたことが、

「定着率が悪い」ということでした。

 

ちょっと、古いデータですが、

Watson Wyattの2008年のレポートでは

上海の平均離職率は24.3%であり、

日本の14.3%と比較すると

10ポイント高くなっています。

 

上海では、1年で社員4人に一人が辞める計算になります。

 

また、階層が下がるほど離職率は高く、

初級管理職・専門職28.0%、

一般従業員は36.2%、

ワーカーは49.3%と、

1年で社員の1/3~1/2が入れ替わる状態となっています。

 

 

確かにこれだけの人数が入れ替わると、

採用活動で時間がとられます。

欠員状態もうまれ、

現場がうまく回らない時期もあるでしょう。

 

そして、いつ辞めるかわからないという思いから

社員教育に、時間とお金の投資がされにくくなり、

さらに定着率が悪くなるという、

負のスパイラルが生まれます。

 

定着率が悪いということは、

経験値の浅い社員の割合が高いということですから、

業務の質やスピードがなかなか高まりません。

よって、一人あたりの生産性が上がりません。

その状況で、賃金を上げていくと、

利益率がどんどん落ちることになります。

(中国では、行政からの指導で

毎年賃金を上げざるを得ません。)

 

 

一方、3人の総経理の方が、

「おかげさまで、うちは定着率良いよ。」

と、仰っていました。

お話をお伺いすると、特に給与が高いわけではありません。

一般的な日系企業の水準と比較すると、低いくらいでした。

 

よく、中国人は賃金が1元でも違うと、

多いほうへすぐに転職するといわれますが、

必ずしもそうではないとのことです。

 

3人の総経理のお話をお聞きして、

共通していることが3つあることに気付きました。

 

 

一つ目は、「中国人だから、・・・・」という

決めつけた見方をしていないということです。

 

中国人か、日本人か、どうかは関係なく、

一人ひとりの人として、対峙しています。

中国人が全員、自己主張が強いわけでもないし、

自己主張が強い日本人もいる。

国籍で決めつけた見方をしない。

区別もしない。

 

PM2.5の問題があったとき、

ある日系の工場では、日本人社員にのみ

PM2.5対応のマスクを配ったそうです。

費用と調達できる数の問題から、

仕方がなかったのかもしれません。

 

私がお話をお聞きしたS総経理は、

全社員に配ることができないなら、

一切配布することをやめようと判断したそうです。

 

 

二つ目は、「自社で勤める価値を提供する」ことです。

M総経理は、

「結局、うちで仕事をしてもらうと、

どんなWinを提供できるのかにつきる」

と仰っていました。

もちろん、お金はそのWinの重要な要素ではあるが、

それだけではない。

 

自社で仕事をすると、どんな経験ができて、

どんな能力が高まって、

その先にはどんなチャンスがあるのかについて、

一人ひとりと話しをするそうです。

 

ですから、採用時の面接では、

必ず将来実現したいと思っていることは

何なのかをじっくりと聞きます。

 

そして、毎月1回、給与明細を渡すときには、

1対1で通訳を挟まずに面談をしているそうです。

中国語でしか会話できない社員もいるので、

毎回へとへとになります。

それでも、M総経理は、どんなに忙しくても、

この面談を自分の最重要業務として捉え、

必ず実施できる予定を組むそうです。

 

中国人は退職するときに、

「発展空間がないから」という言葉をよく口にします。

自分が成長できる余地があるのかどうかが、

重要なことなのです。

(成長と、ポストアップ・給与アップは

イコールと捉えていると思いますが)

 

 

三つ目が、「自社の社員を褒めていた」ことです。

「うちの社員は、すごく優秀だよ。」

「まじめで、一生懸命働くよ」

「私と現場との間に入ってくれているマネージャーが、

丁寧にやってくれるから助かっています」

などなど、自社の中国人社員を褒める言葉を、

一杯お聞きしました。

 

「普通、中国人は定時になるとすぐに帰るんですが、

うちは残業代つくわけじゃないのに、

残って仕事をしているんですよ。

だから、定時を過ぎてから

来社した他社の総経理はびっくりします。」

とS総経理は仰っていました。

 

本当に心から賞賛していると思いましたし、

きっと現場でもその気持ちを伝えていて、

中国人社員の皆さんは、

総経理に「承認」されていると

感じているのではと想像しました。

 

 

整理してみると、定着率が高まるアプローチは、

中国でも日本でもあまり変わらないと感じました。

 

 

 

 

 

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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