ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接アプローチできる「攻めの採用」手法です。新卒採用において、この数年で急速に普及し注目されています。
記事では、ダイレクトリクルーティングという採用手法の特徴やメリット、デメリット、おすすめのサービス比較等をおこないます。必要な人材の採用に向けてダイレクトリクルーティングを検討中の方は、ぜひこの記事を確認してみてください。
<目次>
- ダイレクトリクルーティングとは?
- ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリット
- おすすめのダイレクトリクルーティングサービス比較<まとめ>
- ダイレクトリクルーティングの特徴を踏まえて、成功させるためのポイントは?
- まとめ
ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングとは、これまで一般的であった求人媒体に広告を出稿したり、人材紹介会社に紹介を依頼して「候補者の応募を待つ」のではなく、企業側が求職者に対して「直接アプローチする方法」です。企業側が能動的に採用活動をおこなえることから、「攻めの採用」とも言われています。
今までの求人媒体では、自社に応募してくるのはあくまで、「自社の求人を見て興味を持った応募者」です。その中には、内定基準に届く応募者もいれば、そうではない応募者もいます。
その結果として、人気業界や採用レベルが高い企業であれば、「応募してくるのは内定基準に満たない学生が大半で、採用の生産性を落としている」といった状況があったり、逆に、中小企業やベンチャーでは「知名度やブランドがないので、採用したい学生を集められない」という状況が生じていたりしました。
しかし、ダイレクトリクルーティングでは、候補者データベースを検索したうえで、「自社が採りたい層にだけ企業側が直接アプローチできる」ため、自社の採用基準に合った母集団を形成できるのが大きな魅力です。
ダイレクトリクルーティングの具体的な手法
“ダイレクトリクルーティング”という言葉は、もともとアメリカで生まれたものであり、「企業がピンポイントに自社の欲しい人材を採りに行く能動的な手法」全般を指します。
従って、
- ヘッドハンティング
- リファラル採用
- 採用を目的としたミートアップ(特定層を対象としたイベント)の開催
- LinkedinやFacebookでのメッセージ送信による採用活動
等も、“ダイレクトリクルーティング”の一種です。
一方、日本で「ダイレクトリクルーティング」という場合には、“採用企業が就活生や転職者が登録する匿名データベースを検索して、プロフィールや自己PRを確認し、気になった人材に向けメッセージを送信できる”ダイレクトリクルーティングサービスを指します。中途採用ではBizreach、新卒採用ではOfferBoxやFutureFinder等が有名です。
記事では、日本で広く普及してきた後者の“ダイレクトリクルーティングサービス”、とくに新卒採用における利用を念頭にサービス活用のポイントを解説します。ただし、中途採用での利用、広義のダイレクトリクルーティングに関しても、成功のポイントは同様ですので参考にしてください。
ダイレクトリクルーティングが適している企業
ダイレクトリクルーティングを使った新卒採用は、以下のような事情を抱えた企業におすすめです。
- 会社の知名度や業界内の人気度があまり高くない企業
- 狭いスペックの層を採用したい企業
- 選考の工数等を考えて母集団を絞り込みたい企業
- 採用の生産性を高めたい企業
- 母集団形成力は弱いが“会えば口説ける”という、口説き力の高い企業
ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリット
「攻めの採用」ということで注目されるダイレクトリクルーティングのメリットとデメリットを確認しましょう。
ダイレクトリクルーティングのメリット
ダイレクトリクルーティングにおける最大の利点は、「自社が採りたいと思う人材にピンポイントにアプローチできる」ことです。求人媒体や合同説明会、新卒紹介で応募を待ち続ける方法に比べて、「自らアプローチできる」という点は非常に大きなメリットです。
また、送るメッセージやオファー内容を工夫することで、知名度やブランドのビハインドをひっくり返して、中小企業やベンチャーが優秀な学生を集めることが可能です。
例えば、企業の代表や人事部長といった役職者が直接アプローチすることも、ダイレクトリクルーティングでできる工夫の1つです。役職者が自らスカウトのメッセージを送ると、内容を読んだ学生は「自分はこの会社から期待されている」といったポジティブな受け止め方になり、知らなかった企業や興味がなかった業界からのオファーでもエントリーする確率が高まります。
また、学生の自己PRやエピソードを読んでメッセージに盛り込んだり、初期選考をスキップできる等のオファーを工夫したりすることも有効です。
そして、ダイレクトリクルーティングは、自社で会いたいと思った学生にだけメッセージを送りますので、集まる母集団の質は高くなります。求人媒体で集めた母集団よりも、圧倒的にステップ率が高くなることもよくあり、採用活動を生産的におこなうことができます。
ダイレクトマーケティングのデメリットと注意点
ダイレクトマーケティングはメリットも多くありますが、デメリットや成功させるうえでの注意点もあります。把握したうえで取組み、成功確率を高めていましょう。
ダイレクトリクルーティングによる採用活動には、学生側に興味を持ってもらえるスカウトメッセージの書き方等のノウハウが必要です。また、成果を上げるうえでは、数値で開封率や返信率を検証していくマーケティング的な活動も大切です。
実際の運用では、企業からメッセージを送る分、運用工数が必要となります。そのため、一回出稿すれば求職者からの応募を待つだけの求人媒体利用と比べて、採用担当者の負担が生じます。
- データベースの検索と学生プロフィールのチェック
- スカウトの送信
- 返信メッセージへの対応
- 個別の面談
このように、学生一人ひとりのプロフィールを確認して、運用していくダイレクトリクルーティングは運用工数が発生します。ただし、最近では、運用を代行してくれるサービスもありますので、どういう運用をするかも検討したうえで導入しましょう。
おすすめのダイレクトリクルーティングサービス比較<まとめ>
ダイレクトリクルーティングを始めるときには、以下のようなサービスから自社の採用スタイルに合うものを選ぶ必要があります。
OfferBox
5,840社の企業(2020年2月時点)と128,000名(20卒登録学生)が参加している分野最大級のダイレクトリクルーティングサービスです。
キミスカ
スカウトの種類・機能ともに優れた採用サービスです。スカウト代行サービス(有料)もあるため、社内でスカウトの運用工数を取れない企業にもおすすめです。
Wantedly
条件面の他に、企業の想いを重視したい学生が多いダイレクトリクルーティングサービスです。「話を聞きに行きたい」というボタン機能を使えば、気軽に求職者と会える仕組みになっています。しっかりと運用しないと成果が上がりづらいですが、中途採用も含めて安価に利用できるため、採用コストを抑えたい企業でも利用しやすいシステムです。
dodaキャンパス
学生集客にベネッセが関わっているため、大学1~2年生にもメッセージを送れることが特徴のダイレクトリクルーティングサービスです。
iroots
データベースの上位校比率が高く、優秀な人材へのアプローチがしやすい採用サービスです。スカウト開封率の高さを売りにしています。
JOBRASS新卒
登録できる学生の卒業年度がフリーとなっているため、採用シーズン以外にもインターンシップ等をおこなう大学1~2年生へのアプローチができるサービスです。
FutureFinder
AIと心理統計学を基にして、適性検査を基に「自社で活躍する可能性の高い学生」を自動的に抽出可能なマッチングシステムが搭載されています。学生登録数は、国内のダイレクトリクルーティングサービスの中でも最大級であり、求人掲載社数を500社に絞ることで、学生から発見されやすいシステムとなっています。
ダイレクトリクルーティングの特徴を踏まえて、成功させるためのポイントは?
ダイレクトリクルーティングによる新卒採用を成功させるには、以下のポイントを押さえた準備や運用をおこなっていきましょう。
ダイレクトリクルーティングを成功させるためのポイント
ダイレクトリクルーティングをするうえで最初におこなうべきことは、自社が求める人材像を明確化することです。「会ってみないと分からない」というのでは、データベースを検索することはできません。漠然としたイメージや定義ではなく、過去に採用した人材を確認しながら、「何をもって“優秀”とするのか」を決めていきましょう。
ダイレクトリクルーティングの運用に際しては、設定したターゲット人材を検索条件に落とし込んでいくことが必要です。中途採用と比べて職歴がないため、新卒採用のダイレクトリクルーティングは検索条件が、学歴、専攻、また、学生が自分で選んだ志望業界や志向性になりがちです。
ただ、OfferBoxやFutureFinder等、特性検査の結果等を使って、より本質的で高精度なマッチングをできるサービスも増えています。
スカウトメッセージの返信率や開封率を高めるには、メッセージの運用者が自社の魅力を熟知していることも重要です。ダイレクトリクルーティングの本格運用前に魅力の棚卸しをしておくと、メッセージの基本形を学生の志向性に応じてカスタマイズして、返信率を上げることができます。
- 事業内容の魅力
- 規模やブランド、市場地位や成長性に関する魅力
- 仕事のやりがいに関する魅力
- 得られる成長に関する魅力
- 人材教育やキャリアアップに関する魅力
- 待遇、労働環境の魅力
- 社風や社員の人柄、関係性に関する魅力
設定したターゲットに応じて、メッセージの基本形を2~3パターン作成して、あとは相手に応じてカスタマイズすることが一般的です。
ダイレクトリクルーティングを成功させるには、人事担当者の負担やコスト面で無理のない運用方法を考える必要があります。
従って、導入準備の段階で、学生プロフィールの確認やスカウトメッセージの送信、個別返信等にかかる運用工数を計算したうえで、運用体制を決めることが重要です。ダイレクトリクルーティングを導入した企業でありがちな失敗事例が、“運用工数が確保できず、使いきれないまま終わった”というものです。
ダイレクトリクルーティングサービスの中には、多くの担当者が負担と感じるスカウトを代行してくれる有料オプションがあったり、標準で運用代行をしてくれるサービスもあったりします。もともと人事担当者が少なく、自社での運用工数が確保できない場合は、こうしたサービスも選定基準に入れて検討しましょう。
ダイレクトリクルーティングの実行手順
ダイレクトリクルーティングは、以下の流れで実行します。
登録者数、学生検索の仕組み、価格等から自社に合うサービスを探します。初めてのダイレクトリクルーティングでコストや運用面に不安があるときには、成功報酬型のサービスを選択したり、運用代行が付いているサービスを選んだりすることがおすすめです。
選考の流れやオファーを出す条件等を決めておきます。この作業をしておくと、採用活動中に担当者が増えても標準化された基準で学生へのスカウト対応を続けられます。オファーの内容によって返信率を高めることも可能ですが、一方で、個別面談等を設定すると工数の負担も大きくなります。自社の体制に応じて決定しましょう。
採用活動の標準化と効率化をするために、スカウトメールのひな形は2~3パターン作っておくのが標準的です。ターゲット学生が会社を選ぶ基準を考えたうえで、会社の魅力を前面に出したもの、求人の魅力を訴求したもの、イベント内容でアピールするもの等です。
なお、どのスカウトサービスにおいても、学生はスマートフォンでメッセージを確認するのが殆どです。メッセージを開封してもらうためには、件名の頭12文字(スマートフォンで表示される一般的な文字数)、またメッセージを読んでもらうためには、本文の頭2~3文が重要です。とくに力を入れて作成しましょう。
各サービスの検索機能を使い、自社の基準に合った学生を探します。欲しい人材像にマッチしていると判断できたら、事前に作っておいたスカウトメールをその学生に合った内容に少しアレンジして送信していきましょう。ダイレクトリクルーティングを使って採用を成功させるためには、メッセージの送信数は重要な指標(KPI)です。あまり考えすぎずに送信していきましょう。
ここでも、届いた返信内容や学生の属性等によってアレンジしていくことが有効です。重要となるのは、学生の意向にもきちんと耳を傾けることです。学生の志望度を高めるためにも、スカウト理由でもある採用の意図や期待度合いを明確に伝えることが理想となるでしょう。
「攻めの採用」手法であるダイレクトリクルーティングでは、学生の反応をただ待ち続けるのではなく、定期的に開封率や返信率をチェックして、運用方法やスカウトメールを改善することが大切です。1~2週間サイクルで、PDCAをまわしながら、アプローチ精度を高めていきます。
採用年度が終わったら、ダイレクトリクルーティング経由で接触できた人材の数や質、成果を出すためにかかった工数やコスト等、全体の振り返りをおこないます。例えば、自社の運用面に大きな問題はなく、より精度の高いマッチングを求める場合等は、人工知能や適性診断を取り入れた検索ができるツールに切り替える等の改善も有効でしょう。
まとめ
ダイレクトリクルーティングは、企業から能動的にアプローチすることで、規模や知名度が高くない企業でも優秀な人材を獲得できる「攻めの採用」手法です。とりわけ新卒採用では、ダイレクトリクルーティングを導入することで、求人情報サイトでは応募してこなかった人材と繋がることが可能となります。
また、ダイレクトリクルーティングは、企業の代表者名等でアプローチをすることで、自社の想いを届けやすい手法でもあります。また、自社で採用したいと感じた学生にだけメッセージを送りますので、質の高い母集団を形成することも可能です。一方で、しっかり運用をおこなっていかないと成果が出にくい手法ですので、自社で運用工数を確保するか、代行サービスのあるものを選びましょう。