中途採用では即戦力となる人材を見極めることが重要です。しかし、優秀な人材を見極めるにはスキルや経験だけでなく、求職者の価値観や人間性、自社の社風に馴染むかどうかなどもしっかりと見抜く必要があります。
中途採用の成否は面接官の心構えや質問力が大きく影響します。記事では、中途採用面接における面接官の心得や質問すべき内容、具体的な質問事例を解説します。
<目次>
中途採用の面接を実施するうえで大切な心得
中途採用では社会人経験のある求職者を面接することになるため、新卒採用の面接とは状況が大きく異なります。求職者を公平かつ適切に見極めるためには、以下のポイントをしっかりと心得ておくことが大切です。
面接官は求職者を適切に見抜くことが大切
採用面接の基本として、面接官は自分の印象や好き嫌いといった個人的な感情で求職者を判断してはいけません。求職者を適切に見極めるためにも、事前に自社が求める人材像を明確に把握しておくことが大切です。
また、求職者は自分を良く見せようとする心理が働き、事実とは異なる、あるいは事実を“盛った”スキルや成果を話すこともあります。面接官はエピソードや数字をしっかりと掘り下げ、事実を見抜くことが重要です。また、求職者の本音を引き出すためにも、求職者と信頼関係を築こうとする姿勢を持つことがポイントです。
専門的な知識が必要であれば同席してもらう
即戦力になる人材を採用するには、自社が求めるスキルと求職者のスキルをしっかりと見極める必要があります。しかし、人事が面接官をする場合や、特殊な部署の人材を採用する場合などは、スキルの見極めが難しくなるケースも少なくありません。
スキルの見極めが難しい場合は、専門知識を持ったメンバーや、配属部署の担当者などに同席してもらうのがおススメです。配属部署のベテラン社員などであれば、求職者のスキルをより正確に見極められるほか、自社での適性や既存メンバーと馴染めるかなども、面接の段階である程度判断することができるでしょう。
転職にネガティブなイメージを抱きすぎない
高度経済成長期を経てきた日本では終身雇用や年功序列といった風潮があり、過去には新卒から定年退職まで一度も転職をしない人が多数を占めていた状況もありました。結果として転職する人に対しては、忍耐がない、仕事ができないといったイメージを抱いている人もいます。
近年、転職は当たり前になりつつありますが、それでも転職にネガティブなイメージを持つ人もまだ多いという現状があります。面接官のなかにも「転職=良くない」と考える人はいるかもしれませんが、転職にネガティブなイメージを持ったまま面接をしていると、いつまでたっても優秀な人材を見極めることはできません。
たしかに、定着という視点でいうと転職回数が多い人は入社後に退職(転職)する可能性は高いかもしれません。しかし、中途採用の目的が高いスキルや専門的な知識を持った人材を獲得することであれば、転職に対してネガティブなイメージを持ったり、転職回数を過度に意識したりするのは無意味です。
中途採用面接で面接官が質問すべき内容
中途採用面接で面接官が質問すべきことは大きく3つに分けられ、いずれも優秀な人材を見極め、採用するために欠かせない内容です。
能力の確認
即戦力が求められる中途採用では、スキルや経験、成果といった能力の確認が必須です。大事なことは、求職者の能力を十分に理解して「自社で成果を出せるかどうか?」という再現性の要素を確認することです。
表面的な職務経歴書上の仕事内容や成果に留まらず、仕事への関わり方や立場、成果を出すまでのプロセス、外部環境の要因などを掘り下げて確認することが重要です。
カルチャーマッチ
中途採用は社会人経験がある人材を採用します。キャリア経験がある人材ほど、前職での仕事のやり方、これまで作ってきた仕事への価値観などがあります。結果的に社会人経験がない新卒や既卒層よりも自社の価値観に染まりづらい傾向があります。
したがって、入社後のミスマッチを予防するには、求職者の価値観と自社の社風・バリューが一致していることが重要です。何が外してはいけない社風やバリューかを明確にして、カルチャーマッチの視点でも見極めを実施しましょう。
また、カルチャーマッチの視点に加えて、仕事の進め方やスピード感などに関しても前職でのやり方を確認しておくとよいでしょう。
採用確度の確認
中途採用を成功させるためには、求職者が自社に求めている条件や基準、志望度などを確認することも大切です。求職者の認識と企業側の認識がズレていた場合、採用後にミスマッチが起こり、早期退職につながる可能性が高まりますので事前に認識を合わせておくことも重要です。
また、求職者が転職活動で重視している条件や志望度などをしっかりと把握して、志望度を上げたり必要なポイントを押さえたオファーを出したりしないと、内定を出しても辞退されてしまいます。
アイスブレイクで使える質問事例
採用面接では、最初にアイスブレイクを挟むのが一般的です。アイスブレイクとはお互いの緊張をほぐすための雑談のようなもので、求職者の緊張をほぐし、和んだ雰囲気を作ることで、リラックスした状態で面接を行なうことができます。求職者の緊張をほぐすことは、本音を引き出すうえでも重要なポイントです。
アイスブレイクでは求職者との共通点を探すことがポイントとなるため、相手が喋りやすい話題やテーマを選んで質問をしていきます。
- 珍しい苗字など相手が聞かれ慣れていること
- 相手との共通点に関する質問やコメント
- 趣味に関することなど、相手が答えやすい質問やコメント
能力確認で使える質問事例
中途採用の面接で即戦力を見極める際には、職務経歴書に記載された内容を深掘りしていくことが基本になります。職務経歴を確認して、気になる点、確認したい点などを事前に決めておくとよいでしょう。
面接において求職者には「自分を良く見せたい」という心理が働きますので、なかには事実と異なる実績や、事実よりも“盛った”エピソードを話す人もいます。プロセスや事実を引き出す質問を投げかけてしっかりと能力を見極めて、「自社で成果をあげられるか?」という再現性を見極めましょう。
- 前職で担当されていた業務を簡単に教えてください。
- 〇〇は担当されていましたか?
- どのような立場で関わられていたか、プロジェクトや組織の構成を教えてください。
- 設定された目標の難易度を教えてください。
- 成果をあげるうえで何が一番のハードルでしたか?
- ハードルにどう対応しましたか?なぜその意思決定をされましたか?
- 仕事を通じて、(表彰、抜擢など)評価をされた経験を教えてください。
- 成果をあげるために日々意識、実践していることは何ですか?
カルチャーマッチに関する質問事例
どんなに優秀な人材でも、自社の社風や理念、価値観などとマッチしていなければ即戦力になりづらいほか、入社後のミスマッチで早期退職につながってしまいます。価値観のズレは、入社後に修正することが難しいため、面接の段階でしっかり確認しておくことが重要です。
また、カルチャーマッチと一緒に確認しておくと良いのが、キャリアビジョンです。キャリアビジョンに関する質問は働き方に関する価値観を知ることができるとともに、志望動機の明確さや熱意の強さなども見抜くことが可能です。
- 仕事をするうえで大切にしている価値観を3つ教えてください。
- なぜその価値観を大切にしたいのですか?
- 前職の社風や組織で好きだったことは何ですか?
- 前職の社風や組織で変えたいと思っていたことは何ですか?
- 働くうえで組織にどのようなことを期待しますか?
- 当社について、知りたいことは何ですか?
- 5年後の目標を教えてください。
- 将来の目標は何ですか?
- キャリアビジョンを教えてください。
採用確度に関する質問事例
求職者が重視する条件や基準、待遇、自社への志望度などを知ることは、志望度UPを図ったり、条件をクリアするオファーを出したりするうえで不可欠です。基本的に自社で採用したいと思う求職者は他者でも内定を獲得するものです。自社を選んでもらうためにも、求職者の本音を把握しましょう。
- 志望動機を教えてください。
- 今回の転職活動で重視していることを教えてください。
- 今回の転職活動で必須条件にしていることはありますか?
- 転職先を選ぶ基準などがあれば教えてください。
- 新しい職場や仕事で達成したいことはありますか?
- 当社に興味を持った理由を教えてください。
- 当社への志望度は100点満点で言うと何点ですか?
- それはなぜですか?
まとめ
採用面接を行なう面接官は、すべての求職者を公平かつ適切に審査することが求められます。個人的な好みや感情で判断しないようにすることが、まず前提となる心構えです。
中途採用の面接では能力、カルチャーマッチ、採用確度という大きく3つのカテゴリで求職者のヒアリングを実施することがおススメです。なお、能力面に関して求職者は“盛って”話す心理も働きやすいので、プロセスのヒアリングなどを通じてしっかりと見極めを実施しましょう。
専門性が高い職種の場合には、採用部門のメンバーや管理職など、見極めに必要な専門知識を持ったメンバーに同席してもらうことも有効です。
また、中途採用の場合にはカルチャーマッチも大切です。求職者の価値観と自社の社風やバリューが一致するかどうかはしっかり確認しましょう。また、求職者を口説くためには、転職活動で重視するポイントや待遇面などの条件に関して本音を引き出すことが大切です。
今回ご紹介した質問事例も参考に、質の高い面接を行なっていきましょう。