中途採用比率の公表義務化とは?企業への影響と必要な対応を解説

更新:2023/02/02

作成:2022/08/21

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

中途採用比率の公表義務化とは?企業への影響と必要な対応を解説

 2021年4月から実施が義務化されたのが”中途採用比率の公表”です。常時雇用する労働者が301人以上いる企業は中途採用比率を公表しなければなりません。記事では中途採用比率の公表義務化の概要と企業への影響、必要な対応を紹介します。

<目次>

中途採用比率の公表義務化とは?

中途採用比率の公表義務化とは?
 中途採用比率の公表義務化とは、正規雇用労働者数に占める中途採用者数の割合を企業が公表しなくてはならない制度です。労働施策総合推進法の改正に基づいて、2021年4月より実施が義務化されました。まず中途採用比率の概要と義務化された背景を紹介します。

概要

 中途採用比率の公表義務化により、企業は指定された方法で自社の中途採用比率を公表しなければなりません。ただし、すべての企業が中途採用比率を公表しなければならないわけではありません。2021年4月の施工時点では、常時雇用する労働者が301人以上いる企業が対象です。

 中途採用比率の公表義務化によって、対象の企業は求職者が容易に閲覧できるかたちで”直近3事業年度の各年度に採用した正規雇用労働者に占める中途採用比率”を公表することが必要となりました。したがって、企業のホームページや採用サイトなどで中途採用者数を確認することができます。

義務化された背景

 中途採用比率の公表が義務化された背景は、終身雇用が崩壊して雇用の流動化が進み、転職市場の規模拡大が進んだことです。中途採用比率を公表することで、転職者が得られる情報を増やすことが狙いです。

企業が中途採用比率を公表することによるメリットは?

 今回の中途採用比率の公表義務化は、企業にとってどんなメリットとデメリットがあるでしょうか? まずは2つのメリットを紹介します。

  • 人材の確保
  • 早期退職の防止

人材の確保

 転職者にとって、新卒採用の構成比率が高すぎる会社は少し応募に腰が引ける部分もあるでしょう。その点、中途採用の比率が一定以上ある企業は、中途求職者にとって応募しやすくなります。

 「求職者に対して受け入れ態勢がしっかりしている」「中途でもキャリアを築ける」といったイメージを与えられるからです。とくに定着率等も併せて確認できると、求職者の増加、人材の確保につながります。

早期退職の防止

 求職者にとって、中途採用率の高さも職場情報の一つです。中途採用率はあくまで一つの要素に過ぎませんが、事前に得られる情報が増え、入社前後でのギャップが少なくなるほど、ミスマッチの回避、早期退職の防止につながります。

中途採用比率を企業が公表するデメリットは?

 前述したメリットがある一方で、中途採用比率が低い企業は中途採用に不利になるデメリットも考えられます。中途採用者が少ないということは、中途採用者にとって「働きづらい」「受け入れ態勢が整っていない」「新卒偏重で中途社員にとっては居心地が悪い」といったイメージを与えてしまいかねません。

中途採用比率を公表義務化に関する対応の確認点

 中途採用比率の公表義務化に対応するには、以下3点をしっかりチェックして進めましょう。

 □ 公表の時期
 □ 公表の方法
 □ 公表の事後処理

公表の時期

 対象となる企業(2021年4月の施工時点では、常時雇用する労働者が301人以上いる企業)は毎事業年度、直近3事業年度の各年度における中途採用比率を公表しなければなりません。

 ここでいう”直近3事業年度”は、当該事業年度において正規雇用労働者の採用活動が終了し、中途採用比率の算出が可能となった最新の事業年度を含めた3事業年度を指します。正規雇用労働者とは、新規学卒等採用者“以外”の雇い入れを指します(新規学卒等採用者とは、学校や専修学校、職業能力開発促進施設などを卒業したいわゆる“新卒採用”のことです)。

 例えば、事業年度を4月1日~3月31日としている企業が採用活動を終了し、6月30日に中途採用比率を公表するとしましょう。この場合、2021年度に公表するべき“直近の3事業年度”は、2018年度、2019年度、2020年度の3事業年度になります。

 初回の公表は、法施行(2021年4月1日)後の最初の事業年度内、2度目以降は前回の公表からおおむね1年以内に、“可能な限り速やかに”公表を行なう必要があるという定めになっています。

公表の方法

 公表の方法は2つあります。

  • インターネット
  • その他の方法

 インターネットの場合、原則として自社のホームページで公表することが推奨されています。厚生労働省が運営している職場情報総合サイト「しょくばらぼ」への掲載で代替することも可能です。「しょくばらぼ」は、勤務実態などの働き方や採用状況に関する企業の職場情報を検索・比較することができるサイトです。

 自社のホームページ等以外の方法としては、事業所への掲示や書類の備え付け等による方法が挙げられています。”公表”であるため、公に発表できるような形であれば特に厳しく指定はされていません。

公表の事後処理

 例えば、公表した数値に誤りがあったとしましょう。誤りを見つけた場合、修正した日および修正した旨を明らかにして、正しい中途採用比率を速やかに公表することが求められています。ただし、後述しますが誤ったとしてもペナルティは科せられませんし、そもそも公表しなかったとしても、現時点では義務違反に対する罰則規定はとくに設けられていません。

中途採用比率の計算方法や平均は?

中途採用比率の計算方法や平均は?
 中途採用比率の計算式は以下のとおりです。

中途採用比率 = 中途採用者(正規雇用)÷ 全採用者(正規雇用)×100

 例えば、事業年度の新規採用者が85人だったとしましょう。正規雇用の中途採用者が54人だった場合、中途採用比率は以下のとおりです。

63.53% = 54人÷85人×100

 小数点以下・小数点以下第二位を四捨五入するかどうかは、特に決まりはありません。したがって、64%でも構いませんし63.5%としても問題ありません。

 次に、中途採用比率の平均を紹介します。

全体65.3%
従業員数5~299人76.7%
従業員数300~999人41.5%
従業員数1,000~4,999人40.4%
従業員数5,000人以上37.4%

 このように従業員数が少ない企業ほど中途採用比率が高く、従業員が増えるほど新卒比率が高くなることが分かります。

参考:厚生労働省「中途採用に係る現状等について」

中途採用比率の公開に関するよくある質問

 最後に、中途採用比率の公開に関するよくある質問への回答を紹介します。ここで回答するのは以下2つの質問です。

  • 常時雇用する労働者が300人以下の中小企業は公開する必要はない?
  • 公開しなかった場合の罰則は?

常時雇用する労働者が300人以下の中小企業は公開する必要はない?

 常時雇用する労働者が300人以下の中小企業は、公開する必要はありません。2021年4月の実施により中途採用比率が義務化されたのは、常時雇用する労働者が301人以上の企業です。

 しかし、300人以下の中小企業にも義務化の範囲が拡大される可能性は大いにあります。今のうちから雇用データを整理するなどの準備は進めて、自主的に中途採用比率を公開するなどの対応も一つの選択肢です。

公開しなかった場合の罰則は?

 2022年8月時点で、罰則規定は設けられていません。しかし、罰則がないからといって義務を守らなくて良いということではありません。少子高齢化によって労働人口が絶対的に減少する中で、中途採用の重要性は年々高まっています。

 株式会社リクルートの「新卒・中途採用横断レポート」によれば、“中途採用の割合を増やす予定”と考えている企業のほうが、“新卒採用の割合を増やす予定”という企業よりも多いのです。特に、情報通信業や運輸業など即戦力を求められる分野では、新卒採用よりも中途採用の割合を増やしたいと考える企業が非常に多いとわかっています。

参考:株式会社リクルート「新卒・中途採用横断レポート」

 今後、情報公開が当たり前になっていくと、中途採用比率を公表していない企業は候補者から悪い印象を持たれる恐れもあるでしょう。新卒の採用人数と定着率に関する情報公開などでも同様の事象は起こっています。

 必要人材の確保を目指すためにも、今のうちから各種情報をきちんと取得して公開できる体制を整えておくことが大切です。

まとめ

 2021年4月より、常時雇用する労働者が301人以上は、中途採用比率の公表が義務付けられました。罰則規定はありませんが、公表することによって人材を確保したり早期退職を防止したりできるメリットがあります。

 300人以下の企業は公表しなくても構いませんが、今のうちからデータをそろえておくのも大事です。雇用が流動化している現代、中途採用の促進は重要なテーマです。中途の応募者が安心して応募できるように各種情報の取得・公開などにきちんと対応していきましょう。

 数字を定期的に確認することで、自社の採用チャネルや新卒中途比率の見直し、また、場合によっては定着率の改善といった組織開発にも目を向けやすくなります。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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