プレイングマネージャーとは?求められる役割や能力、メリット・デメリットを解説

更新:2023/07/28

作成:2020/11/24

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

プレイングマネージャーとは?求められる役割や能力、メリット・デメリットを解説

組織にとって頭を悩ませる問題である「プレイングマネージャー」の増加。一部では、“現代はプレイングマネージャーの時代である”ともいわれます。組織内でプレイングマネージャーの配置や育成をする場合、ポジションの特徴に合った対応が必要です。

 

記事では、プレイングマネージャーの定義や役割、メリット・デメリットや育成方法等を詳しく解説していきます。

<目次>

プレイングマネージャーとは?

プレイングマネージャーとは、“現場のプレイヤー”としての役割と、“マネージャー(管理職)”としての役割を2つ併せ持つポジションです。

 

日本企業においては、とりわけバブル崩壊によって生じた以下のような問題によって、プレイングマネージャーというポジションが誕生、増加しているといわれます。

 

  • 経営状況の悪化
  • 管理職の人件費削減
  • 管理職のリストラによる人数減少

 

こうした背景から生まれたプレイングマネージャーには、企業が抱えるさまざまな問題を解消するために、現場作業や営業を行ないながら、部下の指導もする、といったマルチな役割が求められています。

 

 

プレイングマネージャーが設けられる組織の特徴

多くの組織では、管理職へのステップとして小規模なチームのリーダーとなるプレイングマネージャーのポジションが設定されています。また、マネージャーを置くほど個々の組織が大きくない企業にもプレイングマネージャーは置かれやすい傾向があります。

 

他にも、技術系の製造業や職人集団のような企業においては、一種の“職人”でもある社長自身が、職人としての実務を持ちながら、後進の育成やマネージャー業務を兼ねるケースも見受けられます。

プレイングマネージャーの役割

正面を向いている3名の人物

プレイングマネージャーの役割は、「管理職としての役割」と「プレイヤーとしての役割」の2つに分かれます。

 

 

管理職としての役割

管理職としての役割で代表的なのは、組織の目標達成とチームビルディングです。目標達成において、プレイングマネージャーは、自らがプレイヤーとして業績を作ること、また、プレイヤーとして顧客接点を持っている立場からメンバーへのアドバイスや育成ができます。

 

プレイングマネージャー自身が率先して、新たな施策や徹底して欲しい事項をアクションしたり業績を作ったりすることで、部下へ刺激を与え施策の徹底も行ないやすくなるでしょう。また、自身が現場と顧客を知っているため、現実に即した課題解決やリソースの交渉なども可能になります。

 

チームビルディングでは、チーム内の円滑なコミュニケーションや連携を促す役割が求められます。自身がプレイヤーとして動いているプレイングマネージャーの場合、各メンバーの仕事内容を把握しているからこそ、部下の意見も理解しやすい利点があります。

 

 

プレイヤーとしての役割

プレイングマネージャーは、チームの目標を達成するうえで、プレイヤーとしての役割も担います。そのため、自身の営業活動や生産性等でも高い成果が求められます。日々の自己研磨や挑戦も、プレイヤーとしての能力向上や挑戦する風土を形成するうえで、欠かせないものです。

プレイングマネージャーを配置するメリット・デメリット

オフィススーツを着て前を向いている3名の人物

プレイングマネージャーの配置や役割には、以下のようなメリットとデメリット・リスクがあります。

 

 

プレイングマネージャーを配置するメリット

プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての役割も担うからこそマネジメントしやすい、マネージャーに向けた人材育成プロセスになるなどのメリットがあります。

 

 

・次期マネージャー候補を育成できる

プレイングマネージャーは、プレイヤーとして実績を残してきたメンバーが、得意なプレイヤー業務を続けながら、管理職の仕事を少しずつ覚えられるポジションです。

 

右も左もわからない状態で一気にマネージャーになるよりも、プレイングマネージャーを経ることで、管理職の仕事への理解を深めながら昇格の準備ができます。

 

 

・メンバーからの信頼が得やすい

現場で結果を出した実績があり、いまも現役プレイヤーであるプレイングマネージャーは、すでに部下の憧れやお手本ともいえる存在です。チームメンバーは「現場をわかっている人」という目でプレイングマネージャーを見る傾向がありますし、プレイングマネージャー側も現場の苦労や意見に共感しやすいでしょう。

 

従って、マネジメントだけを行なう立場よりもコミュニケーションを図りやすい、チームビルディングをしやすい傾向があります。

 

 

・実務に関する細かな指示が出せる

自分の経験を通してより具体的な指示を出せるのも、プレイングマネージャーの特徴です。自分も現場にいるからこそ、現場の状況に即した指示を出すことができるでしょうし、QCD(品質・コスト・納期)管理等の細かな点や必要なリソース確保などにも目が向きやすいでしょう。

 

 

プレイングマネージャーを配置するデメリット・リスク

プレイングマネージャーは、マネージャーと比べると小規模なチームをマネジメントすることが多いとはいえ、「プレイヤー」と「マネージャー」を兼務することになります。

 

組織のマネジメントにおいて、“兼務させてはいけない”とはよくいわれる原則です。プレイヤーとマネージャーの掛け持ちは、やはり大きな負担がかかりがちな傾向があります。また、両方の役割をやり切ることができないと本人も大きなストレスを感じる場合があります。

 

とくに、「プレイヤーに専任していた時の目標をそのまま維持+マネージャーとしての役割」を与えるようなことをすると、大抵の場合うまくいきません。企業内でプレイングマネージャーのポジションを設ける場合には、マネージャーとしての仕事でどれぐらいの工数を割かれるかをしっかりと考慮したうえで、プレイヤーとしての目標は、プレイヤー専任の時よりも落とすことが必要です。

プレイングマネージャーに必要な能力と心構え

プレイングマネージャーは、マネージャーや管理職への昇進プロセスともいえるポジションです。従って、通常のマネージャーほど担当チームは大規模ではなく、2~3人ぐらいであることが多いでしょう。

 

また、プレイングマネージャーの上司として、純粋なマネージャーがいることも多いでしょう。従って、純粋な管理職と比べると、計画立案と問題解決に不可欠なロジカルシンキング、ビジョンを示すようなコンセプチュアルスキルなどの必要レベルは低くなります。

 

また、数人のチームで動くため、メンバーとも1対1のコミュニケーションが中心となり、管理職としてのヒューマンスキルもプレイヤーの延長上で学びやすいです。ただし、時間管理やプレイヤー業務とのバランス感覚は重要になりますし、新たに求められるマネージャーとしてのスキルも学び始める必要があります。

 

プレイングマネージャーのこうした特徴に目を向けると、プレイングマネージャーとして働くために身に付けたいスキルは、以下の3つになります。

 

 

コミュニケーション力

プレイングマネージャーが担当する数人のチームで団結力を高めるには、1対1のコミュニケーション力が肝になります。チームメンバーとの信頼関係を構築し、メンバーへの承認、フィードバックなどができると、メンバーのモチベーションが向上するでしょう。

 

 

マネジメントスキル

ここでの“マネジメントスキル”は、“目標達成に向けたプロセス管理”です。具体的には、目標をクリアするための計画立案、施策検討、PDCAを回し、問題解決をしていくスキルが求められます。

 

プレイヤーだった時は、自分1人だけのプロセス管理ですので、感覚だけで動かせる側面もありますが、メンバーをマネジメントするようになると、数値的なプロセス管理が必須です。ロジカルシンキングのスキルが、プレイングマネージャーとしてのマネジメントを支える土台となるでしょう。

 

 

部下への指導力

プレイングマネージャーになった場合、プレイヤー時代と同じように自分のスキルや成績を伸ばすのに専念するではなく、部下に目標達成させたり、部下を育成したりすることに意識を向けることが必要です。

 

部下のタイプに合わせたコミュニケーションスタイルの理解やフィードバックのスキル、また、経験が浅い人にはティーチング、また、経験があるメンバーにはコーチングといった形で、部下育成に関するコミュニケーションスキルを身に付けていくことが求められます。

プレイングマネージャーを育成する方法と注意点

プレイングマネージャーの育成時には、以下のポイントに注意をする必要があります。

 

 

プレイングマネージャーを育てるポイント

プレイングマネージャーの育成と評価においては、3つのポイントを押さえると良いでしょう。

 

 

・マネージャー研修を実施する

プレイングマネージャーに昇格する人は、プレイヤーとして標準以上の実績を残してきたメンバーでしょう。しかし、そんなメンバーも、マネジメントやリーダーシップ等のスキルや管理技術をそれまで学んでいないことが多いでしょう。従って、マネージャーへ昇格させる時と同じように、就任させたら、OFF-JT研修でマネージャーに求められるマインドセットやスキルを教える必要があります。

 

また、プレイングマネージャーは、二足の草鞋を履くことになるため、普通の管理職とは違う悩みを抱えがちです。そのため、不明点や問題を解消できるフォローアップ体制も用意できるといいでしょう。

 

 

・適切な人事評価制度を用意する

プレイングマネージャーは、「個人の目標」と「組織の目標」、2つの目標を持つことになります。プレイングマネージャーが個人として、営業成績等の目標達成をすることはもちろん大切です。

 

しかし、チーム目標達成に向けてプレイングマネージャーが部下の指導やサポートをすることを考えると、個人成績の評価割合を少なめにするという考え方もでてくることでしょう。一方で、管理職と同じように組織目標の達成にフォーカスを当てすぎると、大きな負荷がかかることになります。自社の組織、任せる役割に即したバランスを考える必要があります。

 

 

・ロールモデルとキャリアパスを用意する

プレイングマネージャーの役割におけるもっとも難しい問題は、プレイヤーとマネージャーの兼務ということです。マネージャーへの昇格プロセスとしては、非常に良いステップなのですが、プレイヤー時代とは違う負荷や悩みが発生します。

 

そこに対して、ロールモデルを用意したり、プレイングマネージャーの先にあるキャリアパスを提示したり、また前述したような相談できるメンターを用意するなどのケアが大切です。

 

 

プレイングマネージャー育成時の注意点

・上司によるプレイングマネージャーのサポート

プレイングマネージャーの育成で最悪な状況に陥りやすいのが、“チーム目標達成が危うい時に、全責任をプレイングマネージャーに押し付けてしまう”ケースです。「自分が業績を上げて何とかするしかない…」という方向性にいってしまうと、プレイヤーとしての意識が強くなりすぎ、マネージャーとしての活動品質が低下してしまいます。

 

一時的な緊急対応としては良いのですが、それが通常化したり、それでも業績が上がらなかったりする場合、「お前たちがちゃんとやらないから、俺がこんなに苦しくなってしまう…」といった部下との敵対的な心理も生じやすくなります。

 

悪循環に入ってしまうと、プレイングマネージャーが疲弊してチーム崩壊が起こる可能性が高まります。そのため、チーム目標達成が危うい時、プレイングマネージャー1人に責任を負わせるのではなく、上司がしっかりケアする必要があります。

 

・個人のタイプに合わせたバランス設定

プレイングマネージャーの「プレイヤー」と「マネージャー」としてのバランスは、ある程度、個人のタイプに合わせて考えていくことが望ましいでしょう。例えば、マネジメントがうまいタイプの人材なら、自らがトッププレイヤーになる必要がありません。このタイプの場合、チームメンバーの力を引き出しきるマネジメントを行なわせるほうが成果に繋がるでしょう。

 

一方で、トップセールスタイプの場合、マネジメントに意識を向けるよりも、逆に“背中で教える”方向に振り切らせたほうがうまくいく場合もあります。個人のタイプに応じて、プレイングマネージャーの上司がバランス感を調整することが理想です。

まとめ

プレイングマネージャーは、プレイヤーとしての役割と、管理職としての役割を併せ持つポジションです。プレイングマネージャーのポジションは、現場の仕事を熟知しているからこそ、部下からの信頼を得やすく、迅速な意思決定ができる魅力があります。

 

一方で、プレイヤーと管理職を兼務することで、大きな負荷がかかったり、バランス感の取り方に苦慮したりするといったプレイングマネージャー特有の問題もあります。従って、プレイヤー業務とマネジメントのバランスや人事評価の見直し、プレイヤーとしての目標設定に注意を払う必要があります。プレイングマネージャーを育成・活用するうえで、記事が参考になれば幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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