リーマンショック以降、新卒の求人倍率の上昇にともない、新卒採用のハードルも年々上がるようになってきました。
新卒の有効求人倍率は、コロナ禍によって一時的に減少しました。ですが、2022年卒から少子化の影響がついに大学進学率の上昇を上回り、大学卒業生数の減少がスタート します。したがって、コロナショック後に新卒求人倍率が上昇していくフェーズでは、これまで以上に新卒採用は難しくなります。
一方で、大学進学率が上昇してきたことで、大卒学生の「玉石混合」が加速しているともいえます。そのため、自社で活躍する人材を見抜くには、面接時に応募学生のポテンシャルを見極めることが大切になります。
記事では、新卒採用の評価項目や、新卒面接で学生のポテンシャルを見極めるコツと質問例、面接官の心得を詳しく解説していきます。
<目次>
新卒採用の評価項目について
一般的に、優秀な人材には以下の共通点があります。
- 達成意欲が高い
- ゴールから逆算して考える習慣がある
- 行動が早い、フットワークが軽い
- 自分の失敗を振り返る習慣や周囲から学ぶ習慣がある
- 論理性があり、事前準備をしっかり行なう
ただし、上記はあくまで一般的な素養です。優秀な人材の定義は、企業・仕事によって異なります。
例えば、一般的には「ストレス耐性が高いほうが良い」と思われがちです。一方で、先天的なストレス耐性が高い人は、他人の感情や心の動きに対する感受性が鈍いという側面もあり、ホスピタリティ系の仕事には向きづらい側面もあります。
このように、自社の組織風土、事業、職種、仕事内容、働き方などに応じて、「優秀」の定義は変わります。したがって、「優秀な人材を採用したい!」と思うなら自社における優秀の評価基準・項目を設定することがとても重要です。
また、新卒採用では「入社後の教育によって身に付けられるスキル」よりも、「青少年期までにある程度固まってくる」以下のような項目を重点的に評価することが求められます。
- 性格特性
- 動機
- 価値観
- 地頭の良さ
- 上記を踏まえた企業の価値観や文化、社風へのマッチング
自社における活躍要素を定義するには、性格検査(特性検査)を使うこともおススメです。最近では、候補者の特性を測るだけでなく、自社の活躍モデルや社風分析を行なって、候補者の特性とのマッチ度を測れるような「第5世代」と呼ばれる適性検査も増えています。
新卒面接で学生のポテンシャルを見極めるコツと6種類の質問例
新卒採用で優秀な人材を発掘するには、学生のポテンシャルを見極めるコツや手法を知って、面接を通じて自社で活躍するポテンシャルがあるかを確認することが大切になります。
学生のポテンシャルを見極めるコツ
論理性や事前準備などの行動習慣、地頭などの要素は、面接で比較的見抜きやすい項目になります。一方で、性格特性や思考パターン、価値観などは、表面的な質問だけでは見抜くことが難しい項目です。
したがって、学生のポテンシャルを見極めるには、エピソードをしっかりと深堀りして、「意思決定の仕方」「行動基準」「価値観」などを探っていくことが有効です。また、STAR面接などの構造面接の手法を取り入れることも有効ですし、適性検査と面接を組合せることもおススメします。
学生のポテンシャルを見極める質問例
優秀な人材を新卒採用するには、面接時に以下の質問の使い分けをすることも大切です。
<主体性を測る質問例>
- 「これまでの人生で、自分で意思決定したエピソードを教えてください」
自分に対するセルフリーダーシップがあるかどうかを確認する質問です。なぜそれを挙げたか、どのような風にとらえて向き合ったか、意思決定までに周囲とどのような風に関わったのか、何を基準に意思決定したのか……のように質問を掘り下げることで、本人の主体性を確認できます。
- 「学生時代に主体性を発揮したエピソードを教えてください」
知りたい特性に対して、端的に発揮したエピソードを質問することも有効です。用意されている学チカ(学生時代に力を入れたこと)をそのまま話すような学生は、発揮したエピソードがないことがわかります。質問を通じて、本人が「主体性をどうとらえているか?」も把握できます。
<動機を測る質問例>
- 「小学校から今まで、進学先の選択やクラブ活動、ゼミなどの力を入れたことを順番に教えてください」
一つひとつのエピソードを通じて、何のために頑張るか、何を基準に意思決定するかを知るための質問です。例えば、選択の傾向を見ていくと、以下のように、どのような動機を軸に動くことが多いか、また主体性をどう発揮することが多いかが見えてきます。
- 意思決定していない(周囲や親に流されてきた)
- 達成や成長意欲が強い(達成動機)
- 人間関係や友人の影響が強い(親和動機)
- 競争やブランドを重視する(権力動機)
- 安全で妥当な線を取る(安全動機)
- 「これまでの人生で最も困難だったことを教えてください」
苦しいときに、何のために踏ん張れるかがわかる質問です。同時に、壁を乗り越えた成功体験があるかを確認していきます。
- 「ストレスを感じるのはどのようなときですか?」
何が満たされない場合に、あるいは、どのような刺激にストレスを感じるかは、動機の把握にもつながります。
<コミュニケーション能力を測る質問例>
- 「簡単に自己紹介をお願いします」
端的かつわかりやすく説明できるかをチェックする質問です。おもに論理性やプレゼン力を確認できます。
- 「それはなぜですか?」「○○についてもっと詳しく教えてください」
質問者の意図を汲んだ回答ができるかどうか?を確認する質問です。理解力やロジカルコミュニケーション力を確認できます。
<自己理解・素直さを測る質問例>
- 「今の自分に足りないものは何だと思いますか?なぜそう思いますか?」
自分の欠点について、正直に認められているかどうかを確認する質問です。ただし、欠点や短所が面接用に用意されたものの場合もあります。そのため、「欠点を補うために何をしているか?」などの掘り下げる質問をすることで、回答への正直さや誠実さを確認しやすくなります。
- 「仕事するうえで強みと弱みを教えてください」
足りないものの質問と類似する内容です。強みの裏返しが弱みといった面接用に準備された答えが出てくる場合には要注意です。弱みに対して注意していること、結果に悪影響をおよぼさないようにどう対策しているかなどを深堀りしていきましょう。「成果」を出すことに対する具体的なエピソードが出てくるかを確認します。
<価値観を測る質問例>
- 「仕事で何を大切に働きたいですか?」
相手の価値観がわかる質問です。例えば、自分以外の他者に「役立つ」の回答が出てくれば、貢献意欲が高いと判断できます。ただし「喜んでもらう」の回答は、他者からの評価(報酬)に充実感を覚える外発的動機づけが高い可能性もあるため、注意が必要です。
- 「あなたにとって仕事とは何ですか?」
仕事に対する価値観を確認するものです。質問を通じて、仕事へのスタンスや意欲、取り組み方などを確認できます。組織への定着率やエンゲージメントを高めるには、カルチャーフィットという意味で、経営者や企業の価値観と近い回答が理想です
- 「将来の夢や目標を教えてください」
仕事や人生への価値観や、成長可能性、視野の広さ、志望動機との一貫性などを総合的に確認する質問です。求職者の夢や目標(なりたい姿)と企業理念、価値観が合えば、高いカルチャーフィットが可能になります。
- 「何か質問はありますか?」
相手の興味や関心事がわかる質問です。
<ストレス耐性を測る質問例>
- 「壁や失敗を乗り越えた体験を教えてください」
壁や失敗への対処経験などを質問することで、後天的なストレス耐性の強さを確認できます。また、ストレスを乗り越えた経験もわかる質問でもあります。
- 「これまでに人間関係で困ったことはありますか?」
人間にとって最大のストレスは、人間関係によるものです。したがって、まずは、その経験があるかどうかを確認します。人間関係トラブルへの対処の経験を掘り下げることで、求職者が他者とどのような距離感を築くタイプであるか、相手の気持ちを考えられるか、などを確認できます。
新卒採用における面接官の心得
優秀な人材を新卒採用するには、面接官にも以下の心得が必要です。
魅力を引き出したうえでジャッジするという意識を持つ
学生の見極めは重要ですし、採用基準を妥協してはいけません。しかし、社会人経験のない新卒の場合、面接で自分の能力をしっかり伝えることができない学生も多くいます。また、表面的な面接対策などによって自己アピールが浅くなったり、本来の魅力とは異なるものを話したりしている場合もあります。
したがって、新卒採用の面接では適切な質問や深堀り、場づくりによって学生の魅力や本質を引き出したうえでジャッジすることが大切です。学生の魅力を引き出すアプローチは、企業の志望度アップにもつながり、内定承諾率にも影響してくるでしょう。
学生からも評価されているという意識を持つ
不適切な言動・発言は、インターネットに書き込まれればすぐに広まります。とりわけ最近は、
- 新卒の就活で、企業の口コミサイトを見ている学生は過半数を占める
- 悪評はSNSなどで拡散され、一気に広がる
- 録音や録画、スクリーンショットなどで物的証拠も容易に取得される
といったことがあります。
したがって、学生を下に見る、ハラスメントに該当する、あるいは企業ブランドを傷つける言動・発言は絶対に控える必要があります。社内でも面接に対する意識の共有が必要です。
まとめ
新卒採用では、まず、自社における「優秀」の評価基準や項目設定をすることが大切です。そのうえで、入社後の教育では変わりづらい以下のような項目を重点的に評価することがおススメになります。
- 性格特性
- 動機
- 価値観
- 地頭
- 上記を踏まえた企業文化や社風へのマッチング
また、新卒採用の面接をするときには、面接官に2つの心得が大切です。
- 魅力を引き出したうえでジャッジする
- 学生からも評価されているという意識を持つ