近年では、Webサイトやスマートフォンアプリ上での採用コミュニケーションが一般化するなかで、古くから郵送されてきた内定通知書に関して「郵送でないといけないのか?メール添付でもいいのか?」といった疑問を抱く人事の方も増えているようです。
記事では、まず内定通知書の概要と一般的な送付方法を確認します。
そのうえで、内定通知書の文面サンプルと押さえるべき項目、内定通知書の送り方に関するよくある質問と答えを紹介しましょう。
<目次>
内定通知書とは?
内定通知書は、企業が内定(採用意思)を求職者に知らせる書類です。内定通知書と採用通知書は、基本的に同じ意味合いの書類です。
なお、内定通知書や採用通知書には、法的な発行義務がなく、正式なフォーマットもありません。
ただし、企業は採用する=雇用契約を締結するに先立って、労働条件通知書を発行することは法的に義務付けられています(労働基準法第15条)。
上記を受けて、求職者の内定が決まった場合、以下の流れで雇用契約を成立させることも一般的となっています。
- 企業:「内定通知書(採用通知書)」と「労働条件通知書」を出す
- 求職者:内容に承諾したら「内定承諾書」に署名捺印をして、企業に提出する
- 雇用契約(労働契約)が成立する
なお、上記の流れで内定承諾してもらった場合、雇用契約が成立すると考えられますが、大前提として優先されるのは労働者の「職業選択の自由」です。
したがって、雇用契約が成立した場合にも、民法627条に基づき、労働者が14日以上前に告知することで、理由の如何を問わず、労働者側から自由に労働契約を解約できることになっています。
したがって、仮に労働条件通知を行なったうえで内定承諾書を回収したとしても、企業が内定辞退を拒否したり、内定辞退に際して何らかの条件を付けたりすることは出来ません。
内定通知書の送付方法は郵送?メールでも良い?
内定通知書の送付方法にも、法的な決まりはありません。内定面談や雇用条件の通知面談で手渡しすることも多いですし、送付の場合は郵送もよく選択されます。
なお、優秀な人材は引く手あまたであるため、なかには、辞退を防ぐ目的で、正式な内定通知書を発送する前に電話で結果を連絡するケースもあります。
PDFのファイルをメールで送っても問題はありませんが、メール送信では、どうしても“軽くなってしまう(重みがなくなってしまう)”側面がありますし、求職者側に、PDFを印刷する手間などが生じる部分もあるでしょう。
上記のように決まったやり方はありませんが、内定通知書の送付方法は、内定承諾書の回収をどのように実施するかに合わせて検討するのがよいでしょう。
たとえば、内定承諾書を紙で回収するようであれば、郵送で返信用封筒と一緒に送るようにして、印刷や返送の手間を省いたほうが親切でしょう。
なお、2019年4月1日より労働条件通知書の電子化が解禁になったことで、労働条件の通知と雇用契約をオンラインで実施する企業も増加しています。
このように雇用契約もオンラインで実施するような場合には、内定通知書もオンラインで提示してしまったほうが効率的かもしれません。
郵送の場合、封筒の中身は内定通知書だけで良い?
内定通知書を郵送する場合、以下のものを封筒に入れて郵送することが一般的です。
- 添え状
- 内定承諾書(入社誓約書)
- 返信用封筒
求職者の手間を減らすためにも、返信用封筒には切手を貼り、社名・住所も企業側で書いておきましょう。
なお、採用活動はスピードが命です。求職者のところに早く通知を届けることを考えると、普通郵便よりも書留か簡易書留を選択することも一案になります。
書留と簡易書留の場合、土日や祝日の配達も行なえますし、郵便物の受け取りは対面になります。
なお、郵送するようであれば、改めて両親や家族などに共有してもらえるような会社案内や事業紹介などを入れておくことも一案です。
内定通知書で押さえるべき項目
内定通知書に必要な項目は、以下のとおりです。
- 発行日
- 宛名/差出人
- タイトル
- 挨拶
- 採用内定のお知らせ
- 内定承諾期限
- 内定通知書に関する連絡先
内定通知と一緒に労働条件通知書を発行するようであれば、労働条件通知書には労働基準法第15条で義務付けられた以下の項目を必須で記載しましょう。
- 契約期間に関すること
- 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
- 就業場所、従事する業務に関すること
- 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
- 賃金の決定方法、支払時期などに関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
- 昇給に関すること
出典:労働基準法の基礎知識 ポイント1 労働条件の明示(厚生労働省)
内定承諾書の文面サンプルと押さえるべき項目
内定承諾書の項目・フォーマットも自由ですが、一般的な内定承諾書には、以下の項目が盛り込まれていることが多いです。
- 作成年月日
- 宛先:企業名・代表者名
- タイトル:内定承諾書
- 内定通知受領した旨とその日付
- 内定承諾の旨
- 内定承諾書提出後は無断で入社を拒否しない旨
- 指示された書類は遅滞なく返送する旨
- 住居変更などがあった場合は連絡する旨
- 承諾書に記載された事由で内定取り消しになっても不服申立てをしないこと
- 本人の氏名・住所・捺印欄
- 保証人の氏名・住所・捺印欄と本人との関係
内定承諾書のサンプルは、以下のとおりになります。
内定承諾書
令和◯◯年◯月◯日
▲▲▲株式会社
代表取締役社長 ×××殿
この度、◯◯年◯月◯日に、貴社の採用内定通知を受領しました。私は、貴社からの採用内定を謹んで承諾するとともに、ご指定の入社日に入社することを誓約いたします。内定承諾書の提出後は、無断で入社を拒否しません。
住所や提出書類に変更が生じた場合には、遅延なくご報告いたします。なお、内定期間中に下記事項が生じた場合、採用内定を取り消されても不服申立てはいたしません。
記
・健康上の問題で、就業困難になったとき
・書類などに虚偽の事実が発覚したとき
・来春に卒業ができなくなったとき
・犯罪行為またはそれに類する非行を犯し、あるいは貴社の社員として不適格ないし品格を害する事由を生ぜしめたとき
・その他、勤務に支障をきたす事象が認められたとき
以上
(本人)住所:
氏名: (印)
(保証人)住所:
氏名: (印)
(本人との関係 )
内定通知書に関するQ&A
最後に、内定通知書の作成や送り方で、よくある質問とその答えを紹介しましょう。
内定通知は郵送のみでなくメールでも送るべき?
基本的に、郵送であれば郵送だけでよいでしょう。なお、郵送の際は本人が受け取ったのかを確認できる書留・簡易書留を使うこともおすすめです。
内定通知書はいつまでに送るべき?
採用活動はスピードが命であるため、早ければ早いほど良いと考えられます。
具体的には、遅くとも最終面接から数日以内には合否を決めて、1週間~10日以内には内定通知書を準備・送付したほうがよいでしょう。
内定が決まっているものの、事務手続きなどの都合で内定通知書の発送が遅れる場合は、その旨を電話で伝えることが良心的です。
内定通知書の法的効力とは?
内定通知書は、企業として雇用契約を結ぶ意思があることを示すものです。
雇用条件は事前に示しているものがあれば、その内容に準拠すると考えられますが、正式には労働条件通知書で提示されるものとなります。
求人広告や面接過程で示した労働条件と、あとから労働条件通知書で提示する内容に明らかに相違があれば、トラブルになることも考えられるでしょう。
なお、労働条件通知書は、労働基準法で定められた書類です。
したがって、たとえば、労働条件通知書で提示して内定者が承諾した労働条件と就業実態に相違があれば明らかな問題が生じます。
また、相違があった場合、労働基準法の第15条第2項に基づき、入社した人材は即時に労働契約を解除可能となりますので注意してください。
出典:明示された労働条件と就業実態の相違について①(厚生労働省)
まとめ
内定通知書は、企業が内定が決まったこと、つまり雇用契約を結ぶ意思があることを求職者に知らせる書類です。
労働条件通知書と違って企業に発行義務はないため、フォーマットや書き方は自由になります。
内定通知書の発送方法は、郵送・メールのどちらでも問題はありません。内定承諾書の回収方法、雇用契約の締結方法(電子or紙)を踏まえて決めるとよいでしょう。