社内公募制度について、実際の企業導入事例を紹介します。
ジェイック
HRドクターを運営するジェイックは幅広く事業を展開し、東京本社をはじめとする各エリアの拠点、また、グループ会社、国外の子会社も複数存在します。そうした中で、従業員が転勤や異動希望を出せる制度として運用しているのが、「マイキャリア」という一種の社内公募制度です。
マイキャリア制度では、年に一度のアンケートを実施し、結果は上司を通さずに人事と人事委員会(経営層)でのみ共有されます。そして、異動希望者やキャリア面談希望者に対して面談が実施され、面談結果などを踏まえて異動を決定します。
アンケートの質問項目は、本音を聞き出せるようにすること、また社員にネガティブな感情な感情を持たせないことに注意し、何度もブラッシュアップされています。たとえば、異動したい時期や定性的なキャリアイメージも質問することで、すぐの異動希望ではないものも拾えるようになっています。
年に1回は自分のキャリアを真剣に考えて欲しいというメッセージを込めて運用されており、マイキャリアの回答に前後して、社内で相手を指定してキャリア面談を実施できる、また、社外のキャリアコンサルタントに相談することも可能になっています。
富士通
富士通はジョブ型雇用導入とともに人事制度を刷新し、さまざまなキャリア自律の施策を成功させました。個人のパーパスを明確にする「Prupose Carving」や評価制度「Connect」と並び、社内ポスティング(社内公募)制度の活用もその一つです。
富士通では現在、社内ポスティングに常時1,000件以上の募集が出ており、常にキャリアの選択肢が用意されている状態になっています。キャリアの選択肢が見えるようにしておくことで、社員一人ひとりが自分のキャリアについて考える機運が高まり、キャリア自律を促すようになっています。
さらに、キャリア自律を促すだけではなく、マネジメントスキルの向上にも社内ポスティング制度が役立っています。ポスティング制度によってチームのメンバーがキャリアを選び取れる機会が得られると、上司側が何もしなければ優秀なメンバーがチームから抜けていくことになりかねません。
富士通の社内公募制度では、応募した求人の選考に通過して異動が決定すれば、上司側に拒否権はありません。社内を疑似的な転職市場にしたことで、管理職の意識が「必要人材を引き留め、ポスティングで優秀な人材を獲得できるようにしないければいけない」、そのためにビジョンを語ったり、魅力的な職場にしていったりする必要があると明確に変わっていく変化が見られたそうです。
ソニーグループ
ソニーグループは、創業当初から「自分のキャリアは自分で築く」というメッセージを掲げ、1960年代に社内公募制度を導入するなど、キャリア自律を当たり前の文化としてきた企業です。
ソニーグループで、従業員のキャリア自律を促していく上で特に意識して取り組まれているのが、自律=選択と捉え、従業員が適切な選択ができるように企業として選択肢を示したり、上司の1on1を通して有益な情報を提供したり相談に乗ったりすることです。
また、社外や他者の情報発信に対して自社内の発信が不足してしまうと、従業員は自社内で自律的なキャリアを築くチャンスや制度があることに気づかないまま転職してしまうことにもなりかねません。
社内公募制度を始めとして各種人事制度を、組織経営につなげるためには、人事が積極的に情報を発信し、従業員に選択肢を知ってもらうことが必要だと言います。
リクルート
株式会社リクルートには、全事業の社内求人がオンライン上にアップされ、従業員が自由に応募できるキャリアウェブ制度があります。
募集ポジションの数は、2024年3月末の時点で329と多く、選択肢が多いことで自分に合ったものを選べるようになっています。
リクルートの社内公募制度でも、元部署の上司に拒否権はなく、従業員の新しいチャレンジを後押しする仕組みとなっています。
積水ハウス
積水ハウスは、社内公募制度として、チャレンジ精神旺盛な従業員にさらなるチャレンジの機会を提供するキャリアアップ・チャレンジ制度、意欲ある人材に活躍の場を提供するとともに適材適所を実現させる人材公募制度の2つがあります。
積水ハウスでは、従業員は職種、職務内容、将来期待される職務に基づいて「営業技術職群」「生産技能職群」「一般事務職群」「地域勤務社員」というグループ分けがあります。キャリアアップ・チャレンジ制度は、「一般事務職群」「生産技能職群」「地域勤務社員」を対象とし、「営業技術職群」への職群転換を支援する制度です。制度を利用し、毎年10~20人前後がキャリアアップを実現させています。
また、人材公募制度は、特定の事業やプロジェクトで必要となる人材を社内で公募する制度です。公募案件は社内ホームページや社内文章で告知され、応募者は人事部へ応募します。また、応募~異動決定までの全てのプロセスにおいて応募情報は秘匿され、従業員が自らの意思で応募しやすいようになっています。