
ここからは、営業研修のプログラムに盛り込むべき内容や教えるべきスキルを具体的にお伝えします。
ベネフィットの考え方
営業人材の育成においては、“ベネフィット”という概念を理解してもらうことが大切です。ベネフィットは、日本語では、“顧客にとっての価値”といわれます。営業として、自社の商品・サービスを扱っていると、ついスペックや価格、他社との差別化など、自社商品・サービスの機能や特徴に目が向きがちです。
しかし、商品・サービスの機能や特徴は、じつは売り手目線の思考であり、顧客にとっては多くの場合、興味ある内容ではありません。
マネジメントの父とも呼ばれるドラッカー博士は、「顧客が欲しいのは、ドリルではなく、穴である」といっています。買い手である顧客は、べつに“ドリル”という器具が欲しいのではなく、“ドリル”によって空けることのできる“穴”、例えば、「台所の壁に新しい戸棚を取り付けて、調味料をまとめておけたら、もっと料理がしやすくなる」という願望を実現するための“穴”が欲しいということです。
従って、営業活動を行なううえでは、売り手目線で自社商品・サービスの機能や特徴を把握するだけではなく、ベネフィットの考え方に基づいて、“その機能や特徴によって顧客にどんなメリットや効果がもたらされるのか”という思考を持つことが大切です。
例えば、自動車を売るのであれば、「燃費が他社の同車種と比べてこれだけ良い」という機能や特徴だけでなく、「毎日車で通勤されている方なら、ガソリン代が月に○万円も減るので、その分、ご家族での外食を増やせます」というベネフィットを考えることが大切なわけです。
ベネフィットという概念を理解することが、「顧客が何を実現したい、何を解決するために商品・サービスの購入を考えているのか?」をヒアリングするための前提となります。
自社のセールスステップ
営業という仕事は、いくつかのステップに分解することができます。
例えばB to Bの営業であれば、一般的には「問い合わせ獲得→初回商談の実施→現状課題のヒアリング→商品・サービスの概要説明→案件化→詳細のすり合わせや本提案→クロージング→受注→納品やサービス提供」といった流れになるでしょう。
営業研修においては、自社のセールスステップを把握し、それぞれのステップにおけるゴール、つまり次のステップに移行するための条件や必要となる行動やスキルを理解させることが必要です。
OJTを行なう際にも、「いまどのステップにいるのか?」「このステップで何を達成しないといけないのか?」といった全体像と各ステップのゴールを理解していることで、ノウハウの吸収や振り返りも容易になります。
購買心理の理解
営業として安定して成果を上げるためには、営業の原理・原則を知っておくことが重要です。原理・原則を具体化した1つが前述した“セールスステップ”の考え方であり、もう1つが“購買心理の理解”です。
購買心理の理解、つまり買い手はどのように意思決定をするのかを知るうえでは代表的な考え方が「4つの不」という概念です。4つの不とは、買い手が商品やサービスの購入を決めるまでに生じる心の壁「不信・不要・不適・不急」示す言葉です。
不信: この会社、この相手を信じていいのか?
不要: この課題解決/願望は、リソースを割いて実現する必要があるのか?
不適: この課題/願望にとって、自分/自社にとって、この商品・サービスが適切なのか?
不急: いま、このタイミングで意思決定する必要があるのか?
セールスステップを前に進めるためには、購買心理を理解して、「不」を解除していくことが必要です。「4つの不」は営業の一般的な原理・原則であり、「不」を解除するためのノウハウは、セールスステップを前に進めるための実践的な技術でもあります。
傾聴やコーチングスキルを使ったヒアリングスキル
顧客の立場に立って考えると想像しやすいですが、営業パーソンが一方的に話し続けたり、都合を押し付けたりする営業方法では、なかなか商品やサービスを購入しようという気持ちにはなりません。
一方、相手が自分の課題や願望をじっくり丁寧に聞いてくれて、問題の解決方法や理想に近づくための方法として商品やサービスを提案してくれたなら、「商品やサービスを検討してみようかな」と思えるはずです。
営業活動は、商品・サービスの特徴をプレゼンする場ではなく、顧客の課題や願望を把握し、それを実現するための手段として自社の商品・サービスを提案する場です。従って、何より大切なのは、顧客の課題や願望をヒアリングするスキルです。
顧客の話に丁寧に耳を傾け、表情や声のトーンにまで注意を払い、顧客が本当にいいたいことや伝えたいことを引き出す「傾聴力」の習得を目指しましょう。また、聴くだけではなく、課題解決や願望が実現した先にあるもの、なぜ実現したいか、手を打つ必要性などを顧客から引き出す質問力も重要です。
顧客自身に購買する必要を確認してもらったうえで、「理想と現状とのギャップを埋めるために何をしなければいけないのか」を顧客の立場で一緒に考えていくことができれば、商談成立の可能性はぐっと高まるでしょう。
クロージングスキル
営業研修においては、クロージングスキルの向上を目指すプログラムも必要不可欠です。クロージング力が弱ければ、他のスキルがどんなに高くても営業成果は出ません。
営業の受注とは、“顧客の意思決定”です。クロージングといっても、無理やり相手に意思決定を迫るわけではなく、意思決定に向けて、相手が意思決定できる条件を確認していく、先方が引っかかっている内容を確認する、といったプロセスを丁寧に進めていくことが大切です。
ときには、商談をだらだらと長引かせるのではなく、相手の可否を決める背中を押してあげることも必要です。
商品・サービスに関する知識
もちろん、自社と自社の商品・サービスに関する知識は、営業にとって必要不可欠です。単に機能や特徴をインプットするだけではなく、ここまで紹介したベネフィット、セールスステップ、購買心理を踏まえて、
- 自社や商品・サービス、そして、自分自身を信頼してもらうための紹介方法
- 商品・サービスのベネフィット、“顧客にとっての価値”の理解
- ベネフィットが実現する根拠となる機能や特徴
- どんな課題が解決したり、何が実現したりしたかという顧客事例
- 目の前の顧客にとって共感できる顧客事例
といった視点で知識をインプットすることが重要です。
プレゼンテーションスキルの強化
「プレゼンテーションスキル」は、顧客に対して商品やサービスの魅力を効果的に伝えるために必要なスキルです。プレゼンテーションスキルは自己紹介や会社紹介などを効果的にすることにもつながり、顧客からの信頼も得やすくなるでしょう。
具体的な研修内容としては、下記の4つが代表例です。
- ストーリーテリング
一貫したストーリーを作ることで、聞き手の理解を深める。
- ビジュアルエフェクト
スライドや資料に工夫を凝らし、視覚的に訴える力を高める。
- リスニングスキル
プレゼンテーションする相手のニーズを事前に確認、またプレゼンテーション中の反応を見ながら、それに対する解決策を提示、説明する。
- 質疑応答
顧客からの質問に対して、適切な回答をする練習
プレゼンテーションは、理論だけでなく実践が重要です。フィードバックを受けながら何度も練習を重ね、スキルを磨くことでスキルが向上します。