人事評価制度では、時代の変化により新しい考え方も登場します。ここでは古典的なものも服まで、押さえておきたいキーワードをいくつか紹介します。
目標管理制度(MBO)
目標管理制度(MBO)とは、経営学者ドラッカーによって提唱されたマネジメントの手法です。MBOは、Management by Objectives & Self Management の省略で、直訳すると“目標と自己統制によるマネジメント”といった意味合いです。
MBOの基本的な考え方は、組織全体の目標から紐づけて、上司と部下のコミュニケーションを通じて目標を設定する。上司-部下で合意できる目標を設定することで、上司は部下に権限委譲したり自主性に任せたりできるようになる、上司は部下の主体性を引き出したうえで目標の進捗管理や達成のサポートに臨むというものです。
MBOは組織におけるマネジメントの基本形であり、同時に「目標設定して、目標の達成率で評価する」という形で、人事評価制度に連携させている企業が多くなります。
同一労働同一賃金
同一労働同一賃金は、その名の通り、同じ労働に対しては同じ賃金を支払うべきという考え方です。同一労働かどうかは、業務内容や責任の程度、職種変更や転勤の有無など見て総合的に判断されます。
日本では、1990年代~2000年代に非正規労働者が増加し、近年では非正規労働者の割合は4割に達するとされています。こうした非正規雇用者の待遇改善施策として、政府による働き方改革のひとつとして導入されています。
今後の人事評価制度を設計するうえでは、同一労働同一賃金は守らなければならない原則のひとつです。正規雇用と非正規雇用の間で同一労働に対する賃金格差が生じないことはもちろん、正規雇用の従業員間でも年功評価や(保有)能力評価の考え方は、場合によっては同一労働同一賃金に反する可能性もありますので注意が必要です。
ジョブ型雇用
ジョブ型雇用とは、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって職務内容や待遇を明確にしたうえで、職務に適したスキルや経験をもつ人材を採用する、その職務に限定して雇用契約を結ぶという雇用の考え方です。
ジョブ型雇用が注目されている背景には、AIエンジニアやデジタル人材などをはじめとして、高い専門性を持った人材の獲得競争が激化していることがあります。
これまでの日本企業では、採用時点では職種を限定せず、入社後の研修や面談を経て担当職務を決定する、また、初期配属後も職種を超えてジョブローテーションを実施しながら総合職(ジェネラリスト)を育成するというメンバーシップ型雇用が主流でした。
近年では、新卒採用でも総合職と研究職、エンジニア職など、大まかな配属先は確定させた職種別採用をしている企業は増えていますし、中途採用は配属先を明確して実施するケースが大半です。ただ、これらも雇用契約自体はメンバーシップ型雇用となっているケースが大半です。
ジョブ型雇用は、企業側にとっては、雇用まで含めて配属先を明示することで高い意欲を持った人材を集めやすい、また、獲得競争が激しい職種などに関して報酬テーブルを通常のものとは別個で設定しやすいなど、専門性を持った優秀層を採用しやすいメリットがあります。
ジョブ型雇用は、人事評価制度としては職務評価に近い考え方であり、前述したとおり、今後はジョブ型雇用×(成果主義+職務評価)といった形での人事評価制度は今後増えていく可能性が高いかもしれません。
SMARTの原則
人事評価において成果主義を導入するうえで欠かせないのが事前の目標設定です。成果主義は多くの場合、異部門・異職種の人たちを一つの軸で評価するために、「目標に対する達成率」で評価することが多くなります。
当然、事前にきちんとした目標設定をすることが成果主義を動かすうえでの大前提となるわけです。そこで役立つ目標設定の基本が「SMARTの原則」と呼ばれるものです。
SMARTの原則とは、以下に示す5つの要素の頭文字を取ったものであり、効果的な目標設定のためにはこの5つの要素を目標に盛り込むことが重要です。
① Specific(具体的)
目標は何に取り組むのかが具体的である必要があります。何に取り組むのか、何を達成するのかを具体的に記載することが大前提です。
② Measurable(計測できる)
目標の達成率を評価するうえでは、達成したか、達成率は如何ほどかを客観的に評価できる必要があります。客観的に評価するために一番わかりやすいのは数値化することです。
たとえば、「努力する」といった漠然とした目標は、達成基準が曖昧であり、後から客観的に評価できません。「新規顧客を○件開拓する」といった形で具体的かつ定量的に目標設定することが大切です。
成果を数字化できない、定量化できない職務もありますが、その場合も、達成状況や達成率を客観的に評価できる形にすることが大切です。
③ Achievable(達成できる)
非現実的な目標設定をしてしまい達成できない状態が続いてしまうと、モチベーションの低下につながってしまいます。そうならないためにも、努力すれば達成可能な現実的レベルのものとする必要があります。
また、人事評価制度に連携させる場合には、Achievableの水準をきちんと定めることが大切です。同じ難易度の目標でなければ、達成率を軸にして評価することはできません。目標に対して難易度を設定する、組織全体として難易度の基準を統一するといったことが必要になります。
④ Relevant(関連性)
目標は上位目標の達成に関連する必要があります。例えば、全事業を目標を達成すれば、組織全体の目標を達成できるのか、各個人が目標を達成すればチームの目標を達成できるのか、といった視点です。
なお、組織における目標設定では、組織の事業計画・目標達成という視点でのRelevantはきちんと達成されることが多いですが、個人の目標 – 個人の上位目標(キャリアプラン、実現したい成長、得たい報酬…など)の関連付けがきちんとされていないケースが多くあります。
“組織としては合理的でも、個人にとってモチベーションが高まらない”という状態です。これは管理職がマネジメントを通じて担保していくべき部分ですが、人事評価制度の運用を考えるうえでも考慮できるとよいテーマです。
⑤ Time-bound(期限)
Time-boundはシンプルに目標設定時には達成期日を決めることが大切であるという話です。期限が無ければ、どんどん先延ばしにしてしまい、結局やらないということにもなりかねません。また、期限が定めることで、期日から逆算して、いつまでにどれだけの成果を出していればいいのかが明確になり、行動計画が立てやすくなります。
ただし、組織での目標設定においては、はじめから四半期、半期、通期などの評価期間が決まっていますので、目標設定時に期限がないということはほぼ起こりません。