独自の「自律・分散型経営」を支える人材戦略
グローバル展開と分社化がもたらした「組織の課題」
竹長はじめに貴社の事業概要と、川口様が統括されている部門の機能についてお聞かせいただけますか。
川口当社グループは塗料のリーディングカンパニーとして、自動車用、船舶用、建築用、工業用など非常に幅広い分野で事業を展開しています。現在は海外売上高比率が約9割に達しており、積極的なM&Aを通じてグローバルでの事業成長を加速させています。
私が所属する日本ペイントコーポレートソリューションズは、持株会社化のタイミングでスタッフ機能を切り出す形で設立された会社です。人事、財務経理、総務、法務といった間接機能を一手に担っています。
当社グループは「MSV(株主価値最大化)」を掲げ、各グループ会社の自主性を尊重する「自律・分散型経営」を行っています。現地市場や顧客を最も把握している各事業会社の経営陣へ権限を委譲する、いわゆる連邦経営を敷いており、本社はグループ全体の規律を維持しながら、各地域・事業の成長を後押ししています。その中で私は、日本国内における全事業会社の人事領域を統括しています。
![]()
竹長国内の全事業会社の人事領域を横断して見られているのですね。貴社が「自律・分散型経営」を実践する上で、これまでどのような人事戦略をとられてきたのでしょうか。
川口実は、数年前まで大きなジレンマを抱えていました。事業を強化するために分社化を進めてきたのですが、結果として組織が「縦割り」になり、各事業会社間の距離が開いてしまったのです。
社員が成長するためには、多様な事業フィールドで異なる経験を積むことが理想です。しかし組織が縦割りになると、キャリアが自社の中だけで閉じてしまいがちです。毎年行う「キャリア申告」で社員が「違う事業に挑戦したい」「別の会社を経験したい」と希望を出しても、会社をまたぐ異動はなかなか実現せず、このままでは、社員の意欲を尊重しきれず、成長機会を求める優秀な人材が流出しかねないという危機感がありました。
竹長自社に様々なフィールドがあるのに、サイロ化した組織の壁によって挑戦しにくい環境だったのですね。
川口その通りです。また事業を伸ばすために人事制度や運用の違いは事業会社ごとにあってもよいのですが、事業に紐づかないところまで各社で異なる部分が出てきてしまうと、異動に際して不具合が生じるなど、社員の間で不公平感が生まれていました。
そこで、ベクトルを一つに合わせるために、2025年4月に各社の人事機能を一元化する「One HR」へ舵を切りました。
構想からわずか1年で実現した「One HR」
竹長貴社の規模で人事機能を統合するのは大変な取り組みだったと思います。「One HR」はいつ頃から着手されたのでしょうか。
![]()
川口具体的に動き出したのは2024年4月です。共同社長に提案を持っていき、ゴールデンウィーク明けから本格的な検討を開始しました。そこから2025年4月の発足に向け、約1年で組織体制を変更しました。
スピーディーに実施した分、各社からさまざまな意見が出たのは事実です。しかし人事制度というものは、どれだけ整った制度を作っても、連動する組織体制や運用メカニズムがなければ機能しません。One HR体制では、各事業会社の個別性を反映するために各社ごとに「HRビジネスパートナー(HRBP)」を配置し、各社それぞれの意向を汲み取りつつ、採用や研修、労務などの機能人事を担うチームと連携できる組織体制を構築しました。






