いい会社づくりのヒントサムネ_v49

13坪の小さな焼肉屋から国内外10ブランド100店舗以上を持つ飲食事業へ急成長し、さらに食品・海外展開・美容・医療、人材など、幅広い事業へと展開するFTG Company。Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキングにおいて、中規模部門でベストカンパニーに6年連続で選出されています。飲食業から多角的に事業へと急成長する中、どのように文化を作り、社員が共通の目標へと挑戦する組織づくりをしているか、執行役員 山領 薫様に伺いました。

 

会社情報

会社名:株式会社FTG Company
設立:2010年3月19日
従業員:正社員数301名、アルバイト935名(2026年06月現在)

飲食店の経営、食料品の販売、フランチャイズチェーンシステムによる飲食店等の経営に関する事業を主事業に、飲食業に関するコンサルタント業をはじめ、内外装工事請負、不動産業のほか、人材、美容、医療、開発、投資など、幅広い分野で事業展開を進めている。

 

Q.創業の背景と、事業内容について教えてください

 

山領様:飲食店の経営、食料品の販売など飲食事業を主軸にしています。創業について振り返ると、創業者である現会長の李純哲と副会長の李純峯は、幼少期に貧しい家庭で育ち、大変な苦労をしたそうです。そうした中で2人の母親は懸命に2人を育ててくれた、開業のきっかけは、そんなお母さんを焼肉屋で一発当てて、楽にさせてあげたいという思いからでした。

 

FTG Companyを起業後、店舗は徐々に増えていき、親孝行を実現できるようになりましたが、2人の仕事に対する情熱の炎は消えることはありませんでした。経済的な余裕を持つことができた中で、会長と副会長には、母親だけでなく自分たちの周りの人や社員も喜ばせたいという気持ちが沸き起こったそうです。

 

そこで、店舗で働くメンバーのやりたいことをヒアリングしました。ニューヨークに行ってみたいというメンバーがいたら現地に出店し、焼肉以外の業態に挑戦したいという希望があればステーキ屋を展開しました。2人が持つ「周囲の人に還元したい」という想いが社員の定着率を高める一助にもなったと思います。

 

ただ飲食事業だけでは中長期スパンで離職を防ぎきれない側面もあり、コングロマリット企業のように人材や不動産、美容、医学などの他業種にも進出し、社員の活躍の場を広げていきました。特に医学事業は、重い病気に罹ってしまった社員を助けたいということでスタートさせた背景もあります。

 

かくいう私も、そんな会長・副会長の熱い想いに惹かれてジョインした一人です。私は会長が創業前の修行時代の店舗でアルバイトをしていたことがきっかけで知り合ったのですが、当時から勢いと根性が人よりずば抜けており、ピンチの時の底力が人一倍で、非常に刺激に感じたことを覚えています。

 

そのため会長が起業するときに「来ないか」と誘われ、すぐに決断しました。その頃の私はすでに大手企業で働いており、家族は飲食業に転職することを心配そうにしていましたが、私自身は面白いことが始まりそうだとワクワクしていました。

 

Q.会長・副会長の熱い想いが社員へ伝わり、6年連続「働きがいのある会社ランキング」選出が実現したのでしょうか?

山領様:そうですね、車で例えれば会長にはアクセルとブレーキがあるのですが、副会長はアクセルだけのような気がします(笑)。仰る通り、「働きがいのある会社ランキング」に選出される組織になったのは、絶妙なアンバランスで引っ張ってくれる2人の魅力があったからだと思います。

 

2人のカリスマ性以外に「働きがい」に影響している要因は、当社ならではのカルチャーだと思います。カルチャー醸成に対するトップの覚悟は、社員全員が並々ならぬものを感じています。

 

一部の経営者のように、中途半端にヒエラルキーを作り上げたり、フラットな組織にしたりすることもなく、当社は振り切ったティール組織を目指して体制づくりをしています。

 

そのため、社員には挑戦を常に促しており、会社として多少の損失は覚悟の上で、挑戦する社員をバックアップするようにしています。

 

営利組織ですので利益の最大化は大切ですが、一人ひとりが経営的目線で考えられるような新たな組織の形の実現を当社は目指しています。社員が挑戦したいといったときに、「NO」と言われない文化も働きがいにつながっていると思います。

 

Q.カルチャーを守るための採用基準や、組織づくりの考え方をお聞かせください

山領様:2026年度の新入社員は27名でした。採用面接では他社様と同様に、当社の社風・カルチャーに合うかどうかが基準となります。そのうえで、私が最終面接で必ず聞く質問が2つあります。

 

1つは、両親などの身近な人への感謝の気持ちを持っているかどうかを確認するために、「もし、あと1時間後に自分が死ぬと分かった瞬間、3人だけ会わせると言われたら、誰を選ぶか」といった質問です。

 

その質問に対して、応募者が「有名人・芸能人に会いたい」とかではなく、「お父さんやお母さんなど、身近に自分を育ててくれた人たちに対して最後にお礼を言いたい」という言葉が出れば、当社の社風である「親孝行」「身近な人を大事にする」といったカルチャーにマッチしていると判断しています。

 

もう1つは、「一番近いときで涙を流したのはいつですか?」という質問です。実は、当社に入社した人の回答を振り返ると、彼らは皆「昨日泣きました」のようなものばかりでした。この質問では、豊かな感受性を持ち合わせているかを見るようにしています。

 

最終面接で聞く2つの質問の背景には、私たちが「自分から与えられる人になる」という考え方を大切にしていることがあります。与えられる人になるためには、感謝や感受性は不可欠です。

 

また多様性が叫ばれている昨今、身近な人の価値観を受け入れていくことが、当社の目指すティール組織の根本になっています。我々は、仲間の価値観を受けいれられるティール組織から、社員の自立が生まれてくると考えています。

 

インターネットを使って世界中にネットワークが広がり、交流する幅も増える中で、お互いの価値観をいかに自然に受け入れられるかが大事です。社員がお互いの価値観を認め合う中で新たな価値を生み出すことを目指していますが、その考え方にマッチしているのがティール組織です。

 

新たな価値を世に提供し、それが巡り巡って自分たちに戻ってくるような、それが社会貢献の一つになればと。自分たちがそこで利益を得るだけではやっている意味がなく、周囲を幸せにしながら、組織を大きくしていけたらと思います。

 

Q.バリューである『Make you wow ! ~世界に驚きと感動を~』はどのような経緯で生まれたのですか?

 

山領様:実は当社は過去に倒産の危機に直目したことがあります。創業者が経営の素人だったため、キャッシュフローを考えずにイケイケで出店し、借り入れが大きくなった結果、支払いが困難になってしまいました。

 

当時は出店を止めて何とか危機回避しました。ただ、それを踏まえて「きちんと利益を出していかないと大きいことができない」ということで、一時期は理念よりも利益に重きを置くことがありました。

 

加えて当時は「食を通じて世界を幸せにする」のような理念はあったものの、理念の表現が何度も変わった経緯もあり、社内に「利益を上げないと理念実現できないぞ」といった風潮が広まっていました。

 

利益優先の傾向が強くなると、仕事は面白くなくなり、情熱がなくなります。その兆候を感じたとき、改めて理念を作り直し、大切にしていこうとなりました。

 

新たな理念策定に際して、「我々が与えられるのはやはり『感動』であり、周囲に感動を与えられるものだけやろう」と話し合い、決まったのが『Make you wow ! ~世界に驚きと感動を~』です。

 

振り返れば、金策に走った時期や、経営が難航した時期、当社を救ってくれたのは「FTG Companyのスタッフが好き」と言ってくださるファンのお客様たちでした。「お客様に払っていただいたお金で、感動する体験をお返ししよう」という気持ちを込め、誕生したのが今のバリューです。

 

Q.バリューを浸透させるために人事施策や制度などはどう運用してきたのでしょうか?

山領様:恐れずに「実験」をやってきたことが大事だと感じています。人事という領域には、完成形がありません。完成形のないところで、会社からは「人事制度を作れ」とか、「5~10年間耐えうる組織体制の構築をやってほしい」と言われるわけです。

 

常に変化する世の中を見据えて、教科書のない中で「実験」し、自社なりの制度を作り上げていかなければならないのが人事部門の難しいところです。加えて、人事部門の評価も売上目標と同じ様にシンプルに定量的に測ることができればいいのですが、実際にはそうはいきません。

 

だからこそ人事領域にいる人間は、社員がワクワクする組織づくりのための実験を何個やれるか、リスクの程度を見つつどれだけチャレンジし続けていけるかが肝要だと思っています。

 

我々は数多くの実験を繰り返し、その中で良い結果が見られれば、そこに注力してきました。結果として、15年という年月をかけて、ようやくFTG Companyらしい組織文化を築き上げることができました。

 

ただ、当社の人事制度や福利厚生を他社がそのまま取り入れても、上手くいかないでしょう。逆に他社の良い施策をそのまま当社に当てはめても、上手くいかないと思います。

 

人事制度や福利厚生には、会社毎の作られた背景とか歴史・文化があります。必然的に、人事制度は自社オリジナルのものへと作り上げられていくものです。「失敗しても実験だから」という考えで、いろんなことにチャレンジできる環境と思考が人事には大事だと考えています。

 

例えば当社では、「給与自己申告制」という制度に着手しています。給与自己申告制度というのは、自分の給与を自分で決めて会社から先行投資してもらうということです。

 

プロ野球の契約更改のようなもので、今までの実績と相場観を含めて、「自分にはこれだけの価値がある。今期これだけやるから、これだけの給与がほしい」と申告します。

 

給与自己申告制度の背景には、「自分の価値を自分で見積もってほしい、見積れるようになってほしい」という想いがあります。経営者は自分の給与を自分で決めます。その経営者と同じ思考や感覚を社員に根付かせたいという意図です。

 

もちろん通常の給与制度も機能していますが、通常の給与レンジだけでは様々な才能がつぶれてしまうこともあります。そうした才能の目を摘まず、社員と会社を成長させていくための制度でもあります。

 

Q.独自の研修プログラム「BDP:Brain Development Program」についてもお聞かせください

 

山領様:組織には、志が高い人の夢を潰すドリームキラーが存在します。例えば、経営者が素晴らしいビジョンを語っても、人事担当者が効果的な研修を行っても、近くにドリームキラーがいる環境では、人は伸びません。BDPは、人財の夢を潰すドリームキラーを無くし、同時にドリームキラーの圧力に負けない人財「ドリームサポーター」を育てる研修プログラムです。

 

BDPは、脳科学を駆使して創造力・行動力・思考力を発揮できるようにし、マインドセット、モチベーション管理、マネジメントなどの現代社会で求められる能力の習得時間を短縮させることを目的にしています。

 

こちらは飲食業向けというわけではなく、業界を越えたプログラムです。人間の生き方にも触れるものであり、人間の脳のつくりや、人はどのような時にモチベーションが高まりコンフォートゾーンから踏み出そうとするのかなど、脳の原理原則を知ることができます。そして自分の脳を如何にマネジメントしていくかも分かりやすく解説します。

 

人間が意識的にできることはわずか10%と言われています。単に「意識を変えろ」では社員の成長は望めません。BDPは、90%を占める無意識(潜在意識)を変える「脳のアップデート」を行い、劇的に成長を促進させるプログラムです。

 

Q.今後の組織づくりの構想をお話いただけるでしょうか?

山領様:例えば国には法律があり、その枠組みの中で自由があり、人々が生活して経済活動を行っていますよね。会社にも同じようにルールがあり、その範疇で社員が自由に活動し、助け合っていける組織にしたいと考えています。

 

自由であり、かつ助け合いがある組織をつくるためには、舵取りとなるルールや制度が大切になります。ルールや制度がうまく機能すれば、社員は自由に行動しつつ、基礎となる部分は全員が共有している状態になります。

 

共通認識が土台にあれば、多少のズレができても一致に向かって助け合ったり、協力したりできます。そうしてバランスを取りながら、ワクワクする世界とベースにある共通認識、双方を上手に共有した組織を目指していきたいと思います。

 

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