事業や業務を牽引できる「自律・自走型人材」の育成に課題感を抱いている企業は多いでしょう。

 

「医療という希望を創る。」というミッションのもと、創業から驚異的なスピードで成長を続ける株式会社シーユーシー(以下、CUC)は、急成長の源泉となる、自律・自走力のある人材の輩出に注力しています。取り組みが功を奏し、先日発表された「キャリアオーナーシップ経営AWARD 2026」でも、大企業の部・優秀賞を受賞されました。

 

本記事では、CUCが実践する組織開発・人材戦略や、若手を「中核経営職」へと引き上げる取り組みについて、CUC執行役員 人材支援本部 本部長 人事部 部長の鎌苅亮介氏に、『HRドクター』を運営するジェイックグループの株式会社Kakedas代表取締役社長 竹長が、お話を伺いました(以下敬称略)。

 

創業から10年を経て刷新された「約束」と人材戦略

持続可能な医療インフラへの転換を目指し医療・介護事業を展開

竹長 貴社は2014年の創業から急成長を遂げられ、2023年6月には東証グロース市場へ上場されました。まずは、現在展開されている事業の全体像を教えていただけますか。

 

鎌苅 私たちCUCは、国内外において多角的な事業を展開しています。主な国内事業は、国内の医療法人に対する運営・経営支援事業、グループ会社のシーユーシー・ホスピスを軸として運営するホスピス事業、同じくグループ会社のソフィアメディが運営する居宅訪問看護事業、札幌を中心に高齢者用の住まい・施設を運営するノアコンツェルが行うメディカルケアレジデンス事業です。当社の社員はビジネス職として国内医療法人の運営・経営支援事業に携わり、その他の事業はグループ会社に所属する医療専門職が担っています。

 

最近では海外展開も積極的に行っており、米国で足病・下肢静脈疾患を診るクリニックの運営企業を買収しました。現在はCUCの役員陣が現地に赴き、経営統合を進めているほか、インドネシアやベトナムでも事業を拡大しています。

 

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竹長 国内外でさまざまな事業を展開されていらっしゃいますが、事業の背景にはどのような社会課題があるのでしょうか。

 

鎌苅 強い危機感を抱いているのが、2040年に医療人材が約96万人不足し、約49万人の看取りの場が不足するといわれる日本の「2040年問題」と、それに起因する医療崩壊の危機です。従来の医療現場における自己犠牲的な働き方や、個人の経験に依存した属人的な労働モデルはすでに限界を迎えています。よって、持続可能な医療インフラへの構造転換が急務です。

 

加えて、現代の日本医療は「患者を中心に据え、多様な機能が地域で連携して支え合う」という方針をとっています。私たちはこの体制づくりに必要な機能を全方位的に保有し、地域医療の持続可能性に貢献することを目指しています。

 

一人ひとりが働きがいを感じ、挑戦できる環境を構築

竹長 社会課題の解決や持続可能な地域医療を目指し、10年強で事業と組織を拡大されてきたのですね。事業を推進するための組織開発や人材戦略の方針についてお聞かせいただけますか。

 

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鎌苅 私たちはいわゆるベンチャー企業ですので、人材採用の時点で「自走できる人材かどうか」を確認する意識は持っていました。とはいえ、組織が拡大するにつれ、さまざまな人材が増え、組織も複雑化します。

 

そこで、2023年8月、経営理念である「CUC Partners Philosophy」の実現を目指す前提として、経営陣から従業員への約束「CUC Partners Promise」を策定しました。「一人ひとりが働きがいを感じ、夢や理想に挑戦できる環境を実現する」ことを経営の責任として宣言しました。

 

それまでも様々な人事制度や育成の仕組みは存在していたのですが、会社が急拡大し、グループとしての仲間が増えていく中で、「私たちが目指すのはどんな会社なのか」「従業員に対して経営は何をコミットするのか」を改めて言語化する必要性を感じたからです。

 

CUC_s1-03CUC_s1-03©CUC inc.

 

強いメッセージを軸に、これまで点在していた育成、キャリア支援、働き方支援、理念浸透といった様々な施策の紐付けを行い、現在の人材戦略の形へとバージョンアップさせました。

 

現在は、現場主導で組織を動かし、担当組織の“事実上のCEO”として自律・自走できる変革リーダー「中核経営職」の育成に注力しています。

 

竹長 「個人の挑戦」を真ん中に据えて各施策に取り組まれているのですね。私たちが提供しているキャリア面談サービス「Kakedas」の「人生の主人公を増やす。」というビジョンと共鳴する部分があると感じました。

 

鎌苅 そうですね。私は「個人と組織の関係は対等であるべきだ」と考えています。会社のビジョンと個人の「これを成し遂げたい」「こういうキャリアを歩みたい」という思いが重なり、つながり合っている状態が理想です。そうしたカルチャーをつくるため、組織開発への投資を続けています。

 

医療×ビジネスの結合を推進する取り組み

キャリアオーナーシップ・キャリア自律の位置づけ

竹長 貴社は先日「キャリアオーナーシップ経営AWARD 2026」の大企業の部で優秀賞を受賞されました。CUCの人材育成・組織開発において、キャリアオーナーシップやキャリア自律はどのように位置づけられているのでしょうか。

 

鎌苅 当社では、キャリアオーナーシップ、つまり個人の自律的成長を、医療の質と量を両立する仕組みを構築し、持続可能な社会インフラを築くための駆動力として位置づけています。 育成のゴールは、先述の中核経営職を輩出することです。

 

なぜ中核経営職の育成を重視するのか。それは、私たちの事業の特性が関係しています。例えば当社の社員は、提携先の医療法人に1人で赴き、現場に深く入り込んで経営改善を推進するミッションを担っています。また、ソフィアメディの訪問看護師であれば、ご利用者様の自宅に1人で訪問し、その場で適切な判断とケアを提供しなければなりません。

 

もしスタッフが「誰かに指示されないと動けない」「自分でリスクを考えて決断できない」場合、過酷な医療現場や変化の激しい経営の最前線で質の高い仕事を提供することは難しいでしょう。だから「自分で決められる人材」になることは重要ですし、自分自身のキャリアや人生に対してもオーナーシップを持ってほしいと考えています。

 

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竹長 自律性を求められる業務環境だからこそ、自身のキャリアにおける自律も求めているですね。

 

鎌苅 そうです。近年は新卒採用や若い世代の採用も増えていますが、彼らはまだ中長期的なキャリアプランがよく見えているわけではありません。だからこそ、新卒や若手の段階から「会社でどんな変革リーダーになりたいのか」「どんなキャリア・人生にしていきたいのか」を問い続け、それを根付かせるための教育体制や環境の整備に注力しています。

 

ビジネス職と医療・介護専門職が肩を並べ、共に学ぶ

竹長 貴社のグループ会社には、医療現場で働く専門職の方々も多く在籍されています。会社の垣根を越え、CUCグループ全体にキャリアオーナーシップをどのように浸透させているのでしょうか。

 

鎌苅 私たちが対外的に高い評価をいただいている点の一つが、医療・介護とビジネスの結合、すなわち「異分子結合」です。具体的には、当社の社員とグループ会社の医療・介護の専門職が同じ研修やワークショップの場に集まり、共通の言語を獲得しながら共に学ぶ仕組みを構築しています。

 

例えば、次世代リーダー研修「HOPE」や、経営トップも参加する組織開発の場「未来会議」には、当社の社員だけでなく、提携医療法人の院長や看護部長、ホスピス型住宅や訪問看護ステーションのリーダーなども一堂に会します。そこで「私たちは何のために集まっているのか」「良い組織、良い現場とは何か」を徹底的にディスカッションします。

 

例えば、会議の場で「関係性を構築する」「成果を最大化する」といった言葉が出たとき、ビジネス職が考える意味と、ドクターや看護師が想像する現場の風景には、当初ズレがありました。しかし、同じセッションを重ねることで「私たちが果たすべき役割は、目の前の患者様に最高の医療を提供することであり、それを支える仲間を育てることだ」という共通の定義が生まれるようになりました。

 

医療職の方々が専門性を活かして医療の質を向上させ、当社の社員が現場に入り込んで並走し、ビジネス課題の改善をサポートするなかで、「お互いの強みをリスペクトし合うワンチームの構造」を創り出すことが「異分子結合」の真の目的だと考えています。

 

すでに、現場から「こうすれば患者さんのためになるのではないか」「拠点を良くするためにどう動くべきか」などの自律的な会話が発生するようになり、現場の自律・自走が促進されていると感じています。

 

若手を「中核経営職」へ引き上げる育成施策

中核経営職を輩出する「HOPE」

竹長 中核経営職の育成についても詳しく伺いたいです。実際にどのような施策を推進しているのでしょうか。

 

鎌苅 中核経営職の育成のために実施している施策のひとつが、次世代リーダー研修「HOPE」です。対象となるのは、部長職の手前にいるリーダー層の約30名です。1年をかけて、1泊2日の合宿研修を5回(10日間)実施します。私が入社当時に立ち上げ、すでに6〜7期ほど継続して実施しています。

 

カリキュラムの内容は多岐にわたりますが、私たちが最も重視しているのは「企業理念の深い理解と体現」や「共通言語の獲得」です。経営トップが自ら創業の歴史やビジョンに込めた想いを語るセッションもあれば、事業部長や経営企画のトップが講師となり、財務諸表の読み方や戦略立案のフレームワークを教えるセッションもあります。共通の思考の枠組みを作るため、共通の書籍を何度も徹底的に読み込むワークも取り入れています。

 

竹長 非常に濃密なプログラムなのですね。参加されたリーダー層からはどのような反響があったのでしょうか。

 

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鎌苅 まずHOPEに選抜された時点で「会社から期待されていると感じた」「選んでもらって本当に嬉しい」という声が私の元にまで届きます。また、まだ選抜対象ではない若手メンバーからも「いつかHOPEに参加できるように、今の現場で成果を出してアピールします」と言ってもらえることもあります。一種の登竜門的な場になっていることはたしかですね。

 

社内公募制度で「社長」が誕生

竹長 「HOPE」の役割は非常に大きいですね。加えて貴社では、社内公募制度もよく活用されていると伺っています。内容を教えていただけますか。

 

鎌苅 グループ全体を対象とした社内公募制度の「Dream」が十分に機能しています。これは単なる部署異動の手上げ制度ではなく、グループ会社の社長ポジションも含めた、インパクトの大きな公募制度です。

 

先日、医療材料の調達・コンサルティングを行うグループ会社の社長ポストを公募したところ、入社5〜6年目の若手から、50代を超えるベテランまで10数名の応募がありました。選考の結果、40代の社員が合格し、新社長として就任しています。

 

手を挙げて意志を示せば“打席”が回ってくることを証明した、まさに「Dream」と言える事例です。

 

竹長 「手挙げ制の公募制度が形骸化している」という話をよく耳にしますが、貴社の公募制度が機能している要因は何だと思われますか。

 

鎌苅 当社で活発に手が挙がるのは、日頃から「挑戦する人を応援する」というカルチャーが浸透しているからではないでしょうか。加えて、先述のような実例が生まれていることも要因だと感じています。

 

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人事による「キャリア面談」の価値

鎌苅 このほか、若手社員の不安に寄り添うため、人事が主体となってキャリア面談を実施しています。入社から半年が経ったタイミング、そして1年が経ったタイミングなどで一人ひとりとじっくり対話します。「やりたい仕事にしっかりコミットできているか」「思い描くキャリアと現状のギャップはないか」を確認し、もしカルチャーや配属においてミスマッチや軌道修正が必要な兆候があれば、人事が間に入ってスピーディーに対策を講じています。

 

竹長 すばらしいですね。社内に「何でも本音で話せる場」があると、一人ひとりの安心感につながると感じます。

 

鎌苅 私は「本音で話せないような関係性の会社だったら、組織として危険だ」という認識を持っています。建前だけの面談には意味がありません。従業員が「この会社は自分の人生やキャリアの意思をちゃんと聞いてくれる」と信頼してくれるからこそ、Dreamのようなチャンスにも臆せず手が挙がるのだと思います。

 

ほかにも、中核経営職に必要な能力をコンピテンシーに分解し、科学的経営を実装する「実行力向上プログラム」や、行動指針(Way)の体現度を測る360度フィードバックとワークショップ「WayLetter」など、多種多様な取り組みを実施しています。

 

CUCが描く今後の展望

「現場主導」で自律的な組織に変化し続ける

竹長 鎌苅さま自身のキャリアについてもお聞かせください。鎌苅さまは新卒で人材業界の企業に入社し、最前線でご活躍された後、40代で貴社に転職されています。なぜ畑違いとも思える医療ベンチャーにジョインされたのでしょうか。

 

鎌苅 私は人材業界に20年近く身を置いていました。転職エージェントというビジネスが広く認知されていない頃から取り組み始め、「自分たちの手で新しい人材流通インフラを作る」という志を持って働いていたのですが、40代に入ったとき「このまま居心地の良い環境にいてよいのだろうか」という強烈な危機感を覚えました。そのときに創業間もないCUCと出会いました。

 

当時CUCの経営陣から「日本には『最期は住み慣れた自宅で、家族と過ごしたい』と願う人がたくさんいるが、多くの人が病院のベッドで最期を迎えている。私たちは、本人が望む“最期のあり方”を選択できる世の中を創りたい」というビジョンを聞きました。

 

私の祖父は晩年、家族のサポートと在宅ケアによって最期まで自宅で過ごせたのですが、これは当たり前に選択できることではなかった。その現実を知り、CUCの事業に強く惹かれて転職を決意しました。

 

竹長 ご自身の実体験と、会社のミッションが重なったからこそ、今の鎌苅さんのご活躍があるのですね。最後に、貴社が描いている今後の展望をお聞かせください。

 

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鎌苅 私たちが掲げる「CUC Partners Promise」や「個人の挑戦を支援する環境」は、一度つくったら終わりというものではありません。組織が拡大し、時代が変わるにつれて、常にブラッシュアップし、磨き続けるものだと考えています。

 

今後もグループの規模は拡大していきますが、薄めさせたくないのが「現場主導」のマインドです。一人ひとりが「自分が主役だ」という思いを持ち、その集合体である組織が自律的に進化していく状態を目指したいです。

 

そしてこれからも、可能性に溢れた若い世代に魅力的な“打席”を提供し、世界中で通用する中核経営職を輩出し続け、日本そして世界の医療の未来を変えていきたいです。

 

竹長 個人の挑戦が組織の原動力となり、結果として大きな社会課題を解決していく様子が思い描けました。本日は大変貴重なお話をありがとうございました!

プロフィール

鎌苅 亮介氏
株式会社シーユーシー 執行役員 人材支援本部 本部長 人事部 部長
鎌苅 亮介氏
2018年入社。シーユーシーやグループ会社の人事部部長等を務めたのち、現在はシーユーシーの執行役員・人材⽀援本部本部長として、国内の人事・労務部門を統括している。

竹長 剛氏
株式会社Kakedas 代表取締役社長
竹長 剛氏
大学卒業後、新卒でエプソン販売株式会社に入社し、盛岡営業所に配属。その後、広告制作事業を手掛けるインターリンク株式会社に入社し、後に同社の代表取締役に就任。社員数を約4倍に増やすとともに、営業利益を向上させるなど、同社の成長に大きく貢献した。2016年に、同社をオンデマンドプリンティングサービスやデジタルソリューションビジネス等を手掛けるキンコーズ・ジャパン株式会社に売却。その後、同社の取締役に就任し、新規事業および商業施設営業部の責任者を兼任した。退任後は、エンジェル投資家としての活動をはじめ、ベンチャー企業の社外取締役や役員などを歴任。2023年8月より株式会社Kakedasに参画し、2025年8月に代表取締役に就任。

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