同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき制度の基礎と対応ポイントを確認

更新:2023/01/20

作成:2022/12/31

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき制度の基礎と対応ポイントを確認

政府が推し進める働き方改革のなかで、3本の柱となっている政策の一つが、同一労働同一賃金であり、非正規社員と正規社員の格差是正です。

同一労働同一賃金では、同じ業務に従事する人材に対して、雇用形態の違いなどによる不合理な待遇差を解消していくことが求められています。

記事では、同一労働同一賃金という考え方の定義、関連する法律の改正による変更点、違反事例とペナルティなどを確認します。

後半では、同一労働同一賃金への対策と対応ポイントも説明しますので、ぜひ対応の参考にしてください。

<目次>

同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金のイメージ
まず、同一労働同一賃金の考え方と定義、この概念が生まれた背景を確認しましょう。

同一労働同一賃金とは?考え方と定義

同一労働同一賃金とは、同一企業・団体における正規雇用労働者(いわゆる正社員)、無期雇用フルタイム労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指す考え方で、「同じ業務内容であれば賃金も同じにするべき」という考え方です。

出典:同一労働同一賃金特集ページ~雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保について~

厚生労働省では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差の解消を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得感ある処遇を受けられ、多様な働き方を選択できる社会を目指しています。

なお、厚生労働省では、同一労働同一賃金のガイドラインも定めています。

同一労働同一賃金が整備された背景

同一労働同一賃金という考え方が必要となった背景・理由は、厚生労働省の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告参考資料」で詳しく説明されています。

同一労働同一賃金が整備された背景を端的にいえば、日本国内において非正規労働者が増えたなか、正規雇用者と非正規雇用労働者の間に大きなギャップが生じていたということです。

まず、日本における非正規雇用労働者の割合は、1985年~2005年の間で大きく増加しました。

2005年以降も、2015年頃までは全年齢層においてほぼ一貫して緩やかな増加傾向にありました。

また、派遣社員・契約社員の場合、「正社員の仕事がないから非正規雇用に就いた」とするいわゆる不本意非正規の割合が多い傾向もあります。

こうした非正規社員の増加、さらに不本意非正規社員の方も多くなっている中で、フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準を諸外国と比べてみると、日本の賃金水準は以下のとおりです。

  • ヨーロッパ諸国:7~8割
  • 日本:6割弱

フルタイム労働者とパートタイム労働者の賃金格差は、ヨーロッパ諸国と比べて差がかなり大きい状況であり、なおかつ、直近5年間でも傾向は変わっていません。

日本国内に目を向けても、フルタイム労働者とパートタイム労働者や、正規雇用と非正規雇用には、不合理と考えられる待遇差がたくさん存在しています。

たとえば、以下のようなものです。

  • 「フルタイム労働者と比べて、パートタイム労働者の賞与は著しく低い」
  • 「正社員は年齢とともに賃金上昇するが、それ以外の労働者はほぼ横ばい」
  • 「正社員の約7割は、勤続年数の経過で賃金カーブが原則として上昇し続ける一方で、パート・有期社員の約6割はほぼ横ばいで推移する」 など

こうした待遇格差の問題があることに加えて、近年の日本では、下記のような社会課題も注目されています。

  • 少子化
  • 相対的貧困率の高さ
  • ひとり親家庭の貧困
  • 所得格差による経済成長の損失 など

最近の日本では、非正規雇用の労働者が増えるなかで、不合理な待遇差が上記のような社会問題をより大きなものとしている側面があります。

少子高齢化が進み、より多くの人が生き生きと働ける状況をつくることが求められるなかで、上記のような国レベルでの諸問題を解消していくために、同一労働同一賃金の導入によって職場における不合理な待遇差を解消することが意図されているわけです。

出典:同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告参考資料

同一労働同一賃金について知っておくべき制度の基礎

天秤
企業が同一労働同一賃金の対策を講じるためには、この概念に関係する制度を理解しておく必要があります。

この章では、同一労働同一賃金に関係する法律の基礎知識と概要を確認します。

同一労働同一賃金の適用はいつから?

同一労働同一賃金に関係する法律は、以下の2つです。

  • パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月1日より全面施行)
  • 労働者派遣法(2020年4月1日より施行)

同一労働同一賃金の制度は、各法律が改正された上記の時期から適用されることになります。

なお、パートタイム・有期雇用労働法は2021年4月1日に全面施行されたことで、中小企業にも適用されるようになっていますので、注意しましょう。

出典:同一労働同一賃金特集ページ~雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保について~

法改正前後の変更点

パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法を、それぞれの改正のポイントを確認します。

パートタイム・有期雇用労働法

パートタイム・有期雇用労働法とは、正社員とパートタイム労働者、有期雇用労働者との不合理な待遇の格差を禁止するなど、パート・アルバイト・契約社員として働く人の環境を良くするための法律です。

従来の日本では、背景のところで紹介したように、非正規雇用労働者が増える一方で、不合理な待遇差が生じている状況でした。

こうしたなかで、同一労働同一賃金を目指すうえで不可欠となるポイントが定められたパートタイム・有期雇用労働法が2020年4月1日に施行となり、2021年4月1日からは、中小企業にも適用される全面施行となっています。

パートタイム・有期雇用労働法では、下記のような内容が規定されています。

1.不合理な待遇差の禁止
同じ企業内において、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の以下のようなあらゆる待遇に関し、不合理な待遇差を設けることが禁止されました

  • 基本給
  • 賞与(ボーナス)
  • 各種手当(役職手当、食事手当 など)
  • 福利厚生(給食施設、休憩室、更衣室、慶弔休暇 など)
  • 教育訓練などのあらゆる待遇

2.待遇に関する説明義務の強化
パートタイム労働者・有期雇用労働者は、正社員との待遇差の内容や理由を、事業主に説明を求められるようになりました。

そのため、事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者から求めがあった場合には、待遇差の内容・理由などを説明する必要があります。

この際、事業主は、説明を求めた労働者に対して、解雇や減給など不利益な取扱いをしてはなりません。

3.不合理な待遇差等に関する労使間トラブルの解決に向けた、行政による紛争解決援助制度
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行なえるようになりました。

労働者と事業主の間で不合理な待遇差などに関するトラブルが生じた場合、当事者の一方または双方の申出があれば、簡易・迅速にトラブルを解決する手段として、制度を活用できます。

出典:雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(厚生労働省)
出典:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために

なお、2020年4月1日からは、パートタイム・有期雇用労働法の対象者に「有期雇用労働者」も含まれるようになりました。

法律内に出てくる「通常の労働者」「パートタイム労働者」の定義を知りたい際は、以下の資料を確認してください。

出典:パートタイム・有期雇用労働法のポイント(厚生労働省)

労働者派遣法

2020年の改正労働者派遣法では、派遣労働者の同一労働同一賃金を実現するために、派遣先に雇用される通常の労働者(無期雇用フルタイム労働者)と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消することなどを目指しています。

なお、改正労働者派遣法では、派遣労働者の待遇に関し、派遣元事業主に以下のいずれかを確保することを2020年4月より義務化しています。

  • 【派遣先均等・均衡方式】派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇
  • 【労使協定方式】一定の要件を満たす労使協定による待遇

派遣労働者の待遇改善までの流れは、方式によって異なります。ただ、概要として大切になるのは、以下3つの整備と強化です。

  • 待遇を決定する際の規定の整備
  • 説明義務の強化
  • 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

出典:派遣労働者の≪同一労働同一賃金≫の概要(平成30年労働者派遣法改正)

違反した場合のペナルティ

パートタイム・有期雇用労働法と労働契約法第20条は、2020年4月1日から統合されました。

その結果、法律に違反した待遇の相違は無効となり、民事訴訟での損害賠償が認められることになります。

また、厚生労働大臣は雇用管理の改善などを図るために必要と認めた場合、事業主への報告・助言・指導・勧告が可能となります。

出典:パートタイム・労働法の概要

同一労働同一賃金の違反事例

以下に該当した場合、同一労働同一賃金の制度に違反している可能性があります。

  • 【通勤手当】正社員には通勤手当を払うが、アルバイトや契約社員には払わない
  • 【福利厚生】正社員は社員食堂を利用できるが、正社員以外は利用できない
  • 【賃金】正社員には業績に応じた報酬を与えているが、短時間労働者には与えない
  • 【食事手当】正社員には食事手当を月10,000円支給しているが、同じ勤務量でも契約社員や派遣社員には月2,000円しか支給しない など

なお、同一労働同一賃金の具体例は、以下のガイドラインに詳しく書かれています。自社の対策を講じるときの参考にしましょう。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)

同一労働同一賃金への対策と対応ポイント

厚生労働省では、これから同一労働同一賃金への対策を講じる企業向けに「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」を公開しています。

この章では、同一労働同一賃金への対策の主な流れと、各ステップのポイントをわかりやすく解説しましょう。

出典:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書(厚生労働省 都道府県労働局)

労働者の雇用形態と業務内容を整理・確認する

同一労働同一賃金への対策を講じるときには、大前提として、自社や自部門で働く労働者に関して、雇用形態と仕事内容を以下のように整理しておく必要があります。

  • Aさん(正社員):チームリーダー+営業事務
  • Bさん(契約社員):営業事務
  • Cさん(派遣社員):営業事務
  • Dさん(午前中だけのアルバイト):営業事務の補助

待遇状況を確認する

次に、各労働者の待遇状況を確認しましょう。具体的には、それぞれの賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生などを確認していきます。

  • Aさん(正社員):月給20万円、食事手当あり
  • Bさん(契約社員):月給19万円、食事手当あり
  • Cさん(派遣社員):月給17万円、食事手当あり
  • Dさん(午前中だけのアルバイト):時給1,100円、食事手当なし

待遇差がある場合、理由を確認する

上記の例では、まず、Aさん・Bさん・Cさんの月給が異なる理由を考えます。

Aさんはチームリーダーですから、月給が高い理由が「リーダー手当込みだから」であればOKです。

一方で、契約社員のBさん・派遣社員Cさんを比べたときに、Cさんの月給が安い理由が「派遣社員だから」という雇用形態に関係する内容であれば、同一労働同一賃金の原則から見て、不合理な待遇差ということになります。

なお、上記のメンバーのなかで、Dさんだけは食事手当がついていません。

ですが、自社の食事手当が「勤務中のランチ代」である場合、午前中の勤務が終われば帰宅するDさんには、食事手当の支給は不要となるでしょう。

このように「合理的な理由」があるかが重要です。

待遇差がある場合、合理的な理由を整備する

たとえば、契約社員Bさんと派遣社員Cさんの主な仕事内容や勤務日数が同じであるにも関わらず、不合理な待遇差が生じている場合、以下のような理由から「不合理ではない」と説明できるようにする必要があります。

  • Bさんは、Aさんの不在時にリーダー代理の仕事をやっている
  • Bさんの月給には、他事業所にヘルプに行くときの出張費も含まれている など

違法性が疑われる状況からの早期脱却を目指す

同一労働同一賃金が守られていない場合、厚生労働大臣が認めた場合、報告徴収・助言・指導・勧告などの行政指導の対象となります。

また、労働者から損害賠償や待遇の無効を求めた訴訟を起こされるリスクもあるでしょう。

したがって、合理的な理由がなく、違法性が疑われる場合、早期の脱却を目指すことが大切になります。

また、自社で「合理的である」と判断した場合も、どのような理由で合理的と判断したかを文書にまとめておいたほうがよいでしょう。

改善計画を立てて取り組む

改善の必要がある場合は、「何を、いつまでに、どのように……」などの計画を立てて取り組んでいきましょう。

なお、改善の際には、現場で働く労働者の意見に耳を傾けることも大切です。

たとえば、上述したBさんとCさんが、同じ「営業事務」という仕事内容だとしても、本人たちに詳しく聞くと、BさんとCさんとで担っている実際の業務や権限・責任が異なるケースもよくあります。

それを確認してしっかりと記録に残し、リスク管理しておきましょう。

出典:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書
出典:「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要

まとめ

同一労働同一賃金とは、同じ企業や団体で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を禁止するものです。

同一労働同一賃金に関係する法律には、派遣労働者に特化した「労働者派遣法」のほかに、「パートタイム・有期雇用労働法」の2つがあります。

企業は、以下の流れで待遇差の点検や解消に努め、同一労働同一賃金を実現する必要があるでしょう。

  • 1.労働者の雇用形態と業務内容を整理・確認する
  • 2.待遇状況を確認する
  • 3.待遇差がある場合、理由を確認する
  • 4.待遇差がある場合、合理的な理由を整備する
  • 5.違法性が疑われる状況からの早期脱却を目指す
  • 6.改善計画を立てて取り組む

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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