コロナ禍をきっかけに導入が進んだWeb面接。Web面接は従来の面接に比べてコストがかからなかったり、移動時間が必要なかったりといったメリットがあります。
しかし、Web面接はメリットばかりでなく、「画面越し」という点で新たな注意点やデメリットもあります。Web面接をうまく活用するためには注意点やデメリットを把握してカバーする運用が重要です。
Web面接のメリット・デメリットやWeb面接の事前準備、面接官が注意するべきポイントを解説します。
<目次>
Web面接を実施するメリット・デメリット
Web面接にはさまざまなメリットがありますが、対面でない分、気をつけなければいけない点もあります。
Web面接を実施するメリット
Web面接では画面越しに面接を行なうため、わざわざ面接会場まで来てもらう必要がありません。求職者は好きな場所で面接を受けることができ、企業側も面接会場のコストや求職者の交通費を削減することが可能です。
地方に住んでいる人や忙しい人も面接に参加しやすくなるため、人材発掘や母集団形成につながります。また、対面の面接に比べて短期間で実施できますので、採用スケジュールの早期化、効率化にも効果的です。
<Web面接の主なメリット>
- 母集団形成に有利
- 交通費などのコスト削減
- 選考スピードの向上、効率化
- 面接官のアテンド、調整がしやすい
- 求職者にとっての利便性
Web面接を実施するデメリット
Web面接における最大のデメリットは、対面のようなリアルさがないという点です。対面の面接では、質問に対する回答だけでなく求職者の表情や仕草、雰囲気、行動などもその場で確認することができますが、Web面接では求職者の顔だけが移った画面を見ながら質疑応答を行ないます。
表情や雰囲気がわかりづらかったり、画面に映っている範囲しか見えなかったりと、見極めが難しくなります。また、面接官の表情なども求職者に伝わりづらいため、コミュニケーションにはかなり気を遣わなければなりません。また、Web面接システムの使い方や回線トラブル時のフォローも必要です。
<Web面接の主なデメリット>
- 表情や雰囲気が対面に比べわかりにくい
- カメラに映っている範囲しか見えない
- 社内の雰囲気を伝えにくい
- 深く魅了付けして志望度をグッと引き上げることが難しい
- 回線トラブルなどで面接が円滑に行なえないリスクがある
Web面接で準備すべき事項や当日の進め方
Web面接を実施する際は事前準備が重要です。ここでは、Web面接の準備と進め方について基本的なポイントを解説します。
Web面接で事前に準備するもの
Web面接はインターネットを介して行なうため、通信環境とカメラの映り具合が重要です。事前にインターネット環境やカメラ、インカムを準備して、正しく動作するかを確認しておきましょう。
カメラ映りを良くするにはパソコンのインカメラではなく、別でWebカメラを準備したり、十分な明るさがある環境を準備したりすることが大切です。
Web面接ではZoom、Teams、Google Meet、SOKUMEN、インタビューメーカーなどといったWeb会議ツールやWeb面接ツールを使用します。いずれも使いやすく普及しているツールですが、ツールにとって微妙に操作は異なります。
ツールが違うと音声やカメラが勝手に切り替わったり、仮想背景が使えなかったりすることもあります。また、画面共有やチャットなどの必要な機能は事前に使い方をしっかりと理解しておきましょう。
ツールは面接官だけでなく求職者も操作することになりますので、求職者に対してWeb面接の案内をする際に、ツール名や(利用経験がない場合には)ツールの利用方法も伝えておきましょう。
また、面接当日に通信状況が乱れたり、ツールがうまく動作しなくなったりすることも少なくありません。開始の数分前には入室し、接続テストをしてから本番に臨むと安心です。
Web面接を円滑に行なうポイント
面接前に求職者を待たせてしまうと余計なストレスが生じます。対面でオフィスを訪問する場合は、数分前に求職者が来ても受付で対応することができますが、Web面接の場合、面接官が入室しないとWeb会議のURLが有効化されないことも多いです。面接官は面接が始まる数分前には入室し、待機しておくようにしましょう。
Web面接の流れは通常の面接と同じです。面接時間に入室し、アイスブレイク→企業説明→ヒアリング→質疑応答・まとめが終わったらツールから退室します。
面接開始後はすぐに本題に入るのではなく、アイスブレイクを挟むのがポイントです。アイスブレイクを挟むと求職者の緊張がほぐれ、質疑応答がスムーズになるほか、求職者の本音を引き出しやすくなります。なお、複数の面接官で実施する場合は、それぞれの役割を決めて事前にすり合わせておきましょう。
また、Web面接では、面接中にインターネット環境のトラブルが起こる可能性もあります。面接前や面接の冒頭で不具合時の電話連絡先を伝えておくと、万が一トラブルがあった場合でも面接を円滑に進めやすくなります。
Web面接をスムーズに実施するために面接官が注意すべき点
Web面接では、インターネット環境や面接時間前に入室するといった点のほかにも注意すべき点があります。面接をスムーズに実施するだけでなく、求職者のストレスにも関わる注意点となりますので、しっかりと意識することが大切です。
カメラ目線で話す
面接中はつい画面に映っている求職者の顔を見てしまいがちです。しかし、Web面接の場合、求職者の顔を見ると求職者側から見たときに目が合わなくなってしまい、不安感を与えてしまいます。
求職者に「目が合っている」と感じてもらうためには、面接官は求職者の顔ではなくカメラを見て話すようにしましょう。求職者の画面を縮小してパソコンのカメラの下に持ってくると、求職者とカメラを同時に見ることができます。
またダブルモニターなどで、もう1つの画面に履歴書や職務経歴書を映している、メモを取っているなどで、目線が大きくずれることがある場合には、事前に求職者へ伝えておくとお互いにストレスがないでしょう。
リアクションは大きく行なう
Web面接は対面に比べて相手の反応がわかりづらいため、普段よりもしっかりとリアクションすることが大切です。求職者が話しているときや質問を受けているとき、相づちを多めにすることを意識しましょう。
また、こちらの表情も伝わりづらくなるため、意識的に笑顔を作ったり、少しオーバーリアクション気味に反応したりすることも大切です。なお、Web会議の仕組み上、声で相づちを入れようとすると、向こうの声を遮ってしまうことがありますので注意しましょう。
タイピング音には注意する
面接中にタイピング音やクリック音を出してしまうと、求職者の集中力を妨げたりストレスになったりする可能性があります。面接中はなるべくパソコン操作はせず、面接が終わってから入力作業をしたほうがよいでしょう。
面接の途中で入力したいことがあった場合は、手書きのメモを使用するなどしてあまり音を出さないようにすることが大切です。またパソコンの操作音だけでなく、その他の雑音にも十分な配慮が必要です。
Web面接での見極めを誤らないために面接官が注意すべき点
過去20年ほどで通信環境やプログラム・ハードウェア性能向上によって、今ではオンラインでも「匂い以外はすべてわかる」と言われることもあります。通信環境さえ整えれば、音声が途切れることもありませんし、映像もクリアです。
一方で、年間数千人と面談をしていると、「リアル(対面)ではすぐにわかったが、Web面接では見抜きづらい」というポイントもあります。Web面接で見極めを誤らないためには、以下のポイントをしっかりと認識して選考フローを組むことが大切です。
コミュニケーション力の見極めが論理性に偏りがち
Web面接は「自宅で受けられる=自分の“ホーム”で緊張せず受けられる」という特徴があります。また、細かな表情などが読みづらく、リアル(対面)の会話と比べるとオンライン特有の“会話の間”も生じやすいため、“気持ちいい会話のテンポ”といったものも少しつかみづらい部分があります。
結果的に面接でのコミュニケーション力の見極めが、対面と比べると思考力やロジカルコミュニケーション力に偏る傾向があります。また、「オンラインでは非常に流暢で喋りやすく感じた相手が対面だとガチガチに緊張するタイプだった」、「受け答えが軽妙ではなく会話のテンポが悪い」といったギャップも生じがちです。
採用後の業務もフルリモート、オンラインが前提である場合には良いですが、対面での接客業務などが生じる場合には、オンライン面接での見極めには注意が必要です。
カメラに映らない要素に注意
リアル(対面)の面接では、相手とお会いした瞬間から面接が終わる瞬間まで、相手の全身や雰囲気が目に入っています。しかし、Web面接ではカメラに映った顔と上半身(バストアップ)の一部ぐらいしか情報がありません。
オンライン採用の笑い話で、「完全オンラインで採用した人がはじめて出社してきたら、身長が190㎝もあってびっくりした!」という話もあるぐらいです。つまり、カメラに映らない身長・体格は意外とオンラインではわからないのです。
身長・体格は選考に関連する話ではありませんが、他にもカメラに映らない部分での貧乏ゆすり、手癖や足癖、入退室などのちょっとした動作などからわかるマナーや気遣いなどが、Web 面接ではわかりません。また、カメラ越しで見える部分が限られると、清潔感などの要素も見抜きにくいものです。
コミュニケーション力の見極めと同様、入社後の業務がWeb上でのコミュニケーション中心になる、また、ロジカルコミュニケーションが重視される場合には問題ありませんが、対面での接客や商談、交渉などが重要業務となるようであれば、必ず対面面接を実施するなどの選考フローが必要です。
志望度や転職理由などの本音
志望度や転職理由、待遇などの希望に関しても、Web上では微妙な感情の揺れや雰囲気などの要素をとらえづらい部分があります。
対応として、志望度であれば点数でスコアリングしてもらってプラス要因とマイナス要因を深掘りする、転職理由であれば転職理由を解消するために本人が実施した努力などを確認する、転職先を選ぶ基準との不一致についてフィードバックして反応を伺うなど、少し深くヒアリングするようなことも大切です。
志望度の向上
前章までは見極めについての話を中心にしてきましたが、求職者の志望度を上げるうえでも同様です。仮に対面における1時間の面接を通じて求職者の志望度を一気に10高められていたとすると、オンライン面接では5~6ぐらいに留まる。しかも、面接が終わってから熱が冷めていくスピードが速いという感覚です。
したがって、
- 面接の前後で動画や資料、ホームページなどを使って、小まめに魅了付けの情報提供をする
- 電話で接点を持つ
- 社員面談などを入れて接触を増やす
といった選考フロー上の工夫を入れることも大切です。
まとめ
Web面接の進め方はリアル(対面)の面接と同じですが、事前準備や注意点は異なる部分が出てきます。Web面接をスムーズに実施するためには通信環境やツールの使い方などで障害が出ないように確認しておきましょう。
Web面接では、求職者の表情や仕草、雰囲気、行動などがわかりづらい傾向にあります。コミュニケーション力の見極めが論理性に偏りやすいことや、カメラに映らない要素が多いことなどにも注意し、本音を引き出す深いヒアリングを意識したり、選考フローを変更したりといった対応が必要です。
また、求職者の情報が伝わりづらいのと同様に面接官の表情や企業の魅力も伝わりづらくなります。面接官の目線やリアクションに注意しながら面接を実施することが大切です。また、面接以外で魅了付けするための情報提供、面談などで接触頻度を増やすなどの工夫も重要です。