クライシスマネジメント(危機管理)とは?リスクマネジメントとの違いと導入のやり方

2020/09/11

昨今、経済環境の変化や大規模災害の可能性が高まる中で、クライシスマネジメントに注目する企業が増えています。すべてのリスク等に対して事前に準備することはできませんし、現実的ではありません。しかし、起きうるいくつか事態を想定して対策を決めておくことで、新型コロナウイルスの感染拡大のような予測不可能な緊急事態が生じたときにも、適切な対応や業務の継続をしやすくなるでしょう。

 

記事では、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違い、また、危機管理プランと呼ばれる緊急事態対応プランの作成方法を解説します。考え方を参考にしていただき、緊急事態にも商品・サービスの提供、組織の存続、従業員の安全を守れる組織づくりに活かしていただければ幸いです。

<目次>

クライシスマネジメント(危機管理)とは?

クライシスマネジメントは、危機管理と訳され、ビジネスシーンにおいては、事業の継続や組織の存続を揺るがしかねない事態に遭遇したとき、マイナスの影響を最小限に抑えるための仕組みや対応方法という意味で使われます。組織にマイナスの影響を与える予期せぬ事態には、以下のようなものがあるでしょう。

 

  • 自然災害
  • テロ
  • 金融危機
  • 疫病
  • 欠陥製品や異物混入
  • 作業場での事故
  • ネットワーク犯罪やコンピューター事故 等

 

組織や企業は、こうした不測の事態に対応するために、「クライシスマネジメントプラン(危機管理計画)=CMP」を策定する必要があります。

 

「“クライシスマネジメント”なんて横文字は、うちにはあまり関係ない…」と思われる方もいるかもしれません、ただ、新型コロナウイルスの感染拡大といった想定外な事象もありますし、中長期で考えると日本における大規模災害のリスクは確実に高まりつつあります。ある程度の事前対策や指揮系統を決めておくことは、どの企業においても有効です。

クライシスマネジメントとリスクマネジメントの違い

クライシスマネジメントと似た文脈で使われるものに、“リスクマネジメント”や“BCP”といった単語がありますので、初めに解説しておきます。

 

 

リスクマネジメントの意味と目的

リスクマネジメンとは、危機を回避する、または被害を最小限に抑える計画や管理のことであり、具体的には、以下のような取り組みが該当します。

 

  • 危機が起こらないようにするための予防策
  • 被害が出る前の事前対策 等

 

当たり前ですが、企業や組織におけるリスクは、金融危機や新型コロナウイルスのように外的かつコントロール不能なものよりも、社内でコントロールできるもののほうが多いでしょう。

 

例えば、前述したような欠陥製品や異物混入、作業場での事故、また昨今では個人情報の流出やコンピューターウイルス感染等はその最たるものです。これらのリスクをどう減らし、事故や危機が起こらないようにするかということがリスクマネジメントです。

 

“リスク”(risk)という言葉の語源は、「絶壁の間を船で行く」から来ています。組織が事業拡大や成長に向けて大きな意思決定をする場合、あえて厳しい絶壁の間を通過するような挑戦をすることもあるでしょう。リスクの大きさや危険性を測ったうえで、ときには対応可能な範囲で、「リスクを保有する」という選択をすることもリスクマネジメントの1つです。

 

 

クライシスマネジメントの意味と目的

クライシスマネジメントは、「危機は起こるもの」という前提で、初期対応の方法を定めたり、二次被害を最小限に抑える仕組みをつくったりすることを目的とします。クライシスマネジメントの視点は、リスクマネジメントで制御しきれなかった危機に対して、どう対処するか、といっても良いでしょう。

 

従って、組織のリスク対策を考えるうえでは、「危機を発生させないこと」を目的とするリスクマネジメントと、「危機が発生したときの対応策」となるクライシスマネジメント、両面から考えて対策を講じる必要があります。

 

 

クライシスマネジメントとBCP

クライシスマネジメントの中で定める「クライシスマネジメントプラン(危機管理計画)

CMP」と似たものに、「Business Continuity Plan(事業継続計画)=BCP」というものがあります。

 

BCPは、危機が起こった際に「重要事業をなるべく早く再開・継続させる」ための行動計画であり、危機管理計画の中で考えるべき1つだといえます。

 

 

クライシスマネジメントが注目される背景とは?

クライシスマネジメントや事業継続計画(BCP)が注目されるようになったのは、世界的には2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件を始まりとした世界的な危機がきっかけでした。

 

当時、クライシスマネジメントは大手企業等が限定的に実施しているものでしたが、2011年3月11日の東日本大震災を機に、国内、また中小企業にもクライシスマネジメントや事業継続計画(BCP)の考え方が広がりました。

 

東日本大震災は宮城県沖を震源とするものでしたが、その規模は日本周辺における観測史上最大のものでした。直接的な被害はもとより福島第一原発におけるメルトダウン発生、インフラへの損害、長い余震期間等の影響もあり、直接的な被害額だけで16兆円~25兆円と試算され、多くの企業が影響を受けました。

 

昨今、前述したように新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害等のコントロールできないリスクの発生、また、IT技術の進化や利用に伴う内部的なリスクも高まりつつあり、改めてリスクマネジメントやクライシスマネジメントに注目が集まっています。

クライシスマネジメントプラン(CMP)の導入方法

何らかの危機によるマイナスの影響を最小限に抑えるには、以下の点を押さえて「クライシスマネジメントプラン(危機管理計画)=CMP」を作成しておくことがおすすめです。

 

 

クライシスマネジメントプラン(危機管理計画)の作り方

クライシスマネジメントプラン(危機管理計画)の細かな内容は、業種や想定される危機によっても異なってきます。しかし、以下の流れで考えることがおすすめです。

 

危機管理自体は、「危機が起こる」ことを前提としていますが、まず重要なことは、リスク管理によって「自社がコントロール可能な範囲の中では危機を起こさないこと」です。また、危機管理を考えるうえでも、まずは考えられるリスクを洗い出すことが重要です。

 

自社の事業において考えられるリスクを内的な要因によるもの、外的な要因によるものと分けて書き出してみましょう。例えば、欠陥製品や異物混入、個人情報の流出、職場での事故、SNSでのトラブル等は、社内でリスク管理が可能な最たるものです。内部でリスク対策することで危機を防げるものについては、現状の態勢が十分かを検討することから始めましょう。

 

そのうえで、「起こってしまった場合」に自社で対応しないといけない内容を洗い出してみましょう。例えば、自然災害であれば、社員の安否確認、自社拠点等の被災確認、材料等の仕入れのストップ、出荷等に必要な物流等の停止、停電等に伴うインフラの停止等があるかもしれません。

 

昨今では、物理的なものだけではなく、アルバイト社員の悪質なSNS投稿、ネット上の炎上や風評被害等、オンライン上での危機への対応も検討しておく必要があるでしょう。ネット上での風評は広がるスピードも速く、なるべく早い危機対応が必要になりますが、一方で焦って対応を誤ると、対応の誤り自体が次の炎上要因となります。

 

そして、上記のように起こり得る危機とリスク想定を行なったうえで、対応方法を検討していきます。すべてのリスクに関して詳細な対応方法を検討しておくことは現実的ではありません。しかし、どのように意思決定するのか、誰に情報を集約するのか、責任者に連絡が付かない場合にどうするのか等を決めておくだけでも対応への初動が変わってきます。

 

 

クライシスマネジメントにおけるマニュアルの重要性

危機管理に際して、精神的に焦りが生じがちです。だからこそ、危機管理プランはマニュアルや対応フローとして文章化しておくことが大切です。マニュアル作成時には、以下のポイントを心がけましょう。

 

  • 担当者以外の人が見てもわかるような内容、構成にしておく
  • 実文書のマニュアルも用意しておく

 

クライシスマネジメントでは、対応の中心となる責任者を決めて、情報の集約や意思決定のあり方を明確にしておくことが一般的です。しかし、状況によっては、事前に決めている責任者に連絡が付かないこともあり得ます。また、自然災害によってインフラにダメージが生じた場合には、社内ネットワークやサーバー上で共有されていたマニュアルが閲覧できなくなることもあるでしょう。

 

従って、危機管理を想定したマニュアルは、連絡が取れない場合の情報集約や意思決定の流れを明確にしたうえで、実文書でも用意して関係者に配布しておく等が理想です。また、マニュアルを見れば担当者でなくても実践できるように、基本的な意思決定の進め方や基準についても言語化しておくことが重要です。

 

実践性を重視するという意味では、ケーススタディ形式でマニュアルを作成するのもおすすめです。組織を取り巻く環境が刻々と変化することを考えると、マニュアルはつくって終わりではなく、継続的な改善が必要となるでしょう。

 

 

リスクマネジメント&クライシスマネジメント研修の効果性

国際的なコンサルタント会社、デトロイトトーマツによる調査結果では、クライシス対応に失敗した企業の37.9%が事前準備不足を要因にあげています。また、社内において対応ノウハウのない分野の場合、外部専門家の活用をしなかったことを失敗要因とする企業は、19.7%となっています。

 

こうした調査に目を向けると、ある程度会社規模が大きくなってきた場合には、対応や想定をすべて自社内で行なおうとするのではなく、平時のうちに専門家の調査や協力を仰いで、研修等を通じて危機管理への備えをしておうことが有効だろうと推測できます。

 

リスクマネジメントやクライシスマネジメント研修には、組織における危機管理を他人事ではなく、自分事として感じてもらう目的があります。研修を通して危機管理の意識付けができると、マニュアルを見た社員が自分のすべきことを判断し、自ら主体的な行動を起こしやすくなります。また、専門家の力を借りたワークショップ等を通じて、一気にマニュアルのひな形を制定するのも効果的です。

 

まとめ

新型コロナウイルスのような疫病や自然災害が懸念され、また、オンライン上での炎上や風評被害等の新たな危機が生じている昨今においては、危機による二次被害を最小限にするクライシスマネジメントに注目が高まるようになりました。

 

そもそも危機を発生させないリスクマネジメントと併せて、いざ起こってしまった場合にどう対応するかというクライシスマネジメントの考え方をセットで導入すると効果的でしょう。

 

日本の地政学的なリスクもありますし、新型コロナウイルス等の緊急事態が次いつ起こるかわかりません。その中で、社員の安全を守り、事業を継続していくためには、危機は必ず起こるものという前提でクライシスマネジメントの導入を進めましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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