さとり世代を教育するうえで知っておきたい特徴と効果的な指導ポイントを解説

2020/10/26

「最近の若者は、何を考えているのかわからない…」と年長者から評される若手世代を指す代表的な言葉の一つに“ゆとり世代”がありました。しかし、1987年以降に生まれて、“ゆとり教育”を受けた世代の中には30代半ばとなって、組織の中核を担っている人もいます。

 

令和の時代となった現在、“ゆとり世代”に代わって、職場に入ってくる若者たちの呼び方が「さとり世代」です。「さとり世代」は、1996年~2004年までに生まれた世代で“ゆとり世代”の後期層を指します。ちょうど、この数年で入社した新人や若手層、そして、これから入社してくる年代です。

 

「いまの若者は…」という年長者の愚痴ははるから昔かある、とも言われますが、世代によって、生まれ育った時代環境が違い、価値観が変わるのは事実です。記事では、さとり世代と呼ばれる若者たちの時代背景と特徴、そして、特徴を踏まえて、「さとり世代」を教育するうえでのポイントを解説します。

<目次>

「さとり世代」とは?

冒頭で紹介した通り、「さとり世代」は、“ゆとり世代”の後期層を指し、1996年~2004年までに生まれた若者を指します。この記事では、さとり世代が育った時代環境と、“さとり世代”の特徴としてよく言われる3つのポイントをご紹介します。

 

 

さとり世代の育った時代

さとり世代が多感な小学校~中高時代を過ごしたのは、2003年からいままで(2020年執筆)。少し景気が上向いていったところから、2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災などを経験して育っています。ITや通信環境で言えば、中学時代にはスマートフォンやSNS、LINE・twitterが当たり前に普及して、パソコンよりもスマートフォンやタブレット端末に慣れ親しんで育っています。

 

 

さとり世代の特徴①:物事や恋愛に対する欲求や情熱が少ない

さとり世代の消費傾向は、非常に“現実的”だと言えます。生まれた時点で生活に必要なものは揃っている中で育ち、かつ高度経済成長期を知らず、それよりもリーマン・ショックや東日本大震災を経験した「さとり世代」は、経済や物質的な豊かさに対して達観しています。

 

「手が届きそうにないものを、無理に頑張ってまで手に入れようとは思わない」など、贅沢にあこがれることも少なく、ほどほどの生活で充分、と考える人が多くなっています。このような傾向は、日常の消費行動にも見られ、財布の紐も固く、休みが取れても積極的に旅行に行こうとまでは考えません。

 

また、恋愛にもあまり関心が少ないと言われ、こういった物質的な欲望や煩悩が少なく、まるで悟りを開いているかのような特徴から、「さとり世代」という言葉も生まれています。

 

 

さとり世代の特徴②:興味のあることには妥協しない

「さとり世代」の現実的な消費傾向は、生まれ育った時代の豊かさと経済動向が背景にあると言われています。しかし、この傾向だけを指して「さとり世代はコスパ重視で積極的に消費をしたがらない」と見なすのは正しくありません。

 

「さとり世代」の若者は、一般的なブランド品や贅沢に対して、価値や喜びを感じる傾向は少ないと言われます。しかし、何に対してもまったくお金を使わないというわけではありません。例えば、ゲームや音楽、アイドル・芸能人・・・など、自分の興味・関心が強いことにはお金を惜しみません。

 

ある意味では、自分の興味・関心が強いものに対して、お金を投資するために、他のところは切り詰めるというライフスタイルであり、世間的なブランドや見栄えに惑わされず、コスパ重視で無駄がなく、取捨選択が上手とも言えるでしょう。お金のみならず、時間の使い方に関しても同じ傾向があります。

 

 

さとり世代の特徴③:結果を重視し、努力は極力避けようとする

未来に希望を持てるような右肩上がりの経済成長を知らず、激しい経済変動を少年期に経験した「さとり世代」は、未来や現実に過度に期待したり、夢を持ったりせず、合理的に行動する傾向があります。

 

その結果として、「さとり世代」の若者たちは、結果重視で無駄な努力を極力避ける傾向が強いと言えます。あくまで世代に対する一般論ですが、「ガムシャラに努力して、1位を目指す」よりも、「最小限の努力で合格点(平均点)を取る」ことを重視するイメージです。結果が伴わない、見えないことに対して、努力することも嫌う傾向もあり、上の世代が「やるだけやってみよう」「当たって砕けろ、の気持ちで」「石の上にも3年、だ」と言っても、「さとり世代」にはなかなか伝わらないでしょう。

さとり世代の教育で必ず押さえておきたい勘所

前章で紹介したような「一般的な意味での“上”を目指す欲求や情熱が少なく、自分の興味関心に没頭したい。結果が見えない努力はしたくない」という傾向を持つ「さとり世代」を教育するうえで、大前提として押さえておくべきことは以下の2点です。「さとり世代」に限らず、自分と違う時代環境で育ち、違う価値観を持った世代に接するうえでは、基本となるポイントです。

 

 

一人ひとりに向き合い、理解しようという姿勢で接する

「最近の若者は…俺が若いころは…」といった“最近の若者”に憤りを感じる年長者の存在は、いまに始まったことではありません。約5000年前のエジプトの遺跡から見つかった粘土板にも、年長者と思しき人の若者への不満がつづられていたと言います。世代間で物事のとらえ方や考え方にギャップが生まれるのも、いつの時代でも生じる普遍的なことなのです。

 

人間関係は、同じ時代環境の中で育った同世代の人同士であっても、本当の意味で相手を理解することは難しいものです。増してや自分が生まれ育った時代環境とは違う時代環境の中で育った異世代を理解することは本当に難しいものです。しかし、だからこそ大事なのは相手を理解しようとする姿勢です。

 

前章で、「さとり世代」の特徴を紹介したところから矛盾するようですが、相手を理解するための下地として、“世代の特徴”を頭に入れていただいたうえで、大事なことは「目の前の一人」を理解しようとすることです。“○○世代”と一括りにするのではなく、一人の“○○さん”に興味関心を持つことが、効果的な教育をおこなうためのスタート地点です。

 

 

彼らの成長実感と成長プランをデザインする

リーマン・ショックによる不況を見聞きしながら育った「さとり世代」は、頑張ったことが結果に繋がるかわからなければ、無理に努力しようとは思わない、という傾向があります。同時に、会社が自分を守ってくれるとも思っていませんので、自己成長やスキルアップ、自分の市場価値を高めることには興味が強い傾向があります。

 

いまの職場や仕事に対しても、かなり短期的な視点で、“自分自身のキャリアアップにどのようにプラスになるか?”という視点で見ています。従って、「ここで働いても自分にはメリットがない」と判断すれば、退職を考え始める心理的なハードルも低いと言えます。

 

極端に表現すれば、彼らにとっての安心とは、「この会社で30年働いて、地位を高めて、年収を上げていくこと」ではなく、「短期間で成長でき、たとえ会社がつぶれても困らない市場価値を身に付けられること」なのです。逆に言えば、「成長実感がない」ことに大きなリスクを感じる傾向があります。

 

だからと言って、「先が見えないのにガムシャラに頑張る」ことには、上の世代が思うよりも強く抵抗を示します。従って、非常に難しいテーマですが、「どのように成長実感を与え、成長プランをデザインするか」を組織をあげて考える必要があると言えるでしょう。

さとり世代の教育で実践したい効果的な指導法3つのポイント

ここまで、「さとり世代」の若者の特徴と、教育をするうえで前提として押さえておくべき勘所についてお伝えしました。その特徴や勘所を踏まえ、成長や活躍を促す効果的な教育をするために実践すべきポイントをまとめると、以下の3つになります。

 

 

ポイント①:本人の納得感を尊重するコミュニケーションスタイル

「さとり世代」に限ったことではありませんが、人は、「強制されている」「やらされている」と感じるとやる気を失います。一般的な傾向としては、「さとり世代」は特にこの傾向が顕著であると言えます。前述の通り、“自分にとって明確にプラスになる”ことが見えない場合には、 “全力を尽くす”よりも“最低限の労力でクリアしたい”傾向があるとも言えます。

 

従って、「さとり世代」を指導するうえでは大切なことは、“なぜそうした方がいいのか”、そして、“本人とってどのようなメリットがあるのか”を論理的にしっかり説明することです。

 

また、指導するうえでも、“一方的に指示する”コミュニケーションよりも、“提案して本人が合意する”コミュニケーションを取ると効果的でしょう。また、伝えるときには、“納得しているかどうか?”を表情や声からも確認するようにしましょう。納得感を得ていない場合には、“不安や不満を抱えている”ということをしっかりキャッチし、疑問点を一緒に解消しようとする姿勢を示すことが大切です。

 

もちろん不安や不満があったり、100%の納得を生んだりすることは難しいかもしれませんし、仕事としてやるべきことはやってもらう必要はありますが、なるべく、「本人が意思決定させる」ことがポイントです

 

 

ポイント②:失敗したときの指導には要注意

子供のころからSNSに親しんできた「さとり世代」は、“いいね!”を集めることに熱心であり、逆に、“炎上する”“陰口”に対して恐怖心があります。また、地位のコミュニティーもなくなり、教師も“叱る”ことに対して腰が引けている中で、“怒られた”経験が乏しいです。そして、感情的に受け入れられない相手は“ブロックする”習慣を持っています。

 

従って、注意をしたり、失敗したりしたときの指導や叱り方は、これまでの世代以上に注意を払う必要があります。まず、耳にタコができる話だと思いますが、“感情的に怒る”ことと“指導するために叱る”ことは別物です。また、叱る目的は、失敗のミスを責めたり、反省させたりことではなく、失敗を糧に成長に繋げることです。失敗を指導するプロセスで、心のコップに蓋をしてしまったり、反発を生んだり、過度に反省して自信を失ってしまったりすると逆効果です。

 

失敗は成長の大きな糧であることは事実です。指導する側が「失敗の振り返りは、成長、スキルアップの機会であることをしっかりと伝え、何を学び、どう成長に繋げるかをしっかりとフォローする」意識を持つことが大切です。

 

 

ポイント③:「注意する」ときは「褒める」でサンドイッチにする

先ほどの失敗の指導ともリンクしますが、彼らは子供のころからSNSに慣れ親しんでいます。具体的には、“いいね!”をもらって、拒否したい相手は“ブロックする”傾向があります。一方で、指導する側からすれば、新人時代にはいままでの世代と同じように指導する必要があることはたくさんあります。

 

そこで役立つのが、行動科学の分野で“PNP法”と呼ばれるコミュニケーションです。具体的には、「マイナスをプラスで挟む」というコミュニケーションの取り方で、ミスの指摘や指導などの“相手にとってはネガティブなこと”を伝えるときに役立つコミュニケーション手法の一つです。

 

具体的には…

 

最初に褒める

そのあとに改善事項を告げる

最後にまた褒める

 

という流れです。PNP法は相手のやる気を損なうことなく、指摘や指導ができる方法なので、非常におススメです。最後の褒める言葉に加えて、改善すべき事項に対して具体的にどのように改善して欲しいのかを励ましの言葉とともに伝えると良いでしょう。

おわりに

いつの時代も、「若手社員は何を考えているのかわからない」、「どのように接すればいいかわからない」という声はなくなりません。これは、受け入れる側が無意識に、“自分たちの常識や価値観を若手社員に当てはめようとしている”からかもしれません。

 

これからも、異なる時代背景で育った社員が入社してくることは永遠に続きますし、日本の少子化を考えれば、時代背景はもちろん、国籍や文化が異なる若手社員増えていく可能性もあります。記事では、「さとり世代」の特徴と、そのさとり世代の社員が成長し活躍するための効果的な指導法をお伝えしました。異なる価値観を持った相手を指導する基本は、相手を「○○世代」「○○人」と一括りにするのではなく、理解するための下地として時代環境や文化背景を知ったうえで、「○○さん」と一人ひとりに寄り添って、理解する姿勢です。記事が若手社員を指導する一助となれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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