ストーリーテリングとは?ビジネスで注目されるストーリーテリングの効果と活用方法

2020/09/16

近年、ビジネスにおけるプレゼンテーション等は「ストーリーテリング」の力が注目され、活用されるケースが増えています。ストーリーテリングは幅広い場面で活用できるものですが、とくに社員のモチベーションを向上させたい場合やマーケティングを成功させたい場合には、しっかりと使いこなしたい技術です。記事では、ストーリーテリングで得られる効果、ビジネスでの活用方法を、事例を交えながら解説します。

<目次>

ストーリーテリングとは?

まずは、「ストーリーテリングとは何か」「なぜビジネスで注目されているのか」という基本事項を確認しておきましょう。

 

「ストーリーテリング(story telling)」とは言葉の通り、「物語(story)を人々に語る(telleing)」という意味です。もともとは、吟遊詩人やネイティブアメリカンのように言葉や伝承で物語を伝えていくこと、そこから転じて、図書館で開催される「お話し会」等がストーリーテリングと呼ばれていました。

 

ビジネスで使われるストーリーテリングは、上記における「物語が持つ力」に注目して、「伝えたい物事を、物語として語ることで、聞き手に強い印象を与える手法」を指します。

 

人は、物語(ストーリー)に大きな魅力を感じます。図書館での読み聞かせに子供たちが目を輝かせるのは、物語を聞く中で、情景が脳裏にありありと思い浮かび、その中で動き回る登場人物たちに感情移入できるからです。私たちも、神話や英雄譚、グリム童話、イソップ物語から日本昔話まで、子供のころから多くの物語に触れてきた中で、今も思い出せるストーリーがいくつもあるでしょう。物語は、記憶に残るという意味でも強力な効果があります。

 

物語が持つ、「注意を惹きつけ、感情を動かし、記憶に留まる」力をビジネスでも生かそうというのがストーリーテリングです。ストーリーテリングは、感情を動かしてチームの一体感を生み出したり、マーケティングで顧客の注意を惹きつけたり、ミッションやビジョンを社員の記憶に留めたりとさまざまな場面で効果を発揮します。次章でストーリーテリングの具体的な効果について、もう少し詳しく見ていきます。

ストーリーテリングで得られる効果

ストーリーテリングはさまざまな効果を発揮します。その中でも代表的な効果は、下記の4つです。

 

 

イメージを伝えやすくなる

事実を淡々と伝えるだけでは、商品やサービスのイメージを十分に伝えることはできません。例えば、少し複雑な機能を持ったITサービスの営業を受けることを想像してみてください。サービスの機能や数値だけを羅列されても、「導入するとどんな効果や成果を得られるのか」「競合と比べてどんな特徴があるのか」をイメージすることはなかなか難しいものです。

 

しかし、「昨年、サービスを導入いただいたA社という会社があります。A社は御社と同じ機械メーカーで、こんな課題に困っていました。社長もどうにかしたいと悩まれる中で、こんな手やあんな手を打ってこられたんです。ただ、なかなか改善できない…どうしようと考える中で、当社にお声がけをいただきました……導入を検討する中では……実際に導入されて…」と顧客の事例を交えながら、機能や効果を紹介されたらどうでしょうか。自社にサービスを導入して、成果が上がるイメージが湧くのではないでしょうか。

 

商品やサービスを使うことで解決できる課題や利用できる機能、成果をより多くの顧客にイメージしてもらえれば、受注率の向上や売上アップが期待できるでしょう。

 

 

聞き手の記憶に残りやすくなる

歴史等を勉強する際に、一つひとつの事実をただ暗記するよりも、一連のストーリーの中でそれぞれの事項を覚えたほうがよく頭に残ったという記憶はありませんか。これもストーリーテリングの効果の一つです。

 

上記の効果はビジネスでも期待できます。先ほどの顧客事例と同様に、プレゼンテーションの際に機能や効果だけをひたすらアピールするよりも、ストーリーの中に事実や数値を織り交ぜて語るほうが聞き手の記憶に残るでしょう。「物語(ストーリー)」というのは、人の記憶にそれだけ残りやすいのです。

 

 

共感を得やすくなる

営業で商品・サービスを紹介したり、採用活動や社内向けにミッションやビジョンを語ったりするときには、「いかに聞き手の共感を得られるか」も重要です。いくら素晴らしい商品・サービスであったり、崇高なミッションやビジョンを紹介したりしたとしても、聞き手の「感情」が動かないと、共感は得られません。

 

ここでも有効なのがストーリーテリングです。人は物語を語られると自然と頭の中に情景を描き、感情移入しやすくなります。

 

例えば、商品・サービス、ミッションやビジョンを紹介するときには、「なぜこの商品を開発したのか?」「なぜこのミッションを掲げるに至ったのか」という物語を紹介すると、聞き手の共感が得られ、商品やサービス、自社のミッションやビジョンに共感を抱いてもらいやすくなります。とくに開発や創業経緯は、ストーリーテリングの効果を得やすい分野です。

 

 

商品やサービスへの好感度が上がる

NHKの一大ヒット番組であった『プロジェクトX ~挑戦者たち~』をご覧になったことがあるビジネスパーソンの方は多いと思います。『プロジェクトX』は、日本におけるビジネスのストーリーテリングで最もイメージしやすい事例だといえます。

 

『プロジェクトX ~挑戦者たち~』は、NHKが制作しており、特定商品や企業のブランディング等を目的とした番組ではありません。しかし、番組で語られる熱くて生々しいストーリーを聞くうちに胸が熱くなり、終わったときには、番組内に登場した商品やサービスを使ってみたくなったという方も少なくないでしょう。また、後々で紹介されたプロジェクト、建築物や製品等を見ると、「これがあの…」と感情移入してしまった経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、それこそがストーリーテリングの効果です。

 

 

ストーリーテリングの効果を示す事例

イメージが湧く、記憶に残る、共感を得られる、好感度が上がるというストーリーテリングが持つ4つの効果をご紹介しました。実際にストーリーテリングの形式で、一つ事例をご紹介します。

 

世界的な製薬会社であるアメリカのイーライ・リリー社はご存じでしょうか。

 

社名の通り、アメリカの退役軍人であったイーライ・リリー氏が創業した会社です。リリー氏は、軍隊を退役後、インディアナ州で薬局の店主をしていました。薬局の創業から間もないあるとき、薬局を訪れた小さな女の子がいました。彼女は、リリー氏に、『おじちゃん、ミラクル(奇跡)をちょうだい』と頼んできたといいます。

 

どうしたのかと思って、リリー氏が話を聞くと、じつは女の子の母親は末期癌で、いつ死んでもおかしくないぐらいの状態だと分かりました。前日、医者の診断を受けているとき、お母さんが心配でたまらない女の子がドア越しに聞き耳を立てていたところ、『もう助からない…彼女を助けられるとしたらミラクル(奇跡)だけだ』という医者の話しが聞こえたのです。

 

『ミラクルがあれば、お母さんは助かるんだ』と思った女の子は、翌朝、なけなしの小遣いを握りしめて、リリー氏の薬局にきて『ミラクルをちょうだい』といったのです。『今は薬局で薬を売っているけれども、いつか本当にミラクル(奇跡)を起こせるような薬をつくりたい』と考えたリリー氏が、その後、創業したのがイーライ・リリー社です。

 

従業員2人で始めたイーライ・リリー社は、1876年の創業から150年以上が経過した現在では4万人近い従業員が働き、売上高2兆7,000億円(2018年実績)という世界トップ10に入るグローバルな製薬会社となっています。

 

今でも創業の想いを引き継いで研究開発を重視しており、売上高の20%超を新薬の開発に投じるのはアメリカの製薬会社の中でもトップクラスです。そして、これまでに世界初の新薬、例えば、糖尿病の治療で使われることで有名な“インスリン”等を数多くつくり出してきたのがイーライ・リリー社です。

 

 

どうでしょうか。規模や数字だけを伝えられた場合と比べて、聞き手の感情や印象にはどんな変化がありそうでしょうか。ストーリーテリングには、聞き手にイメージを湧かせ、感情を動かし、記憶に留める効果があるのです。

 

ストーリーテリングの有効な活用法

ストーリーテリングはさまざまな場面で使える技術ですが、その中でもとくに有効な場面を3つご紹介します。

 

 

マーケティングを成功させたい場面

ストーリーテリングは、マーケティングの場面で使われることも多い手法です。商品やサービスにストーリーを付随させることで、顧客のイメージを喚起し、共感を抱いてもらい、心に強く印象づけることができます。

 

最近では、商品紹介に開発ストーリーが含まれていたり、店舗やECサイト等でお店の歴史が語られていたりするケースが増えてきました。商品の特徴をただアピールするより、こうしたストーリーに載せて伝えたほうが顧客に効果的にアピールできるのです。

 

日本のメーカーでも、製品開発に至るまでの紆余曲折や開発者の想い、葛藤等をアピールする企業は増えてきました。例えば、VAIO株式会社は、商品ごとの開発ストーリーをホームページ上で多数公開しています。製品化に成功するまでの苦労や熱い想いを、一つの物語として、開発に携わった人々の声で語ることにより、商品や企業のファン獲得へと繋げています。

 

 

社員のモチベーションやエンゲージメントを向上させたい場面

ストーリーテリングが活用できるのは、マーケティングだけではありません。ミッションやビジョンを語り、チームや企業へのエンゲージメントを向上させたいときにもストーリーテリングが効果的です。

 

アメリカの公民権活動家であるキング牧師がおこなったスピーチも、ミッションやビジョンを示す中でストーリーテリングの技法が使われています。キング牧師の「I Have a Dream(私には夢がある)」というフレーズで有名なスピーチはご存じの方も多いかもしれません。

 

少しだけ日本語訳を抜粋してご紹介します。

 

「私には夢がある。いつの日か、ジョージアの赤茶けた丘の上で、昔は奴隷だった人々の子孫と、昔は奴隷の所有者だった人々の子孫が、同胞のテーブルに一緒に座ることができるようになるという夢が。

 

私には夢がある。いつの日か、ミシシッピーのような不正義と抑圧の熱気でうだるような州が、自由と正義のオアシスへと変貌するという夢が。

 

私には夢がある。いつの日か、私の4人の可愛い子供たちが、肌の色ではなく彼らの人柄の中身で評価される国に住むようになるという夢が。」

 

キング牧師は、自身が実現したい将来像(ビジョン)を、具体的や地名や自分の子供たちといった表現と共に伝えることで、聞いている人々の間に鮮やかなイメージを喚起しました。キング牧師のスピーチはアメリカ全土に大きな反響を呼び起こし、議会をも動かして、人種差別を禁止する「公民権法」の成立を促したといわれます。

 

ビジネスにおいても同様の効果が期待できるでしょう。企業のミッションやビジョンを単なる言葉の羅列ではなく、聞き手が頭の中にありありと思い浮かべられる情景として語ることで、ミッションやビジョンへの共感、浸透が生まれるのです。

 

 

複雑な物事を説明する場面

ストーリーテリングは、複雑で理解が難しい内容を説明する際にも役立ちます。とくに、数字等の情報量が多い場面では、伝えたいことの全体像を把握してもらうために、親しみやすい物語を用いて話すと効果的です。

 

スティーブ・ジョブズがiPodを紹介したときの「1,000曲もの音楽が、あなたのポケットに」というフレーズも、一種のストーリーテリングです。

 

当時、機能面では他のMP3プレイヤーとの差がほとんどなかったiPodは、この1フレーズで市場を席巻したのです。「iPodにどんな機能があるのか?」ではなく、「iPodを使うとあなたの生活はどうなるのか」というストーリーを示したスティーブ・ジョブズ氏の勝利です。

 

ストーリーテリングのコツと実践

ここまでイーライ・リリー社やキング牧師のスピーチ、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーション等、かなり大きな事例を紹介してきましたが、この章では、実際にストーリーテリングの手法を取り入れるコツを解説します。それぞれのコツを押さえて成功した事例も紹介しますので、ぜひ実践の参考にしてください。

 

 

聞き手のニーズを汲み取る

ストーリーテリングは、物語であればどのような内容でも構わないというわけではありません。当たり前の話しですが、聞き手のニーズに沿ったストーリーが語られてこそ、聞き手の共感を得られるのです。

 

例えば、ユニリーバ社のパーソナル・ケア製品ブランド「Dove」のCMは、このポイントをうまく押さえています。同社では、マーケティング調査を踏まえて、「自分の容姿に自信を持てない10代女性」をターゲットにCMやキャンペーンを実施。CMやキャンペーンでは、自分の見た目に自信がなかった学生たちが、自分の「ありのままの美しさ」に気付いていくというストーリーが展開され、ターゲットユーザーの共感を多く得ました。

 

 

頭ではなく心に訴えかける

ストーリーテリングで重要なことは、聞き手の心に響くように語りかけることです。価格や機能等の合理的な判断ではなく、気持ちに訴えかけ、幸せな未来を想像させるのがポイントになります。

 

アマゾン社のCM等はこのポイントをうまく押さえています。アマゾンは、「翌日配送」や「豊富な品ぞろえ」等の合理的な訴えではなく、日常にアマゾンプライムを取り入れることで得られる幸せな風景だけをCMでは描いています。こうした描写で顧客の心に訴え、「こういう生活を手に入れるために、サービスを利用してみたいな」と思わせています。

 

 

失敗を正直に語る

ストーリーテリングでは、あえて失敗談を伝えること等も効果的です。失敗した経験を正直に語ることで、聞き手との距離を縮め、共感と信頼が得られやすくなります。

 

スティーブ・ジョブズがおこなったスタンフォード大学での卒業式におけるスピーチは、多くの人の共感と感動を集め、「伝説のスピーチ」として今も語り継がれています。そのときのジョブズのスピーチは、『自分は大学を卒業したことがない…』という話から始まります。その後も、数々の失敗談を交えながら、自分の学んだこと、学生へのメッセージを伝えたからこそ、多くの共感を集め、“伝説”とまでいわれるようになったのです。

 

 

聞き手がイメージできる言葉と事例で話す

ストーリーテリングでは、聞き手が理解できる言葉で、イメージしやすい物語で伝えることが大切です。記事で紹介した成功事例も振り返ってみると、どのケースも聞き手の身近にある題材やテーマを使って物語を語っていることが分かります。

 

物語のテーマや内容だけでなく、語る言葉も重要です。聞き手が“頭で考えないと分からない言葉”を使ってしまうと、どれほど魅力的なストーリーを語っても聞き手の心には届きません。難解な専門用語や非日常的な表現を使ってしまった時点で、「心」ではなく、「頭」で理解するものになってしまうのです。

 

ストーリーテリングの手法を用いる際には、小学生や中学生に伝えるようなつもりで、難しい言葉を使わず、相手の身近にある事例や表現で伝えることが大切です。

まとめ

イメージが湧く、記憶に残る、共感を得られる、好感度が上がるという強力な効果を持つストーリーテリングはビジネスの場面で非常に有効です。マーケティングにおいて顧客の感情を動かしたり、好感度を上げたりすることもできますし、社員のモチベーションやエンゲージメント向上にも有効です。

 

ストーリーテリングの実践するポイントは、聞き手のニーズを汲み取り、聞き手がイメージできる言葉や事例で、心に訴えかける物語を伝えることです。創業や商品開発の経緯、顧客事例や自分の失敗事例等が、ビジネスで使われる代表的なストーリーテリングの素材です。ぜひストーリーテリングの技法を取り入れて、発信力・影響力を高めてください。

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