エフィカシーとは?いま注目される背景と効果、高めるための5つのポイント

2020/09/11

厳しい環境変化の中で組織力強化が求められる近年、各社員が持つ「個の力」を高めるうえで、エフィカシーという概念が注目されるようになっています。記事ではエフィカシーの意味や注目される背景、ビジネスシーンにおける効果等を詳しく解説します。上司が部下のエフィカシーに与える影響等も紹介しますので、ぜひ人材育成の参考にしてください。

<目次>

エフィカシーとは?

エフィカシーとは、効力や有効性をあらわす心理学用語です。語源となる英語のefficacyには、「自分の能力を評価する」ことという意味があります。

 

 

いま注目されるセルフ・エフィカシー(自己効力感)とは?

いま人材開発の中で使われているエフィカシーは、心理学用語としては、「セルフ・エフィカシー」の意味合いで使われていることが大半です。

 

セルフ・エフィカシーは、「ある物事をどれくらいうまく遂行できるか」という確信の度合いです。わかりやすく例えると、「自分の能力やスキルに対する自信」を意味します。人材育成等の分野では、“自己効力感”という言葉と同じ意味で “セルフ・エフィカシー”が使われています。

 

 

セルフ・エフィカシーが注目される背景

いまの時代はVUCA(ヴーカ)の時代と呼ばれ、変化が激しく、将来が予測不能になりつつあります。新型コロナウイルスの影響による市場や経済環境の変化は象徴的な事例の1つでしょう。

 

たとえば、高度経済成長期のように「いままでやってきたことを、より高い品質と生産性を目指しながら、規模を拡大していく」だけでは生き残れない時代です。組織として、これまでやったことがないことに取り組む必要があり、社員にも「いままでやったことがないことに挑戦してもらう」機会が増えています。その中で、セルフ・エフィカシーの高さが組織の実行力や成果に、より大きな影響を与えてくるようになっています。

 

「セルフ・エフィカシーの高さが組織の実行力に影響を与える」というのはイメージしにくいかもしれません。しかし、組織として新しいことへの取り組みが増える中で、「やったことがないけど、何とかなるのではないか」「やってみましょう」という社員が多い組織と、「やったことがないから、不安です…」「自分には無理です…」という社員が多い組織を想像してみると、実行スピードの差が想像できるでしょう。

 

 

セルフ・エスティームとの違い

セルフ・エフィカシーの概念とよく一緒に登場するものに、“セルフ・エスティーム”や“アファメーション”といった言葉があります。簡単に意味とセルフ・エフィカシーの違いを解説しておきます。

 

  • セルフ・エフィカシー:自分自身の能力やスキルに対する自信や確信(自己効力感)
  • セルフ・エスティーム:自分の存在そのものに対する肯定感(自己肯定感)

 

セルフ・エフィカシーが主に「実行して結果を出す」ことに対する有能感であることに対して、セルフ・エスティームは能力等も一切関係ないところで、「自分自身の存在に対する肯定感」です。

 

セルフ・エスティームとエフィカシーは、必ずしも両方が高い/両方が低いという状態になるわけではありません。たとえば、自分の存在に価値が見出せていないセルフ・エスティームが低い人でも、仕事で誰にも負けないスキルがあり結果を出していることで、セルフ・エフィカシーは高いことがありますし、逆になる場合もあります。もちろん両方高いことが望ましいのですが、記事では、セルフ・エフィカシーにフォーカスして解説していきます。

 

 

アファメーションとの違い

アファメーションは、“自己達成予言”とも呼ばれる自己暗示の方法です。肯定的な言葉で自分が実現する未来を宣言することで、潜在意識が宣言した未来の実現に向かって動き、実現しやすくなったり、行動を促進したりするといわれています。

 

従って、アファメーションの内容によって、自分の能力や実行力への自信が高まっていけば「自分はできる、やれる」という確信に繋がっていきます。アファメーションは実績を積み重ねることによる自信の形成と併せて、セルフ・エフィカシーを高めるための有効な手段として注目されています。

 

 

セルフ・エフィカシーの高い/低いが仕事に与える影響

セルフ・エフィカシーが高い人材は自信を持って仕事に臨むため、ビジネスにおいて高いパフォーマンスを発揮して安定した成果を出せる傾向があります。

 

セルフ・エフィカシーの内容が根拠のある自信なのか、根拠のない自信なのかは人によって異なるでしょう。しかし、たとえ、根拠がないとしても、営業やプレゼンテーション等で堂々とした自信が相手を動かすことは多くの方が経験しているのではないでしょうか。

 

逆に、たとえば、“仕事を任せるうえで十分な能力やスキルを持っているのに、自信なくおどおどとしている人”がいたら、自信なさそうな態度が原因で信頼してもらえなかったり、機会を掴めなかったりすることも想像しやすいかと思います。

 

セルフ・エフィカシーの高低は、新しいことに取り掛かるスピードや壁にぶつかった時の対応にも繋がってきます。セルフ・エフィカシーが高い人は、やったことがないことにも「何とかなる」と取り掛かるスピードも速いですし、壁にぶつかっても「きっとどうにかなる」とある意味で楽観的に取り組み続けます。

 

しかし、セルフ・エフィカシーが低い人は、「できるだろうか」「やっぱり自分には無理なんじゃないか」と、自らの行動を制限してしまったり、すぐに諦めてしまったりしがちです。従って、さまざまな逆境に立ち向かえる強い組織を作るには、人材教育を通して各社員のセルフ・エフィカシーを高める取り組みが有効なのです。

エフィカシーを高める5つのポイント

セルフ・エフィカシーを高めるには、以下のポイントを押さえて、人材育成に取り組んでいくと良いでしょう。

 

 

1.成功体験を積ませる

成功体験とは、その名のとおり何らかの成果を上げた体験です。とくに、苦手な作業を乗り越えたり、努力が報われたりした時に、印象深い成功体験として、セルフ・エフィカシーの向上に役立つでしょう。

 

多くの成功体験を積み上げると、セルフ・エフィカシーに欠かせない自信が生まれます。そのため、部下のエフィカシーを高めるには、人材育成をする上司等が成功体験を積み重ねられる環境を用意することが効果的です。

 

たとえば、業務への不安が多い新人の場合、少しハードルの低い仕事をやり遂げさせる成功体験から「自分にもできる」といった自信を与え、徐々にステップアップさせることがおすすめです。

 

また、仕事内容が難しく成功体験を積み重ねにくい職場では、仕事の流れを分解して、ステップごとの目標をクリアさせていくことも良いでしょう。

 

 

2.ポジティブな声掛けや評価を行なう

上司や同僚によるポジティブな声掛けは、何らかの目標に挑戦する人材に失敗を恐れず頑張っていいという安心感を与えます。また、「自分は見守られている」や「自分は正当に評価されている」といったことを実感すると、上司の期待に応えるために頑張ろうとする高いモチベーションも生まれやすくなるでしょう。

 

また、先ほど述べた“成功体験”も、じつは上司の声掛けによって作れる部分もあります。

たとえば、目標達成をできなかった部下に、「達成できなかったな、次回こそ必ず達成しろよ!」と声を掛けるのと、「達成できかったな。一方で、プロセスAは達成して、プロセスBを実行するスキルは明らかに成長した。プロセスBをやり切ることを意識すれば、次回はきっと達成できる」と声を掛けるのでは、部下の心にどんな違いが生じるでしょうか。

 

なお、注意したいのは、エフィカシーを高める声掛けや評価は、上司と部下の信頼関係がある状態でこそ高い効果を発揮するということです。上司がポジティブな声掛けや評価で部下のセルフ・エフィカシーを伸ばすためには、部下の話に耳を傾け、何でも相談しやすい良好な関係を普段から築いておく必要があります。

 

 

3.自己成長を促す

セルフ・エフィカシーを伸ばすためには、実際に能力やスキルを伸ばしたり、知識をインプットしたりすることも重要です。そのためには、長期的かつ継続的に学習やトレーニング等を行ない、自分自身への投資を積極的にすることが求められます。

 

“成功体験を積ませる”とも相乗効果がある自己成長の促しが、自己成長や良い行動に関する習慣化です。ポイントは、なるべく実行のハードルを下げることです。たとえば、「毎日学びたい分野に関するニュース記事を1つ読む」「毎日英語学習のアプリを開いて3分学習する」「毎日鏡の前で10秒プレゼンテーションプレゼンテーションの練習をする」等、確実に実行できる、行動のきっかけとなるような習慣を設定することがおすすめです。

 

良い行動の習慣化は、それ自体は「成功体験」となりますし、継続することで確実に自己成長へと繋がり、確かな「根拠ある自信」を与えてくれます。自分の変化を実感することでセルフ・エフィカシーに繋がる積極的なマインドが生まれ、積み重ねた知識やスキルを使って壁を乗り越えれば、さらに自信が高まるでしょう。

 

 

4.1on1や面談を通したコーチングを実施する

自信よりも不安の多い新人や、なかなかセルフ・エフィカシーが高まらない部下に対しては、1on1や定期面談を通して、自己効力感が高まるようにあと押しすることも大切です。たとえば、いま携わっているプロジェクトの悩みや問題を一緒に棚卸しすると、これまで見えなかった成果への近道に気付ける場合もあります。

 

また、上司と部下がコミュニケーションを図ることで、双方が納得できる目標の再設定も可能になりますし、1on1や定期面談によって上司が部下の話に耳を傾ける機会が増えると、安心できる信頼関係の中、挑戦へのモチベーションも維持しやすくなります。

 

成功体験がない部下にいきなりセルフ・エフィカシーを高めることは難しいですので、1on1や面談を通じて、成功体験を積めるように伴走していきましょう。なお、この時、上司が一から十まで指示してしまうと、たとえ成功したとしても、部下自身にとってはいわれたことをやっただけで、成功体験ではありません。もどかしい思いをすることもあるかもしれませんが、部下の力を引き出し、部下に答えを出させるコーチングを意識しましょう。

 

 

5.上司や先輩をモデリングさせる

なかなか成功体験ができない部下には、自分と似た境遇の上司や先輩がうまくいった事実を自分に置き換えるモデリング(代理体験)も効果的です。実体験が含まれないモデリングは、成功体験と比べるとセルフ・エフィカシー向上への影響力は弱まります。しかし、それでも、モデリングを通して「あの人もできたのだから、自分にもきっとできる」と感じられると、目の前にある目標へのチャレンジ意欲が高まりやすくなるのです。

 

ここで重要となるのは、モデリングの対象となる上司や先輩社員もセルフ・エフィカシーが高くなければならないということです。そのため、これから各社員のエフィカシーを向上させようとする組織においては、まず経営陣や上司等のリーダー自身の自己効力感を高めることが必要です。

 

上司が部下のエフィカシーに与える影響と注意点

セルフ・エフィカシーは、後天的に伸ばせるものです。とくに仕事におけるセルフ・エフィカシーは、上司から部下へのフィードバックや仕事の振り方次第で上がりも下がりもします。

 

 

上司が部下のエフィカシーを下げてしまうNG行動

上司による以下のような指導や行動は、部下のエフィカシーを下げる原因になります。

 

・大勢の前でネガティブなフィードバックを行なう

誤った行動や問題の指摘等のネガティブなフィードバックは、基本的に1対1の環境で行なうべきです。ネガティブな指摘や評価を大勢の前で伝えた場合、部下は“恥をかく”ことになります。

 

問題ある言動を修正したり、部下の成長に向けてフィードバックしたりすることは必要です。しかし、どのような内容であっても、部下の自尊心を傷つけたり、セルフ・エフィカシーを下げたりしない配慮は必要です。

 

・ポジティブフィードバックの不足

職場においては、能力やスキルが成長すれば、それだけ任される業務範囲がひろがったり、目標が上がったりします。従って、能力やスキルがどれだけ成長しても、じつは目標の相対的な難易度は変わりません。

 

従って、目標達成に真剣に取り組んでいる本人ほど、じつ自分の成長や目標達成といったセルフ・エフィカシーに繋がる要素を見失いやすい傾向があります。従って、上司にとっては部下が自分の成長に気付けるように機会を作ったり、客観的に成長やスキルアップをフィードバックしてあげたりすることが大切な役割です。

 

・達成不可能な目標を押し付ける

セルフ・エフィカシーを効率よく伸ばすには、上司と部下の双方が納得した挑戦的かつ達成可能な目標設定が不可欠です。チャレンジばかりを重視して達成不可能な目標を押し付けても部下のモチベーションは上がりませんし、達成できない経験が続けばセルフ・エフィカシーにも悪影響を与えます。

 

もちろんチャレンジングな目標設定により部下の成長を加速したり、イノベーションを起こしたりすることが効果的な状況もあるでしょう。ただし、“達成できない経験”はセルフ・エフィカシーに悪影響を及ぼすことには気を留めておく必要があります。

 

組織内の多くの部下に自己効力感を持ってもらうには、上司による目標のコントロールが非常に大切です。また、成功体験の不足によって自信喪失しかけている部下がいた場合は、目標だけでなく与える仕事の内容も見直す必要があるでしょう。

まとめ

エフィカシーが高い人材は、ビジネスで高い効果を安定的に出し続けられる特徴があります。また、自己効力感の高い人材が多い組織は、市場環境の変化等の大きな逆境に対しても非常に強いです。

 

エフィカシーは、先天的ではなく後天的に伸ばせるものです。強い変化対応力と高い実行力を持つ組織を作るうえで、今回紹介したポイントが参考になれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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