外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットとは?採用時の注意点も解説

更新:2023/07/28

作成:2022/11/22

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットとは?採用時の注意点も解説

ご存じのとおり、日本では少子高齢化にともなって労働生産人口が急激に減少しています。

 

その中で、じつは「大卒者」の人数は、大学進学率の上昇にともなって、過去30年で増加⇒横ばいになっていることはあまり知られていません。

 

しかし、大学進学率も、いよいよ頭打ちとなりつつあります。

 

出生数を見れば、20年後の労働生産人口はほぼ確実に予測できるわけで、労働者の供給不足、特に大卒者の採用難が今後急激に加速していくことは明らかです。

 

こうした状況の打開策として注目されているのが、外国人労働者の雇用・受け入れです。

 

記事では、外国人労働者の定義と受け入れのメリット・デメリットを確認します。
そのうえで、外国人労働者を受け入れる際の注意点、また、外国人労働者を採用する方法を紹介しましょう。

<目次>

外国人労働者の定義

まずは、外国人労働者という概念の基本的な定義・範囲を確認していきましょう。

 

そもそも労働者とは?

まず、労働者という言葉には、法律や対象者によって異なる意味・定義があります。

 

採用・雇用するうえでの対象となる“労働者”は、労働関係法(労働基準法、労基法から派生した労働安全衛生法・労災保険法等の労働保護法規、労働契約法、雇用機会均等法など)の適用対象となる個人です。

 

この場合、「労働者」は、「実態として使用者の指揮命令の下で労働し、かつ、賃金を支払われていると認められている人」を指す言葉です。

 

出典:(1)「労働者」の定義(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

 

外国人労働者とは?

外国人労働者にも、先述の労働者と同様にいくつかの意味・定義があります。

 

まず、百科事典(日本大百科全書 ニッポニカ)では、外国人労働者を以下のように定義しています。

 

自国以外で就労する人。移住労働者、移民労働者と呼ばれることもある

 

出典:日本大百科全書(ニッポニカ)「外国人労働者」の解説

 

一般的に日本において“外国人労働者”という場合には、「日本国籍を持たず、日本で働く労働者」を指します。

 

雇用可能な外国人・雇用不可な外国人の違い

外国人労働者は、「合法の就労者」と「不法の就労者」の2つに分けられます。

 

当然ですが、採用対象にできるのは合法的に日本国内で働く権利を持つ外国人労働者です。

 

この章では、合法で就労・雇用可能な外国人労働者の種別を確認しておきます。

 

まず、以下のいわゆる「居住資格」を持つ外国人は、日本人と同様に好きなときに好きな職種・業種の仕事に就くことができます。

  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

また、以下19種類の就労可能な在留資格(活動に基づく在留資格・就労ビザ)を持つ外国人は、一定の範囲内の職種・業種・業務内容に限って就労可能となります。

 

ワーキングホリデーや技能実習生など、法務大臣が指定した活動に限り、就労が認められているという形です。

  • 外交
  • 公用
  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 高度専門職
  • 経営・管理
  • 法律・会計業務
  • 医療
  • 研究
  • 教育
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 企業内転勤
  • 介護
  • 興行
  • 技能
  • 特定技能
  • 技能実習

なお、「留学」や「家族滞在(在留外国人の扶養家族)」などは非就労資格となりますが、資格外活動の許可(包括許可・個別許可)をとることで、週28時間を上限に働くことが可能です。

 

包括許可が想定しているのは、いわゆるアルバイトのような形での就労です。

 

ここまでの説明をまとめると、日本の法律に基づき雇用可能な外国人労働者とは、以下の人たちとなります。

  • 1.活動に基づく在留資格を持つ外国人
  • 2.在留資格が「留学」や「家族滞在」などでも、資格外活動の許可(包括許可・個別許可)を取得できた外国人
  • 3.永住者
  • 4.日本人の配偶者等
  • 5.永住者の配偶者等
  • 6.定住者

出典:日本で働く外国人のみなさまへ(東京外国人雇用サービスセンター)
出典:在留資格一覧表(出入国在留管理庁)
出典:資格外活動許可について(出入国在留管理庁)
出典:在留資格一覧表(厚生労働省)
出典:中小企業における外国人労働者の役割(日本政策金融公庫総合研究所主席研究員 竹内英二)

 

技能実習生は労働者?

労働関係法は、在留資格・居住資格を持つ外国人のほかに、不法入国者・不法滞在者(在留資格を超えて活動している者を含む)にも適用されます。

 

外国人技能実習生も、実習を実施する機関と雇用契約を締結するため、労働関係法における労働者という位置づけになります。

 

出典:スタートアップ労働条件(厚生労働省)

外国人労働者を受け入れるメリット

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企業が外国人労働者を採用対象とすることで、以下の効果・メリットが得られるでしょう。

 

人手不足解消

日本における人手不足は、労働集約型で、かつ求人倍率が高い分野で先行して生じてきました。

 

たとえば、この数十年で、コンビニエンスストアの店員や飲食業、建設業など、非正規雇用者が多くかつ人手不足の分野で外国人雇用が急激に進んだことは承知のとおりです。

 

正規雇用の外国人労働者受け入れも、上記のような人手不足といわれる業界から始まっています。

 

一方で、日本人新卒の採用難易度は、これからどんどん上がっていくことが予想されます。
なぜなら、前述のとおり、これから大卒人口が減少する時代に入るためです。

 

こうした日本国内の状況を考えると、大卒採用をしており、人手不足や採用難に陥りやすい業界、中堅中小企業を中心に、外国人労働者を採用する必要性は上がっていくと考えられます。

 

外国人ならではの能力・視点の獲得

多くの市場でグローバル化が進むなかで、日本企業が成長するには、古くから続いてきた“日本人の正社員男性が中心の組織”から脱却し、女性や外国人を始めとする多様な価値観や視点を積極的に取り入れることが不可欠になっていきます。

 

多様な価値観・視点の重要性は、関係省庁の副大臣級による「外国人との共生社会」実現検討会議でも話題になっています。

 

国でも、高度外国人材にふさわしい魅力ある就労環境の整備を進めるとしています。

 

また、ITエンジニアなど、国内での需給ギャップが大きく、かつ、プログラミングというある種の共通言語がある分野などは、外国人労働者を雇用するほうが能力が高い人材を採用できる可能性も高くなっているでしょう。

 

出典:外国人との共生社会の実現に向けて(中間的整理)「外国人との共生社会」実現検討会議

 

海外進出の機会創出

進出する国の外国人労働者を採用すれば、進出先の市場環境や消費者ニーズの把握がしやすくなります。

 

また、ゆくゆくは現地法人を設立する場合、中核となる外国人材を早い段階から雇用しておくことで、ビジネスの立ち上げ時に生じがちなスケジュールの遅れやリスクを下げやすくなるでしょう。

外国人労働者を受け入れるデメリットや注意点

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外国人労働者を受け入れる際には、以下のデメリットや注意点があります。

 

確認したうえで、事前に対策を検討したり経験企業にアドバイスを求めたりして、受け入れを進めることが大切です。

 

コミュニケーションやマネジメントの難しさ

外国人労働者を受け入れた場合、言葉の壁や価値観の違いによるトラブルが生じる可能性があります。

 

人間関係の問題を防ぎ、全メンバーが働きやすい環境をつくるには、仕事以外でのコミュニケーションの場や相互理解の機会を増やす、日本語があまり得意ではない外国人に対応するために翻訳ツールを導入するなどの必要がある場合もあるでしょう。

 

文化の違いから来る価値観ギャップに対する相互理解も必要です。

 

厚生労働省では、外国人労働者を雇い入れる事業主が遵守すべき法令や、努めるべき雇用管理の内容などを記載した「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を策定しています。

 

外国人労働者を雇用する場合、この指針に沿った職場環境の改善なども求められます。

 

出典:外国人雇用はルールを守って適正に(外国人を雇用する事業主の方へ)
出典:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成十九年厚生労働省告示第二百七十六号)

 

受け入れ手続きの煩雑さ

外国人労働者を雇い入れたり、外国人労働者が離職したりした際には、氏名や在留資格などをハローワークに届け出る必要があります。

 

雇い入れ手続きは、届出対象の外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで変わってきます。注意しましょう。

 

また、対象となる外国人の状況にもよりますが、就労ビザの取得が必要になるケースも多いでしょう。

 

その点で、外国人労働者の採用は、慣れていないと日本人の採用と比べて煩雑な手続きが多いと感じられるでしょう。

 

出典:外国人雇用はルールを守って適正に(外国人を雇用する事業主の方へ)

外国人労働者を受け入れる際の注意点

外国人労働者の受け入れでは、以下の3点に注意する必要があります。

 

在留資格に適合した仕事内容でなければいけない

在留資格に合った仕事内容でなければ、就労ビザが不許可になってしまいます。

 

自社の仕事内容が、外国人労働者の在留資格で行なえる活動に含まれるかどうかわからない場合は、事前に確認する、また就労資格証明書を申請して具体的な内容を確認するとよいでしょう。

 

出典:出入国審査・在留審査Q&A
出典:就労資格証明書交付申請

 

選考基準や労働条件における差別は許されない

「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、日本国籍ではないことや外国人であることを理由とする応募の拒否や、国籍による労働条件面の差別を禁止しています。

 

したがって、外国人労働者の受け入れをするときには、日本人の既存社員と同じ基準での採用判断や労働条件の提示が必要です。

 

出典:外国人雇用はルールを守って適正に(厚生労働省)
出典:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成十九年厚生労働省告示第二百七十六号)

 

労働基準法や健康保険法は日本人と同様に適用される

労働基準法や健康保険法などの労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍を問わず外国人にも適用されます。

 

詳しくは、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」にも記載されているとおりです。詳細を確認しましょう。

 

出典:外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(平成十九年厚生労働省告示第二百七十六号)

外国人労働者を採用する方法

外国人労働者の採用では、以下3つの方法が一般的に使われています。

 

求人媒体の利用

いわゆる求人サイトのことです。以下のような外国人に特化した求人媒体もありますし、dodaなどでも外国人求人を受け付けていることがあります。

  • Guidable Jobs
  • GLORY OF BRIDGE
  • NIPPON 仕事.com

 

人材紹介の利用

高度なスキルや知見、キャリアを持つ外国人労働者を採用したい場合は、人材紹介サービスの利用がおすすめです。

 

人材紹介を利用すると、サービス提供会社に自社の希望要件を伝えることで、データベースの中からマッチする候補者を紹介してもらえます。

 

人材紹介の場合、内定承諾までのサポートもしてもらえます。外国人に特化した人材紹介会社もいくつかあります。
そうした会社であれば、就労資格や就労ビザの申請などに関してもアドバイスをもらえるでしょう。

 

人材紹介サービスは、初めて外国人労働者を採用する企業にもおすすめの手法です。

 

外国人雇用サービスセンターの利用

高度外国人材(日本での就労を希望する外国人留学生、専門的・技術的分野の外国人労働者)に対する就職支援などを行なう厚生労働省管轄の機関です。

 

ガイダンス、インターンシップ、面接会などの詳細は、全国の各施設に要問い合わせとなります。

 

外国人雇用サービスセンターを通じて採用できれば、費用もかかりません。

 

出典:外国人雇用サービスセンター一覧

まとめ

日本の法律で雇用できる外国人労働者は、以下の要件に該当する人たちです。

  • 1.活動に基づく在留資格を持つ外国人
  • 2.在留資格が「留学」や「家族滞在」などでも、資格外活動の許可(包括許可・個別許可)を取得できた外国人
  • 3.永住者
  • 4.日本人の配偶者等
  • 5.永住者の配偶者等
  • 6.定住者

企業が外国人労働者を受け入れると、以下の効果・メリットが得られます。

  • 人手不足解消
  • 外国人ならではの能力・視点の獲得
  • 海外進出の機会創出

ただし、外国人労働者を受け入れる際は、コミュニケーションやマネジメントの難しさや、受け入れ手続きの煩雑さなどの課題もあります。

 

とはいえ、労働生産人口の加速度的な減少は、出生数を見ればわかるとおりです。今後は大卒人口の減少もいよいよスタートしていきます。

 

外国人労働者を活用する必要性は確実に高まっていますので、いまのうちからノウハウを蓄積しておきたいところです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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