第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」相手を真に理解するために大切なこと

第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」相手を真に理解するために大切なこと

 人生の成功をテーマとした書籍『7つの習慣』は、全世界で4000万部、日本国内でも240万部を売り上げ、ベストセラーとしても有名になったビジネス書です。

 私たちの人生を良いものにするために、周囲との良好な人間関係、信頼関係は不可欠です。書籍『7つの習慣』、第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」は、好ましい人間関係の基盤となるコミュニケーションを理解し実践するための習慣です。

 記事では、第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」をテーマに、相手を理解するためのコミュニケーションの原則と第5の習慣の実践ポイントを解説します。

<目次>

第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」とは?

 本章では人間関係の基本となるコミュニケーションの大切さ、そして、第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」とは何か、相手を理解するためにどのようなことが大切なのかをお伝えします。

良い人間関係の基本となるコミュニケーション

 家族や友人、職場の同僚など、普段から接している人に対して、私たちは「相手のことをわかっている」と考えがちです。しかし、本当の意味で“相手のことをわかっている”でしょうか。

 仕事のトラブルや私生活のいざこざを振り返ってみると、「もうちょっと相手の話を聞けていさえすれば……」「お互い合意していたつもりが、とんだ勘違いだった」など、コミュニケーションのすれ違いに起因することがたくさんあります。

 私たちは多かれ少なかれ、「自分のことをわかってもらいたい」「私を受け入れて欲しい」という気持ちを持っています。しかし、コミュニケーションのなかで自分を理解してもらおうとしたり、会話の主導権を握ろうと考えていたりすると、いつまで経っても好ましい人間関係を築くことはできません。

私がこれまでに人間関係について学んだ最も重要な原則を一言で言うなら、「まず理解に徹し、そして理解される」ということだ。この原則が効果的な人間関係におけるコミュニケーションのカギなのである
スティーヴン・R・コヴィー 完訳 「7つの習慣」人格主義の回復

 ほとんどの人は、自分を理解してもらいたいという気持ちが先行するあまり、相手を理解しようとして話を聞くことができていません。しかし、コヴィー博士が言うように、人間関係を成功させるためのコミュニケーションには、「まず相手を理解する」という原則があります。第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」とは、このシンプルな原則を示したものです。

相手を真に理解するために必要なこと

 相手を理解しようとしない限り、私たちは相手の信頼を得たり、良い人間関係を構築したりすることはできません。相手を理解するうえでは、コミュニケーションスキルや対人関係のテクニックが重要と考える方もいるかもしれません。たしかにスキルやテクニックは、人との関わりで重要となる要素です。

 しかし、相手と真の信頼関係を作ったり、相手に影響を与えたりするためには、スキルやテクニックだけでは足りません。

 自分の夫・妻、隣人、上司、同僚、友人と効果的に接し、相手に影響を与えたければ、まずその人を理解する必要がある。
 私があなたに心の中を打ち明けない限り、そして、あなたが私という人間や私の独自の状況や気持ちを理解できない限り、あなたは、私にどういうアドバイスや助言を与えたらいいのか分かるはずもないということだ。つまり、あなたの口から発せられる言葉がいくら正しく素晴らしいものであっても、私の状況にあてはまらないものになってしまう。
 あなたが私の本質を理解し、それに影響されない限り、私はあなたの助言に聞き従い影響されることはない。だからこそ、人間関係において効果的なコミュニケーションを図りたければ、テクニックだけではだめなのだ。
 信頼を築き、相手が本音で話せるような人格の土台の上に、感情移入の傾聴のスキルを積み上げていかなければならない。そして、心と心の交流を可能にする信頼残高を、構築していかなければならないのである。
スティーヴン・R・コヴィー 「7つの習慣-成功には原則があった!」

 上記に引用したように、コヴィー博士はスキルやテクニックだけでは相手を真に理解することはできないと強調しています。相手を真に理解するためには、相手から信頼され、相手が心を開いてくれることが不可欠です。そして、相手が心を開いてくれるかどうかは、コミュニケーションの巧拙や話す内容ではなく、人格や人間性にかかっています。

人格を土台にしたコミュニケーション

 前述のとおり、コミュニケーションを取るとき、相手はあなたの言葉ではなく人格や人間性を見ています。どんなに優れたスキルやテクニックがあったとしても、例えば、「人によって態度や接し方を変える」「言っていることと実際の行動が一致していない」などであれば、相手はあなたを信頼してくれないでしょう。

 もちろん一時的にスキルやテクニックで誤魔化すことはできるかもしれません。しかし、長期的・継続的に誤魔化し続けることはできません。

 つまり、誰かを理解するためには、じつは相手から信頼され心を開いてもらうにふさわしい人格が求められるのです。スキルやテクニックはもちろん大切ですが、それよりもまず、自分自身のあり方や日頃の言動を正すなど、人格を磨くことが相手を真に理解するための第一歩です。

第5の習慣を実践するためのポイント

 ここでは、第5の習慣を実践するための具体的なポイントを解説します。

日常における話の「聞き方」5つのレベル

 第5の習慣を実践するうえでは、「自分のことを知ってもらうよりも先に、相手を理解しようと聴く、相手の身になって聴く」という姿勢が基本となります。私たちが、普段相手の話を聞くときの態度は、5つのレベルに分類できます。

話の「聞き方」 5つのレベル

 レベル1.無視する
⇒聞く努力をしない。
 レベル2.聞く振りをする
⇒聞いているようにみせかけるが、実際は聞いていない。
 レベル3.選択的に聞く
⇒自分の興味や関心を持っているところだけを聞く。
 レベル4.注意して聞く
⇒相手のしゃべっていることに集中し、自分の経験と比較しながら聞く。
 レベル5.感情移入の傾聴
⇒理解しようとして耳と目と心を使い、相手の言葉、意志、気持ちをすべて聴く。

 相手の話を無視するという人はあまりいませんが、忙しいときに「聞く振り」をしてしまったり、部下や家族の話を「自分の興味のあるところだけ聞く」ことをしてしまったりするかもしれません。

 また、相手の言葉にはしっかりと耳を傾けて集中していても、「これはこういうことかな?」「理解するためにこれを確認しよう」「相手が話し終わったら、これをアドバイスしよう」と相手を理解するよりも、自分の都合に合わせて聞いてしまうこともあるでしょう。第5の習慣を実践するために大切なのは、「レベル5.感情移入の傾聴」です。どういう聞き方なのかを次で解説します。

第5の習慣を実現する「感情移入の傾聴」

 じつは、前述したレベル1~4の聞き方と、レベル5の聴き方には大きな違いがあります。レベル1~4までは、自分の見地に立った話の聞き方であるのに対し、レベル5の聴き方は、相手の見地に立った話の聴き方なのです。

 『7つの習慣』では相手の見地に立った話の聴き方を、「感情移入の傾聴」と呼びます。相手を心から理解したいと思うなら、目と耳と心を使って、相手の言葉、意志、気持ちを理解しようとする「感情移入の傾聴」を実践する必要があります。

 感情移入の傾聴は、相手の話の「内容」だけではなく、視線や声のトーンにも心を配り、相手の「気持ち」を感じ取ろうとする聴き方です。すなわち、表面的な言葉だけでなく、「相手はあなたにどのようなことをわかって欲しいのか?」「相手にとってそれがどのような意味を持っているのか?」なども含め、全身全霊で相手を理解するのが感情移入の傾聴です。

「感情移入の傾聴」を実践する3つのステップ

 感情移入の傾聴を通じて、「自分のことを本当に理解してもらえた」と相手が実感できると、初めて相手は本当の意味で心を開いてくれるでしょう。

 以下で「感情移入の傾聴」を実践するための具体的なステップを解説します。

ステップ1.
相手の話の内容を繰り返す。
相手の言った内容をそのまま繰り返すやり方(オウム返し)と、自分の言葉で言い換える方法があります。
ステップ2.
相手の気持ちや感情を言葉にして確認します
ステップ3.
相手の言った内容と気持ちの両方を、自分の言葉にして表現します。

 具体例を挙げて説明します。以下の2つは、「上司であるあなたに対して、会社の部下や後輩が話しかけてきた」という想定で、感情移入の傾聴を実践する具体例です。

【例1】「うちの会社は会議が多すぎるんですよ」と部下・後輩から言われた場合
→「うちの会社は会議が多すぎる、と思っているんだね?」(相手の話の内容を繰り返す)
→「会議が多すぎて面倒だな……と思っているんだね?」(相手の気持ちや感情を言葉にする)
→「うちの会社は会議が多すぎて面倒だな……と思っているんだね?」(相手の話と気持ちの両方を言葉にする)

【例2】「そんな短い納期じゃ、間に合いっこないですよ!」と部下、後輩から言われた場合
→「そんな短い納期では間に合うわけがない、と思っているんだね?」(相手の話の内容を繰り返す)
→「無茶だ!と思っているんだね?」(相手の気持ちや感情を言葉にする)
→「そんな短い納期では間に合うわけがない、無茶だ!と思っているんだね?」(相手の話と気持ちの両方を言葉にする)

 ポイントは2つで、まず相手が言った内容を確認することです。相手の言葉を使っても、自分の言葉で言い換えても大丈夫です。相手が言った内容を「あなたが言ったことはこういうことで合っていますか?」と確認することは「私は聞いていますよ」「理解しましたよ」というメッセージになります。相手は自分の話を聞いてくれているという安心感を得るでしょう。

 また、感情移入の傾聴で大切なもう1つのポイントは、相手の感情を理解しようとすることです。言葉になっている情報だけではなく、相手の表情、声などから相手の感情を理解しようとしましょう。相手の感情は必ずしも正しいとは限りません。だからこそ、疑問形で「悲しかったんですね?」「怒りを感じたんですね?」と確認しましょう。内容に加えて、感情を確認することで、相手は「自分を理解しようとしてくれている」「理解してくれている」と感じます。

 上記例の会話は、そのままやろうとすると違和感があるかもしれません。ただ、初めのうちはぜひ内容の確認、感情の確認、内容&感情の確認という流れを意識しましょう。感情移入の傾聴は、トレーニングを繰り返すことで誰でも身に付けることができます。

 すべての会話で第5の習慣、感情移入の傾聴を実施する必要はありません。しかし、相手と信頼関係を築くことが大切な場面では、ぜひ上記のやり方を参考して実践してみてください。

まとめ

 記事では、第5の習慣「まず理解に徹し、それから理解される」を解説しました。私たちは、コミュニケーションのなかでつい「自分のことを理解してもらおう」を思ってしまいます。しかし、相手との信頼関係を築いたり、良好な人間関係を作ったりするためには、「まず相手を理解する」ことが大切です。

 第5の習慣を実践するためには、感情移入の傾聴が大切です。感情移入の傾聴は、相手を真の意味で理解するための「コミュニケーションの型」であり、スキルやテクニックの一つです。話の内容と相手の感情、両方をしっかりと理解するために、相手に確認しながら聴くことが大切です。

 一方で、第5の習慣をスキルやテクニックとして実践しようとするとうまくいきません。どんなにスキルやテクニックを磨いても、人格が備わっていない限り、相手が心を開いて本音や真実を話してくれることはないでしょう。相手を理解するためには感情移入の傾聴が大切ですが、感情移入の傾聴を有効に使うためには、相手から信頼させる人格や人間性を身に付ける必要がありますし、相手を理解しようとする誠実な姿勢が必要です。

 本記事がコミュニケーションの原則を振り返るきっかけや、感情移入の傾聴を実践するヒントとして少しでも役立てば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役|HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

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