70歳までの就業確保が努力義務に!高年齢者雇用安定法の改正ポイントを解説

更新:2023/03/20

作成:2022/09/02

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

70歳までの就業確保が努力義務に!高年齢者雇用安定法の改正ポイントを解説

少子高齢社会が加速する日本では、生涯現役社会を目指す日本政府によって、高齢者の活躍を促すさまざまな取り組みが行なわれています。こうした施策のなかで企業にとって押さえておく必要がある情報が、2021年4月1日より施行された高年齢者雇用安定法の改正内容です。

 

記事では、高年齢者雇用安定法の概要と2021年4月1日の改正内容、高年齢者就業確保措置のポイントを解説します。そのうえで、高齢社員の雇用にあたって企業が検討すべき施策も紹介しましょう。

<目次>

高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が急速に進行し人口が減少するなかで、経済を維持し、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなく能力を十分に発揮できるようにするために、高年齢者が活躍できる環境整備を図るための法律です。

 

従来の高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保を主眼として、事業主には以下2つが義務付けられていました。

  • 60歳未満定年の禁止(高年齢者雇用安定法第8条)
  • 65歳までの雇用確保措置の実施(高年齢者雇用安定法第9条)

具体的な65歳までの雇用確保措置としては、定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりませんでした。

  • 65歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

なお、継続雇用制度の適用者は原則として「希望者全員」です。

改正高年齢者雇用安定法とは?

高年齢者雇用安定法の改正

 

2021年4月1日に施行される措置や制度変更を総称して、改正高年齢者雇用安定法と呼びます。改正のおもなポイントは、以下の3つです。

  • 70歳までの継続雇用制度
  • 創業支援等措置
  • 高齢者雇用状況報告書の様式変更 など

この章では、改正高年齢者雇用安定法のポイントを詳しく解説します。

 

70歳までの就業機会の確保を努力義務として制定(高年齢者就業確保措置)

2021年4月1日の改正では、従来制度の「65歳までの雇用確保(義務)」に加えて、「70歳までの就業確保」が努力義務として加わりました。今回の改正による努力義務を、高年齢者就業確保措置と呼びます。

 

努力義務を負う対象事業主

高年齢者就業確保措置で努力義務を負うのは、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主です。65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主とも言い換えられます。

 

努力義務の「努力」とは何を指すのか?

改正高年齢者雇用安定法では、企業に以下いずれかの措置を講じる「努力」を求めています。

  • 1.70歳までの定年引き上げ
  • 2.定年制の廃止
  • 3.70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  • (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
  • 4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 5.70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  • a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
  • b.事業主が委託、出資(資金提供)などをする団体が行なう社会貢献事業

上記の定年引上げなどの措置はあくまで努力義務であり、義務ではありません。しかし、何もしなくて問題ないというわけでもありません。

 

上記いずれかの措置を講じなければ、行政からの改善勧告、勧告を無視すれば社名公表などのペナルティもあり得ます。また時代の流れを考えると、今後、努力義務が完全なる義務に強化される可能性も十分あるでしょう。

高年齢者就業確保措置のポイント

思案するシニア男性

 

改正高年齢者雇用安定法では、前述のとおり、70歳まで就業確保措置を講じることを企業の努力義務にしています。ただし、高年齢者就業確保措置では、自社で今すぐ70歳までの雇用を確保しろというのではなく、以下のような対応方法が設けられています。

 

親会社や子会社に加えて、他社での継続雇用も可能

シニア社員が継続雇用で働ける場所の範囲は、年齢によって異なります。従来の高年齢者雇用安定法では、60歳以上65歳未満が対象の場合、自社と特殊関係事業主で継続雇用を行なえるようになっていました。特殊関係事業主とは、自社における以下の関連法人のことになります。

  • 子法人など
  • 親法人など
  • 親法人などの子法人など
  • 関連法人など
  • 親法人など

一方で、改正高年齢者雇用安定法では、65歳以上70歳未満を対象とする場合、自社と特殊関係事業主に加えて、特殊関係事業主以外の他社も範囲にできるようになりました。

 

雇用ではなく業務委託契約の締結も可能

業務委託契約とは、企業が仕事の一部分を外部に委託するときに仕事を受ける人との間で締結する契約のことです。業務委託契約には、大きく分けて以下2種類があります。

  • 請負契約:仕事の完成を依頼し、完成後に報酬を払うことを約束する契約(民法第632条)
  • 委任契約:仕事の完成ではなく、委託した業務の遂行を委任する契約(民法第643条)

先述のとおり、70歳までの継続雇用制度は、企業の努力義務です。そのため、業務委託契約の締結制度の創設をする場合に、過半数労働組合などの同意を得る必要はありません。

 

しかし、シニア社員を業務委託契約の形で雇用確保する場合、外部の個人事業主やフリーランスと同じになるため、シニア社員は社会保険に加入できなくなります。このことから、業務委託契約での雇用確保を導入する場合には、過半数労働組合などとの同意を得ることが理想です。

 

段階的に導入することも可能

現状ではすべての70歳までのシニア社員が働ける環境整備ができていないなどの場合、「今年は66歳まで、3年後に68歳、5年後に70歳……」のように段階的な導入をすることも可能です。

 

ただし、65歳から70歳までのすべての社員ではなく、対象の限定や段階的な対応をすると、当然66~70歳までのシニア社員は年度によって雇用が維持される/維持されないといった差が生じてしまいます。したがって、段階的導入に関しても、過半数労働組合などの同意を得て導入することが理想です。

高齢社員の雇用にあたり企業が取り組むべき施策

これからの時代の企業は、改正高年齢者雇用安定法などによって、シニア社員の雇用などを進める必要があります。シニア社員に活躍してもらうには、ただ雇用するのではなく、以下の取り組みを行なうことが大切です。

 

キャリア支援

改正高年齢者雇用安定法などによって、シニア社員と呼ばれる人が企業で働きやすい時代になっています。

 

一方で、近年の日本では、年功序列制度や終身雇用制度が終わりを迎えたことで、いままで管理職だった社員を一定年齢で現場から外し、専門職などの形で処遇する役職定年制の導入企業も増えるようになりました。

 

また、シニア社員の場合、体力面の低下によって、60代になったタイミングで正社員からパート社員のように働く日数や雇用形態が変わることもあるでしょう。

 

このようなさまざまな変化のなかでシニア社員に活躍してもらうには、50代のうちからキャリアデザイン研修などを実施して「どのようなシニア社員になりたいか?」を思い描いてもらう必要があります。

 

モチベーションへの配慮

たとえば、体力低下によって正社員からパート社員になったり、役職定年制で管理職の肩書がなくなったりすると、シニア社員のモチベーションが下がる可能性があります。

 

この問題を解消するには、いままでの経験や豊富な知識などを活かせるシニアアドバイザーなどの肩書を付与することもおすすめです。ただし、形だけ肩書を付与することは根本的ではありませんので、上述のようなキャリアデザイン研修の実施や本人の経験や強みを生かして貢献してもらえる仕事のアテンドなどが大切です。

 

賃金制度のチェック

2022年4月の年金制度改正では、働くシニア社員が70歳の退職を待たずに毎年、年金額が見直される在職定時改定の創設、また、在職老齢年金制度の見直しなどが行なわれています。

 

こうした制度の変更によって、シニア社員側の待遇に関する要望も変化が生じてきます。企業では、70歳までのシニア社員が働きやすい環境整備だけでなく、自社の賃金制度が新しい年金制度に対応しているかはチェックしておく必要があるかもしれません。

まとめ

高年齢者雇用安定法の改正によって、2021年4月1日より、70歳までのシニア社員の就業確保(高年齢者就業確保措置)が企業の努力義務になりました。ただし、国では、すぐさま継続雇用が難しい企業向けに、以下の対応も可能としています。

  • 親会社や子会社に加えて、他社での継続雇用も可能
  • 雇用ではなく業務委託契約の締結も可能
  • 段階的に導入することも可能

企業は、シニア社員を長く雇用さえすれば良いというわけではありません。シニア社員に活躍してもらうには、キャリア支援やシニアアドバイザーなどの役職を設けるなどのモチベーション向上の仕組みづくりが必要です。

 

一般的な研修は、対象社員の経験値が増えて価値観が固まっていくほど効果性が薄くなるといわれます。ただ、HRドクターを運営する研修会社ジェイックが提供する「7つの習慣®」研修などは、シニア社員向けに実施して大きな実績をあげた成果があります。

 

シニア社員向けのキャリアプラン研修などを考える際には、ぜひ検討の選択肢に入れてみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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