営業研修の内容とは?研修目的やプログラム内容、効果を高めるポイントを解説

2020/11/24

営業は、企業において顧客接点の最前線であり、企業の業績を生み出すコアとなる仕事です。とりわけ高額商材や無形サービスにおいては、どれだけマーケティングが発達しても、顧客の信頼を獲得したり、顧客の問題解決に寄り添ったりする営業の力が必要不可欠です。

従って、企業を成長させるためには、社員一人ひとりの営業スキルを絶えず向上させることが必須です。営業スキルを高めるには、体系的な営業ノウハウの習得が必要です。

営業研修の手法としてOJTを中心に据えている企業は多く、OJTは実践的なノウハウを学ぶうえで有効な手法ですが、Off-JTによる体系的な営業ノウハウの習得と組み合わせることで、より効果的になります。

記事では、Off-JTの営業研修にフォーカスを当てて、営業研修の目的や重要性、実施すべきプログラム内容等を解説します。

<目次>

営業研修を行なう目的とは?

営業研修の具体的なポイント解説に入る前に、「なぜ営業研修を実施するのか」「なぜ営業研修は大切なのか」という前提を確認しておきます。

 

 

営業研修の目的

営業研修を実施する目的は、営業メンバーのパフォーマンス向上であり、企業の業績向上です。営業は顧客接点の最前線であり、業績に直結する仕事です。従って、個々の営業メンバーのスキルを高めることが、企業の業績向上に直結します。

 

もちろん、営業の力だけですべてが解決するわけではなく、マーケティング力、商品・サービス力等の組み合わせが重要です。ただ、その中でも最もゴールに近い、フォワードの役割を担うのが営業です。

 

数多くある研修の中でも、営業研修は研修の目的が非常に分かりやすい研修だといえるでしょう

 

 

なぜ営業研修は大切なのか?

営業スキルは以前から企業の成長に欠かせない要素でしたが、近年、重要性がますます高まっています。

 

変化の要因は、インターネットの発達等によって、営業に求められるレベルが高まってきたことにあります。インターネット上で検索すれば、商品・サービスに関する基本的な知識、選ぶポイント、トレンドなどの情報が容易に手に入れられるようになっています。

 

顧客の知識やリテラシーが高まった結果、「御用聞き営業」や「商品・サービスの紹介営業」には価値がなくなっているのです。

 

代わって求められるようになったのが、顧客の課題や願望をしっかりとヒアリングして、個別の状況に合わせて、課題や願望の解決/実現手段として商品・サービスを提案する「ソリューション営業」です。

 

ソリューション営業を実現するには、顧客との信頼関係を築くことはもちろん、ヒアリング力、自社の商品・サービスに対する理解、競合や周辺領域に関する知見、また、実践ノウハウや顧客事例の知識が必要です。

 

営業という仕事がより高度化する中で、体系的に営業力を強化する仕組みとして、“セールスエネイブルメント”が注目を集めています。その中でも、OJTだけでは身に付けられない体系やノウハウを習得する場として、営業研修が以前にも増して重視されるようになっています。

営業育成におけるOJTの役割とOff-JTの役割

企業の人材育成は、大きくOJT(On the Job Training)とOff-JT(Off the Job Training)に分けられます。

 

OJTとOff-JTでは、身に付けやすい/伝えやすい内容が異なるため、状況に応じて2つをうまく組み合わせることが効果的な人材育成のポイントです。

 

営業育成は、顧客接点の最前線であり、相手がいる仕事だからこそ、OJTで実際に営業同行等をしながら学ぶことが非常に重要です。一方で、OJTは体系的な知識やノウハウを学びづらいという欠点があります。

 

また、営業はコミュニケーションの仕事です。コミュニケーションスタイルは人によって異なりますので、OJT指導者のコミュニケーションスタイルが、必ずしも育成対象のものと一致するとは限りません。

 

営業活動のフレームワークや意思決定のプロセス、商品・サービスやコミュニケーションに関する体系的な知識の習得には、Off-JTの営業研修が向いています。

 

Off-JTだけでもOJTだけでも、効果的な人材育成は完成しません。Off-JTで体系を学ぶことでOJTが吸収しやすくなりますし、OJTでの体験をOff-JTで振り返ることで体験が生きた知恵として身に付きます。効果的な人材育成をしたいなら、OJTとOff-JTの得意領域を理解して、組み合わせて実施しましょう。

 

営業研修で教えるべきスキルとプログラム内容

ここからは、営業研修のプログラムに盛り込むべき内容や教えるべきスキルを具体的にお伝えします。

 

 

ベネフィットの考え方

営業人材の育成においては、“ベネフィット”という概念を理解してもらうことが大切です。

 

ベネフィットは、日本語では、“顧客にとっての価値”といわれます。営業として、自社の商品・サービスを扱っていると、ついスペックや価格、他社との差別化など、自社商品・サービスの機能や特徴に目が向きがちです。

 

しかし、商品・サービスの機能や特徴は、じつは売り手目線の思考であり、顧客にとっては多くの場合、興味ある内容ではありません。

 

マネジメントの父とも呼ばれるドラッカー博士は、「顧客が欲しいのは、ドリルではなく、穴である」といっています。買い手である顧客は、べつに“ドリル”という器具が欲しいのではなく、“ドリル”によって空けることのできる“穴”、例えば、「台所の壁に新しい戸棚を取り付けて、調味料をまとめておけたら、もっと料理がしやすくなる」という願望を実現するための“穴”が欲しいということです。

 

従って、営業活動を行なううえでは、売り手目線で自社商品・サービスの機能や特徴を把握するだけではなく、ベネフィットの考え方に基づいて、“その機能や特徴によって顧客にどんなメリットや効果がもたらされるのか”という思考を持つことが大切です。

 

例えば、自動車を売るのであれば、「燃費が他社の同車種と比べてこれだけ良い」という機能や特徴だけでなく、「毎日車で通勤されている方なら、ガソリン代が月に○万円も減るので、その分、ご家族での外食を増やせます」というベネフィットを考えることが大切なわけです。

 

ベネフィットという概念を理解することが、「顧客が何を実現したい、何を解決するために商品・サービスの購入を考えているのか?」をヒアリングするための前提となります。

 

 

自社のセールスステップ

営業という仕事は、いくつかのステップに分解することができます。

 

例えばB to Bの営業であれば、一般的には「問い合わせ獲得→初回商談の実施→現状課題のヒアリング→商品・サービスの概要説明→案件化→詳細のすり合わせや本提案→クロージング→受注→納品やサービス提供」といった流れになるでしょう。

 

営業研修においては、自社のセールスステップを把握し、それぞれのステップにおけるゴール、つまり次のステップに移行するための条件や必要となる行動やスキルを理解させることが必要です。

 

OJTを行なう際にも、「いまどのステップにいるのか?」「このステップで何を達成しないといけないのか?」といった全体像と各ステップのゴールを理解していることで、ノウハウの吸収や振り返りも容易になります。

 

 

購買心理の理解

営業として安定して成果を上げるためには、営業の原理・原則を知っておくことが重要です。原理・原則を具体化した1つが前述した“セールスステップ”の考え方であり、もう1つが“購買心理の理解”です。

 

購買心理の理解、つまり買い手はどのように意思決定をするのかを知るうえでは代表的な考え方が「4つの不」という概念です。4つの不とは、買い手が商品やサービスの購入を決めるまでに生じる心の壁「不信・不要・不適・不急」示す言葉です。

 

不信: この会社、この相手を信じていいのか?

不要: この課題解決/願望は、リソースを割いて実現する必要があるのか?

不適: この課題/願望にとって、自分/自社にとって、この商品・サービスが適切なのか?

不急: いま、このタイミングで意思決定する必要があるのか?

 

セールスステップを前に進めるためには、購買心理を理解して、「不」を解除していくことが必要です。「4つの不」は営業の一般的な原理・原則であり、「不」を解除するためのノウハウは、セールスステップを前に進めるための実践的な技術でもあります。

 

 

傾聴やコーチングスキルを使ったヒアリングスキル

顧客の立場に立って考えると想像しやすいですが、営業パーソンが一方的に話し続けたり、都合を押し付けたりする営業方法では、なかなか商品やサービスを購入しようという気持ちにはなりません。

 

一方、相手が自分の課題や願望をじっくり丁寧に聞いてくれて、問題の解決方法や理想に近づくための方法として商品やサービスを提案してくれたなら、「商品やサービスを検討してみようかな」と思えるはずです。

 

営業活動は、商品・サービスの特徴をプレゼンする場ではなく、顧客の課題や願望を把握し、それを実現するための手段として自社の商品・サービスを提案する場です。

 

従って、何より大切なのは、顧客の課題や願望をヒアリングするスキルです。顧客の話に丁寧に耳を傾け、表情や声のトーンにまで注意を払い、顧客が本当にいいたいことや伝えたいことを引き出す「傾聴力」の習得を目指しましょう。

 

また、聴くだけではなく、課題解決や願望が実現した先にあるもの、なぜ実現したいか、手を打つ必要性などを顧客から引き出す質問力も重要です。

 

顧客自身に購買する必要を確認してもらったうえで、「理想と現状とのギャップを埋めるために何をしなければいけないのか」を顧客の立場で一緒に考えていくことができれば、商談成立の可能性はぐっと高まるでしょう。

 

 

クロージングスキル

営業研修においては、クロージングスキルの向上を目指すプログラムも必要不可欠です。クロージング力が弱ければ、他のスキルがどんなに高くても営業成果は出ません。

 

営業の受注とは、“顧客の意思決定”です。クロージングといっても、無理やり相手に意思決定を迫るわけではなく、意思決定に向けて、相手が意思決定できる条件を確認していく、先方が引っかかっている内容を確認する、といったプロセスを丁寧に進めていくことが大切です。

 

ときには、商談をだらだらと長引かせるのではなく、相手の可否を決める背中を押してあげることも必要です。

 

 

商品・サービスに関する知識

もちろん、自社と自社の商品・サービスに関する知識は、営業にとって必要不可欠です。単に機能や特徴をインプットするだけではなく、ここまで紹介したベネフィット、セールスステップ、購買心理を踏まえて、

 

・自社や商品・サービス、そして、自分自身を信頼してもらうための紹介方法

・商品・サービスのベネフィット、“顧客にとっての価値”の理解

・ベネフィットが実現する根拠となる機能や特徴

・どんな課題が解決したり、何が実現したりしたかという顧客事例

・目の前の顧客にとって共感できる顧客事例

 

といった視点で知識をインプットすることが重要です。

営業研修を効果的にするための研修設計と実施のポイント

続いて、営業研修の効果性を高める3つのポイントを解説します。研修を検討・実施する際に、ぜひ確認してください。

 

 

ポイント① 自社の営業で何を強化すれば成果が上がるか?を明確にする

極端にいえば、営業研修の目的は、業績を上げることです。従って、目的を達成するためには、自社の営業で何がボトルネックになっているかを明確にすることが重要です。ボトルネックが明確ではないままに、薄く広い内容で営業研修をやってもなかなか成果に繋がらないでしょう。

 

場合によっては、弱点の解決策として研修が適切でないことや、研修だけでは解決しないこともあります。研修だけで解決できる問題なのかどうかも同時に見極めて、多角的な対策を打つことも重要です。

 

 

ポイント② 誰のどのような数字を動かすための研修なのかを明確にする

ポイント①の内容を少し重複しますが、営業活動は数値でプロセスを把握することができます。例えば、受注額、受注件数、受注単価、受注率、案件数、案件単価、案件化率、商談数…といったプロセスです。

 

これらの数や率が改善されることで、最終的な業績が改善されるわけです。当然の話ですが、「案件単価を改善する」ための研修と、「商談数を増やす」ための研修では、内容がまったく違います。

 

また、研修対象が、未経験の新人層なのか既存顧客を抱えている中堅営業なのかでも、研修内容とポイントは変わってきます。

 

何を強化すれば成果が上がるのかと併せて、誰のどんな数字を動かしたいのかを明確にすることで、研修目的・ゴールの解像度を高めましょう。

 

 

ポイント③ 現場とのブリッジングをしっかりと行なう

研修で身に付けた知識は、実際の営業現場で活用できなければ意味がありません。知識を実際の業務に活用できるように、しっかりとブリッジングすることが重要です。

 

研修全体の設計でいえば、「研修 → 現場での実践 → フォローアップ(オンライン上のフォローやフォロー研修)」というプロセスを組むことが大切です。また、細かなところでは、研修内で使う単語や扱う事例、ロールプレイングの題材等を、自社の単語や営業スタイル、現場で活かせるものにしておくことも重要です。

 

外部の営業研修を選定する際のポイント

最後に外部の営業研修を利用する際に意識したいポイントをご紹介します。

 

 

講師は営業で成果を上げてきたか? 得意分野と研修目的は一致しているか?

まずは、営業研修を依頼する場合には、講師の営業経験は必ず確認したほうが良いでしょう。一般的に、現場の営業は“理論倒れ”を嫌います。営業としての実績や経験を踏まえて、理論や体系から現場での実践やテクニックまでを教えられる講師ではないと、なかなか効果が上がりづらいでしょう。

 

また、営業と一口にいっても、顧客層や営業スタイルはさまざまです。講師の得意分野と研修目的がずれていると、いくら実力ある講師でも研修成果が出ません。「講師がどういった営業に取り組んできたか」という細かい部分までしっかりと確認しておくことをおすすめします。

 

 

体系的かつ実践的か?

Off-JTの営業研修を行なうメリットの1つは「体系的」な知識を身に付けられることです。とくに自社で、営業活動に関する共通言語や体系がない場合には、前述したようなセールスステップや「4つの不」などの体系的な知識を教えることで大きな効果が出ます。

 

一方で、「体系的」な知識というのは、理論的なものになりがちです。研修内容は、机上の空論や理論倒れではなく、「自社の営業活動においては、どう当てはめることができるか」、そして、「このステップにおいては、明日の商談で実践できるノウハウは何か」という実践的なものである必要があります。

 

少し矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「営業活動で成果を上げるための体系的なもの」であり、かつ「明日から自社の現場で使える実践的なもの」かどうかを確認しましょう。

 

 

「実践する」「成果を上げる」ことへの仕組みがあるか?

どんなに優れたノウハウを学んでも、実践しなければ意味がありませんし、成果も出ません。従って、研修の中に学んだ内容の実践させるための仕組みがあるかをチェックしましょう。

 

例えば、行動目標を参加者自身に立てさせる取り組みや、実際の営業を想定したロールプレイング等が、実践を促す仕組みに当てはまります。また、実践のチェックやフォローアップまでを提案してくれる、相談に乗ってくれるようであれば、良いでしょう。

まとめ

インターネットの発達等により、顧客が営業に求めるレベルは上がっており、ソリューション営業の実現に向けて、体系的な知識を身に付けられる営業研修の場は重要なものになっています。

 

営業力を高めるためには、ベネフィットの概念やセールスステップ、購買心理の理解、また、ヒアリングやクロージングスキルの向上が必要となります。実践的なノウハウを身に付けるOJTと体系的な知識を身に付けるOff-JTをうまく組み合わせて、自社の営業力を高めていきましょう。

著者情報

株式会社ジェイック 取締役 古庄 拓

HRドクター 編集長

株式会社ジェイック 取締役 古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等 twitterはコチラ。ぜひご覧ください。 古庄拓/ジェイック取締役 https://twitter.com/tfurusyo

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