組織への帰属意識(エンゲージメント)を高める効果と7つの方法!

2020/04/05

組織への帰属意識(エンゲージメント)を高める効果と7つの方法!

高度経済成長期のように、“決まった仕組みを社員一人ひとりが実行するだけで企業が成長する”時代は終わりました。産業のサービス化が進む中で「社員一人ひとりがサービスの担い手である」ことが増えていますし、変化が早く複雑化が進むVUCA時代にトップダウンですべてを決めることも出来なくなっています。

 

従って、社員一人ひとりが経営者意識と主体性を持って仕事に取り組むことが、組織の存続と成長にとって必要不可欠です。その中でいま改めて注目を集めているのが、組織への帰属意識、エンゲージメントという概念です。

 

本記事では、社員の帰属意識(エンゲージメント)を高める効果とエンゲージメントを高めるための具体的な手法を解説します。

<目次>

「帰属意識」とは?「エンゲージメント」として再注目!

帰属意識(エンゲージメント)の意味と、ビジネス領域で帰属意識(エンゲージメント)が改めて注目されている理由は、下記の通りです。

 

 

帰属意識(エンゲージメント)とは?

ビジネス領域で使われる帰属意識(エンゲージメント)は、「企業の一員であるという意識」や「仕事や組織、職場への愛着」を指します。日本では戦後から高度経済成長にかけて、「大家族主義」などの表現で組織の一体感を重視してきました。

 

終身雇用を背景に“一生働く職場”である企業に対して、社員が帰属意識を持つことは当然とされてきました。

 

しかし、バブル崩壊後のリストラや終身雇用の崩壊、転職も当たり前となる中で、帰属意識という概念は下火となっていました。また、「企業の言うことに盲目的に従う」ことによるコンプライアンス違反やブラックな就労環境などがマスコミで取り上げられる中で、「愛社精神」という言葉も使われなくなりました。

 

しかし近年、欧米を中心に、「エンゲージメント」という概念で、再び帰属意識が注目されています。HR TechやICTの進化により、社員の愛社精神やモチベーションを数値化し、事業活動への影響を可視化する取り組みが進んだことが背景です。帰属意識/エンゲージメントの上昇が、生産性の向上や収益性の改善、離職率の低下に繋がることが立証されてきたのです。

 

帰属意識は「企業の一員である」という意味で、「企業が主、社員が従」という色合いも強いですが、エンゲージメントは「社員と企業の結びつき」というニュアンスで、企業と社員は対等であるという思想があるように感じます。「嫁入り」と「エンゲージリング」の違いにも近いでしょうか。

 

ただ、この記事では、帰属意識とエンゲージメントは同じように、「社員と企業の結びつき」であり、「仕事への誇りとやりがい」「共に働く仲間との繋がり」「企業との心理的な距離・繋がり」などを指すものとして扱います。

 

 

帰属意識(エンゲージメント)が低下するとどうなる?

帰属意識(エンゲージメント)が低下するとどうなるのでしょうか。帰属意識(エンゲージメント)を「仕事への誇りとやりがい」「共に働く仲間との繋がり」「企業との心理的な距離・繋がり」の3つの要素で考えると分かりやすくなります。

 

エンゲージメントが低い状態とは、極端に書けば、「仕事に誇りややりがいは感じられず、職場の人間関係も希薄で、企業とは給与だけで繋がった状態」です。仕事は言われたことを淡々とやるだけであり、より良いアウトプットや貢献をしようという意識は生まれません。周囲の仕事に対しても他人事ですし、職場をより良くしようという意識もありません。

 

当然、生産性やパフォーマンスは落ちますし、嫌なことがあったり、条件がよい職場が見つかったりすれば、すぐに退職することでしょう。帰属意識(エンゲージメント)の低下は、企業にとって出来る限り避けたい状況であるということです。

高い帰属意識/エンゲージメントが生み出す4つの効果

社員の帰属意識/エンゲージメントは非常に重要

 

企業にとって、社員の帰属意識(エンゲージメント)は非常に重要であることを解説しました。さらに一歩踏み込んで、高い帰属意識が生み出す効果を具体的にご紹介します。

 

 

効果1.収益性と生産性の向上

帰属意識(エンゲージメント)の高い社員は、企業のベクトルに沿って主体的に高い目標へ挑戦するようになります。「やらされている仕事」「対価の分だけ働けばいい」ではなく、「価値ある仕事をやっている」「組織やサービスをより良くしていきたい」という心理からくるものです。

 

設定した目標に対してのコミットメントも強いですし、周囲の社員とも協力して仕事をするようになります。

 

 

効果2.顧客満足度の向上

仕事に対してやりがいや誇りを感じている状態ですので、質の高いサービスや顧客に満足してもらうことに対しても前向きです。

職場での協力関係も作れている状態ですので、顧客満足が高まることは言うまでもありません。産業がサービス化する中で、“従業員の熱意やモチベーションが顧客満足度に与える影響はより大きくなっている”と言って間違いありません。

 

 

効果3.定着率の向上

エンゲージメントが高い状態になると、社員と企業は給与だけの繋がりではありません。「ミッションやビジョンを実現するためのコミュニティの一員」であり、「自分が組織を作っている」という感覚になります。

 

顧客満足度が高まり、収益性や生産性が上がった分が待遇として社員に還元されていけば、より帰属意識(エンゲージメント)も高まり、好循環が生まれることは言うまでもありません。

 

さらに、帰属意識(エンゲージメント)が高い状態では、何か問題が発生した際にも、“退職”という選択肢を選ぶのではなく、“まずは相談する”というプロセスが踏まれることも定着率が向上する要因です。

 

 

効果4:成長性への効果

帰属意識(エンゲージメント)は、組織への所属意識の高さだけではなく、組織との心理的な距離の近さを表します。経営陣との距離感や心理的な安全性も確保された状態です。従って、社員から業務改善の提案、職場環境や制度への要望も活発に出てきます。

 

また、経営陣や管理職から部下に対しても、新規事業の相談、チャレンジングな仕事の打診などが気軽に行われ、ビジネス組織として非常に健全な関係を築き、成長していくことが見込まれます。

 

帰属意識(エンゲージメント)を高める具体的な7つの方法

社員の帰属意識/エンゲージメントを高める

 

帰属意識(エンゲージメント)を高める意味や効果を解説してきましたが、帰属意識(エンゲージメント)を高めるためにはどのような取り組みを行えば良いのでしょうか。帰属意識を高めるための具体策を6つ紹介します。

 

 

1.インナーブランディング

帰属意識(エンゲージメント)を生み出す大きな要因の1つが自社や事業への誇りです。「組織がやろうとしていることへの共感」であり、「自分たちは社会や顧客に喜ばれる事業を行っているという自信」です。通常、「ブランディング」と言うと、“社会や顧客からのイメージ”を指しますが、インナーブランディングで扱うのは、“社員から自社へのイメージ”です。

 

広報や人事部門が担うことが多くなると思いますが、“自社のミッションやビジョン”“実際にやっている事業との繋がり”“事業の価値、社員が生み出した価値を知らせる顧客の声”などを社内に発信・浸透させることが重要です。

 

インナーブランディングに取り組むうえでは、リッツカールトンの「リッツカールトンミスティーク」など、ブランドのシンボルとなるような逸話や伝説の存在が重要です。

 

 

2.仕事の価値ややりがいのアウトプット

インナーブランディングにもリンクしますが、社員に“自分自身の仕事の価値ややりがい、逸話を語ってもらう”ことも重要です。“仕事の価値ややりがいのアウトプット”には研修を使うことも効果的です。例えば、ミッションやビジョンを取り上げる中で、以下のような質問をディスカッションしてもらったり、アウトプットしてもらったりする形です。

 

  • 自分の仕事はどんな価値があるのか?
  • 顧客にどんな価値を届けているのか?
  • 自分は何のために働きたいのか?
  • どこにやりがいがあるのか?
  • 自分はどんな仲間と働いているのか?

 

 

3.ミッション・ビジョン・バリューの浸透

ミッション・ビジョン・バリューの浸透も、インナーブランディングと紐づいた重要なテーマです。1や2の取り組みとも近い部分があります。ミッション・ビジョン・バリューの浸透は、“日常の中で触れる機会があるか”が重要です。

 

経営陣が会議やミーティングの中で話すことや、朝礼などの場をどう使うかが重要です。インナーブランディングで紹介したリッツカールトンが、クレドを浸透させるために行っている朝礼は非常に有名です。他にも、ミッション経営で有名な企業は、朝礼を有効に使っているケースが多いです。

 

 

4.福利厚生の充実

インナーブランディングやミッション・ビジョン・バリューの話から、いきなり現実的な話になりますが、社員の帰属意識(エンゲージメント)を高めるうえで、福利厚生も重要な要素です。福利厚生は企業から社員に「あなたたち一人ひとりが大切な存在であり、あなたたちの人生やキャリアを尊重している」というメッセージを送る機会だからです。

 

帰属意識(エンゲージメント)の向上に繋がる福利厚生は、単に“待遇を良くしましょう”ということではなく、上記のメッセージを送ることを意識して取り組んでみてください。

 

社員に不平等だと思われることは避けなければなりませんが、1人の社員、1つの属性に対する企業の対応が他の社員に対するメッセージにもなります。福利厚生の充実という以外にも、ハラスメントや規律違反に対する対応も同様のメッセージになります。

 

 

5.多様な働き方の受け入れ

福利厚生の充実の中でも、働き方の多様化に対する受け入れが最近では重要なテーマになりつつあります。サテライトオフィスの活用やリモートワーク、時短勤務など、近年は働き方の多様化が急速に進んでいます。多様化に対する理解を示し、個々の事情に応じて働きやすい体制を整えることは、結果的に社員の帰属意識を高めることに繋がります。

 

「100人100通りの人事制度」を公言するサイボウズの取り組みは、多様な働き方の受け入れや福利厚生の充実を「帰属意識(エンゲージメント)向上のメッセージ」として発信している一つの好事例です。

 

 

6.経営層との活発なコミュニケーション

組織内の意思決定を行う経営層と社員のコミュニケーションは、帰属意識(エンゲージメント)を高めるうえで重要です。組織規模が50人を超えると、一般的に組織内に階層やチームを設けて、業務の分担やコミュニケーションの効率化を行います。

 

スパン・オブ・コントロールやマジカルナンバー7という概念で、「1人が直接マネジメントできる人数は7人が上限である」とされています。“階層”を作るのか、“プロジェクト型”の組織を作るのかの違いはありますが、マネジメントはスパン・オブ・コントロールの原則に従うと言っていいでしょう。

 

そうやって組織が大きくなると、“経営層との距離感”は遠くなっていきますので、社員と経営層の距離を近づける仕掛けが重要になってきます。経営陣から身近な距離でミッションやビジョンを聞いたり、経営陣も自分たちと同じように喜びや怒り・悩みを持った1人の人間であると理解してもらったり、社員の声や提案を経営陣が聞いたりと言った場を意図的に作る仕掛けです。

 

面談などのかしこまった機会ではなく、日常での雑談やレクリエーション、ランチ、飲み会など、社員が気軽にコミュニケーションを取れる機会を設けることが良いでしょう。

 

 

7.社員間のコミュニケーション促進

組織の階層化が進んだとき、経営陣との距離が遠くなることと並ぶ弊害が“縦割り”です。他部署、他部門、他職種などと距離が遠くなり、“仲間”だと感じづらくなってしまうのです。心理的な距離感を近づけるためには、経営陣とのコミュニケーションと同じように、日常業務の合間やレクリエーション、ランチなどの機会を通じて、他部署との交流が進む仕掛けを設けることが必要です。

 

定期的な組織の健康診断

帰属意識(エンゲージメント)を維持・向上させていくうえでは、定期的に「組織の健康診断」を実施することもポイントです。

「組織の健康診断」とは帰属意識や組織へのエンゲージメント計測です。計測することで、“どの世代や部門に課題があるか”や“行った取り組みに効果があったか”が分かり、帰属意識(エンゲージメント)向上の取り組みを効果的に継続できるようになります。

 

帰属意識(エンゲージメント)を計測するための調査は匿名のアンケート調査で行われるケースが多いです。匿名にすることで、「本音」を答えてもらうようにすることが重要です。また、外部ツールやサービスを使うことで、社員が安心して回答できるようにすることも有効です。

 

重要なことは実施結果をちゃんと分析し、原因を考察して、施策を実行することです。帰属意識(エンゲージメント)の施策は短期間で効果を発揮するものは少ないですので、半年から1年に1回ぐらいの実施が適切です。

 

ギャラップのQ12といった調査もありますし、GPTW「働きがいのある会社」調査などもあります。他にも組織診断は多数ありますので、価格や目的に照らし合わせて選択してください。最低3年間は同じ検査を使わないと、施策を打って検証するサイクルは動かせません。3年間は継続することを考慮して、ツールは選択すると良いでしょう。

まとめ

日本では一時期廃れていた「帰属意識」や「愛社精神」といった概念ですが、欧米での検証結果を踏まえて、「エンゲージメント」として再度注目を集めています。

 

帰属意識(エンゲージメント)は、「社員と企業の結びつきの強さ」を示すものであり、「仕事への誇りとやりがい」「共に働く仲間との繋がり」「企業との心理的な距離の近さや繋がり」などの側面があります。

 

帰属意識(エンゲージメント)の向上は、収益性や生産性、顧客満足度、定着率などにプラスの効果があることが実証されており、企業にとって帰属意識(エンゲージメント)を高めることは重要テーマであるといえます。

 

帰属意識(エンゲージメント)を高める取り組みは、インナーブランディング、仕事の価値ややりがいのアウトプット、ミッション・ビジョン・バリューの浸透、福利厚生の充実、多様な働き方の受け入れ、経営層とのコミュニケーション、社員間のコミュニケーション促進などの手法があります。

 

いずれも即効性のあるものではありませんが、継続することで確実に効果は上がります。組織診断を使って、定期的な“組織の健康診断”を行って状態を把握しながら、帰属意識(エンゲージメント)の向上に取り組んでください。

 

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

1974年生まれ 鹿児島県種子島出身。1997年筑波大学第一学群社会学類を卒業。新卒でハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。専門分野は新人と若手育成、モチベーション・エンゲージメント改善、女性活躍等

【著書、登壇セミナー】
・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
・ゆとり世代の特徴と育成ポイント
・新人の特徴と育成のポイント 主体性を持った新人を育てる新時代の学ばせ方
・“新人・若手が活躍する組織”は何が違う?社員のエンゲージメントを高める組織づくり
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