インセンティブ制度とは?具体的な事例やメリット・デメリット、導入効果と注意点を紹介

2020/08/18

企業が業績を上げていくためには、社員一人ひとりのモチベーションを維持・向上するための対策が必要です。社員のモチベーション向上のための効果的な対策の一つとして考えられるのがインセンティブ制度です。インセンティブ制度は非常に効果的である一方、扱いには注意が必要です。

 

記事では、インセンティブ制度導入の注意点や具体的な事例を紹介しているので、インセンティブ制度の導入に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

<目次>

インセンティブ制度とは?

インセンティブとは、社員のモチベーションを高めるためにおこなわれる仕事への動機付け施策の総称です。従来は、インセンティブと言えば「目標を達成した際の報奨金」の意味で用いられることが多かったのですが、近年では、精神的な報酬を含めて、より広い意味で用いられることが多くなっています。

 

 

歩合給との違い

従来までの「報奨金」を指すインセンティブ制度は、歩合給制度と混同されるケースもあります。しかし、歩合給制度とインセンティブ制度が根本的に大きく異なる箇所が一点あります。

 

歩合給制度は仕事の成果や業績に連動して給与が決定される制度であり、チームや個人での成果を挙げることによって初めて高い評価が得られるということです。従って、歩合給制度が導入されている会社では、実績を挙げれば稼げる反面で、一般的に基本給は低めに設定されています。

 

一方、インセンティブ制度の場合は、基本給プラスアルファの部分がインセンティブとして評価される仕組みとなります。基本給として標準的な給料が設定され、それを上回る業績を上げた社員や部署に対して、報酬や評価を与えるという仕組みです。

 

 

金銭的報酬だけではない

インセンティブ制度の報酬は金銭的報酬だけに限りません。

 

従来までの「インセンティブ」と言えば「金銭的な報酬」というイメージが強いかもしれませんが、その他にも、精神的な報酬や特別休暇の付与、人事評価への反映、ポイント制度等、さまざまなインセンティブの与え方が可能です。

 

なお、インセンティブの付与は、その時々の判断ではなく、十分に注意を払ったうえでの制度設計をおこなうべきです。とくに対象者が限定されるような場合には、社内に不公平感が生じたり、既得権化したりするような現象も生じますので、注意が必要です。

 

インセンティブ制度のメリット、デメリット

モチベーション向上に効果的なインセンティブ制度ですが、メリットとデメリットがあります。メリットをうまく生かしつつ、デメリットが生じないように工夫をしていく必要があります。この章では、インセンティブ制度のメリットとデメリットを確認していきます。

 

 

インセンティブ制度のメリット

インセンティブ制度の主なメリットは以下の3点です。

 

1.社員のモチベーションが上がる

インセンティブ制度は、うまく機能すれば、社員のモチベーションを上げることができます。とくに、「頑張ることで目標達成できる可能性が十分にある」というラインにインセンティブを設定すれば、モチベーション向上に大きな効果があるでしょう。

 

また、「後少しで達成できる」といった場合に、最後の頑張りを後押しすることにもインセンティブ制度が役立ちます。社員一人ひとりの努力が業績に結び付けば、組織全体のパフォーマンスアップも期待できるでしょう。

 

2.意欲の高い人材採用に繋がる

インセンティブ制度は「成果を挙げた社員に適切に報いる」という趣旨の評価制度です。従って、成果主義型の評価制度にと並んで、適切なインセンティブ制度の存在は、意欲の高い人にとっては、望ましい評価制度であり、採用選考等における魅了付けにも繋がります。

 

3.社員間の競争意識を促す

MVP制度やチーム別売上対抗戦等の制度を設定することにより、社員間に競争意識を促すことができます。HRドクターを運営するジェイックでは、各種の表彰制度を運用していますが、半期評価において、社員から最も羨望の対象となるのは、MVT(Most Valuable Team)となっており、各拠点やチーム等の半期目標でも、「MVTを取る!」といった目標が掲げられることも多く、チームの一体感を生み出すこと等に繋がっています。

 

インセンティブ制度のデメリット

インセンティブ制度は上記のように効果的な制度ですが、留意点もありますし、組織風土や目標設定のやり方等によっては組織に悪影響を及ぼすこともありますので、注意が必要です。

 

1.個人プレーが横行する危険性

もとから個人主義が強い組織において、個人単位の業績目標によるインセンティブを導入すると、個人プレーが加速する危険性があります。

 

HRドクターを運営するジェイックでは、ミッション経営を導入する前はかなり個人主義が強い組織風土でした。そこに個人業績と四半期賞与が連動するインセンティブ制度を導入した結果、顧客や情報の囲い込みが日常的に発生する組織となってしまった経験があります。

 

とくに個人で仕事が完結するような業務の場合、個人主義を後押しするインセンティブを導入すると、チーム内での協力や協調が薄れ、社員が自分自身の売上や成果を求めるようになりがちです。また、個人成果に直結しない仕事が後回しにされてしまう等、組織としての健全性が損なわれてしまう危険性があります。

 

2.短絡的な施策や結果が重視される危険性

インセンティブ制度は、基本的には一定の期間を区切って、その期間でのプロセスや業績等を基に金銭的・精神的な報酬を与えるものになります。つまり「その期間内で成果として評価される行動だけを動機付けする」ということであり、逆に「その期間内で成果にならない、成果として評価されない行動がおざなりになる」というリスクを含んでいます。

 

経営の世界で、「経営者を業績や株価等で評価する傾向がいき過ぎると、自分の任期だけ数字の帳尻を合わせるような経営に走ってしまい、本質的な問題解決が放置されたり、時として粉飾に近いグレーな施策がおこなわれたりする」という問題が指摘されますが、インセンティブ制度も同じです。

 

3.「インセンティブ中毒」を起こしたり、内発的動機を損なったりする危険性

インセンティブ制度は、社員の意欲を引き出す施策になりますが、一方で、インセンティブ制度が日常化すると、『インセンティブがないからやらない』と逆にモチベーション低下を引き起こす原因にもなります。

 

とくに販促キャンペーン等で、特定商品や期間の売上に対するインセンティブを設定すると、キャンペーン期間が終わると売上が落ちた、といった話をよく聞きます。その結果、常にキャンペーンをやるようになり、徐々にキャンペーン自体の効果が落ちていく、また、より強いインセンティブを設定しないと社員を動かせなくなるという「インセンティブ中毒」現象に陥ります。

 

また、インセンティブは金銭的なものにしろ、精神的なものにしろ、外からの刺激でモチベーションを高める「外発的動機」になります。マネジメントの世界でよく知られた心理学の実験に以下のようなものがあります。

 

<実験>

絵を描くことが好きな幼稚園児たちのグループを3つに分けました。グループ1は「絵を描いたらお菓子がもらえることを、あらかじめ子供たちに知らせ、実際に報酬を受け取りました」。

 

グループ2は「絵を描く前にはお菓子がもらえることを知らせていませんでしたが、絵を描いた後、ご褒美にお菓子をあげました」。

 

グループ3は、「お菓子がもらえるとは伝えず、描いた後もあげませんでした」。 2週間後、この3グループに、お菓子のことも何も伝えずに、ただ絵を描いてもらいました。各グループ、どういう反応になったでしょうか?

 

<結果>

グループ2と3の幼稚園児は、前回同様、絵を描くことを楽しんだが、グループ1の幼稚園児は、絵を描くことに興味を示さなくなった。

 

<解説>

一度、報酬のことを知ってしまうと、今度は「報酬がないとそのこと自体に興味を示さなくなってしまう」ということです。自主的な行動に対してご褒美を与えてしまうと、内発的動機付け(好き/やりたい)が損なわれることが示された実験結果です。

 

仕事も同じで、「ある行動」に対して「内発的動機付け」がされているのであれば、不用意にインセンティブ等の報酬(外発的動機付け)を用意すると、「次からは、その行動をする時には、報酬(外発的動機付け)がないと動かなくなる」可能性があります。

 

先ほどのキャンペーンの話と近いものがありますが、内発的動機付けがされている行動に対して、外発的動機付けをすることはリスクもあるということが分かります。

インセンティブ制度を導入する際の注意点とリスク対策

インセンティブ制度は効果的な施策ですが、導入する際には、前の章で解説したようなデメリットを踏まえて、注意点を押さえて導入することが大切です。この章では、インセンティブ制度導入時に注意したい5つのポイントを解説します。

 

1.インセンティブ制度のバランスを意識する

インセンティブ制度を考える時には、報酬体系を金銭だけではなく、名誉、承認等の精神的なリターンとハイブリッドにして、うまくバランスを取ることが重要です。精神的な報酬は例えば、制度として盛り込まなくても、全社員の前で名前を呼ぶ、経営陣がコメントする、等も効果的です。

 

金銭的な報酬は、即効性があり強力ですが、先に書いたように内発的動機を損ねやすかったり、「評価=金銭」といったギスギスした組織風土をもたらしたりするリスクもあります。作りたい組織風土を考えて、うまくバランスを取りましょう。

 

また、時間軸についてもバランスを検討しておくと良いでしょう。月次等の短期間でのインセンティブだけでなく、半期や通期、また、継続的な取り組みに対するインセンティブ等、社員の目線が短期にいき過ぎず、継続的な取り組み、地道な行動の積み重ね等がちゃんと実施されるようには目を向けましょう。

 

2.インセンティブ制度の対象者を意識する

インセンティブ制度の対象者、というのは2つの意味があります。一つは「制度自体に参加できる対象者」です。例えば、「営業職」や「○○部門」のように一部のメンバーのみ参加できるインセンティブ制度が多くなると、参加できないメンバーに不公平感が生じます。ある程度、目を配って実施しましょう。

 

もう一つは、「インセンティブをもらえる対象者」です。インセンティブ制度はモチベーションを上げるためのものですが、盲点になりがちなのが「インセンティブをもらえないことが分かるとモチベーションが下がる」という部分です。

 

例えば、「トップ3人を表彰」「月間10件以上の受注を表彰」という制度を作った場合、「トップ3人には入れなそう」「今月10件は無理そう」ということが見えた瞬間にやる気が失われがちです。そういう制度がダメなわけではありませんが、リスクも踏まえて、設計していきましょう。

 

3.業績だけを対象にしない

金銭と精神的な報酬のバランス、時間軸のバランスと同じように、インセンティブの対象とするものもバランスを考えましょう。インセンティブ制度は、評価制度と同じように、「会社として何を評価するか」という経営のメッセージです。制度が最終的な業績指標だけに偏ると、それが経営のメッセージだと受け止められます。

 

もちろん業績は重要ですが、社員にして欲しい行動はそれだけではありません。例えば、HRドクターを運営するジェイックは四半期の賞与評価においてもインセンティブ制度を取り入れていますが、「業績貢献」「全社サポート」「イノベーション」という3軸での評価をおこなっています。直接的な業績貢献と同じように、サポートやイノベーションを重視・評価するというメッセージです。

 

4.導入後に経過を観察する

インセンティブ制度を導入したら、経過の観察が非常に重要です。「社員の行動にどのような影響を与えているか?」という視点から、インセンティブ制度自体を検証します。

 

インセンティブ制度がプラスの効果を発揮しているか、また、ネガティブな影響が生じていないかをウォッチしておきましょう。ネガティブな影響の例としては、社員のモチベーションが低下してしまったり、人間関係に悪影響が生じたり、業績に直結しない仕事をおろそかにしてしまったりする、等が挙げられます。

 

5.定期的にゼロベース思考で検討する

インセンティブ設計をする際には、定期的に状況を俯瞰してゼロベース思考で検討しましょう。経営状況は時間の経過とともに変化します。以前は機能していたインセンティブ制度がいまも適切に機能しているとは限りません。

 

インセンティブ制度には、制度ごとに「導入した目的」と「促進したい行動」があるはずです。それがうまく実現しているかをゼロベースで検討して、「いまやっていないとしたら新規で同じ制度を始めるか」を検討しましょう。一度制度を動かし始めると、惰性で継続してしまいがちです。無駄が生じないように定期的にゼロベースで検討しましょう。

インセンティブ制度の導入事例

最後にインセンティブ制度を活用している企業の事例を3件紹介します。表彰制度や賞与として支払われる等、さまざまなタイプのものがあります。

 

1.リクルートグループ

リクルートグループは、積極的にインセンティブ制度を活用している企業です。中でも、主要なものにGIB(ゴール・イン・ボーナス)という3か月ごとの目標に対する報奨金制度があります。「四半期の目標達成」に対して、「金銭」で報いるという王道のインセンティブ制度です。

 

GIBには、個人単位ではなく、全社を対象としたもの、部署別のもの等、いくつか種類があり、対象組織の目標を達成すると、対象組織の全社員に支給されます。個人単位ではなく、成果に向かって、組織全体で協同し、みなで努力し分かち合う風土の醸成を目的としています。

 

2.サイバーエージェント

IT大手のサイバーエージェントでは、「退職金制度が業績連動」になっており、インセンティブ制度的な色合いを持っています。同社の退職金制度は、勤続インセンティブ制度とも呼ばれており、30歳から積み立てを開始して、勤続10年以上、40歳から受け取ることが可能です。退職金の積み立ては、業績と連動し、営業利益の一定率が配分されるという仕組みになっています。

 

金銭的なインセンティブですが、通常のインセンティブ制度とは違い、「会社の業績が将来の退職金に反映される」という仕組みで、大きなスケールと時間軸で、社員に「自社の業績」を意識させる仕組みだと言えます。

 

3.メルカリ

メルカリでは、mertip(メルチップ)というインセンティブ制度を活用しています。メルチップは、社員同士での感謝の気持ちをリアルタイムで感謝し称賛できる制度であり、同時に社員同士でインセンティブを贈ることのできる制度になっています。

 

最終的な業績ではなく、従来の評価制度で見落とされがちな直接的な実績にはならないサポートや企業のビジョンや理念を体現した仕事を評価して、社員同士の連携を深めることに効果を発揮しています。

 

金銭的なインセンティブ制度でもありますが、それ以上に精神的なインセンティブとしての効果を持っていることが非常にユニークな制度です。

まとめ

インセンティブ制度には、社員のモチベーション向上や企業の業績アップに繋がる非常に大きなメリットがある反面、制度設計を誤ると、社員のモチベーション低下や仕事の質の低下を招いてしまう危険性もあります。インセンティブ制度の留意点や導入のポイントを把握して、ぜひ効果的なインセンティブ制度を設定してください。

 

記事では、金銭的なインセンティブ以外に、精神的な報酬を与えることの重要性も紹介しました。精神的な報酬、心の栄養の与え方については、以下の資料も参考になりますので、ぜひご一読ください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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