『7つの習慣』第7の習慣「刃を研ぐ」とは?再新再生の習慣を実践するコツ

更新:2022/04/22

作成:2021/12/02

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

スティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』は、現在まで全世界で4000万部、日本国内でも240万部の売上げを誇る大ベストセラーとして有名です。多くのビジネス誌でも「非常に影響力がある」「役に立つビジネス書」として取り上げられています。読んだことはなくても、「名前は耳にしたことはある」という人も多くいるでしょう。

 

『7つの習慣』は名前のとおり、私たちの効果性を高め人生を成功に導くための習慣が、7個解説されています。前半にあたる第1から第3の習慣は、自分自身の効果性を高め、精神的な自立を実現する「私的成功」の習慣です。続く第4から第6の習慣は、他者と良い人間関係を築き、相互協力してより大きな成功を実現する「公的成功」の習慣です。そして最後、第7の習慣は、第1から第6までの習慣を実践するうえで最も重要な「自分自身」の価値を維持して、高めていく習慣になっています。

 

今回の記事では、第7の習慣「刃を研ぐ」をテーマに、「刃を研ぐ」とは何か、私たちが刃を研ぐべき4つの側面、具体的な行動や実践テーマを解説します。

<目次>

第7の習慣「刃を研ぐ」

『7つの習慣』における第7の習慣は、第1~第6の習慣の効果性を高め磨き続けていくための習慣となります。まず第7の習慣「刃を研ぐ」の概要や重要性を解説します。

 

第7の習慣「刃を研ぐ」とは

物理学の法則の一つに「エントロピーの法則」があります。エントロピーの法則とは、“世の中のあらゆるものは放っておくとどんどん劣化する”という法則です。エントロピーの法則は私たち自身にも当てはまります。私たちが持っている能力や効果性、信頼性はどんどん失われてしまいます。

 

イメージしやすい例をいくつかご紹介します。

  • 仕事で必要な知識やノウハウを10年間アップデートしなかったらどうなるでしょう?
  • 仲の良かった友人と10年間連絡を取らなかったら信頼関係はどうなるでしょうか?
  • 健康維持の取り組みをしなければ、20代30代40代と年齢を重ねるなかでどうなるでしょうか?

 

自分のメンテナンスを怠っていると、能力や効果性、信頼性はどんどん失われてしまうのです。第7の習慣「刃を研ぐ」は、自分自身を最新再生の状態に保つための習慣です。使い続けてボロボロになった刃物も、研ぐことによって再び切れ味を取り戻します。私たちも同様に自身の「刃」を研ぐことで、長期的、継続的に高いパフォーマンスを発揮できるのです。

 

刃を研がないとどうなるか?

では刃を研ぐことを怠ると、実際にどのような事態に陥ってしまうのでしょうか?「刃を研ぐ」の由来でもあるイソップ童話のエピソードを紹介しましょう。

 

 

ある日の朝、旅人が山の中を歩いていました。

 

旅人が深い森の中をしばらく行くと、ノコギリで木を切り倒している木こりがいました。

夕方になり、旅人は同じ道をたどって帰りを急ぐことにしました。

 

すると、朝と同じ場所で木こりが一生懸命に木を切り続けています。

様子を見ると、あまり作業ははかどっていないようです。

 

旅人が気になってよく見てみると、

木こりが使っているノコギリの刃は、すっかりボロボロで刃こぼれしています。

 

見かねた旅人は、木こりに声を掛けました。

「木こりさん、木こりさん!朝から遅くまで一生懸命だけど、あんまり作業が進んでないようだね。

一息入れて、ノコギリの刃を研いだらどうだい?」

 

木こりは答えました。

「馬鹿なことを言っちゃいけないよ!刃を研ぐ時間なんてこれっぽっちも無いんだ。

とにかく急いで1本でも多く木を切らなきゃいけないんだよ!!」

 

 

エピソードを読むと、「刃を研げばいいのに」「ひと休憩して刃を研げば効率が上がるのに」と思ってしまいます。しかし、自分を振り返ってみたとき、毎日やるべきことに追われたり、忙しい日々を過ごしていたりするうちに「刃を研ぐ」ことを忘れていることはないでしょうか。

 

木こりにとってノコギリが大切な商売道具であるように、私たちにとって一番大切な武器は自分自身です。自分自身の刃を研がないということは、ボロボロになったノコギリを研がずに木を切ろうとする木こりと同じなのです。

 

刃を研ぐことによって、第1から第6の習慣を効果的に実践することができるようになる

私たちは自分自身の刃を研ぐことによって、身体の健康が保たれ、知識や能力が磨かれ、精神的にも安定して、周囲との人間関係も維持できます。

 

体調が悪かったり、イライラしていたり、周囲との関係がギクシャクしていたら、思考や行動にも大きな支障が出てしまうに違いありません。必要な知識をアップデートできなければ、ビジネスにおける人間関係や成果にも悪影響が出るでしょう。刃を研いで自分自身を良い状態に保つことは、第1~第6の習慣を実践するうえで大切なのです。

「刃を研ぐ」4つの側面

ノコギリの切れ味を良くするためには、刃の片側だけあるいは先端だけを研いでもうまくいきません。刃全体をまんべんなくしっかり研ぐ必要があります。私たちもどこかに偏ることなく、バランスよく自分自身の刃を研ぐことが大切です。

 

コヴィー博士は、刃を研ぐうえでは、4つの側面をバランス良く磨くことが重要だと話しています。4つの側面とは、「肉体」「精神」「知性」「社会・情緒」です。以下で4つの側面を詳しく解説します。

 

肉体的側面

身体が健康でないことには、元気に活動することはできません。体調が悪ければ、精神や思考にもネガティブな影響があるでしょう。肉体的側面を磨くとは、自分の健康に気を配り、身体を大切にするということです。具体的には、体に良いものを食べる、十分な休養をとってリラックスする、定期的に運動する、などが挙げられます。

 

精神的側面

私たちは日々ストレスを受けながら生きています。適度なストレスや緊張は集中力などにもつながりますので、ストレスがすべて悪いわけではありません。しかし、過度なストレスは身体や精神に悪影響をおよぼしますし、思考を自由に巡らしたりアイデアを生み出したりするためにはリラックスや心の安定が大事です。

 

精神的側面を磨くとは、自分の内面や価値観を育て、安定した精神状態を維持するということです。精神的側面で刃を研ぐやり方は人によって適した方法は異なります。

 

・心が癒される音楽を聴く

・好きな本を読む

・落ち着いた環境で瞑想する

・自然の中に身を置く

・ミッションステートメントを見直す

 

など、自分の心を落ち着かせたり、安定させたりする方法を見つけましょう。

知的側面

知的側面を磨くとは、読書や勉強など、新しい知識や学びを得る活動です。

 

・本を読む

・資格の勉強をする、

・セミナーに参加する

 

などが該当します。総務省統計局の調査*によれば

・社会人の1日の勉強時間は平均6分

・社会人の4割の人は月に1冊も本を読まない

という結果が出ています。

 

成果をあげるためには、一定の知識を身に付け学び続けることが大切です。コヴィー博士も定期的に優れた本を読むこと以上に自分の精神を養う方法はないとして、幅広いジャンルの読書をすることを勧めています。現代では、本を読む以外にも動画や音声など、学び方はいろいろありますので、自分に合った方法を見つけて習慣化しましょう。

*総務省統計局「平成 28年社会生活基本調査」 http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html

 

社会・情緒的側面

人間は社会的動物であり、孤立して生きていくことは困難です。社会・情緒的側面で刃を研ぐことは、他者や社会と良好な関係を維持するうえで欠かすことのできない活動です。

 

社会・情緒的側面で刃を研ぐ活動には、家族や友人と連絡をとったり、地域のボランティアに参加したり、身近な人に励ましの言葉をかけたりといった、愛情や感謝の気持ちを持って人と関わる活動が挙げられます。

第7の習慣を実践するポイントは?

第7の習慣「刃を研ぐ」を実践するうえでは、先ほど紹介した4つの側面をバランス良く磨いていくことが大切です。実際に自分自身の4つの側面を磨くための活動を考えてみることをおススメします。

 

HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、新人研修や管理職研修などの社員研修を提供しています。『7つの習慣』研修もその一つで、本記事を執筆している私も普段は研修で登壇しています。本章では私自身がやっている刃を研ぐ活動の紹介も含めて、実践するポイントをご紹介します。

 

刃を研ぐ習慣の活動事例

第7の習慣「刃を研ぐ」を実践するには、4つの側面における具体的な行動に落とし込み、習慣化やスケジュールすることが大切です。例として、私自身が習慣にしている活動を紹介します。

 

【肉体的側面】

・1日3食、規則正しい食事を摂る

・6時間以上の睡眠を確保する

・駅や建物の移動で階段を使う ⇒ 一人で2フロア以下の移動なら階段を使う

 

【知的側面】

・資格取得の勉強をする ⇒資格勉強の書籍を毎日1ページ以上読む

・セミナーを受講する ⇒1ヵ月に1回、社内外のセミナーに参加する

・毎日新聞を読む ⇒流し読みでも全ページざっと目を通す

 

【精神的側面】

・ミッションステートメントを見直す ⇒年末に見直す時間を取る

・芸術鑑賞 ⇒3ヵ月に1回は美術館やコンサートなどに行く

・自然散策 ⇒3ヵ月に1回は家族で自然と触れ合える場所に行く

 

【社会・情緒的側面】

・職場の人と食事に行く ⇒週1回はランチを一緒に取る

・友人に電話をする ⇒月初に今月連絡する人を1人決める

・人の話を最後まで聴く(人の話を途中で遮らない)

 

毎日実行する活動と定期的に実行する活動に分けて取り組む

刃を研ぐ活動は大きく分けると、毎日実行する活動と定期的に実施する活動とに分けて考えると実践しやすくなります。また、上記の例で記載しているとおり、なるべく具体的な表現にして数量や頻度を決めることも大切です。

 

習慣化という視点でいくと、毎日(内容によっては毎営業日)実行する活動を1/3から半分ぐらい入れると良いと感じます。毎日実行するために大切なことは、「実行ハードルを上げ過ぎないこと」です。特に新しく実行する習慣、身に付けたい習慣はなるべくハードルを下げましょう。

 

例えば、「ビジネス書を読む」活動をしたいと思ったとき、

 

1)1週間で1冊以上のビジネス書を読む

2)毎日20分ビジネス書を読む

3)ビジネス書を毎日1ページ以上読む

 

のうち、どれが一番継続しやすいでしょうか? 間違いなく3つ目です。

 

刃を研ぐ習慣を設定する際、まずは低いハードルから始めて、継続して成功体験を積むことがポイントです。毎日「1ページ以上」読めば、日によっては5ページ、10ページと読むこともあるでしょう。そして、自分なりに読む習慣が付いた時点で、少しハードルを上げていくといった形で取り組むと刃を研ぐ習慣を継続しやすいでしょう。

 

高すぎる目標を設定して自分との約束を守れないと、逆に自己肯定感や自己効力感を損ねてしまう結果にもなりかねません。もちろん「いつの資格試験で合格する」といった明確な目標と「必ず実行する」という強い決意のもとに、目標達成から逆算してハードルを設定することは大事です。

 

一方で、習慣化したいという際には、「自分との約束」を必ず守れるように低いハードルで設定して、しっかりと継続することも、「刃を研ぐ」を実践するノウハウの一つです。

定期的な活動を実践するために重要な第3の習慣

刃を研ぐ活動のうち、「定期的に実施する活動」を実行するうえでは、第3の習慣の考え方が非常に大切です。

第3の習慣「最優先事項を優先する」を一言でいうと、「大切なことを優先する」習慣です。

 

第3の習慣では、物事を「緊急/緊急でない」「重要/重要でない」の観点で4つに分類します。4つのうち「緊急度は低いが重要度が高い」物事を「第2領域の活動」と呼び、第2領域の活動にしっかりと時間を割くことが大切だといいます。

 

 

刃を研ぐ活動は、基本的に第2領域の活動です。「セミナーを受講する」「ミッションステートメントを見直す」「友人に電話する」などは、どれも緊急ではありません。今日やらなくても困らないのです。しかし、長期的にみれば、私たち自身が成長したり、成果をあげる能力を維持したり、心の安定を経るために大切な活動です。

 

第2領域の活動を実践するためには、「大きな石を先に入れる」考え方が大切です。“大きな石”とは最優先事項や重要な活動を指します。そして、「最優先事項を優先する」ためには「大きな石を先に入れる」、つまり、先にスケジュールリングすることが大切なのです。第2領域の活動、刃を研ぐ活動は緊急ではありません。したがって、先にスケジューリングしないと、どんどん後から急ぎの仕事や飛び込みの活動で埋まってしまいます。

 

したがって、「3ヵ月に1回何かをする」であれば、年間スケジュールで4回の日付を決めてしまう、1回目の日程だけ決めて1回目をしたときに次の日程を決めてしまう、などと「大きな石を先に入れる」を実行することが、定期的に刃を研ぐ活動を実践するポイントです。

まとめ

記事では、第7の習慣「刃を研ぐ」をテーマにお伝えしました。第7の習慣は、自分をリフレッシュし、より大きな成果を生み出すことができるよう、自分自身を再新再生させる習慣です。第1から第6の習慣を継続して実践できる状態、心身の健康や人間関係を維持するためにも第7の習慣は不可欠です。

 

第7の習慣は、肉体、知性、精神、社会・情緒という4つの側面でバランスよく刃を研ぐことが大切だといいます。4つの側面に、毎日実行する習慣、定期的に実践する活動という区分を組み合わせて、ぜひ刃を研ぐ活動を実践してください。

 

脳神経学などの研究を踏まえて同じ活動を21日間続けると習慣化の入り口に立つといわれます。新しい習慣を身に付けようとする際には、ぜひ21日間の継続を意識していただくことが一つのポイントです。記事内容が、人生の効果性を高めるヒントとして少しでも役立てば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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