ジョブディスクリプションとは?求められる背景と活用法を紹介

更新:2022/07/14

作成:2022/07/06

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

ジョブディスクリプションとは?求められる背景と活用法を紹介

 ジョブ型人事制度の導入を考える際には、ジョブディスクリプションの作成が必要になります。具体的な内容や作成方法を確認して、採用・育成・評価の活用イメージをつけましょう。本記事ではジョブディスクリプションの役割や作り方を紹介します。

<目次>

ジョブディスクリプションとは?

ジョブディスクリプションとは?
 
 ジョブ型人事制度に必須となるジョブディスクリプションは最近耳にすることも増えた単語ですが、どのようなものを指すのでしょうか。ジョブディスクリプションに記載される内容や作成の目的、期待できる効果を確認します。

業務内容が詳細に記載された文書

 ジョブディスクリプションは、Job(仕事・職務)のDescription(説明)という英単語の意味どおり、特定の業務に関する業務範囲や求められる成果などを詳しく示した文章です。日本語では職務記述書とも呼ばれます。

 ジョブディスクリプションに記載される主な項目は、“具体的な職務内容”“期待される成果”“必要とされる知識・スキル・資格”“周囲との関わり方”などです。

 また、雇用形態、勤務地、勤務時間、待遇、福利厚生など、通常の求人票などと同じように働き方や待遇の記載する場合もあります。

職務内容の明確化が目的

 ジョブディスクリプションの最大の目的は、職務内容の明確化です。

 ジョブディスクリプションは後述する“ジョブ型雇用”が一般的である米国で発展してきた概念です。雇用の流動化が進み、また、分業が進むなかで「あなたの担当業務はこれで、こういう成果が求められる」と明確に記載することで、業務の範囲・目標・責任をはっきりさせて、仕事に関するあいまいさを排除する意図で使われてきました。

 ジョブディスクリプションがない状況では、企業とメンバーとの間で目的や目標の認識にズレが生じかねません。ある業務を誰が行なうのかのもめごとが発生する恐れもあります。しかしジョブディスクリプションがあれば、これらのリスクの回避が可能です。

適正な評価や人材採用に効果的

 ジョブディスクリプションは、整備することで採用や人事評価にも効果を発揮します。

 例えば人事評価であれば、ジョブディスクリプションで求められる職務と期待される成果が明確になっているからこそ、評価者と評価対象者との間で評価に対する認識のズレが発生しにくくなります。

 また、人材採用にジョブディスクリプションを活用すれば、採用したい人材の基準をより明確化することが可能です。特に専門性を求めるキャリア採用は、求める仕事内容や成果、必要なスキルを明確にすることでミスマッチが生じにくくなりますし、求職者の質も向上します。

ジョブディスクリプションが注目される背景

ジョブディスクリプションが注目される背景
 
 ジョブディスクリプションは、ジョブ型人事制度を導入するうえで欠かせないものです。ジョブ型人事制度が注目を集める背景と、ジョブディスクリプションとの関係を確認します。

メンバーシップ型雇用制度の限界

 これまでの日本企業では、メンバーシップ型の雇用が主流でした。メンバーシップ型雇用制度とは、ゼネラリストの育成を見越して人材を採用する制度です。

 メンバーシップ型雇用は、いわゆる“就職”ではなく“就社”の概念で、採用企業も“この仕事をしてもらうプロフェッショナル”ではなく“長期勤務してくれる総合職”を採用する考え方です。日本企業の発展を支えてきた新卒一括採用や年功序列といった仕組みもメンバーシップ型雇用に紐づくものといえます。。

 メンバーシップ型雇用は愛社精神を持ったゼネラリストを育成するうえでは有効ですが、専門職が育ちにくいという欠点があります。仕事の専門化が進み、ITエンジニアやAIエンジニア等をはじめとするプロフェッショナル人材がとくに求められるなかで、注目が集まっているのがジョブ型の雇用・人事制度です。

 なお、ジョブ型の雇用・人事制度に注目が集まるもう一つの背景は、プロフェッショナル人材の確保と並んで、同一労働同一賃金への対応です。近年、働き方改革の一環として、企業には同一労働同一賃金への対応が義務化されています。

 同一労働同一賃金は、幹部候補である正規雇用の“総合職”を重用する形で設計されている日本のメンバーシップ型雇用・人事制度よりも、明確に“業務内容”を定義して業務に対して賃金を設定するジョブ型の雇用・人事制度との相性がよくなっています。

ジョブ型人事制度の導入に不可欠なジョブディスクリプション

 メンバーシップ型雇用制度の欠点が企業競争力の減退につながっているなかで注目を集めているジョブ型人事制度は、欧米では主流となっており、日本でも大手企業を中心に導入する企業が増えています。

 ジョブ型人事制度は、職務の範囲や求められる結果を決めたうえで採用等を実施するする制度です。専門性の高い即戦力を採用しやすいため、競争力を高められるメリットがあります。

 また、業務内容ごとに賃金が明確に決まるため、同一労働同一賃金と相性がよく、さらに獲得競争となっている専門人材を確保できる給与テーブルを設計しやすいメリットもあります。

 ジョブ型人事制度を導入する場合、当然、該当する職務の内容を明確にしておく必要があります。したがって、職務内容や期待成果を詳細に言語化したジョブディスクリプションは、ジョブ型人事制度の導入に欠かせない要素だということです。

ジョブディスクリプションの記載事項

ジョブディスクリプションの記載事項
 
 ジョブディスクリプションにはさまざまな項目を記載する必要があります。本章ではジョブディスクリプションに記載される項目と記載内容を解説します。

具体的な業務内容と責任範囲

 ジョブディスクリプションの最重要項目は、業務内容と責任範囲です。あいまいに記載するのではなく、できるだけ具体的に書くことが大切です。

 具体的な業務内容を書く際には、重要度の高い業務や対応頻度の多い業務から記載するのが基本です。割り振られる業務量や期待される成果にも触れましょう。責任範囲の項目では、職務等級の権限範囲も記載するのが一般的です。

 ジョブディスクリプションの業務内容と責任範囲は、同じ職種でも企業に応じて変わります。また、企業の状況が変われば業務内容と責任範囲も変わりますので、定期的に見直して最新の状態を保つことも重要です。

職務を遂行するために必要なスキル

 ジョブディスクリプションには、職務の遂行に必要なスキルや知識も記載することが一般的です。

 業務内容や責任範囲と同様に、業務遂行に求められるスキルや知識・資格もできるだけ具体的に書くのがポイントです。求めるものを明確にすることが社内で人材育成する上でも、外部から適切な人材の応募を集めるうえでも有効です。

 ただし、募集時にあまりに範囲を狭めてしまったり理想論に走りすぎたりすると、求職者の極端な減少を招きかねません。社内で実際に任せている人の水準でMUST要件を作成して、“あればなお可”をWANT要件として記載するようなことが望ましいでしょう。

体制、待遇、評価など必要事項

 業務内容・責任範囲や求められるスキル以外でジョブディスクリプションに記載されるのは、採用活動で必要となる項目です。たとえば、給与・待遇・勤務地・勤務時間・休日・勤務形態・福利厚生・評価制度などです。

 どの程度までジョブディスクリプションに記載するかはジョブディスクリプションを作成する目的にもよりますが、企業全体の人事制度や一般的な待遇と異なる部分がある場合は整理しておくとよいでしょう。

ジョブディスクリプションの作成方法

ジョブディスクリプションの作成方法
 
 実際にジョブディスクリプションを作成する場合は、どのような流れで作業を進めていけばよいでしょうか。本章ではジョブディスクリプションの作成方法を紹介します。

1.ヒアリングにより業務内容を把握

 ジョブディスクリプションを作成する際は、最初に対象となる仕事の業務内容を把握する必要があります。業務の実務者や監督者にヒアリングを実施して、まず現状の業務内容を整理しましょう。

2.情報を精査し業務内容や責任範囲を明確に

 現場でのヒアリングにより現状を把握できたら、情報を精査して業務内容や責任範囲を明確にしましょう。業務を細分化したうえで、重要度や頻度により分類する必要があります。

 最適な定義を決めるためには、軸となる業務を明確にしておくことが重要です。現在行なっている業務をすべて含めるのではなく、状況に応じて除外・追加が必要になる場合もあります。

 ジョブディスクリプションの作成が求められる背景はジョブ型人事制度の導入であり、ジョブ型人事制度の大きな目的は、専門性の向上による生産性アップや優秀な専門人材の確保です。

 ヒアリングにより得た情報をそのまま羅列するだけでは、ジョブ型人事制度の導入効果も得にくくなるでしょう。対象となる部署の生産性向上につながるよう、レベル感も考慮して記載内容を検討することが大切です。

 ただし、前述のとおり、ジョブディスクリプションの内容が現状とかけ離れた理想論になってしまうと運用できません。バランスを考えて作成しましょう。

3.業務内容や職位に合わせて求める成果や待遇を決定

 業務分析と範囲・責任の明確化が完了したら、必要に応じて求める成果や待遇面等の情報を記載しましょう。ジョブ型人事制度は、ジョブサイズとジョブグレードで報酬を決定するのがおすすめです。

 ジョブサイズとは業務の難易度や業務量から総合的に判断したレベルを指し、基本的にはジョブサイズが大きいほど報酬も高くなります。また、ジョブサイズに役職や職位を加味して報酬を決める際の基準がジョブグレードです。

 なお、ジョブ型の雇用制度を導入する際は賃金テーブルとの調整も考慮する必要がありますが、市場の相場観を考慮することが重要です。設定したジョブ内容に対して市場の相場よりも低すぎる内容で待遇を設定すれば、採用できないばかりか人材の流出を起こすことになります。

4.人事評価制度の連携を検討

 前述したとおり、ジョブディスクリプションで求める成果や待遇等に踏み込む場合は、人事評価制度との連携が不可欠です。ジョブ型人事制度を導入してジョブディスクリプションを作成する際は、並行して現行の人事評価制度も見直すことになるでしょう。

 また、部分的にジョブ型の人事制度とジョブディスクリプションを導入する場合には、現行の評価制度や給与テーブルとの兼ね合いはきちんと調整しましょう。ジョブ型の対象者とそうでない社員との間で公平性を保てなくなったり、どちらかの対象者から不満の声が上がったりするようなトラブルを避けることが必要です。

ジョブディスクリプションの効果的な使い方

ジョブディスクリプションの効果的な使い方
 
 ジョブディスクリプションは一度作成したらそのまま放置するのではなく、定期的な見直しを行ない、常に最新の状態を保つことが大切です。

 組織の状況が変わったり、外部での技術進化等が生じたりするなかで、職務内容に変化が生じることはよくあります。古いジョブディスクリプションを使い続けていると、適切な人事評価や採用ができなくなる恐れがあるでしょう。

 また、待遇面に関しては転職市場の相場観との調整も必要です。前述したとおり、相場観と大きな乖離が生じると、採用がうまくいかないばかりか、離職を生みかねません。年1回、人事異動を検討する前など、定期的にジョブディスクリプションを見直す機会をつくることが大切です。

ジョブディスクリプションとジョブ型人事制度の注意点

ジョブディスクリプションとジョブ型人事制度の注意点
 
 ジョブディスクリプションやジョブ型人事制度の導入には、以下に挙げるようなデメリットやリスクもあります。注意点を把握して、悪影響をおよぼさないように対策を検討しておくことが大切です。

ゼネラリストの評価が難しくなる

 ジョブ型人事制度は、スペシャリストの採用・育成に主眼をおいた人事システムともいえます。ジョブディスクリプションを適切に運用することで、優秀なスペシャリストを採用したり育成しやすくなったりするでしょう。

 一方で、ジョブ型人事制度ではジョブディスクリプションによって仕事内容や求める成果が規定され、分野を横断するゼネラリストは育てにくくなります。

 企業が組織である以上、スペシャリストだけでなくチームや部門をまとめるゼネラリストの存在は不可欠です。特に複数職種をまたいでマネジメントするゼネラルマネージャーや幹部候補の育成をどのように行なうかはきちんと考えておく必要があります。

現行の人事制度との調整が不可欠

 現在、日本企業の主流となっているメンバーシップ型人事制度は、ゼネラリストの採用・育成を主眼としたシステムです。メンバーシップ型人事制度を採用している企業が部分的にジョブ型を導入する場合、現行制度とのズレが生じますので、調整が不可欠です。

 ジョブ型人事制度は一部の専門職を対象に部分的に導入するのか、全面的に切り替えるのか、自社の組織構成や人事戦略に基づいて検討しましょう。

まとめ

 ジョブディスクリプションは、ジョブ型人事制度に必須となる、特定業務に関して業務内容や責任範囲、求められる成果、業務遂行のために必要なスキル・経験などを記載した文章です。

 優秀なスペシャリスト人材の確保度などを目的にジョブ型人事制度を検討する際には、メンバーシップ型とジョブ型の違いをしっかり理解したうえで、自社の現状に適した導入方法を考えましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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