ピープルアナリティクスとは?Googleなどで進むHRtechの活用術

人材ネットワークのイメージ

AIなどによるデータ分析や解析の技術が進んだ近年、組織開発や人材マネジメントの分野でピープルアナリティクスに注目が集まっています。
 

記事では、ピープルアナリティクスの意味や主な分析対象、導入の流れなどを解説します。HRを科学する、という考え方に興味がある方は、ぜひ記事をご覧ください。
 

 

<目次>

ピープルアナリティクスとは?

人に関するデータのイメージ

ピープルアナリティクスは、企業内のさまざまなデータ、特に「人」に関するデータを分析することで、人事領域に関する意思決定、組織開発や人材育成等の精度や生産性を高めようとする取り組みです。
 

ピープルアナリティクスが注目される背景

従来まで組織における「人」のマネジメントは、感覚に依存することが多い傾向がありました。

<組織における人のマネジメント>

  • 採用
  • モチベーション管理
  • 配置
  • チームワーク
  • 人材育成

など
 

しかし、HRtechやAIなどが進化した近年、データの蓄積・分析が容易になったことで、データをもとにした分析や意思決定が進んできました。
 

ピープルアナリティクスの考え方は、心理的安全性を一躍有名にしたGoogleのプロジェクトアリストテレスなどで非常に有名になりました。また、日本においては、神戸大学服部泰宏教授の「採用学」や日立製作所でのピープルアナリティクス導入などによって、認知が広がっています。

 

ピープルアナリティクスの主な分析対象

組織・人材のイメージ

ピープルアナリティクスの登場によって、これまでは大手企業が人事コンサルティング会社に数千万円規模のプロジェクトなどで依頼していた以下のような分析が、一般企業でもクラウドサービスなどを使って行なえるようになりました。
 

採用活動の適正化

従来までの採用活動は、

  • 採用ターゲットの設定
  • 面接基準

などが感覚値で実施されていることが多くありました。しかし「採用したい」という人物像や「面接で良い」と感じる人物像が、入社後に活躍している人物像とずれていることもあります。
 

ピープルアナリティクスを導入して、採用選考時の評価や適性検査の結果から入社後の定着・活躍データまでを一貫して分析することで、採用すべき人材特性を活躍から逆算して設定したり、精度の高い採用活動を実施したりすることが可能になります。
 

ハイパフォーマー分析

ハイパフォーマーとは、ある業務で特に優れたパフォーマンスを示す人材です。ピープルアナリティクスを通じて、ハイパフォーマー分析を行なうことで、一種の“特殊人材”であるハイパフォーマーを社内から発掘することができます。
 

また、ハイパフォーマーの活躍パターン分析等を通じて「どのパターンで活躍することが近道か」「活躍するためにどこを伸ばせばいいか」を示し、既存社員の人材育成を効果的に実施することも可能になります。
 

退職予測

退職予測は、ピープルアナリティクスを用いて、退職リスクが高い社員や階層を特定する手法です。
 

退職者の過去データ、また社員の特性、年齢や性別、勤続年数、職位滞留年数、人事評価などを踏まえて退職率を算出したり、また「退職した社員がどういった行動をとっていたのか?」という行動特性モデルを構築したりします。
 

退職予測の精度は、

  • ① 予測の適合率 ⇒辞めると予測された人のうち、実際はどれくらい辞めたかの割合
  • ② 再現率 ⇒実際に辞めてしまった人のなかで事前に予測できた割合(退職予測者をケアしても防げてなかったケース)

等を指標として測定します。
退職予測を実施することで、退職リスクが生じている人材を事前にケアしたり、職場や制度改善を実施したりすることが可能になります。また、採用時にも、「退職可能性が高い特性」を持った人材は弾くといった採用精度の向上に活用できます。
 

適正配置

組織が効率よく目標達成するには、求められる仕事の量と質に合わせて、社員の技能や知識、性格などを考えながら適材適所の配置をしていくことも大切です。
しかし、従来までの配置は「上司や人事部門の感覚」で決められている比重が大きかったといえます。採用選考をより緻密に実施する形で「部門や職種ごとで求められる特性」や「部門や組織の風土(価値観)」と「本人の特性」をマッチングすることで、客観性の高い分析や精度の高い適正配置が可能になります。
 

エンゲージメント分析・モチベーション分析

仕事の生産性や人材の定着率を高めるためには、組織や仕事へのエンゲージメントやモチベーションが大切です。コロナ禍を契機としてリモートワーク・在宅勤務が増えたなかで、組織へのエンゲージメントやモチベーションは従来以上にわかりづらくなっています。
 

そのなかで、パルスサーベイや音声感情分析などのピープルアナリティクスに注目が集まっています。エンゲージメントやモチベーションを数値化し、絶対値やトレンド変化を分析することで、エンゲージメントが低下している個人やマネジメント層の課題を抽出できます。

 

ピープルアナリティクスによるデータドリブンなHRマネジメントの実現

ピープルアナリティクスの目的は、データドリブンなHRマネジメントにより組織や人材育成の生産性を高めることです。
 

なお、ピープルアナリティクスの対象となるHRマネジメントは、各組織の業務内容や風土に依存する部分も多々あります。そのため、分析対象データ数を確保でき、採用や配置の選択肢が豊富な大組織ほど導入による効果が大きくなりやすい傾向はあります。
 

一方で、クラウドサービス、HR-techの発展により中小企業でもピープルアナリティクスを活用して、生産性向上を実現することは容易になってきました。
注目されるピープルアナリティクスですが、ブームに乗って導入するのではなく、自社のHRマネジメント、採用や人材育成、組織開発のどこに課題があるか、解決することでどのような効果があるかを考えて導入分野を決めることが大切です。
本章ではピープルアナリティクスやHRtechの効果的な導入ステップを解説します。
 

1.目的と導入分野の決定

ピープルアナリティクスやHRtechの導入を考えるうえで、最初にすべきなのは、採用、人材育成、配置といった分野のなかで「どこに自社の課題があるのか?」「可能性があるのか?」を踏まえて、導入目的や導入分野を決定することです。人事や経営上の課題から逆算して導入目的や分野を決定する、ともいえます。
例えば、若手社員の成長や活躍に課題があるとして、マネジメントに課題があるのか、採用に課題があるのか、しっかりと見極めていくことが大切です。自社の人事・経営上の課題や要因が不明確なまま適当にプラットフォームを導入しても、効果は生まれにくくなります。
 

2.ツールの選定

ピープルアナリティクスを実施するためには、データを収集・蓄積することが不可欠です。ピープルアナリティクスツールは「データの収集・蓄積」と「データの分析・活用」という大きく2つの機能に分かれます。
 

2つのどちらに重きが置かれているのか、どうやってデータの収集・蓄積や分析・活用を行なうのか、また、データの収集・蓄積が現実的に社内で実施可能なのか等を見極めながら、ツールを選定していきましょう。
 

3.データの取得

ツールやプラットフォームの選定が終わったら、データを溜める・集める作業を本格化していきます。ピープルアナリティクスで使えるデータには、以下のようなものがあります。

  • 各社員の属性データ(年齢・性別・出身地・学歴・部署・職種など)
  • 適性検査の結果データ
  • 勤怠アプリの行動データ
  • 社員満足度調査のデータ
  • 選考時のエントリーシート
  • 360度評価のデータ
  • 一日のスケジュール
  • 人事評価データ

など
 

最近では、退職予測やモチベーション管理などにおいては、日次や週次のパルスサーベイや音声感情分析などのデータが活用されることも増えています。
HR分野は「人」を扱うために定量的なデータ蓄積・解析がしづらい領域でした。ただ、上記のようなパルスサーベイや適性検査などの結果と人事評価などのパフォーマンスデータを掛け合わせることで、かなり緻密な分析が可能になってきています。
 

4.データの分析・解析

データ分析の具体的なやり方は、導入ツールや目的、どこまで解析を掘り下げるかによって変わってきます。
 

ただし、ピープルアナリティクスに関するクラウドサービスのほとんどは、ツール内で基本的な分析を実施することもできます。また、総合型のピープルアナリティクスサービスを活用した場合、多角的な分析から評価、ビジネス設計までを提案してもらえることもあります。
また最近では、勤怠管理、パルスサーベイ、人事評価、採用管理など、用途に応じた複数クラウドサービスのデータを掛け合わせて分析できるようなピープルアナリティクスサービスも登場しています。「社内でデータが分散していて」という会社はぜひ検討してみてください。
 

5.分析をもとにした施策の実行

ピープルアナリティクスの目的は、データを分析することではありません。最も大切なのは、分析データを用いて施策を立案・実行してPDCAをまわしていくことです。
 

例えば、ハイパフォーマー分析で生産性の高い人材の特徴がわかった場合、それを採用基準に加えてみます。退職予測で退職確率が高い人材が判明した場合は、本人へのヒアリングや適材適所の人材配置ができているかどうか等の対策をとっていきます。
 

地道なステップですが、分析結果をもとにした施策を実行しなければ、ツール導入の目的が達成されることはありません。
 

6.効果検証

施策を実行したら、必ず効果検証を実施していきましょう。ピープルアナリティクスの目的は、新卒採用後の早期活躍率UP、社員の離職率ダウン、労働生産性の向上などです。導入当初に設定した目的が達成されているかを確認しましょう。
 

ただし、HRマネジメントの施策は、単年度ですぐ成果が出るものばかりではなく、効果検証自体も複数年度にわたって実施するようなものが大半となることもあります。また、必ずしもピープルアナリティクスの要因だけでなく、各種の外部要因にも左右されることもあり、効果検証するうえで考慮が必要です。

 

まとめ

組織における採用や人材育成、モチベーション管理などのHRマネジメント分野は、従来まで人の感覚による意思決定が多くなされていました。「人」の問題だからこそ、すべてを定量化することは難しく、感覚的な部分も重要です。

 

しかし、近年では、HRtechの発展によりハイパフォーマー分析、パルスサーベイや音声感情解析によるエンゲージメントやモチベーション状況の把握、採用から入社後パフォーマンスまでの一貫した分析などが可能になってきました。

 

そのなかで注目されるのがピープルアナリティクスの分野です。上記のようなHRマネジメントに関する各種データを収集・蓄積・分析することで、データをもとにしたより精度が高く、効率的な採用や人材育成、組織開発が実現します。

 

ピープルアナリティクスはHRtechの発展にともなって、中小企業でも導入しやすくなりました。ただし、流行りに乗るのではなく、自社のHR領域における課題を洗い出したうえで、しっかりと目的・目標を決めながら適したツールを選定、導入、運用することが大切です。

 

ピープルアナリティクスの概略や導入の流れを知るには、ぜひ記事の内容を参考にしてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役|HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

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