部下や後輩がなかなか成長しない、人材育成がうまくいかないといった場合、適切な目標設定やゴール達成に向けた支援が行なわれていない可能性があります。適切な目標設定と実行の支援は、部下や後輩を動機付けして主体性を引き出し、成長を加速させるための大切なポイントです。
部下や後輩の成長を促すためには、どのような目標設定をすればよいでしょうか。記事では、後輩や部下の育成を成功させるための目標設定のフォーマットとサンプル、目標設定の効果を高めるためのポイント、目標設定後の運用ポイントを解説します。
<目次>
後輩・部下育成を成功させる目標設定のフォーマットとサンプル
後輩や部下の成長を加速させる中長期での目標設定は、以下のフォーマットを使って検討していくことがおススメです。
目標設定の大枠フォーマット
部下・後輩の成長を促す目標を立てるときには、以下の4項目を設定していきましょう。
・現状
目標設定には、本人の現状分析が必要です。例えば、現状の売上状況などの数字、本人の強みや弱み、モチベーションの上下につながるポイントなども記載するとよいでしょう。
・最終的なゴール
半年~1年のスパンで達成したいゴールを設定しましょう。ゴールは、本人がワクワクできるものであることが重要です。目標達成の基本となるSMARTの原則に従いながら、同時に本人のモチベーションを刺激する定性的なゴールも設定するとよいでしょう。(SMARTの原則の詳細は、後述します。)
・できるようになっていること(ミニゴール)
半年や1年先の遠いゴールだけの設定では、モチベーションの維持や進捗管理が難しくなります。ゴールまでの成長度や進捗をチェックするうえでも、1ヵ月単位などのミニゴールを設定しましょう。ミニゴールは、ゴールから逆算してKPIやアクション指標を考えて設定するのがおススメです。
・ミニゴール達成のためのプラン
ミニゴールを達成するために、具体的な行動計画を立てます。行動計画は、いつまでに何をするというタスクと、毎日・毎週〇〇をするというルーティンの2軸で考えることがおススメです。
プランの実践や行動の習慣化によってミニゴールが達成され、半年~1年後に最終ゴールが達成可能になるように設定しましょう。
後輩・部下の成長につながる目標設定の具体的サンプル
目標設定のサンプル例を紹介していきましょう。
- 昨年と一昨年のリピート契約が6件と非常に少ない、売上総額1,000万円で部内でも13位という低い状態になっている
最終的なゴール
- リピート契約を年間12件、売上総額を2,400万円までアップする
できるようになっていること(ミニゴール)
- リピート契約対象のお客様から相談をしてもらえる信頼関係をつくる
- 毎月1件のリピート契約をとる
- 毎月10件、新規顧客にアポイントをとる
- 毎週5件、既存顧客の訪問をする
ミニゴール達成のためのプラン
- 既存顧客の情報を洗い出し、さらに良く知るための質問を準備する
- 毎日15分、商品知識や業界情報のインプットを行なう
- 社内のコミュニケーション力研修に参加する
- 先輩社員が実施する早朝ロープレに毎日参加する
- 1ヵ月に1回、先輩社員の営業に同行する
- 毎日、営業活動を振り返って日誌をつける
- コロナ禍の影響で、来店者数が前年比30%ダウン、売上が前年比50%ダウンとなっている
最終的なゴール
- 来店者数を前年比と同レベルまで戻す(理想は前年比5%アップ)
- 売上を現状から30%アップする
できるようになっていること(ミニゴール)
- 半年で来店者数と売上を15%アップする(3ヵ月で7%アップが目標)
ミニゴール達成のためのプラン
- コロナ対策グッズの品ぞろえを地域ナンバーワンにする(マスク・除菌グッズ・加湿器 など)
- 会員の登録特典を用意することで入会を促す
- 会員向けのメルマガやSNS配信の頻度を増やす(月1→週1)
- 新型コロナウイルスに関する論文情報などを読み、対策グッズのコーナーにPOPなどを設置する
- 店舗内のコロナ対策をアピールする
- 新製品のプレスリリースを地元の新聞に出したが、1ヵ月でまったく問い合わせがない
- 同業者間での話題性は高いため、新製品を知ってもらえる仕組みさえあれば売れる可能性大
- 新人の自分が入社するまで、アナログな営業・広告だけで販売されていた
最終的なゴール
- 年間60件の新製品の問い合わせを獲得する
- 問い合わせの20%を成約につなげる
できるようになっていること(ミニゴール)
- 3ヵ月:SNSのフォロワー数を1,000人にする
- 6ヵ月:SNSのフォロワー数を3,000人にするとともに、Twitterのエンゲージメント率5%以上を維持する
- 9ヵ月:エンゲージメント率を維持したまま、フォロワー数5,000人を達成する
ミニゴール達成のためのプラン
- ブログ、Twitter、Instagramアカウントを開設する
- 競合企業アカウントのフォロワーをフォローする
- Webコンサルティング企業に投稿内容の相談をする
- 時事ネタと漆器を絡めた記事などを週2回投稿する
- 開発の背景や製造工程、漆器の作り方などの動画コンテンツをつくる(拡散用)
- 新入社員の定着率が悪い(前期の1年定着率が70%を切っている)
- 優秀な人材は多いため、離職者をもう少し減らしたい
最終的なゴール
- 新入社員における1年以内の離職率を32%から16%まで削減する(来年度分)
できるようになっていること(ミニゴール)
- 3ヵ月:現状分析を終える
- 4ヵ月:採用精度を高めるための準備を終える
- 5ヵ月以降:企業説明会の実施や面接などに入っていく
ミニゴール達成のためのプラン
- 既存社員への適性検査と、離職者が多い部署にヒアリングを実施する
- 入社後の受け入れ・育成と採用精度の向上、2軸で施策を立案する
- 定着分析の結果を上司に提出して、施策相談の機会をもらう
- ダイレクトリクルーティングのメッセージ内容や運用の流れを決める
- 自社の求める要件を見極めるための面接質問を考える
- 企業説明会などのイベント実施後に必ずPDCAをまわす
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目標設定の効果を高める2つのポイント
部下や後輩の育成で目標設定の効果性を高めるには、以下2つのポイントを押さえる必要があります。
SMARTの法則を押さえて目標設定する
目標設定で部下や後輩の成長を加速させるには、上司や先輩が進捗や達成状況を測定し、軌道修正などのサポートをする必要があります。したがって、例えば、上司が「どこまで達成できたのか?」などの測定やチェックができない目標は基本的にNGです。また、無理のある目標設定をすると、行動計画が破綻しやすくなるでしょう。
そして、目標設定の大原則は、以下のSMARTの法則に従うことになります。
- S(Specific) :具体性がある
- M(Measurable) :計測できる
- A(Achievable) :達成できる
- R(Relevant) :上位目標との関連性がある
- T(Time-bound) :期限が明確である
目標に対する意味付けで後輩・部下を動機付ける
例えば、部下や後輩を成長させたいと考える上司が、一方的に目標を考えたとします。すると、部下からすれば目標は「上司から与えられたもの」や「押し付けられたもの」といった他人事になってしまいます。
それでは、目標達成には動機付けされず、主体性も発揮されづらくなります。自分の成長やゴールに向かう行動の実行力や継続力も落ちがちです。
組織における目標設定では、「組織の上位目標(事業計画)」から部門やチーム、個人の目標を落とし込んでいくことが大半ですので、「本人にとって“与えられた目標”となり動機付けされていない」という問題が生じがちです。
したがって、目標設定では、設定プロセスに部下や後輩自身にも関わってもらったり、目標を達成することが「自分自身にとってどのような価値やメリットがあるか?」といった意味付けをしてもらったりすることが非常に大切です。
そうすることで、目標が自分事になり、ゴールに向かう主体性や積極性が生まれるでしょう。目標達成への意味付けやモチベーションを高めるには、「目的・目標の4観点」というフレームワークを使うことがおススメです。
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後輩・部下育成を成功させる目標設定の運用ポイント
設定した目標を達成に向けて運用する場合、以下のポイントを大切にしていきましょう。
目標設定に対して必ずレビュー・フィードバックする
後輩社員が作成した目標設定シートに対してレビュー・フィードバックを行ない、適切な目標設定になるように調整していきます。
経験が浅いうちは、目標自体が適切でないことも多くなります。目標がSMARTの原則に合っているかどうかを必ずチェックしましょう。また、目標に対する意味付けが十分にできているかも、しっかりと確認する必要があります。
1on1などで目標の進捗を確認する
毎週、隔週などで1on1や面談を実施して、うまくいっていること・うまくいっていないこと、目標に対する進捗などを把握しましょう。
必要であればミニゴールやアクションプランを調整していきます。達成に向けた方法論と同時に、モチベーションへの注意も必要です。モチベーションが落ちているときには、施策よりも意味付けが大切になります。
振り返りを行なう
目標設定や教育方法が適切だったかどうかを振り返り、うまくいった部分はさらに強化し、改善点は見直しを行ないます。後輩や部下育成はやりっぱなしにせず、しっかりと振り返り、次につなげていくことが大切です。
まとめ
後輩や部下の育成を成功させるには、以下のフォーマットに従って本人に目標設定をしてもらう必要があります。
- 現状
- 最終的なゴール
- できるようになっていること(ミニゴール)
- ミニゴール達成のためのプラン
目標設定の効果を高めるには、まず、以下のSMARTの法則を押さえた目標にする必要があります。
- M(Measurable) :計測できる
- A(Achievable) :達成できる
- R(Relevant) :上位目標との関連性がある
- T(Time‐bound) :期限が明確である
また、目標に対して当事者意識を持って取り組んでもらうためには「目的・目標の4観点」などのフレームワークを使って目標達成に意味付けや動機付けをすることも非常に大切です。
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