若手の営業力を強化し、実績を出せる営業を育てるために大切な3つのポイント

2020/10/26

最近、若手営業の育成に苦労する経営者、営業マネージャーの方からお悩みを伺うことが増えてきました。中小企業においては、営業の育成はOJTが主流になっているケースが多いように思います。その中で、営業現場では本人も含めた誰もが早期の戦力化を望んでいるのに、実際には「期待通りには若手が育っていない…」というお悩みです。

 

なぜそうなってしまうのでしょうか。記事では、最新のセールスエネイブルメントの考え方なども踏まえながら、若手営業の育成に悩む会社が増えている背景、また、若手の営業力を強化するためのポイントについて解説します 。

<目次>

若手の営業力強化に悩む会社が増えている3つの背景

「会社の業績を担う営業職をどう育成するか?」は、組織にとって重要のテーマです。一方で、営業の育成に悩む会社からの相談が増えています。これは、“昔よりも営業の仕事が難しくなっている”ことが1つの要因です。この章では、営業の仕事を取り巻く環境がどう変わっているかを解説します。

 

 

相対的な購買意欲の低下

少し古い話になりますが、かつて1970年代の日本経済はまだ高度成長の名残が残っており、企業もひたすら成長を求め投資意欲も旺盛でした。買い手が旺盛な購買意欲を持っていた時代、営業に求められたのは、顧客と深い人間関係を構築する力でした。

 

「こまめに顔を出し、『なにか購入を検討されるものがありませんか?』と伺い、顧客のニーズがなければ楽しく雑談する」、こういう御用聞き的な営業スタイルが歓迎されていた時代でした。製品の機能進化も目覚ましく、購買ニーズが出てきやすい中では、「会ってもらえって、購入しようと考えたタイミングで声をかけてもらえる関係性をつくる」ことで成果が上がりやすかったのです。

 

しかし、バブルが崩壊して、長期的な低成長時代が始まったころから状況は大きく変わっています。顧客は、「馴染みの関係」というだけで商品やサービスを購入することが無くなり、「本当に必要なのか?」をしっかりと確認して購入するようになりました。また、ある程度は行動成長が終わった段階で、最低限の必要なものはすべて満たされた中で、新製品が、「必要なもの」から、「あったらいいもの」になることが多くなってきたことも、必要性を見極める行動に拍車をかけています。当然、営業も単なる“御用聞き”ではなく、“ヒアリング”と“提案”が必要になりました。

 

 

インターネットの発達による「情報の非対称性」の解消

前述した購買意欲の低下は、かなり長い時間軸のものであり、この5年10年のものではありません。それに対して、インターネットの発達による「情報の非対称性」の解消は、この数年、特に顕著になってきている問題です。

 

これまで購買者と販売企業を比べた場合、該当のサービスや分野に関しては、販売企業が圧倒的に多くの情報やノウハウを持っていることが大半でした。しかし、直近10年ほどで、WEB上に公開される情報量の増加と、検索エンジンの発達により、大抵の情報やノウハウは、インターネット上で手に入るようになりました。

 

企業も個人も、何かを購入するにあたっては、「まず検索する」こと当たり前になった中で、この5年ほどはノウハウや情報を無料で公開することで見込客を獲得する“コンテンツマーケティング”が加速しており、これも「情報の非対称性」の解消に拍車をかけています。

 

結果として、営業に求められるのは、サービスの説明や概略的なノウハウ提供ではなく、顧客が実現したい要望や抱えている問題を的確に捉えて、「解決策」として製品やサービスの使い方を提案するソリューション営業になりつつあります。当然、必要とされる知識や求められるヒアリング力・提案力は、どんどん増大しており、人間関係や表面的な商品説明では、営業として成果を上げづらい状況になりつつあります。

 

 

ITの進化によるカスタマイズサービスの浸透

同じ商品、同じサービスであっても、購買を検討する顧客の状況は少しずつ違います。その中で、先ほど伝えたように顧客はインターネット上で検索して、ある程度の一般的な情報は手に入れられるようになっています。結果として、顧客が求めることは、「私の問題を解決してくれる私のための解決策」になりつつあります。

 

そして、ITの進化によってWEBサイトやメールマーケティングにおいては、「私のための情報提供」が実現しつつあります。例えば、amazonなどのECサイトにおけるレコメンド、属性や購買履歴・閲覧履歴によって配信される内容が違うメールマガジンや表示されるコンテンツが変わるWEBサイト運用などもどんどん普及してきています。また、個人向けのサービスであれば、WEB上での簡単見積もりなども一般的です。SNSなどでも、自分が好む情報が表示されるのはご存じの通りです。

 

WEB上で実現しているわけですから、当然対人間、「営業」に対しても同様以上のものを求めることが当たり前になりつつあります。例えば、事例や機能等に関しても、パンフレットに書いてあるような情報ではなく、「私の参考になる事例」、「私にとって役立つ機能」を知りたいと考えています。また、競合比較等も、一般的な情報ではなく、「私にとっての優劣」という視点での情報提供が望まれています。これに伴って、営業に求められる“企画力”や“知識”も増大しています。

 

 

若手の営業力強化におけるトレンド

従来型のOJTでは、若手営業の育成が困難になりつつある中で、“セールスエネイブルメント”といった形で、新たな若手営業育成の仕組みが模索されています。セールスエネイブルメントとは、営業組織を強化・改善するための取り組みのことで、営業研修や営業ツールの開発・導入、営業プロセスの管理・分析といったあらゆる改善施策をトータルに設計し、目標の達成状況や各施策の貢献度などを数値化します。そして、数値分析により、営業活動の最適化と効率化を目指すという取り組みです。

若手営業の営業力を強化するための3つのポイント

ここでは、セールスエネイブルメントのような取り組みの前提となり、若手の営業力を強化するための基本となる3つのポイントを解説します。ソリューション営業全盛のいまの時代でも、3つのポイントを押さえておくことで、営業として成長して、どんな商材でも売れる実力をつけられます。一方で、3つのポイントを外してしまうと、セールスエネイブルメントのような取り組みで、どんなにスキルや商品知識を教えても、成長が鈍化してしまうので気を付けましょう。

 

 

ポイント①:「お客様に貢献したい!」という営業マインドを鍛える

成功している若手営業が共通して持ち合わせているのが、「お客様に貢献する」という、“営業の大前提”とも言えるマインドです。

 

なぜ、このマインドが重要かと言うと、まず営業としての誇りやプライド、そしてモチベーションに繋がってくるからです。残念ながら、営業という仕事は多くの学生や新人から誤解されています。「売り込む」「ノルマ」「口のうまさが大事」といった典型的な誤って営業のイメージを持っている新人は多数います。彼ら彼女らは「営業の仕事をやりたい」と思って手をあげるのではなく、採用職種が営業だったから、配属が営業だったから、営業の仕事をしているわけです。当たり前ですが、その状態では成果は上がりません。

 

いまの若手は、人に貢献したい、人の役に立ちたいと思っている人は多数います。自社の商品・サービスに顧客にどう貢献できるのかをしっかりと認識してもらい、自社の商品・サービスを通じて顧客の課題を解決する営業という仕事が「顧客に貢献する」仕事であることをしっかりと認識してもらいましょう。

 

また、貢献マインドはソリューション営業を行なううえでも正しい方向性での努力や工夫を生み出します。ソリューション営業とは、「自社の商品・サービスを使うことで、顧客の課題をどう解決できるか」を提案するスタイルです。ソリューション営業に大事なのは、顧客の課題、顧客の関心、顧客が実現したいことに興味を持ち、知ろうとするスタンスです。

 

もちろん、顧客の課題や理想をヒアリングして正しく把握するためには、商品や周辺知識、ヒアリングのスキル等も必要です。ただ、その根っことなるのは、「顧客に貢献する」という営業マインドなのです。

 

営業マインドを鍛えるためには、上司や育成担当が実体験を交えながら、自社商品・サービスの価値、自分の想い、顧客の声などを伝えることが大切です。ミッションやビジョンといった抽象的な概念を、自分の実体験に紐づけて繰り返し伝えることで、若手の心に浸透します。

 

 

ポイント②:営業の方程式、「4つの不」の構造を教える

営業活動には多くのスキルやテクニックがあります。また、商品・サービスの知識を覚えることも必要です。ただし、その前提として、「営業活動の全体像」を押さえることが大切です。プレゼンテーションなどでも、はじめに全体像を伝えることで聞き手が「いま全体のどこを話しているのか」を把握することが出来るようになり、理解が進みます。営業のレクチャーにおいても同じです。全体像をしっかりと伝えることで、詳細のスキルやテクニックを伝えた時、商談の振り返りをする際に、理解が進みやすくなります。

 

営業のフレームワークにはいくつかありますので、自社で共通言語になっているセールスステップや見込み管理のフレームワークなどがあれば、それで良いでしょう。共通言語やフレームワークが決まっていないようであれば、「顧客が意思決定するためには“4つの不”を解除する必要がある」という、“4つの不”の構造は覚えやすく、新人や若手に教えるのにおススメです。

 

“4つの不”とは、「不信感」「不要感」「不適感」「不急感」の4つです。4つの不が、解除がされない限り、顧客は商品やサービスを購入しようという意志決定をしません。逆に言えば、営業活動・商談とは、4つの不を解除することで、顧客に意思決定をしてもらうための活動であるということです。“4つの不”のそれぞれを簡単に説明しましょう。

 

H4:不信感

「不信感」とは、字の通り、顧客が自社や営業個人を信用しているかどうかです。そもそも相手に信用されなければ、相手のニーズを聞き出すことも出来ませんし、相手が本音を話してくれることもありません。従って、営業活動において、始めにクリアすべきハードルは“相手に信用してもらう”ということであるわけです。

 

H4:不要感

次にくるのが「不要感」の解除です。そもそも商品・サービスを購入する必要があるか、ということです。分かりやすい例で考えると、顧客が「車を買う」ということを決めない限り、いくら「このメーカーの○○は、ここが素晴らしくて…」と熱弁しても車が売れることはありません。ここで出てくるのが、営業マインドのところでも出てきた「顧客が解決したい課題」の把握です。顧客への貢献姿勢を持って、顧客がなぜ商品・サービスの検討を考えているのか、それは本気なのか、情報収集なのか、等をしっかりと把握していく必要があります。

 

H4:不適感

その次にくるのが「不適感」です。先ほどの例で言えば「車を買う」ことが決まった次に、「自分のニーズにフィットする車種がいま提案されている○○社の○○である」ということに納得がいくと、顧客は「この車が欲しい」という段階に進むわけです。逆に、車の機能や性能がどれだけ素晴らしいとしても、自分のニーズ・条件に合わなければ、顧客は購入の段階に進むことはありません。ここで大事なのが、「あなたの課題を解決するうえで、うちの商品・サービスはこう役に立つ、ここがピッタリはまる」というソリューション営業の提案スタイルです。

 

H4:不急感

そして、顧客が意思決定する最後のハードルが「不急感」。不急感は、“なぜ、いま意思決定する必要があるのか”ということです。費用を使う、損をするかもしれない、誤った意思決定になるかもしれないことに対して、人は基本的に慎重になります。従って、最後のハードルとして、「意思決定をいまする理由」をつくる/把握する必要があるわけです。

 

 

“4つの不”が解除されて、初めて商品・サービスを購入しようという意思決定になるわけです。“4つの不”を把握・解除するための方法として、いわゆるアイスブレイクや会社紹介、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージング等が手法としてあり、細かいテクニックがあります。

 

従って、“4つの不”の構造を把握しておくと、さまざまなスキルやテクニックが、何のためにあるか、何がゴールかをシンプル捉えることが出来るので、目的意識も明確になり、また、フィードバック等をする際に共通言語が出来るようになり、育成スピードが速まります。

 

 

ポイント③:「事前準備」の指導をしっかり行なう

最後の指導ポイントは“事前準備”です。求められる営業の難易度が増し、また、オンラインでの商談なども増えてきた中で、“何となく”“雰囲気で”顧客を納得させることは非常に難しくなっており、きちんと事前準備することが非常に重要です。

 

例えば、初回の商談であれば、ホームページで顧客の事業内容や商品群、沿革などを把握したり、上場企業であればIRに目を通したりすることは基本になるでしょう。そのうえで、提案する商品・サービスに関連する部分に関して、よりしっかりと把握して、仮説を立てることになるでしょう。事前にしっかりと準備して仮説を持つことで、短時間でより深いヒアリングをすることが可能になります。

 

また、取引履歴や事前に収集した情報に応じて、商談をどういう展開にするか、何をヒアリングする必要があるか、事例やサンプルなどで何を準備したほうが良いかとも変わってくるでしょう。つまり、事前準備の質によって、商談の質は変わってくるのです。

 

従って、若手の営業力を鍛えるためには、「事前準備」の指導をしっかりと行なうことがポイントです。経験が浅いうちは、ホームページでどこを見ればいいのか、公開されている事実からどんな仮説が作れるのか、仮説を基にして商談設計をどうすればいいのか、といったことを考えることは困難です。だからこそ、例えば、毎日「明日の商談にどんな準備をしているか?」をレビューするといったことが若手の営業力を鍛えるうえでは有効です。

 

OJTで若手の営業力を鍛えるうえでは、商談同行とフィードバックが一般的です。もちろん、商談同行とフィードバックは有効なのですが、事前準備、つまり計画の段階をしっかりと指導することで、事後のフィードバックがより効果的になります。

営業スタイルが変わり、顧客の要求も高くなる中で、若手の営業力を高める難易度は上がっています。だからこそ、セールスエネイブルメントなどのツールや知識共有等の仕組み化も進んでいます。しかし、押さえるべきポイントを押さえて指導すれば、若手の営業力は確実に向上します。

 

営業のOJTで一般的に行なわれるロールプレイングや営業同行とフィードバックに加えて、「顧客への貢献」という営業マインド、営業の基本となる「4つの不」の構造、そして、事前準備の指導という3点で抑えることが若手の営業力を高めるポイントです。

 

どれだけマーケティングが進化した中でも、高額や無形の商品・サービスにおいて、顧客の購買を決めるのは「営業力」です。若手の営業力を鍛えて、事業を成長させる参考になれば幸いです。

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

関連記事

企業の採用・教育に役立つノウハウ

採用・教育にお困りでしたら
ご相談ください

一人でも多くの人生を輝かせ、一社でも多くの企業を元気にする。
そのために、私たちジェイックは存在します。

pagetop