社員教育体系の作り方とは?自社にあった効果的な育成体系づくりのポイント

2020/03/31

社員教育体系の作り方とは?自社にあった効果的な育成体系づくりのポイント

社員教育を効果的に行うためには、場当たり的なアプローチではなく、社員教育の体系をしっかりと作ることを意識しながら進めていくことが重要です。

 

教育体系は一般的には階層、職種、全社共通という3つの軸で考えることが出来ますが、他社の教育体系をそのまま取り込んでも効果的な教育体系にはなりません。自社のミッションやビジョン、バリュー、また事業特性や組織構造に適した教育体系、プログラムにアレンジしていく必要があります。

 

本記事では、社員教育を体系的に行う方法と、自社の教育体系を確立するポイントを解説します。

<目次>

社員教育で目指すべきは自社にあった人材育成の体系化

社員教育を体系化するにあたっては、「我々はどんなサービスを提供したいのか?」「どんな組織でありたいか?」といった組織のミッションやビジョン、バリューが重要になってきます。そのうえで、自社の事業を運営・成長させていくうえで各階層に果たして欲しい役割、また、“○○社の社員”として共通で求めるものを落とし込んでいくことが教育体系を作る第一歩です。

 

・各階層にどんな役割をして欲しいか

・役割を果たすためにどんなスキルが必要か

・役割間でどういう連携をして欲しいか

・“○○社の社員”にはどんな価値観を大切にして欲しいか

・価値観は各階層ではどんな考え方や行動になるか

・顧客からどう見られる社員を育てたいか

といったことを、言語化して整理していくプロセスです。

 

考えるうえでは、自社の事業特性、組織構造も重要になります。「チームワークを発揮して1つの仕事を動かしていく事業特性を持った組織」と、「社員一人ひとりがプロフェッショナルとして独立して役割を果たす組織」では、上記に対する答えは変わってくるでしょう。

 

同じように「労働集約的な事業を行っており、仕組みを動かせる人財の育成とマネジメントが重要な組織」と、「少数精鋭で、社員一人ひとりに能力を最大限に発揮してもらうための環境構築が重要な組織」でも、必要な教育体系は変わってきます。

 

教育体系は、自社のビジョンやバリュー、事業特性や組織構成と密接に関わるものであり、だからこそ「自社にふさわしい教育体系」を作っていくことが必要なのです。

 

教育体系は、新人を1人前のプレイヤーへと育成したり、プレイヤーからリーダーへの役割転換を意図的に促進したり、また組織として高い生産性を実現するためのエンゲージメントの強化や共通言語を確立したりするプロセスです。

 

効果的な教育体系を築き、人材育成の仕組みを構築することは、すべての産業がサービス化している中で、企業の競争力に直結する重要な経営課題です。

効果的な社員教育の体系をつくるプロセス

効果的な社員教育

効果的な社員教育の体系を作るためには、以下のステップを意識して進めていくことが有効です。社員教育の体系は一回で一気に作れるものではありませんし、完成して終わりでもありません。自社の状況、組織の成長、事業の変化等に応じて、修正が必要になります。ただ、優先順位が高い教育テーマから順番に取り組む中でも、下記のステップを意識していただくと、徐々に体系が出来上がってくるでしょう。

 

 

1.目的・方針の明確化

“社員教育を実施して満足する”という「形だけの社員教育」にならないために、実施する目的・方針を明確にすることから始めましょう。前のブロックで紹介した通り、自社のビジョンやバリュー、事業特性や組織構造を意識して考えることが重要です。

 

 

2.現状の分析

目的や方針を踏まえて、組織や社員の現状を分析します。うまくいっており更に伸ばしていきたい点は何か、うまくいっていない点は何か、事業や組織にどんな課題が生じているか、優先順位が高いテーマは何か、3年後5年後のために手を打っておく必要があることは何か、いくつかの視点から現状を整理していきましょう。

 

目標設定や現状分析は、以下3つの視点で考えると整理しやすいでしょう。

 

・階層          :各階層の役割を果たすためのトランスフォーメーションとスキル習得

・職種          :職種で成果をあげるために必要なスキル習得

・全社共通      :バリューの浸透、共通言語、帰属意識の強化、組織内コミュニケーション

 

どの階層にどういった意識で仕事に取り組んで欲しいのか、どの職種にどんなスキルが必要か、立場や役職に関わらず全社員に大切になってくるテーマは何か、という3つの視点で見ていくと整理がはかどります。

 

 

3.人材像の明確化

設定した目的と分析した現状を踏まえて、具体的な人材像やスキルへ落とし込みを進めていきます。どんな人材に教育していきたいのか、どんなスキルレベルまで高めたいのか、ゴール像を明確にします。ゴール像は明確、具体的であるほうが研修への落とし込みを行いやすいです。イメージを共有できる社員を事例にあげながら「〇〇さんのような商談力」「〇〇さんの商談力って何がスゴイ?」といった形で話していくとスムーズです。

 

 

4.教育体系の設計

大枠を整理したうえで、教育体系の設計へと進んでいきます。描いてきたゴール像に対して、「誰に向けて、どんな教育をすればいか?」を整理していきます。同時に実施する優先順位についても定めていきましょう。

 

 

5.育成手法の検討

ここまで全体像から落とし込んできたうえで、「どんな研修をするか?」を検討していきます。実際に教育体系を考えたり、研修を行ったりする際には、ここまで丁寧に設計することはないかもしれません。しかし、「〇〇研修をしよう!」と、いきなり研修内容を決めてしまうと、全体像の中で過不足が生じたり、研修を実施すること自体が目的になってしまったりすることがあります。手間に感じるとは思いますが、候補の研修があるときにも、全体像に遡って考えてみることが重要です。

 

 

6.運用プロセスの仕組み化

策定できたら、内容を継続的に、また担当者が変更しても持続できるように教育体系の運用ルールを構築しておくことも忘れないようにしましょう。いつ見直しを行って年間の予算策定にどう反映するか、研修ニーズが発生した時にどう教育体系に取り込んでいくか、といったプロセスを明文化しておくことがポイントです。

代表的な社員教育の手法

社員教育を行う手法は、Off-JT(Off the Job Training)とOJT(On the Job Training)に大別されます。実際の社員教育では、ある部分ではOff-JTが取り入れられ、別の部分ではOJTが取り入れられるといったように、両者を組み合わせる形で教育体系に組まれていきます。両者の特徴を踏まえて、うまく組み合わせていきましょう。

 

 

Off-JT(Off the Job Training)

Off-JTは「職場外研修」と訳されますが、シンプルには「実務外の時間」で研修として行う教育です。対象となる社員を集めての半日~1日、また複数日・複数回に渡るような集合研修もありますし、朝礼や会議等の中で行う短いOff-JTを設計することも出来るでしょう。

 

また、あまり「研修」というイメージではありませんが、1on1や面談、日報などの実務に近いところでOff-JTを組み込むことも可能です(これらはOJTに分類される場合もありますが、ここでは実務外の時間で行うものとして、Off-JTに入れています)

 

Off-JTは実務外で行うからこそ、知識のインプット、体系的な知識、ロールプレイング、振り返りや内観、ディスカッション、少しストレッチして「挑戦する」体験などを創り出すことが出来るのが良いところです。

 

OJT(On the Job Training)

OJTは日本では、「職場内訓練」と訳されますが、シンプルには「実務内で行う教育」です。例えば、先輩社員の横についてやり方を習う、逆に先輩社員が後ろについてサポートしながら顧客対応を行う、といったものが代表的です。

 

OJTは、実務だからこそ生きた経験が積める、座学では教えきれない実践的なノウハウが分かる、実務能力が身に付く、個人個人の力量や状況にあった指導が出来る、実践とフィードバックのサイクルを回せる、といった利点があります。

目的に合わせて取り入れたい社員研修

目的に合わせて社員教育を取り入れる

 

教育体系によく組み込まれるいくつかの研修をご紹介します。業種や職種に関わらず必要となる普遍的な研修をピックアップしましたので、参考になるものがあれば幸いです。

 

 

コミュニケーション研修

コミュニケーション能力の向上を目的とした研修は様々な種類があります。

 

・スピーチやプレゼンテーションといった人を動かすことを目的としたもの

・ヒアリングのような信頼関係の構築と質問を学ぶもの

・商談の技術や交渉術のように相手に意思決定を行ってもらうもの

・コーチングのように相手の考えや意見を引き出すもの

・褒める、叱る、指示する、報告を受けるなどマネジメントに必要なもの

 

他にも、報連相、クレーム対応、ファシリテーションなどコミュニケーション研修の種類は多種多様です。採用基準で使う時にも同じですが「コミュニケーション能力」とまとめてしまうと、曖昧になってしまいます。「どんなコミュニケーション能力」「何を実現できるコミュニケーション能力」を教育したいのか、対象に応じて設計しましょう。

 

 

ロジカルシンキング研修

数値で成果を測るビジネスの世界において、ロジカルシンキングの能力は必須です。特に管理職層においては、成果を出すためのプロセス分解、打てる施策の分類、原因と結果という因果関係の考察などが出来ないと、安定して成果をあげることは出来ません。

 

また、経営層においては、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングが出来なければ、数値の把握、ボトルネックの発見、経営やマーケティングのフレームワーク、事業を動かすための「要」の発見などが出来ず、仕事になりません。

 

提案型の営業職やマーケティング職など、業界や職種によっては、プレイヤー時代からロジカルシンキングが重要です。ロジカルシンキングは得意/不得意も分かれる分野です。職位を上がっていくと必須となる一方で、育成には時間がかかりますので、中長期的に育成を考えていく必要があるでしょう。

 

 

リーダーシップ研修

リーダーシップ研修も社員教育の定番です。リーダーシップはセルフリーダーシップから組織を動かすリーダーシップまで求められるレベル感が階層によって異なります。

 

各階層において、「チーム内で主体性を発揮するようなリーダーシップ」なのか、「課や拠点を統括するマネージャーとしてのリーダーシップ」なのか、「経営的な目線で組織を引っ張るリーダーシップ」なのか、どんなリーダーシップが求められるのかを整理して研修を行いましょう。

 

リーダーシップは知識やスキルだけではなく、究極的には「あり方」です。周囲からリーダーして認められる「信頼」は、個人の人格や責任感からくるものです。

また、正解がない中で意思決定する「胆力」は、個人の軸や生き方が反映されます。従って、リーダーシップの育成とは個人の器を拡げるプロセスそのものです。知識やスキル研修に偏らないように、注意が必要です。

 

 

経営研修

経営的なスキルや考え方の理解・習得を目的にした研修は、将来の幹部候補を育成する、また管理職層の視座を引き上げるうえで有効です。「経営する力は経営しないと身に付かない」とも言いますが、同時に経営には前提となる様々な知識が必要です。特に経営活動を数字で捉える「アカウンティング」と思考の幅を広げる「マーケティング」の知識は、事業運営に不可欠です。

 

 

コンプライアンス研修

最近、多くの企業で実施される教育がコンプライアンス研修です。

近年では個人情報の漏洩、ハラスメント、顧客対応、労務対応などのトラブルが、インターネット上で一気に拡散してブランドや企業の社会的信用を傷つけてしまうケースが増えています。世情としても法令違反を非常に厳しく捉える風潮になっています。

若手・管理職・経営層といった階層、また、業界によって知っておくべき知識や意識すべきポイントが異なりますので、対象に合わせた内容にする必要があります。なかなか教育体系の中に出てきにくい研修ですが、リスク回避として検討は必須です。

どうしても知識インプットに比重がおかれた研修になるので、実務と結びついて教えられる、また、参加者の興味を惹きつけて集中力を維持できる力量を持った講師をアテンドすることが大事です。

まとめ

自社に適した教育体系をつくり、人材育成を効果的に行えるようになることは、企業の競争力に大きなプラス効果をもたらします。ただし、教育体系の構築は一朝一夕に出来るものではなく、優先順位の高い課題から取り組む中で、徐々に整備していくことが現実的です。

 

ただ、その中でも場当たり的に研修するのではなく、人材育成の全体像を意識しながら取り組むことがポイントです。記事を参考に、ぜひ自社に最適な教育体系を作り上げてください。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 取締役

東宮 美樹

1974年生まれ 鹿児島県種子島出身。1997年筑波大学第一学群社会学類を卒業。新卒でハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。専門分野は新人と若手育成、モチベーション・エンゲージメント改善、女性活躍等

【著書、登壇セミナー】
・新入社員の特徴と育成ポイント
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