社員教育に差がつく「教え方」!新人や部下が育つ会社が実践する5ステップ

2020/10/05

社員教育においては、「学ぶ側」の積極性や真剣さ、素直さなどが教育効果や成長スピードを左右することは言うまでもありません。一方で「学ぶ側」の意欲を高め、積極性を引き出すような教え方が出来るか、また、吸収しやすい指導ステップの設計や伝え方が出来ているかも重要です。

 

社員教育、特に様々な人が関わるOJT指導を見ていると、教え方が上手く新人のモチベーションを高められる指導者もいれば、教えるのが下手な指導者がいることがよく分かります。

 

「教育」は“教える側と学ぶ側とのコミュニケーション”ですので、そこにはコミュニケーションの原理原則、「教え方」の原理原則が存在します。記事では新人や部下をスピーディーに成長させる「教え方」のポイントや注意点を解説していきます。

 

<目次>

新人教育の効果が変わる!教え方のスキル

新人教育や社員教育に関わったことがある人なら「覚えの悪い新人についイライラしてしまった」「集中力のない受講者を叱りたくなった」といった経験が一度や二度はあるのではないでしょうか。教える側としては貴重な時間を割いて教えるわけですので、学ぶ側には100%の真剣さで吸収して欲しいと思うのは自然な心理です。

 

ただ、同時に「教え方」のスキルが大切であることも事実です。「人が覚えるためにはどういうステップを踏めばいいか」「人はどうやって学ぶのか」「人の集中力はどれぐらい持つのか」など、教える側が「教え方のスキル」を身に付けてプログラム設計・実施することで教育研修をより効果的なものにすることが出来ます。

 

「教え方」はスキルですので、知識と訓練で向上させることが可能です。「教え方」のスキルを身に付けることで、新人や部下の成長を早めることが出来るでしょう。組織全体としても、OJT指導者などに「教え方」を教えることで、組織全体の人材育成スピードが上がれば言うことはありません。

 

なお、注意すべきこととして、教える側には、「スキル」と同時に「あり方」も必要になるという点です。マネジメントや社員教育の分野で「上司は部下を理解するのに3年かかるが、部下は上司を3日で見抜く」という慣用句があります。

 

人材教育をするうえで、根本として「この人は尊敬できる」「この人から教わりたい」「この人から学ぶものがある」と思われないと、効果的な教育は出来ません。人に教えるうえでは「教える側も常に見られている」という自覚を持つことで、教え方のスキルをより効果的に使うことが出来るでしょう。

 

社員教育が上手い企業は仕組み化している教え方の5ステップ

 

社員教育が上手い会社では、「教え方の5ステップ」を意識して社員教育を行っています。以下は、新人のOJTをイメージしながら見ていただくと分かりやすいと思いますが、教え方の原理原則ですので、普段の部下指導やOff-JTを行ううえでも活用できるものです。

 

 

1.仕事の全体像、意味を伝える

新人を育成する場合、いきなりすべての仕事を任せることはないでしょう。いきなり全部の仕事を教えても理解しきれませんので、新人が取り掛かりやすいところから順を追って教えていくことになります。難易度が低く、単純作業や反復作業になることも多いでしょう。

 

こうした状況では、教えられる側は“自分が取り組んでいることの全体像”が見えなくなったり、“自分の仕事が意味のあるものなのか”分かりにくくなったりしてしまうことがあります。時には「た雑用をやらされている」感覚になり、大きくモチベーションを下げてしまうこともあります。

 

従って、新人教育を行ううえでは、まず仕事の全体像やキャリアステップを共有することが重要です。もちろん細かなことを伝える必要はありません。ただし、“価値が生み出される流れ”、入社理由に繋がっているような“仕事のやりがいに現在の仕事がどう繋がるか”、“1人前のプレイヤーとして活躍するまでにどんなステップがあるか”という大きなスケールを見せることがポイントです。

 

そのうえで、これから教える内容が全体像の中でどこを担っているか、価値創出や活躍することにどう繋がるかという位置付けや目的、意味をしっかり説明することが大切です。

 

今やっていることが自分の成長にどう繋がっているか、組織の一員としてどう貢献しているかを理解することで、たとえ地道な取り組みであっても、“必要なステップを進んでいる”という実感が得られるようになります。

 

常に「全体像との繋がり」や「ゴールへのステップ」を意識させることで、本人のモチベーションを保ちながら、業務知識や実務能力を身に付けてもらい、責任や裁量の大きな仕事を徐々に任せていくのが理想的な流れです。新人のうちから全体像やゴールへのステップを意識する習慣を付けさせることは、将来的に仕事の意味を自分自身で見出し、モチベーションをセルフコントロールできるようになることにも繋がります。

 

 

2.やってみせる

人材育成で有名な山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という名言をご存知の方は多いと思います。この順番がまさに「教え方」の原理原則です。

 

文章や口頭でいくら説明されても、やったことのない新人にはピンと来ません。しかし、実際に目の前でやってみせることで、一気に内容のイメージがつくようになるのです。また、目の前で先輩やOJT指導者がやっている様子を見ることで、「出来る」イメージが強まり、新たな業務に取り組む不安感も小さくなります。

 

ただし、「やってみせる」うえでも「全体像を教える」ことは大事です。“この仕事を大きく分けるとどんなステップになるのか”、“各ステップで何がゴール・ポイントなのか”という全体像を教えてから「やってみせる」ことで、見えている側の理解・吸収が進みます。

 

 

3.内容を説明する

全体像を伝えたうえでやってみせて、イメージを持ってもらった次は、各ステップのポイントや細かな手順を教えていきます。内容を説明するうえでは、事前にマニュアルを作っておいた方がスムーズです。

 

すべてのポイントやノウハウをマニュアル化することは出来ませんが、基本的なステップ、守るべきルール、ミスしやすいポイントなどは、事前に整理しておきましょう。教える側もマニュアルを整理することで、伝えることに抜け漏れがなくなります。マニュアルを共有しながら説明していく中で、本人にもしっかり書き込ませ、“自分のマニュアル”を作らせていくと記憶が定着しやすくなります。

 

 

4.本人に経験させる

何となく全体像を理解して、先輩やOJT指導者がやっているのを見てイメージが湧いた後に、細かく説明を受けることで、新人の頭の中には「出来そうなイメージ」が湧いています。このタイミングから、なるべく間を置かずに「本人に経験させる」と学習が加速されます。

 

顧客対応の仕事では難しいですが、社内作業であれば、本人に“マニュアルを確認させながら説明させる”ことも有効です。これはラーニング・ピラミッドの考え方に基づくやり方です。講義やデモンストレーションを“見る”ところから、“自ら体験する”ことで一気に学習が加速します。さらに“人に教える”ことで学習定着率は高まります。“マニュアルを見ながら説明させる”ことで、いわば人に教えるプロセスを疑似体験させるわけです。

 

 

5.評価・フィードバックを伝える

本人に業務を経験させた後には、必ずフィードバックを行いましょう。新人が新しい業務をやって、いきなりパーフェクトに出来ることは有り得ません。欠けている部分をすべて指摘するようなフィードバックは避けましょう。山本五十六で言うなら「ほめてやらねば、人は動かじ」です。フィードバックは、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックで、「3:1」の割合が理想だと言われています。

 

実際にこの通りやることは難しいでしょうが、「出来た部分」「上手い部分」をフィードバックすることは忘れないようにしましょう。

 

本人に経験させる中でも、誤った部分は随時指摘していくこともあると思いますが、評価・フィードバックする際にも改めて伝えていきましょう。フィードバックする時には「あなたが誤った〇〇のステップは」という伝え方になるとネガティブフィードバックになってしまいますので、「〇〇のステップは誤りやすいから」といった伝え方にするといいでしょう。

 

なお、新人がミスする箇所は、他の人にとっても間違えやすい箇所である可能性があります。指導側としてもマニュアルに反映する、業務プロセスを見直すことで、企業全体での業務改善が促されることもあるでしょう。

 

上記が一連の教えるサイクルです。実際に教えていくうえでは1~5までのプロセスを何度も繰り返して、1つの仕事を身に付けさせていくことになります。教え方が下手な人の場合、一度教えた後が「本人にやらせる ⇒ ネガティブフィードバック」の繰り返しになっていることがあります。教えられる側のモチベーションは下がっていきますし、本人の頭の中にも失敗イメージが刷り込まれてしまいます。

 

「全体像と紐付けてモチベーションを高める」「やってみせて成功イメージを強める」「改めてポイントを確認する」プロセスを時折混ぜることも、忘れないようにしてください。

 

社員教育が上手い企業ほど覚えるべきスキルが整理されており、3の「内容を説明する」資料もきちんとマニュアル化されています。「マニュアル化」と言うと、ネガティブなイメージを持ってしまう方もいるかも知れません。しかし、設計された教育プロセスをマニュアル化することで、教育の品質を高水準に保てますし、教えられる側も自習することが出来ます。

 

仕組み化することで、教育経験が少ない人でも部下を育成できるようにしたり、戦力化までのスピードを速めたりするためにも、マニュアル化の意義は軽視すべきではありません。

 

例えば、スターバックスでは、アルバイトに対するマニュアルとOJTを通じた徹底した教育プログラムです。だからこそ、あれだけの店舗展開して人が入れ替わっても、安定したサービスを提供することが可能になのです。

社員教育が上手い上司が実践する上手な教え方のポイント

 

教え方が上手な人になるために注意しておくべきポイントは、次のようなものです。教え方の5ステップを行ううえでも、ぜひ取り組んでみてください。

 

 

分かりやすい言葉で伝える

業界では当たり前に使っているような言葉が、業界未経験の新人には意味が分からないことはよくあります。「分かりやすい言葉」とは「相手がイメージできる言葉」です。「教える内容」と「相手が知っている言葉」を紐付けて、相手の反応を見ながら伝えていきましょう。

 

 

質問しやすい状況を作る

分からないことを確認せず、“分からないまま”仕事を進められてしまうと、後々大きな問題を生んでしまう可能性があります。「分からないことや困ったことがあれば質問してください」と言っておいても質問に来ない人もいます。極端なことを言えば「マニュアルを捲っていって100%理解できているか確かめてみよう。

 

1%でも不安なところがあれば質問して」と質問せざるを得ないようにするのも大事です。なお、質問しやすい状況を作るために大事なことは“同じことを聞かれてもイラつかない”ことです。肝に銘じておきましょう。

 

 

本人に考えさせる

教え方の5ステップの中で紹介したように、“マニュアルを見ながら説明させる”ことも本人に考えさせるやり方の1つです。他にも下記のステップで教えることも「考えさせる」やり方の1つです。

 

  • まずは目の前でやってみせて、メモをとらせる。
  • 相手にメモを読ませながらもう1回やってみせる(メモを改善させる)
  • メモを見ながら相手にやらせる(横でフォローする)

 

自分で考える、アウトプットさせることで学びが深まり定着します。すべて教えてしまうのではなく、自分で考えさせたり、アウトプットさせたりする場を作りましょう。

 

 

相手本位で教える

すべて自分のやり方に当てはめて教育していくのではなく、相手の性格や経験によって、教育手法をアレンジしていくことも重要です。例えば、作業をやりながら慣れていくタイプもいれば、図解を見て理解するタイプ、ドキュメントを読んで理解するタイプもいます。

 

5ステップの原理原則は変わらなくても、その中で相手に合わせて教えていきましょう。「自分のやり方に合わない=出来ない」ではありません。いくつかやり方を試す中で、相手にあった方法が見つかる場合もあるでしょう。

 

 

「育てる」のが教える側の仕事だと心得る

「育てる」のが教える側の仕事なのは、当たり前の話です。ただ、教える側は自分の時間を割いて「教えてあげている」と思ってしまいがちです。特に相手が上手く出来ない、吸収してくれないと、「なんで出来ないんだ」と感情的になってしまうこともあるでしょう。

 

しかし、「努力する」ことが相手の義務なら、「出来るようにする」ことが教える側の仕事です。一呼吸置いて「どうしたら出来るようになるか」を冷静に考えることが大切です。

 

新人育成を失敗させる3つの教え方【NGパターン】

社員教育において教え方のNGパターンとも言うべき典型は以下の3つです。

 

感情的になりすぎる

職場において教える側と学ぶ側のパワーバランスは、始めから「教える側」に偏っています。従って、教える側の不機嫌な感情や苛立ちが態度に出ると、習う側は萎縮してしまいます。熱心に教えているからこそ、つい感情がこもってしまう場合もあるでしょう。

 

しかし、相手が萎縮してしまえば、質問に来なくなりますし、“上手くなる”ことよりも“怒られない”ことに意識が向くようになります。ネガティブな感情を出すことは、新人教育の効果といった観点では確実に逆効果です。こうしたトラブルを防ぐうえでも、教育プロセスのマニュアル化、また、新任リーダーやOJT指導者など「教える人」への「教え方の教育」は重要です。

 

 

自分の経験を絶対視する

プレイヤーとして優秀な実績を出した人が陥りがちな教え方の落とし穴は、自分の経験を絶対視してしまうことです。自分の実績は、当時の環境や状況、そして、自分の能力や価値観、動機が組み合わさって出来上がったものです。環境や状況、相手の動機や強みが変われば、“自分のやり方”がベストとは限りません。

 

 

発言に一貫性がない

教えられる内容がころころ変わることは、学ぶ側にとっては不安です。「今日教わった内容は今後変わってしまうのではないか」と疑心暗鬼の状態を生み、知識の吸収を阻害してしまいます。もちろん、現実的にケースバイケースであったり、状況が変わって指示が変わったりすることもあるでしょう。

 

ただ、大きな変化があって発言が変わる場合は経緯を伝えたり、状況が流動的であれば事前に共有したり、ケースバイケースであれば意思決定のプロセスを伝えたりするなど、本人が理解・納得できるようにすることも大切です。

まとめ

自社で活躍するリーダーを育てていくためには、「背中を見て覚えろ」よりも、教え方の原理原則を踏まえた指導をすることが効果的なのは言うまでもありません。教え方の原理原則は、全体像を伝えること、そして、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という名言のプロセスです。

 

「教え方」のスキルを知っているかどうかで、OJT指導や新人教育の効果性は変わってしまいます。ぜひOJT指導者などに「教え方を教える」場を作り、組織全体での“社員教育の効果性”を高めてください。

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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