OJTの効果を最大化する方法は?効果的なOJTを行うためのポイントと注意点

2020/03/31

実践的なノウハウやスキルを身に付けることができる効果的な教育方法として、多くの企業が導入しているOJT(On-the-Job Training)。しかし、「OJT指導者を決めて、あとは現場に任せる」という形で運用してしまい、教育研修の効果が限定的になっている企業もよく見受けられます。OJTを効果的に実施して、新人を育成するためには、いくつかのポイントがあります。

 

記事では、OJTの効果を最大化させるための具体的な方法やポイント、また、起こりがちな失敗事例をご紹介します。

<目次>

OJTの効果とメリット

OJTは、座学研修(Off-JT)では得られない効果やメリットがあります。実際の業務内で実施するからこそ実務遂行能力や実践的なノウハウが身に付く、個別指導なので新人の特性に合った指導方法を柔軟に選択できる、OJT指導者となる社員の成長にも繋がるといった点です。詳しく見ていきましょう。

 

 

Off-JT(座学)では身に付かない実践的な能力やノウハウが身に付く

OJTでは、Off-JTだけでは身に付かない実践的な能力やノウハウの習得が可能です。従って、Off-JTで体系的な知識を学び、ロールプレイング等を通じて練習したうえで、OJTで具体的な業務を細分化しながら実践、学んでいく流れになるでしょう。

 

よく知られた人財育成の考え方に「成長の7割は仕事上の経験、2割は他者からの助言、1割は研修からの学びである」という「7:2:1の法則」があります。「7:2:1の法則」は管理職の成長経験に関するものですが、新人が1人前になっていくフェーズにおいても“実務経験を通じて成長していく”ことは間違いありません。

 

初めに体系的な知識と基礎技能をインプットし、また、節目で仕事上の経験を学びへと昇華させるものがOff-JTの研修だとすると、仕事上の経験・他者からの助言の“入口”になるのがOJTです。

 

 

一人ひとりにあった教育を実施できる

OJTは現場での実務を通した教育となるため、1人か2人の新人に対してOJT指導者が付くぐらいの少人数教育であることが大半です。従って、個々の成長レベル、経験、特性に合わせて教え方を調整していくことができます。OJTならではの利点です。

 

 

OJT指導者の成長にも繋がる

OJTは指導する側の成長にも繋がります。OJTで新人に分かりやすく伝えるためには、自分の中で知識が整理する必要があります。従って、自分の業務内容を整理したり、全体像や目的を確認したり、普段無意識に行っている業務プロセスの工夫やポイントを見直したりといった効果が見込めます。

 

自分の仕事を整理して、相手に合わせて教える経験は、今後チームリーダーや管理職へ成長していくための通過ステップとなるでしょう。

効果の低いOJTのやり方!よくある3つの失敗事例とは?

 

実践的な能力やノウハウを身に付けるうえで効果を発揮するOJTですが、やり方を誤ると効果性が低くなってしまうどころか、新人の早期退職を生み出す温床となることもあります。実践のポイントをお伝えする前に、OJTでよく見られる3つの失敗事例を紹介します。

 

 

計画や目標を作らないまま実施する

OJTが“言葉だけ”になり、現場配属して指導担当を決めただけで、計画や目標を作らないまま、何となく仕事に必要なことを教えているケースです。これではOJTの効果性は発揮されません。極端に言えば、「社員研修をやるのに、プログラムを準備せずに、とりあえず対象者を集めて、その場で役立ちそうな知識やノウハウを教えていく」ことと同じ状態です。

 

Off-JTでこんなことをやる人は絶対にいませんが、OJTだと、現場に丸投げの“名ばかりOJT”になっていることも多々あります。

 

 

OJT指導者の育成をしていない

OJTの実施に際しては、OJT指導者に“教えるための技術”を教えることが必要です。私たちは誰もが学校や職場で“教わってきた”経験がありますし、多くの場合、部活やアルバイト後輩などに“教えてきた”経験もあります。だからこそ、“何となく教えることができる”のですが、教育効果を高めるためには教えるための技術が重要です。

 

例えば、“学習方法による学習定着率の違い”を示したラーニングピラミッドや、“OJTにおける基本形”である4段階職業訓練法は教えるうえでベースとなる知識です。また、“相手のコミュニケーションスタイルに合わせた伝え方”や“叱り方・褒め方”、“フィードバックのやり方”、“コーチングの基礎”などのコミュニケーション技法も効果性を高めるうえで重要です。

 

 

新人とOJT指導者の関係性がうまくいっていない

OJTにおける最悪のケースが、「OJTを現場に丸投げした状態で、新人とOJT指導者の人間関係がうまくいっていない」ケースです。教育効果どころか早期退職の温床になる可能性が高いでしょう。

 

ある企業では「新人の入社後3年間は人事部門が定期的に新人のケアを行い、人間関係・配属先に問題があれば、配置転換を行う権限を持つ」としています。極端だと思うかもしれませんが、“採用した新人の定着・戦力化に組織として取り組む”という1つの事例です。

 

最悪のケースに陥る典型的な流れは、OJT指導者の「教える技術」が低いことで、「教え方が悪いので吸収スピードが遅い ⇒ 時間を割いて教えているOJT指導者が感情的に苛立つ ⇒ 人間関係が悪化して新人が委縮する ⇒ さらに吸収スピードが遅くなる」という負の循環に入ることです。

 

もちろん、OJT指導者の教える技術以外にも、新人の能力や意欲によって成長スピードはばらつきが生じますし、OJT指導者は「本来の業務+教える時間」で負荷がかかりやすい状況です。もっと単純に“相性が悪い”というケースもあるでしょう。

人間関係の悪化が生じないようにすると同時に、早めにその傾向をキャッチして対策することが必要です。

OJTを効果的に運用するには現場に任せきりはNG!企業全体のサポートが重要

OJTの効果を最大化するためには、現場やOJT指導者に丸投げするのではなく、人事/教育部門がコーディネートしながら、周囲が適切に支援する仕組みを作ることが重要です。いくつかの役割を人事/教育部門、OJT指導者の上司、年齢の近い先輩社員などで分担していくと良いでしょう。

 

OJT指導者以外で以下のような役割分担を行うことがベストプラクティスの1つです。

 

 

1.OJT指導者の上司

“OJT指導者の上司”は、現場で必要な知識を理解しながらも、OJT指導者よりも大局を見ながら指導に携わることが出来ます。

 

【“OJT指導者の上司”が担う役割】

・計画段階:OJT指導者が作成した計画や指導内容、目標の設定が妥当かをチェックする

・実施段階:部門全体での“仕事の流れ”や“各職種が果たす役割や意義”などの全体像を伝える、中長期的なキャリアステップに関する面談で新人をモチベートする。OJT指導者とコミュニケーションを取りながら、計画が適切に進んでいるかのチェックと、OJT指導者のフォローやケアを行う

 

 

2.人事/教育部門

“人事/教育部門”は部門を横断してOJT計画を運用できる存在です。また、直接はOJT指導を行わないから果たせる役割もあります。

 

【“人事/教育部門”が担う役割】

・計画段階:OJT指導者へ教育計画の作成を依頼する。また、OJT全体のPDCAを設計したり、OJT自体の計画&振り返りデータを蓄積したりして、企業のOJTレベルを向上させる

・実施段階:Off-JTの企画や日報などの共通フォーマットを通じた教育の実施。また新人との定期面談(モチベーション状態やOJT指導者との関係性の把握、業務外の相談など)を行う

 

 

3.年齢の近い先輩社員

年齢の近い先輩社員を新人の“ブラザー/シスター”として配属します。新人が心を開いて相談しやすい相手であり、先輩社員側も新人の置かれている状況や心理状態が理解しやすいことが、ブラザー/シスターの特徴です。

 

人事/教育部門と同じように、OJT指導での関係性がないほうが、新人が気軽に相談しやすくなるので、“他部署”もしくは同じ部門でも“他チーム”の社員を設定することが、ブラザー/シスター制度を成功させるポイントです。

 

【“ブラザー/シスター”が担う役割】

・計画段階:特になし

・実施段階:新人が企業に馴染むことのケア、OJT指導者や人事/教育部門には見えてこない本音の把握(ブラザー/シスターには“無理に問題解決しようとさせず、人事/教育部門に報告をあげるように指示する”ことが重要です)

実践!OJTの効果を最大限に高めるための手順と事前準備

 

OJTの効果性を高める基本は、目標(いつまでにどの程度のレベルまで成長してほしいのか)を明確に定め、目標達成のために必要なカリキュラムを作成することです。当たり前の話ですが、OJTでは、教育計画を作らずに進めていることも多く見られます。

 

OJTの目標設定とカリキュラムの設計ノウハウ、そして、必要な教材やマニュアルが揃っていくことで、OJTの効果性をどんどん高めていくことが可能です。

 

 

OJTの目標を明確にする

OJTの目的は現場で必要な技術を覚え、新人を1人前へと成長させることです。目的を具体的なゴール、ステップへ分解していきましょう。明確にすべきことは、「最終的なゴールは“いつまでにどんな成果をあげられるようになる”ことか?」「最終的なゴールに到達するまでにどんなミニゴールがあるか?」「各ミニゴールはいつまでに達成するか?」です。

 

成果や期間の目標は、少しハードルの高いチャレンジングな目標と、平均的なレベルであれば達成できる堅実なレベルと、2つ設定しておくことがおすすめです。

 

 

目標達成のためのカリキュラムを作成する

目標達成のためのカリキュラムは、「各ミニゴールを達成するためにどんなスキルを覚える必要があるのか」「どうやって覚えるのか」から考えていきます。各OJT指導者が考えることも重要ですが、教育対象となる新人の数が多かったり、継続的に採用が発生したりするようであれば、人事/教育部門がコーディネートしながらマニュアル化を進めていくことが重要です。

 

例えば、スターバックスやマクドナルドなどは、アルバイト社員を採用してから時間帯責任者まで育成するプロセスの標準化・テキスト整備が徹底されています。だからこそ、人の入れ替わりが発生する中で、サービスの提供クオリティを維持し続けられるのです。

 

目標設定とカリキュラムを整備したり、学ぶ内容をテキスト化したりすることは、目標や達成プロセスの全体像を新人に共有してモチベーションを高めたり、予習や復習を可能にしたりする効果もあります。ぜひ取り組んでみてください。

まとめ

OJTは、Off-JTとセットで行うことで、新人をスピーディーに戦力化していくことが出来ます。一方で、名ばかりのOJTになり、OJT指導担当だけを決めて、現場に丸投げにされているケースも数多く見られます。名ばかりのOJTは、効果性が低いだけでなく、新人の早期離職を生み出す危険性もありますので、注意が必要です。

 

OJTの効果性を高め、新人育成を成功させるためには、3つのポイントがあります。

 

まずは組織全体でのサポートです。OJTの計画作成から運用までを、人事/教育部門がコーディネートしながら、組織全体で役割分担して進めていきましょう。

 

次にOJTの目標設定も重要です。新人育成の最終的なゴールが何か、また、最終ゴールに到達するまでのミニゴールは何か、を明確にしていきましょう。ゴールと到達するまでのプロセスの全体像を共有することは、新人のモチベーションアップにも役立ちます。

 

最後に、カリキュラムの整備です。ミニゴールが明確になっていると、カリキュラムの設計は比較的容易です。新人育成が継続的に発生するようであれば、目標と到達プロセス、カリキュラムのマニュアル化を進めましょう。マニュアル化は新人の予習・復習を促進させ、OJTの効果性を高めることにも繋がります。

 

OJTの効果性を高める取り組みは、新人の戦力化を早めます。組織の人材育成力を高め、成長スピードを上昇させましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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