新人研修の講師が押さえたい知識と必要スキル、実施のコツや注意点を解説!

2021/08/10

登壇する女性社員

新人研修を自社で内製(社内実施)している会社は少なくありません。新人研修を内製する場合、人事部の社員等が新人研修の講師を務めることになりますが、研修講師としてのトレーニングを受けたことがあるビジネスパーソンの方はそれほど多くありません。

 

記事では、プロの研修講師を育成している研修会社としての視点を踏まえて、新人研修の講師を務めるにあたって押さえておきたい心構えや教える技術、注意点を解説します。講師として新人研修を成功させたい方は、ぜひ参考にしてください。

<目次>

新人研修の目的とは

新人研修に限らず、研修の実施目的を明確にしておくことが、効果的な研修を行なうための前提です。分かり切ったことと思われるかもしれませんが、まずは新人研修の目的を再確認しておきます。

 

新人研修は、新入社員に対して行なわれる研修であり、

 

  • 学生から社会人への意識変革
  • 社会人としての基本的なマナーやスキルの習得
  • 業務に必要となる知識や技術の習得
  • 組織社会化

 

等を実現して、現場配属へのスムーズな移行、定着・活躍を目的に実施されます。

 

上記の中で、「組織社会化」は耳慣れない方もいるかもしれません。「組織社会化」とは、組織の理念や行動規範、共通言語や構成メンバー等の知識を得て、“組織に馴染む”プロセスを指す言葉です。

 

メンバーが持てる力を存分に発揮するためには、“組織に馴染む”プロセスが不可欠です。対面での勤務の場合、勤務中の雑談や声がけ、ちょっとした質疑を通じて、組織社会化が自然と進む側面もあります。

 

逆に、リモートワークを導入している会社では、新人研修の中で組織社会化のプロセスもしっかりと入れておくことが大事です。

新人研修で講師に必要なスキル

話を聞く新人

新人研修の企画から実施までを担う講師には、以下のような基本スキルが求められます。どこが十分か、どこを伸ばす必要があるかをぜひ確認してみてください。

 

 

効果的な研修を企画するスキル

新人研修の講師は、研修の目的やゴールから逆算して、具体的なプログラムやコンテンツを設計して、投影資料やテキストに落とし込んでいくことになります。

 

研修設計は、まず研修の目的とゴールを明確に言語化します。ゴール設定の際には、配属先で必要となるスキルやマインドを、現場の担当者と十分にすり合わせることが大切です。目的とゴールを明確化できたら、新入社員に教えるべき内容やプロセスをゴールから逆算して設定します。

 

そして、重要な項目を絞り込んだり、見やすくわかりやすい資料へと落とし込んだりと、飽きさせないように、分かりやすいように工夫を重ねていきます。

 

 

研修を効果的に実施するコミュニケーションスキル

講師には、研修の「場」を作る力、受講者に分かりやすく伝える力、受講者の反応を見ながら伝え方を調整する力、受講者の主体性を引き出す力などが必要です。

 

研修は「知識を伝える」場ではありません。新入社員の意識を変革したり、現場でのOJTに必要な行動を主体的に取れる状態にしたりすることが、新人研修の目的となります。求められるコミュニケーションスキルは、「相手を動かす」ためのものです。

 

 

研修をスムーズに開催する運営調整スキル

研修を実施する際には、社内関係者とのスケジュール調整や会場の確保、研修の案内などの準備が必要になります。準備や調整を円滑に進める段取り力も、新人研修を実施するうえで必要なスキルの一つです。ただし、企画やコミュニケーションと比べると、運営調整は比較的他者に依頼しやすい部分です。

研修実施の流れ

研修の実施風景

新人研修の内容を組立てて、実施して、振り返りを行なうまでのポイントとなる点を、流れに沿って解説します。

 

 

1.受講者のレベルや課題の把握

まず、受講者の状態や現状のスキルレベルを把握しておくことが大切です。新卒者は、“社会人経験がない”という意味では横並びですが、思考や意識のレベルは決して均一ではありません。思考力や主体性、入社時の意識に応じて、研修内容やワークの進行等を調整する必要があります。

 

また、受講者のレベルと同時に、自社の現状を把握しておくことも大切です。新人研修のゴールを考える上で、目安のひとつは「スムーズな現場配属(スムーズなOJTへの移管)」です。

 

現在、現場配属/OJTにおける新人への評価が高い点、低い点、生じている課題等をヒアリングしておくと、適切なゴール設定と効果的なプログラム設計につながります。

 

 

2.研修の目的・ゴールの具体化と明確化

出発点を把握できたら、研修の目的・ゴールを設定します。

 

新人研修は教える内容が多く、ある程度内容も決まっているため、「何をどう教えるか」からプログラム設計を始めてしまいがちです。しかし、教える内容先行の設計方法だとプログラムの軸がぶれ、求める成果を得られなくなる場合もあります。

 

研修のゴールとして、「受講者が最終的にどうなってほしいか」を明確に定めましょう。新人研修であれば、「1年後の姿」と「部門配属時の姿」という2つの時点で、どのような意識が浸透し、どのような行動が習慣化しているべきかを具体的にイメージしてみると良いでしょう。

 

とくに現場配属時の姿は、「知識として知っている」ではなく、「実際にしている(身に付けている)」レベルで求められるものが何かをしっかりと絞り込んで特定しましょう。現場配属時の姿を、受け入れる現場側とすり合わせておくことがおススメです。

 

 

3.具体的な内容を決めて、カリキュラムやスケジュールの作成

研修ゴールが決まったら、研修内容、実施方法を具体的に考えるフェーズです。研修内容は先述のとおりゴールから逆算して考えるのと同時に、新人研修の基本内容である「意識変革・組織社会化・基礎スキル」という3大テーマを細分化してリストアップしておくと、内容の抜け漏れを回避しやすくなります。

 

実施方法は、「学習ピラミッド(ラーニングピラミッド)」の考え方を踏まえて、定着率が高いアクティブラーニングをなるべく多く取り入れ、受講者が主体性を発揮できる場を作ることがポイントです。

ラーニングピラミッドの図

研修時間だけが研修ではありません。朝礼や夕礼、日報、余白時間などをどう使うかが、「身に付ける」うえで大切になります。

 

新人研修を設計するポイントは下記の記事も併せてご覧ください。

 

4.受講者へ案内

受講者に開催日時やカリキュラム内容などの概要を案内し、事前資料を共有します。

 

 

5.研修当日

研修当日は、プロジェクターなどの機材の動作確認を行ないます。オンラインで実施する場合は、カメラやマイク、通信環境などのチェックも必須です。

 

予定時刻になったら、カリキュラムに沿って研修を実施しましょう。研修のはじめに受講者とゴールを共有しておくと、研修効果の向上が期待できます。講師としてはあれもこれもと教えたくなるものですが、研修当日は「教えすぎない」ことが大切です。

 

本当に記憶にとどめたいことは何かをしっかり絞り込みましょう。研修中は、受講者の反応から理解度や納得度を確認します。状況に応じた臨機応変なプログラム修正も、講師の腕の見せ所です。

 

 

6.フォローアップ、研修の振り返り、報告書の作成

研修は実施して終わりではなく、内容を振り返る時間を十分にとることが重要です。受講者自身が学びを振り返り、「その学びをどう実践に活かすか」という行動目標を立てられるような仕組みを作ることで、研修内容を実際の業務へとスムーズにつなげていけるでしょう。

 

学習ピラミッドの考え方だと、「人に教えること」が最も学習効果を高めます。そのため、「今日の学んだことのポイントを翌日に発表してもらう」などの課題を出すことも効果的です。

新人研修で盛り込まれる3大テーマ

新人研修の内容は、一般的には以下の3大テーマに大きく分けられます。

 

  • マインドセットに関する研修(意識変革)
  • 組織に適応し個人の能力を発揮するための研修内容(組織社会化)
  • 社会人として必要な基本スキルを習得する研修内容(マインドセット)

 

それぞれのテーマで、実施したい研修内容の具体例をご紹介します。カリキュラムの作成時、抜け漏れがないかどうかのチェックにお役立てください。

 

 

マインドセットに関する研修

  • 「学生気分」からの卒業
  • 社会人としてのマインドセット獲得
  • プロ意識の醸成

 

 

組織に適応し個人の能力を発揮するための研修(組織社会化)

  • 企業のミッションやビジョンの理解
  • 会社の沿革や事業の経緯の把握
  • 組織構成やメンバーの名前の把握
  • 組織の価値観や暗黙知の理解
  • 会社独自のツールの使い方や業務規則など、自社ルールの理解
  • 社内用語や業界用語の理解

 

 

社会人として必要な基本スキルを習得する研修

  • 自社で必要なビジネスマナーの習得(挨拶、メールの送り方など)
  • 顧客への対応スキルの習得(電話対応、名刺の渡し方など)
  • 顧客や上司、同僚とのコミュニケーションスキルの習得
  • 各職種で必要な基礎スキルの習得
  • 業界に応じたコンプライアンスの知識

など

新人研修で講師としての心構えや教える技術、注意点

最後に、新人研修で講師を務める際の心構え、教える技術、気を付けたいポイントを解説します。研修プログラムの作成時、そして研修当日を迎える前に、ぜひ目を通してください。

 

 

講師としてのあり方

研修で教える内容に詳しいことは、講師として当たり前の条件です。

 

しかし、いくら知識があっても、受講者が受け止めきれないほど多くの内容を話してしまったり、話が横道にそれて肝要なポイントが伝わりづらくなったりするのは、良き講師とはいえません。「教えるスキル」を身に付けることが、良い講師となる必須条件なのです。

 

また、研修講師としてテキスト強く意識したいのは、「受講者の変化を促進する併走者であること」です。受講者と上下関係になるのではなく、受講者の隣で変化をサポートする存在となることを意識して研修に臨みましょう。

 

 

オープニングのポイント

研修において、「登壇する瞬間」の印象は、研修全体への印象や姿勢を作る上で大切です。オープニングの10分で研修の「場」を作ることが非常に重要となります。

 

例えば、研修の最初に行なう講師の自己紹介で、明るい雰囲気と講師への親しみ、そして、信頼を作り出します。また、これから始まる研修で受講者が気負わず自分の意見を話せるようにアイスブレイクのワーク等を入れることも有効です。

 

また、研修への参加姿勢を作る上では、研修のゴールを明確に示すと共に、注意事項や研修参加のガイドラインをはじめに確認しておきましょう。

 

 

講師として好印象を与えるための身体技法

研修講師は、自らが「メディア」であり「象徴」であることを意識する必要があります。伝えたい情報が最も効果的に伝わるよう、次に挙げるような身体技法が基本となります。

 

  • 立ち方:背筋を伸ばしてあごを少し引きます。腕は組まず、リラックスします。足は不自然に開きすぎないように注意しましょう。身体は揺らさず、静かに立ちます。

 

  • 服装:社会人としての常識の範囲内で選びます。研修の「狙い」に合わせて服装を選ぶのがポイントです。

 

  • 声:お腹から発声し、すべての受講者にきちんと声を届けます。

 

  • 視線:視線はメッセージであり、センサーでもあります。一人ひとりに視線を届けるイメージで、全体にまんべんなく目配りします。対面研修であれば左前から右後ろへ、オンラインであれば左上から右下に「Z」を描くように目線を動かしましょう。

 

  • 動き:身体の正面を受講者に向けます。スクリーンやホワイトボードに向かうときも、受講者に背を向けないよう気を付けましょう。

 

  • 話し方:淡々と話し続けるのではなく、抑揚を付けつつ、間をうまく取りながら、明確に話します。

 

  • オンラインの場合:カメラ位置やパソコンの置き場所を調整して、逆光にならない明るい場所で行なうようにしましょう。外付けで照明やWebカメラを利用することがおススメです。

 

 

進行のコツ

教育効果を上げるには、研修を単なる「講義」の場にしないことが大切です。講師が一方的に話すのではなく、受講者がアウトプットできる機会を作りましょう。受講者に質問を投げかけ、会話のキャッチボールのなかで内容を掘り下げていくのが理想的です。

 

わかりやすい言葉や事例を用いるのも、受講者の集中力を保つことにつながります。

 

アウトプットのために「話し合い」の場を設けることは重要ですが、何でも安易に話し合わせれば良いというわけではありません。話しやすく、有益なアウトプットが見込めるような適切な質問を投げかけることが重要です。

 

また、グループワーク等はいきなり話し合いに入るのではなく、自分の考えを整理する時間を与えるようにすると良いでしょう。例えば、グループワークの前に「1分間取るので、テキストの余白等に、自分の意見を書き出してください」と、個人の考えを整理させてからグループワークを始めるとワークが活性化します。

 

 

クロージングのポイント(研修の終わり方)

効果的な研修にするためには、振り返りとアクション設定が非常に重要です。受講者が自身で研修を振り返る時間を十分に確保したあと、受講者へのねぎらいとともに、講師が研修を総括すると良いでしょう。そして、今回学んだことをどう実践するか、具体的な行動目標を立ててもらいましょう。

 

 

オンライン研修を効果的にするための注意点

受講者側から見ると、オンライン研修では監視の目がない分自主性が求められます。また、画面越しになるため、集中し続けることが対面に比べて難しく、空気感が伝わらないというデメリットがあります。一方で、緊張せずに参加できることはオンライン研修のメリットだといえるでしょう。

 

講師は、受講者側から見たオンライン研修の特徴をしっかり押さえてカリキュラムを組立てる必要があります。例えば、研修の場面転換を対面よりも小刻みにしたり、対面研修よりも受講者が発信できる機会を増やしたりすることがポイントです。

まとめ

講師としてのあり方を含めて、新人研修の講師を務めるために押さえておきたい知識やスキル、テクニックはたくさんあります。新人研修が効果的なものになるかどうかは、講師の教え方にかかっています。

 

記事で紹介した内容も参考にして、ぜひ講師としての「教える技術」を磨き、受講者にとって刺激的で効果の高い新人研修を実施してください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役|HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

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