最近の新人は、“デジタルネイティブ世代”と言われるように、SNSを中心としたコミュニケーションの中で育ってきました。何かあれば人に聞くよりもインターネットで検索しますし、SNSやブログ等で自分の事を発信することへの抵抗も減っています。
ネット上のコミュニケーションは、自分の都合の良い時に発信や会話ができ、文章として崩れていてもなんとなくのコミュニケーションで通じてしまうところが特徴です。ビジネス現場でまだまだ求められる“リアルなコミュニケーション”を苦手と感じている若手も多く、言葉に詰まったり、意図が伝わらなかったりする等の弊害が出ることがあります。プライベートなら多少の苦手があることも問題ありませんが、ビジネス現場では、リアルに人と関わりながら仕事をする必要があります。
本記事では、新人のコミュニケーション力を高めることの必要性と、ビジネスの現場で必要なコミュニケーション力を高める方法についてお伝えします。
<目次>
新人がコミュニケーション力を高める必要性
HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、新人・若手に強い研修会社です。本章では最近の新人の「コミュニケーション力の実態」と新人のコミュニケーション力を高める必要性を紹介します。
新人は本当にコミュニケーションが苦手なのか?
最近の新人は“コミュニケーションが苦手だ”とよく言われます。しかし、これは今に限ったことではなく、そう言っているベテラン社員の方たちも新人の頃はそう言われていました。
時代に関係なく新人が「コミュニケーションが苦手」と言われるのは、仕事上必要なコミュニケーションとは何かがわかっていない点が大きな要因です。ビジネスコミュニケーションに慣れているベテランからすると、要領が分かっていない新人のコミュニケーションを「下手」「苦手」と思ってしまうことも無理はありません。
一方で、冒頭でデジタルネイティブ世代の特徴を解説した通り、最近の新人はリアルなコミュニケーションが苦手となっている人が増えていることも事実です。
スマホやインターネットがなかった時代は、分からないことがあれば、分かる人に聞かなくてはならず、その時にコミュニケーションの取り方を学んだものです。また、例えば、友達に連絡するにも「実家」に電話してオトナ(友人の親)と話すことで、“かしこまって話す”ことへの免疫が作られてきました。
しかし、最近は、分からないことがあればまず検索して調べます。SNSでの会話は短文が中心、スタンプ等を交えてとてもフラットな関係性で展開されます。また、スマホのLINE通話等を活用することで、電話等も誰かを介することなく相手に直接繋がります。
上記の状況を踏まえて、新人のコミュニケーション力全体が落ちているわけではないですが、「リアル×関係性が薄かったり目上だったりする相手とのコミュニケーション」は以前よりも苦手になっている状況があります。上記を踏まえて、以下では、新人の「リアル×関係性が薄かったり目上だったりする相手とのコミュニケーション力」を高める必要性について確認しておきます。
新人がコミュニケーション力を高める必要性① 周囲の人と人間関係を作るため
新人がコミュニケーション力を高める必要性の1つ目は「周囲の人と人間関係を作るため」です。仕事の大半は、単独で成し遂げるものではなく、誰かと協力したり、周囲とコミュニケーションを取ったりしながら進むものです。そう考えると、周囲の人と人間関係を作ることは、仕事をする上で不可欠です。
とくに経験の浅い新人の場合、周囲に協力してもらったり指導してもらったりする必要があります。上司や先輩と多くの関わりがある方が、可愛がられることも多く、色々なことを教えてもらったり、フォローしてもらったりもしやすくなるでしょう。新人が周囲の人と人間関係を作ることは、絶対にしなくてはならないことであり、それなしに一人前の社会人になることは難しいといえます。
新人がコミュニケーション力を高める必要性② 仕事をはやく覚えるため
必要性が高い2つ目の理由は「仕事をはやく覚えるため」です。コミュニケーション力が高まっていると、自分が困っていることをピンポイントで上司や先輩に質問することができるので、仕事をはやく覚えることができます。
新人の仕事を覚えるスピードがはやいと、教える側の上司や先輩も楽しくなり、より積極的に教えようとします。このような“分からないことは自分から質問して教わることが出来る” “質問しないことも上司や先輩が教えてくれる”状態になると、新人の成長はどんどん加速していきます。
新人がコミュニケーション力を高める必要性③ 報連相を的確におこなうため
新人にとってコミュニケーション力を高めることが必要な3つ目の理由は「報連相を的確におこなうため」です。
ビジネスコミュニケーション、とくに社内でのコミュニケーションは殆どが「報連相」です。報連相が的確にできる新人は、「何かあっても必ず報連相してきてくれるから、いつでもフォローすることができる」と思われ、仕事を任せてもらいやすくなります。
一方で報連相ができないと、ミスしても大きな問題がない、誰でもできるような仕事や上司によるサポートが必要ない仕事しか回ってきません。こうした仕事は、やっていても面白みを感じにくいですし、成長にもつながりにくいものです。
また、報連相が的確にできるようになると、上司や先輩のサポートを得やすくなり、ミスを回避したり、的確な行動を取ったりすることが出来るようになります。結果的に目標達成にも近づきますし、仕事も面白く感じられるでしょう。
新人にとっての「ビジネスで必要なコミュニケーション力」とは?
本章では新人にとって「ビジネス現場で必要となる3つのコミュニケーション力」をお伝えします。
- 相手の要望やニーズ、期待を理解する力
- 主体的な報連相
- 質問力
これら3つの側面にフォーカスして、トレーニングをしていくと、新人のコミュニケーション力を効果的に高めることが出来ます。
ビジネス現場で必要なコミュニケーション力① 相手の要望やニーズ、期待を理解する力
1つ目に必要なコミュニケーション力は「相手の要望やニーズ、期待を理解する力」です。
ビジネスは、相手が必要としているものを提供することで成り立ちます。従って、仕事する上での大前提は、相手の要望やニーズ、期待を理解するコミュニケーション力です。具体的には、相手が言っていることをしっかりと「聴く」力です。
相手は、顧客の場合もあれば、上司や先輩であるケースもありますが、いずれにしても、相手の要望やニーズ、期待をしっかりと聴いて理解するコミュニケーション力がまず必要です。
ビジネス現場で必要なコミュニケーション力② 主体的な報連相
2つ目に必要なコミュニケーション力は「主体的な報連相」です。主体性は、コミュニケーション力の話と少しズレていると感じるかもしれませんが、主体的な報連相はコミュニケーション力を高める上で非常に大事なポイントです。
新人が受け身になった途端、コミュニケーションは機能しにくくなります。自分がまかせられた仕事や指示された仕事、また自分の状況を「主体的に報連相出来るか?」が仕事の成果と直結します。主体的に報連相することでトラブルを回避したり、早く成果を上げたり、新たな仕事をもらったりすることができます。
例えば、下記のような笑えない事例があります。ある会社で上司が新人に対して一通り仕事の説明をしたあとに、理解できたか確認したところ、新人は「だいたい理解できました」と答えたそうです。
「じゃぁ、やってみて」と仕事を任せたところ、なかなか進まず、様子をうかがってみると、新人は何やら難しい顔をしながらネットを検索しているようです。10分ほど経過して「どんな状況か?」と上司が聞いてみると「さっき教わった中にわからない専門用語があり、ネットで調べているのですが、なかなか見つかりません…」との返事。上司に聞けば30秒で済むことを10分以上かけてやっていたことを知り、上司は非常に残念な思いをしたそうです。
じつは多くの会社で、上記の事例と似たようなことが起こっています。新人にとって必要なコミュニケーション力の中で、「主体的に報連相する」ことは欠かせないものです。とくにリモートワークや在宅勤務を取り入れている会社では、リアルな職場のように上司が小まめに声がけしにくくなっています。以前よりも新人が主体的にコミュニケーションを取る重要性は高まっています。
ビジネス現場で必要なコミュニケーション力③ 質問力
新人に必要なコミュニケーション力の3つ目は「質問力」です。経験が浅い新人は、仕事の進行を「上司や先輩の指導やアドバイス」に依存する部分が大きくなります。従って、上述したように「主体的な報連相」が非常に重要となるわけです。
しかし、上司や先輩の立場からすると、主体的に報連相してもらっても、「何を聞きたいのか分からない」「何が分かっていないのかわかっていない」ような状態だと、教えようがありませんし、段々イライラしてしまうこともあるでしょう。上司や先輩がイライラしてくると、新人としてはどんどん質問しにくくなります。
いまの状況、何が分からないのか、何を教えて欲しいのかをしっかりと伝えられる質問力は、新人が成果を上げる上で重要となるのです。
新人のコミュニケーション力を効果的に高める方法
新人のコミュニケーション力はどのようにしたら高められるでしょうか。本章では、新人のコミュニケーション力を効果的に高める3つのポイントを解説します。
新人の「理解する力」を高めるポイント
1つ目は新人の「理解する力」を高める方法です。新人の理解力を高める上では、まず現状を把握することが必要です。やり方は簡単です。何かを説明した後、「どう理解したのか、言ってみて」と伝え、新人の話す内容を確認します。
理解力が高い新人は、要点をまとめ、ポイントを絞って説明することができますが、理解力の低い人は、内容を理解できていないため、ポイントのズレた返答をしがちです。
理解力の低い新人の「理解する力」を高めるには、どうすればよいのでしょうか。お勧めなのは「要点をまとめて報告する訓練をさせる」ことです。要点をまとめる内容としては、①毎日の業務、②会議等の議事録、③新聞や書籍、の3つがあります。
⇒毎日の業務終了後や翌日の朝に、実施した仕事内容、学んだこと、疑問に思ったこと等を報告させる
⇒会議やMTGの議事録をとらせて、要点を口頭で報告させるか、メール等で送ってもらって確認する
⇒朝礼等で、読んだ記事や書籍の要点をまとめて説明させる
3つのどれか1つでも毎日継続して行うと、理解力や要点をまとめる能力は徐々に高まります。「理解する力」が低いと、上司の指示や顧客の要望をそもそも理解できません。また、「伝え方」が苦手な新人は、そもそも「何を伝えれば良いかを理解できていない」ことも多くあります。必要があれば、集中的に鍛えて行きましょう。
新人の「伝える力」を高めるポイント
2つ目は新人の「伝える力」を高める方法です。
コミュニケーションの基本は「聴く」です。「聴いて理解する」プロセスができて、初めて「伝える」ことが意味を持ちます。従って優先すべきは「聴いて理解する」力ですが、もちろん「聴いて理解する」ことが出来たとしても、最終的には「伝える」ことが出来ないと良いコミュニケーションがとれません。
「伝える力」を鍛えるための一番簡単な方法は「伝える順番」を教えることです。報連相やビジネスコミュニケーションで必ず教えられる内容、それは「最初に結論を伝える」ことです。当たり前の事なのですが、伝えることが苦手な新人は、大抵“結論ファースト”のコミュニケーションが出来ていません。
- 結論(最も伝えたい重要な主張)
- 補足(結論の理由、根拠、背景など)
“結論ファーストで伝える”ためには、事前に話すことをまとめておく必要があります。ダラダラと話す新人には、「結論を先に言うように求める」⇒言えない場合には「何が結論で、どういう順番で情報を伝えればいいか、整理してからもう一度話しかけて」と指導しましょう。
一見冷たいように見えるかもしれませんが、始めのうちに、しっかりと習慣化することで、新人の成長が加速しますのでお勧めです。
コミュニケーションの「準備力」を高める方法
新人のコミュニケーション力を高める上で3つ目のポイントは「準備力」を高めることです。
ビジネス現場において、新人にまず求められるコミュニケーションは「喋るのが上手い」とか「話が面白い」とかではありません。「過不足なく情報のやり取りができる」ことです。従って、新人にとってコミュニケーション力を高める上では、まずは何を伝える/何を質問するかを整理する「準備力」を高めることが有効です。
準備力を高めるためには、「5W1H」で考えさせることを習慣化させましょう。
ご存じの通り、「5W1H」は、What(何)、Who(誰)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)、6つの頭文字を取ったものです。5W1Hを事前にまとめることで、伝えるべきことが明確になります。5W1Hをしっかり考えて整理することで準備力が高まり、コミュニケーションがスムーズに行えるようになります。
おわりに
周囲と協働して成果をあげることが求められるビジネス現場で、コミュニケーション力は不可欠です。デジタルネイティブ世代と呼ばれる最近の新人は、スマホやSNSが当たり前にある環境で育ってきたからこそ、「リアル×目上とのコミュニケーション」を苦手とする傾向があります。
しかし、新人が成果をあげたり、成長したりするためには、「リアル×目上とのコミュニケーション力」は非常に重要です。新人がとくに必要とするコミュニケーション力は「理解する力」「主体的な報連相」「質問力」の3つです。
記事では、新人の「理解する力」「伝える力」「準備する力」を高めるポイントを解説しました。紹介したポイントも踏まえて、新人のコミュニケーション力強化に取り組んで頂ければ幸いです。