ピーターの法則とは?組織がとるべき創造的無能を回避する対策とは?

2020/12/25

ピーターの法則は、「就職」ではなく「就社」が一般的であり、ジェネラリストとして昇進・昇格することで待遇が向上していく日本企業でとくに起こりやすい階層社会学の法則です。記事では、ピーターの法則の概要と、ピーターの法則によって引き起こされる組織課題、回避策を解説します。

<目次>

ピーターの法則とは?「人は無能になるところまで出世する」

ピーターの法則は、「人は無能になるところまで出世する」という有名な法則です。

 

従って、組織は、組織内の個々人能力開発し続けなければ、組織はいつか無能化し機能しなくなってしまいます。ピーターの法則によって生み出される組織の無能化を「創造的無能」とも呼びます。

 

提唱した南カリフォルニア大学の教育学博士であるローレンス・J・ピーターの名前を取ってピーターの法則と呼ばれます。

 

 

ピーターの法則における3つの要素

ピーターの法則は、以下3つの内容でまとめられます。

 

・法則1.「どんなに優秀な人でも、昇進し続けるうちに能力が限界に達して無能になる時がくる」

一般的には昇進・昇格とは、いまの仕事で成果を上げた結果としてより上位の仕事に就くことを指します。

 

昇格後の地位というのは、いままでの仕事よりも難易度が高く、また影響力も大きくなります。例えば、「5人のメンバーを見る営業チームリーダー」から、「3チームを束ねる営業課長」へ、そして、「3つの課をまとめる営業部長」へ、そして、「営業・製造・開発などの複数の部門を統括する事業部長」へといった形です。

 

昇進を重ねて、仕事の難易度が上がっていく中で、「能力の限界」に達してしまい、いつの間にか、「前の仕事では成果を上げられていたが、いまの仕事では成果を上げられない」無能の状態へとなってしまうのです。

 

・法則2.「無能な人物は現在の地位に留まり続け、組織は無能な人で溢れる」

能力が限界まで達すると、「次の仕事に昇格するレベルには成果を上げられない」となり、極端にいえば「無能」となるわけです。

 

欧米の戦略コンサルティングファームなどは「UP or OUT」と「次の地位に上がるか、退職する/解雇されるか」などといいますが、一般的な組織ではそこまでの圧力は働きません。従って、能力の限界を迎えた無能な人物は、いまの地位に滞留することになります。

 

法則1の通り、いま昇進を続けている優秀な人であっても、必ずどこかで限界点を迎えて無能になるわけで、組織は最終的には、限界点を迎えた無能な人で埋め尽くされてしまうことになります。

 

・法則3.「昇進の余地がある人により、組織は維持される」

ピーターの法則では、限界点に達した無能な人はその地位に滞留して、自己成長しなくなるとされています。一方で、まだ昇進の余地がある、つまり、限界に達していない人は、自己成長を続けながら、成果を上げて、組織の成長や前進に貢献していきます。組織は、この「まだ無能化していない」人たちによって支えられているということです。

 

 

出世した人が無能になるプロセスとは?

前提として、多くの組織において出世とは、「いまの仕事で成果を上げた結果」です。しかし、「いまの仕事で成果を上げる力」と「次のポジションで成果を上げる力」は必ずしもイコールではありません。

 

分かりやすい事例でいえば、「名選手、名監督ならず」というように、プレイヤーとして成果を上げる能力と、監督として戦略を立てたりチームをまとめたり能力は別物なわけです。

 

それにも関わらず、「次のポジションで成果を上げる力」と「本人の資質」と照らし合わないまま、何らかの成果を上げたことに対する「報酬」として昇格させてしまうことで、無能な人が生じやすくなります。

 

他にも、降格制度がはっきりしていない組織も注意が必要です。「そのポジションでは成果を上げられなかった」人を、一度降格させたり、異動させることが出来なかったりする組織は、無能な人が滞留して創造的無能が生じやすくなります。

 

 

ピーターの法則(創造的無能)で生じる組織の不具合

ピーターの法則で創造的無能が生じると、組織には以下のような不具合が生じます。「無能になってしまった上司」がチームを率いるわけですので、当たり前の結果ともいえます。

 

 

施策の焦点を誤り、成果が上がりにくくなる

無能になってしまった上司が一番やりがちな失敗は、前の地位でうまくいった成功パターンを繰り返すことです。新しい地位で成果を上げるためのスキル、また、成功の秘訣は、得てして前の地位とは異なってくるものです。

 

しかし、とりわけコンセプチュアルスキルが低い場合、成功のポイントを見極められないまま、自分の成功パターンに固執してしまいます。その結果、上司およびメンバーがどれだけ頑張っても成果が上げにくくなるという状況が生じます。

 

 

意見や提案が受け入れてもらいにくくなる

成果が上がらない中で、無能な上司は自分のプライドを守ることを重視し始めます。「成果を上げて昇進した優秀な自分」の虚像を守りたいのです。

 

従って、いまの方針がどこか誤っていると感じても、メンバーからの提案や改善の意見を聞き入れないようになっていきます。話を聞いてもらえないメンバーは、無能な上司への期待をやめ、コミュニケーションが減っていきます。

 

また、上司の意に沿う意見だけを発言するような腰巾着のようなメンバーだけが可愛がられたりして、チーム内の情報やコミュニケーション格差も生じやすくなります。

 

 

他責の文化が生まれやすくなる

無能な上司が組織の中に増えてくると、組織内の信頼関係は低下します。そうすると、成果が上がらない中で、「なるべく責任を負いたくない」という雰囲気がチーム内に生じやすくなり、他責の文化が生まれやすくなります。

 

他責の文化は、メンバーの主体性を損ね、組織はますます成果から遠ざかっていくことになります。

 

 

人事評価への不満が高まる

どれだけ人事を尽くしても、人が人を評価する以上、絶対公正で誰もが100%納得する人事評価というのはありえません。

 

しかし、健全な組織では、上司部下の信頼関係やコミュニケーションの中で、自分の評価に対する納得感を得ることが出来ます、また。右肩上がりに成長している組織では、絶対的な成長や将来への展望がわずかな不満を癒してくれる側面があります。

 

しかし、創造的無能が起きてしまっている組織は、そもそも右肩上がりの成長や上司部下の適切なコミュニケーションが実現されません。それに加えて、自分のプライドを守ることに目が向いてしまった無能な上司は、“優秀な部下”よりも、“従順な部下”を大切にしたがります。

 

その結果、人事評価自体の公正さも歪みがちとなり、人事評価の結果や組織への不満が募ります。

 

 

優秀な若手が離職しやすくなる

創造的無能が進んでいくと、組織自体の成長が止まってくる中で、人事評価への不満も募ってきます。その結果、「ここでは成長できない」「自分の実力を正当に評価してもらえない」「キャリアの展望が見えない」と感じた優秀な若手の離職が始まります。

 

ピーター法則3「昇進の余地がある人により、組織の維持や機能が可能になる」にある“昇進の余地がある人”こそ、優秀な若手人材です。優秀な若手人材の流出が始まると、組織は衰退への道を歩み始めることになります。

 

 

組織におけるピーターの法則の回避と対策

ピーターの法則による組織の創造的無能を避けるためには、組織に以下のような施策を実施したり、文化を浸透させたりすることが必要です。

 

 

複線のキャリアパスを設ける

本人の資質に合った適材適所の配置をするには、組織を率いるマネジメントコースの他にスペシャリストコースといった複線のキャリアパスを設けることがおすすめです。

 

キャリアの選択肢がない場合、プレイヤーとして優秀だがヒューマンスキルが低いメンバーや出世願望のないメンバーも、成果を上げた場合に昇進・昇格のステップとしてマネジメントの道を進むことになりがちです。

 

キャリアパスとして、組織をマネジメントするのではなく、専門性や技術力を磨いて組織に貢献するスペシャリストコースを設けることで上記を回避することが出来ます。

 

 

成果への報酬に複数の選択肢を設ける

多くの組織において、いまの仕事で成果を上げた場合の報酬が昇進や昇格です。しかし、成果に対して、昇進や昇格で報いるというのは必ずしも正しい選択ではないかも知れません。

 

西郷隆盛の言葉に、「功ある者には禄を、徳ある者には地位を」というものがあります。「功」、すなわち成果に対しては金銭的報酬で報いて、「徳」、人格が優れている者に地位を与えるべき、という意味です。

 

人格だけがすべてではありませんが、各地位で必要な能力と本人の資質を照らし合わせて、一時的な賞与や報奨金などで応えたほうがいいのか、次の地位に引き上げるタイミングなのか、判断できる状態が望ましいでしょう。

 

 

ダイナミックな人事異動を文化とする

無能な上司を生み出さないためには、本人の資質に適した仕事をしてもらう人事異動を文化にすることも効果的です。所属する部門の中だけで出世するのではなく、他部門へ異動することで持っている資質が活かせる場合もあります。

 

部門を超えたダイナミックな人事異動があると、キャリアの選択肢が広がります。また、ポジション競争という意味でも、適度な刺激と危機感によって、本人による能力開発(無能の回避)も行われやすくなります。

 

 

降格が当たり前の文化を作る

創造的無能を恐れすぎると、昇進や昇格が慎重になります。一方で、組織の活力を維持するために、若手の抜擢は重要です。成果を上げれば若手でも抜擢して機会を与える文化は、上の世代への刺激となり、下の世代に対してロールモデルとなり、メンバーのモチベーションを高めます。

 

ただし、抜擢には組織としてのリスクも生じます。経験の浅い若手を抜擢すると、失敗することや、まだ次の地位にふさわしいレベルまでは達していないことが明らかになることも多々あります。

 

その時に、降格させられる文化を作っておくと、創造的無能に陥らずに済みます。

 

降格させる時に重要なのは、ただ降格させるだけでなく、復活の文化を作ることです。「抜擢→降格→復活(再昇格)」という文化を浸透させられると、「今回は成果を上げられなかった」などの理由で降格をしても、モチベーションを下げることなく再挑戦する人材が増えやすくなります。失敗を恐れず再挑戦する風土と環境を組織内に作りましょう。

 

 

育成の仕組みを作る

創造的無能が生じる原因は、「新たなポジションに必要な能力」と「いま持っているスキル」のミスマッチです。しかし、人は成長によってミスマッチを解消することが出来ます。

 

ミスマッチの解消を自助努力にしてしまうと、創造的無能が生じやすくなりますので、組織によるサポートを行うことが有効です。具体的には、新任管理者研修、新任幹部研修、また、新たなポジションで必要となるスキル研修などです。

 

また、研修以外にも、昇格した人材には、業務上の問題を相談したり、現状を客観的に振り返ったりための社内メンター制度などを用意することも有効でしょう。

 

 

まとめ

ピーターの法則は、組織内の全員が自分の能力を高め続けなければ、「人は無能になるまで出世する」結果として、組織には無能な上司が溢れるようになるというものです。この状態を創造的無能といいます。

 

当たり前の話すですが、無能な上司に率いられたチームは成果を上げることが出来ず、また、コミュニケーションの減少、モチベーションの低下等を引き起こし、優秀な若手人材を離脱させていきます。

 

ピーターの法則による創造的無能は、キャリアパスの複線化、ダイナミックな人事異動、昇格や昇進以外の報酬、降格と再挑戦の文化、育成の仕組みづくりなどによって回避可能です。

 

これらの文化づくりは、創造的無能に陥る前に手を打つことが重要です。ぜひ組織を健全な状態に保ち、成長を続けるために、自社の現状と照らし合わせて検討してみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

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