フレックスタイム制とは?メリット、デメリットや導入時の検討事項を解説

2020/12/25

フレックスタイム制とは?メリット、デメリットや導入時の検討事項を解説

政府の推進する働き方の多様化、また最近ではコロナ禍による在宅勤務の増加等にともなって、フレックスタイム制を導入する企業が確実に増加しています。多くのメリットもある働き方ですが、導入には注意点もあります。

記事では、フレックスタイム制の概要やメリット・デメリット、導入時の実務的な検討ポイントを詳しく解説していきます。

<目次>

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、「あらかじめ定めた一定期間における総労働時間の範囲内で、労働者が自ら日々の始業時刻、終業時刻、労働時間を決められる制度」です。

 

変形労働制の一種となるフレックスタイム制は、組織の勤務時間を「全社員が必ず勤務しなければならないコアタイム」と「勤務してもしなくてもいいフレキシブルタイム」を組み合わせる形で設定されます。

 

企業がフレックスタイム制を導入するときには、自社でのメリット・デメリットも検討して、コアタイムとフレキシブルタイムを設定することが大切です。

 

 

フルフレックスとテレワークの浸透にともなう新たなニーズ

働き方改革や新型コロナウイルスの影響などによって、日本では柔軟な働き方や労働環境の多様化が一気に進みました。

 

その中で、ITベンチャー等を中心にフルフレックス制を導入する企業も目立ちます。フルフレックス制とは、必ず勤務しなければいけない時間帯(コアタイム)がないフレックスタイム制です。

 

コアタイムがなくなる分、通常のフレックスタイム制以上に自由度が広がる一方で、社員には自己管理が求められますし、コミュニケーションの難易度が高まる部分もあります。会社の状況や社員の成熟度に応じた判断が必要です。

 

コロナ禍の影響もフレックス制の導入が拍車をかけています。ラッシュ時間帯を避けた通勤を実現したり、子育て中の社員がテレワークを活用したりするために、フレックス制を取り入れる会社もあります。

フレックスタイム制のメリットとデメリット

フレックスタイム制の会社で定時前に退社する男性

フレックスタイム制には、以下のメリットとデメリットがあります。

 

 

フレックスタイム制導入のメリット

 

・仕事とプライベートの両立がしやすくなる

フレックスタイム制は、以下のようなプライベートの予定調整をしやすくします。

 

  • 保育園の送りお迎え
  • 習い事
  • 家事
  • 運動
  • 朝活
  • 役所等での用足し

 

フレックスタイム制によって始業時間を遅らせたり、就業時間を早めたりすることで、仕事とプライベートの予定を両立しやすくなります。

 

最近は在宅勤務と組み合わせて、「夕方に子供の送り迎えをして、一緒に晩御飯を食べてから再び働く」といった勤務形態を許容するフレックスタイム制も出ています。

 

・採用力が上がる

仕事とプライベートの両立をしやすくなることは、採用活動でのアピール材料となります。コロナ禍の影響で在宅勤務できる会社が人材確保しやすくなっているのと同じように、フレックスタイム制の会社も採用に有利です。

 

また、実際に仕事とプライベートを両立できると、社員の定着率もアップします。副業・兼業や育児休業といった他の制度と組み合わせることで、更に幅広い人材の採用・定着も可能になるでしょう。

 

・仕事の生産性が高まる

さまざまな研究の結果、「朝に弱い」といった特性は遺伝子的な部分もあり、一概に個人の意識や意欲に起因するものではないことが分かっています。

 

例えば、朝に弱い社員が、通常の勤務形態で朝から仕事を始めた場合、思うようにパフォーマンスが上がらないケースもあります。こうした社員はフレックスタイム制の適用による昼~夜で仕事したほうが効率的なケースもあるでしょう。

 

また、業務によっては夕方~深夜に仕事する必要がある場合もあります。例えば、システムのメンテナンス、HPのリニューアル等はユーザが少ない夜の時間帯に行なわれることが大半です。こういった場合にフレックスタイム制で出勤時間を遅く出来れば、残業時間や心身の負担を軽減することが出来るでしょう。

 

 

フレックスタイム制導入のデメリット

 

・顧客やパートナーの活動時間との兼ね合い

フレックスタイム制を導入する場合、各種商談を行なう取引先やお客様に迷惑がかからない仕組み作りも必要です。

 

例えば、フレックスタイム制ではない取引先と仕事をする場合、一般企業の勤務時間帯に届いたメールや電話へのレスポンスが下がる可能性が出てきます。また、お客様に対して、商品トラブルの相談にすぐに対応できず、顧客満足度の低下や商談を逃すリスクもあるでしょう。

 

こうした問題を防ぐためには、組織内でのフレックスタイム制の運用ルールや対応方法の試行錯誤などが必要です。

 

・社員同士のコミュニケーションが難しくなる

フレックスタイム制によって勤務時間がバラバラになると、同じ時間帯に社員が揃わない、メンバーがいない等の状況が生じます。

 

ビジネスチャット等のツールである程度はカバーできますが、テキストベースだけでのやり取りは認識や方向性にズレが生じるリスクもあります。

 

職務によっては、自分の上流工程・下流工程とのコミュニケーションスピードが落ちると、仕事の生産性が落ちることもあるでしょう。

 

コアタイムをどう設定するのがいいか、コミュニケーションをどう補うのか、試行錯誤が必要であり、一時的に生産性が落ちることもあり得ます。

 

・運用開始まで時間がかかる

フレックスタイム制の導入は、就業規則の内容変更や労使協定による特定事項の定めといった準備が必要です。

 

また、前述のようにフレキシブルタイムやコアタイムの時間設定は自社の業務や職務分担を考慮する必要があり、先行事例をそのまま導入できるものではありません。

 

従って、子育てや介護などをする社員のためにフレックスタイム制を導入したいという場合も、ある程度の準備期間が必要となります。

 

フレックスタイム制と残業

フレックスタイム制を導入したときの残業時間は、通常の考え方とは大きく異なります。従って、社員と人事担当者、経営陣の認識ズレを防ぐためにも、下記の内容を周知する必要があります。

 

 

フレックスタイム制導入時における残業時間の取り扱い

フレックスタイム制を導入した場合、残業時間を日単位で考えることが出来ません。そのため、1ヵ月を清算期間とする基本的な勤務体系の場合、1日単位ではなく1ヵ月の法定労働時間に対する実労働時間の超過分を時間外労働として考える形になります。

 

例えば、1ヵ月の清算期間で法定労働時間が160時間、実労働時間が180時間の社員がいたと仮定します。そうすると残業代は「1ヵ月の実労働時間(180時間)-法定労働時間(160時間)の20時間」で計算します。加えて、深夜労働や法定休日の出勤があれば、付随する割増等が生じます。

 

通常はフレキシブルタイムを深夜労働や法定休日にかからないように設定することで、通常の残業申請等と変わらない運用になりますが、業種や働き方によっては残業時間の取り扱いが煩雑になる場合もあるでしょう。

 

 

清算期間が1ヵ月を超える場合の残業時間の取り扱い

フレックスタイム制の場合、清算期間を1ヵ月ではなく3ヵ月まで延長可能です。清算期間が1ヵ月を超える際には、以下に該当した場合を時間外労働として考えます。

 

  1. 1ヵ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間を「時間外労働」とする
  2. 清算期間で集計して、法定労働時間の総枠を超えて働いた時間(ここから「1」でカウントした時間を除外)

 

 

フレックスタイム制の残業と36協定

企業によっては、業務都合で法定休日に労働をさせたり、1ヵ月を超えた清算期間を設定したりする必要が出てきます。

 

企業内に、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、両者の間で36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出をしてから協定の範囲内でフレックスタイム制の運用が出来るようになります。

 

フレックスタイム制における残業時間の考え方は、一般的な働き方と比べて複雑です。フレックスタイム制を導入するときには、厚生労働省のホームページに掲載されている資料等を確認して、いまの勤怠管理と照らし合わせましょう。

フレックスタイム制の導入を検討する際のポイント

会社でフレックスタイム制を導入するポイント 就業時間と就業規則

フレックスタイム制を導入するときには、「就業規則の規定」と「労使協定の締結」に向けた準備や調整が必要です。ここでは、実務的なポイントを解説しておきます。

 

 

就業規則の規定

 

・決定権を労働者に委ねる

フレックスタイム制を導入した場合、繁忙期などの事情が生じたときに使用者から社員に対して出来ることは、「深夜の代わりに午前中に働いてもらえないか?」等のお願いだけにとどまります。

 

また、フレックスタイム制の導入では、「始業だけ」や「終業だけ」といった片方だけを社員に委ねることは出来ません。始業と就業、双方の時刻を社員に決定してもらう形が必須となります。

 

・ルーズな環境にしない仕組みを作る

フレックスタイム制のコアタイムには、社員のコミュニケーションを確保する等の意味合いがあります。ただし、コアタイムを長時間に設定し過ぎると、柔軟な働き方が難しくなり、フレックスタイム制のメリットがなくなってしまいます。

 

コアタイムの設定、「日報」や「今日の勤怠と業務予定」といった情報共有等を通じて、ルーズにならず、社員のセルフマネジメントを支援することが大切です。

 

 

労使協定の締結

フルフレックスの導入においては、以下のような枠組みを定めた労使協定を締結する必要があります。

 

1・対象となる労働者の範囲
フレックスタイム制には、仕事内容や職種によって向き不向きがあります。従って、制度を導入するときには、運用時のシミュレーションなどを行なって対象範囲を決定します。

・全労働者
・◯◯支社◯◯◯課の者
・◯◯営業所の事務員 など

2・清算期間
清算期間は、制度改正によって上限を3ヵ月まで延長できるようになりました。繁忙期と閑散期の差が激しい職場等では、2ヵ月や3ヵ月といった清算期間を設定したほうがいい場合もあるでしょう。

 

ただし、清算期間を長くすると、社員の心身を考慮した勤怠のコントロールが難しくなる場合もありますので注意が必要です。

 

3・清算期間における所定労働時間
所定労働時間は、清算期間内に労働しなければならない時間を指します。法定労働時間と同じもしくは少ない時間で設定する必要がありますので、一般的には40時間/週を基準とすることが多いでしょう。

 

40時間/週を基準とすると1ヵ月では下記のようになります。

・31日:177.1時間
・30日:171.4時間
・29日:165.7時間
・28日:160.0時間

なお、映画・演劇や接客娯楽業、商業、保健衛生業で10人未満となる特例事業場の場合、法定労働時間を週44時間で読み替えて計算することも可能です。

 

4・標準となる1日の労働時間
社員が年次有給休暇を取得した場合、ここで定めた1日の労働時間を労働したものとして取り扱います。前項で設定した総労働時間を所定労働日数で割ったものになり、8時間で計算されることが一般的です。

5・コアタイムとフレキシブルタイム
コアタイムを設定する場合は、開始時刻と終了時刻を決める必要があります。ただし、コアタイムとフレキシブルタイムは任意項目となっているため、労使協定の届け出は不要です。

まとめ

フレックスタイム制は、一定期間(清算期間)における総労働時間の範囲内で、社員が始業時刻と終業時刻を自分で決められる制度です。

 

フルフレックス制には、仕事とプライベートの両立をしやすくなり、また、社員のライフスタイルに応じた働き方で生産性を高めるメリットがあります。また、コロナ禍によって通勤ラッシュの回避やテレワークの更なる活用施策としても注目が集まっています。

 

一方で、フレックスタイム制は、社員同士や顧客、パートナーとのコミュニケーションが遅れたり、ズレが生じたりするリスクもあります。また、社員の自己管理能力も必要となります。

 

フレックスタイム制の導入は労務的な対応も必要ですので、記事で紹介した導入準備の流れ等も参考に社内調整を進めてください。

著者情報

株式会社ジェイック 取締役 古庄 拓

HRドクター 編集長

株式会社ジェイック 取締役 古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等 twitterはコチラ。ぜひご覧ください。 古庄拓/ジェイック取締役 https://twitter.com/tfurusyo

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