オンボーディングとは?実施の目的とメリット、導入ステップと事例を解説

2020/11/24

少子高齢化のトレンドが絶対的に続く中で、採用した新入社員・中途社員の定着率を上げ、できるだけ早く戦力化したいと考える企業に注目されているのが「オンボーディング」です。オンボーディングの考え方に基づく受け入れプロセスは、企業と社員の双方にメリットをもたらします。

記事では、オンボーディングの定義や運用時のステップ、実際に導入するときの考え方等を解説します。継続的に採用活動を行なっているようでしたら、ぜひご覧ください。

<目次>

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、新卒や中途を問わず“採用した新人”を組織や部署の環境に馴染ませ、早期のうちに能力を発揮できるようにする一連のサポートプログラムです。

 

もともと「船や飛行機に乗り組む」という意味のon-boardから派生した言葉であり、「船や飛行機に新たに乗り込んできたクルーや乗客に必要なサポートを行ない、環境に慣れてもらうプロセス」を指すものでした。

 

それが転じて、ビジネスやHRの世界では、「組織への受け入れプロセス」を指す用語として使われています。

 

 

オンボーディングが求められる背景

オンボーディングはもともと欧米企業においては、従来から実施されている取り組みでしたが、それが昨今、日本企業でも注目されるようになった背景は何でしょうか。

 

従来までの日本企業では、人員構成は「新卒採用」を中心に行なわれることが一般的でした。日本における新卒採用は、中途採用とは明確に識別された“一括ポテンシャル採用”です。4月1日に一斉に入社して、入社後は社会人としての心構えからビジネスマナーに至るまで、長期間の集合研修を行なう仕組みがあります。

 

一方で、転職が当たり前になってきたことに伴って、企業の採用活動において「中途採用」の比率も徐々に増えてきました。中途採用の場合、多くの場合は社会人経験者であり、かつ、個別のタイミングでバラバラと入社してくることになるため、十分な初期教育が実施されない状況が一般的でした。

 

逆に、ポテンシャル一括採用の文化がない欧米では、「個別のタイミングでバラバラと入社する」ことが当たり前であり、それに対応できる初期教育の仕組みとして、オンボーディングが整備されてきました。

 

日本でも、中途採用の比率が増える中で、個別入社してくる中途社員へ対応できる仕組みとしてオンボーディングを導入する企業が拡がっています。

 

また、オンボーディングの普及が進むもう一つの背景として、「中途社員は社会人経験や業界経験があるとしても、自社の組織に馴染むための初期教育をちゃんと行なわないと、スムーズに組織に溶け込み、能力を発揮することはできない」という認識が広がっていることもあります。

 

 

オンボーディングと新卒受け入れ研修との違いとは?

オンボーディングは、従来の新卒受け入れ研修とどのように違うのでしょうか。最も大きな違いは「対象となる人」です。新卒受け入れ研修は「新卒で入社する新人」だけが対象ですが、オンボーディングは「中途社員」も対象となります。

 

また、従来の「中途受け入れ研修」等とは、実施するスパンが違うことも大きな特徴です。日本では、新卒の受け入れ研修は4月~6月の3か月ぐらいの長期間にわたって実施されます。一方で、中途の受け入れ研修は入社直後に単発で行なわれるケースが大半でした。

 

これに対してオンボーディングは、社員が組織に馴染み、戦力化するまで3~6か月の継続的なプロセスになっています。

 

さらに、従来の受け入れ研修は、入社した本人と人事部門だけで進めるプロセスであることが大半ですが、オンボーディングは、OJT指導者や上司等も含め、社内のさまざまな立場の人を巻き込むプログラムであることが特徴です。

オンボーディングを実施するメリット

オンボーディングを導入して運用すると、どのような効果を得られるのでしょうか。オンボーディングの導入で得られるメリットのうち、代表的な3つをご紹介します。

 

 

新入社員の定着率が高まる

オンボーディングの持つメリットとしてまず挙げられるのが、新卒・中途社員の定着率が高まることです。

 

新卒・中途を問わず、新入社員にとって、早く組織に馴染めるかどうかは非常に大きな問題です。入社後すぐに組織に馴染み、既存の社員と良い関係を築く、また、明文化されていない暗黙知や共通言語を学ぶことができれば、組織に対する所属意識も高まり、前向きに業務に取り組むことが可能になります。

 

 

新入社員の戦力化が早くなる

オンボーディングを実施すると、設計された受け入れプロセスが社内で確立されます。自社の価値観から共通言語、人間関係、具体的な業務内容まで、必要とされる学習プロセスが漏れなく用意されていることで、新入社員がより早く組織に馴染むことができます。

 

戦力化が、受け入れる部門やOJT指導者の力量に左右される比率は少なくなりますし、OJTで教えられる業務スキルの前提となっている価値観や暗黙知を理解することで、OJTの効果性も高まります。

 

戦力化が早くなり、業務において活躍することができると、新入社員も「自分が戦力として貢献できている」という実感を持つことができ、定着率のアップにもつながります。オンボーディングをうまく取り入れることで、こうした好循環が生まれるのです。

 

 

受け入れ部署や上司の負担が軽減する

新卒・中途の受け入れ部署における負担が軽減されることもオンボーディングのメリットです。

 

多くの中堅中小企業において、新入社員の受け入れプロセスは、初期教育までは人事部門が主導して行なうため、一定のプロセスやノウハウが蓄積されています。一方で、部門配属後のOJTや中途の受け入れプロセスは、実施主体がバラバラ、OJT指導者も毎回のように変わることから、あまりノウハウが蓄積されない傾向があります。

 

それをオンボーディングを導入して標準的なプロセスを決めることで、現場での負担を軽減させることができます。

 

もちろん、配属先の部門や職種、中途人材の経験値によって個別の教育内容や目標設定は変わってくるでしょう。しかし、計画作成や振り返りも含めた標準プロセスがあり、過去データがあり、それに則って教育プログラムを設計したり、目標設定したりできることは現場の負担を減らしてくれます。

 

また、オンボーディングのプログラムでは、新入社員のケアをOJT指導者だけではなく、人事・上司・ブラザーシスターやメンター等で分担しますので、OJT指導者の精神的な負担も減らすことができます。

 

さらに新人の戦力化が早くなれば、OJT指導者のパフォーマンス低下等の問題も解決しやすくなり、組織の成長スピードを早めることもできるでしょう。

オンボーディングを運用するステップ

オンボーディングは、以下の3つのフェーズで運用していきます。

 

 

基本プラン作成

まずは、オンボーディングのプランを作成します。プランに組み込む一つひとつの施策は既に実施されているものも多いと思います。オンボーディングは特別なものではなく、受け入れや戦力化に必要な施策を「いつ、誰が、何を実施するか?」をプロセスとして決めることがポイントです。

 

オンボーディングのプランは、大きくは以下の5つを軸に考えていくと、抜け漏れが出にくいでしょう

 

  • 受け入れ準備(物品手配、社員への告知、ブラザーシスターの決定等)
  • 顔合わせ(既存社員への紹介、配属先部門、社内の幹部メンバーとの顔合わせ等)
  • 組織理解(理念や事業内容、沿革、組織のありかたや社内用語、業務プロセスの理解)
  • 成果創出(目標設定、具体的な業務内容の把握、スキル習得)
  • レビューとケア(組織への馴染み方と成果に対する進捗の振り返りとフォロー)

 

主に、受け入れ準備と顔合わせ、組織理解までは人事部門が主導、また成果創出は配属先部門が主導することになるでしょう。また、レビューとケアは人事、OJT指導者、部門上司、ブラザーシスターやメンター等で多角的に行なうことがポイントです。

 

成果創出における個別の目標設定等は、現場部門が行なうことになりますが、

  • いつ、誰がプランニングするのか
  • プランニングにおいて何を決めるのか?

ex)1年後目標、目標達成に必要なスキルの一覧、習得順序

  • いつ、誰が面談するのか

Ex)入社1か月後、配属部門の上長が中期でのキャリアステップに関する面談を実施する

といったことはオンボーディングのプランに盛り込んでおきます。

 

また、プランニングに際しては、人事と現場のOJT指導者だけでなく、「誰がどのように新入社員と関わるか?」という役割や分担を決めておくことも有効です。

 

以下の例を参考にしてください。

 

  • 社長と部門の統括役員がウェルカムランチに参加する
  • 他部門の部門長との顔合わせで事業理解を進める
  • 配属部署の部門上司が中長期における目標設定やモチベートを担当する
  • OJT指導者が実務での目標設定と指導、フォローを行なう
  • 人事担当者とブラザーシスター、メンター等でメンタル面のケアを行なう

 

 

実施とフォロー

プランが決まったら、それに従ってオンボーディングを実行していきます。

 

オンボーディングに組み込んだ施策は、いわば“標準形”です。新入社員の状況や相談に応じて、随時カスタマイズしていきましょう。ただし、“省略”してしまうと悪影響が生じますので、きちんと実行されるように人事部門で確認・ケアしていくことも必要です。

 

 

評価と見直し

オンボーディングは、ある程度の完成形が見えるまで、改善のサイクルを回すことが重要です。実施して成功したこと、実施してうまくいかなかったこと、新人が躓いていたこと、OJT指導の中でやりやすかったこと、やりにくかったこと等を反映していきましょう。

 

改善サイクルを3~5回繰り返すことで、自社に適したオンボーディングプランの骨格が固まるでしょう。

 

オンボーディングに組み込む施策例とその考え方

オンボーディングの期間や組み込む施策は、細かなところでは組織の特徴や業種によっても変わってくるでしょう。ただし、入社6か月間を目安として、前章で紹介した5つの軸で内容を設計していけば、基本的なポイントは抑えられるでしょう。

 

施策づくりにおいて重要なポイントは、「組織社会化の視点を持つこと」と「業務成果のゴールから逆算して設計すること」の2つです。

 

“組織社会化”は、馴染みのない言葉かも知れませんが、“組織に新しく加入した人材が組織に馴染むこと”を指す言葉です。 組織社会化を果たすためには、組織の理念やビジョン、歴史や沿革、価値観、意思決定プロセス、組織内の役割分担やメンバー、ルールや暗黙知、不文律、社内用語等を理解する必要があります。

 

オンボーディングにおいては、「顔合わせ」と「組織理解」の軸が、主に組織社会化にあたります。一般的な中途社員の受け入れプロセスは、「成果創出」に向けた業務スキルや具体的な組織の就業ルール等が中心になりがちです。

 

しかし、その手前で、上記のような理念、ビジョン、沿革、価値観、意思決定プロセスや暗黙知、不文律、社内用語等の理解を助ける施策を取り入れることで、業務スキルや就業ルールを習得して実行することが容易になるのです。

 

なお、新人のオンボーディングで作成したプランや施策は、新卒・中途等の新入社員だけでなく、異動や転勤した社員の受け入れにも使えます。各組織に合流したすべての人が早く組織に馴染み、業務スキルや業務知識を早く習得し、能力を発揮できる仕組みをつくることが理想です。

オンボーディングの導入事例

最後に、日本企業のオンボーディング導入事例を4社ご紹介します。

 

 

GMOペパボ株式会社

GMOペパボ株式会社では、「ペパボカクテル」「ペパボテックフライデー」「ランチワゴン」「やっていきシート」等、ユニークな名前がついたオンボーディング施策を実行しています。基本的なオンボーディング施策に加えて、オンライン上での取り組みが活発なのが、同社の特徴です。

 

入社した中途社員は、入社後すぐに、チャットツールで「カクテルチャンネル」に入り、既存社員とのコミュニケーションをスタートします。チャンネルでは新入社員をご飯に誘ったり、自己紹介にコメントしたりする既存社員が多く、「カクテルチャンネル」が、オンライン上で新しいメンバーをあたたかく迎え入れる土台として機能しています。

 

 

コネヒト株式会社

「入社後90日間」を重視してオンボーディング施策を打っているのが、コネヒト株式会社です。

 

同社では、新入社員の内定時に、「入社して最初の90日間で社員に期待する目標」をドキュメントで提示しています。人事担当者も現場のマネージャーも、目標達成をサポートするというスタンスで指導やフォローを行ないます。インプット中心になりがちな新人研修を、目標を明示することで新人の主体性を引き出しやすくしていると言えるでしょう。

 

他にも、企業の歩みを伝えるプログラムを実施したり、社内メンバーとコミュニケーションを取るさまざまなプログラムを提供したりと、さまざまな工夫を行なって新入社員の組織社会化を促しています。

 

 

LINE株式会社

LINE株式会社でもオンボーディングに力を入れており、なかでも「質問しやすさ」の向上に取り組んでいます。

 

新人にとって、入社後は組織の暗黙知から社内用語、業務の進め方から備品の場所、申請の仕方まで分からないことだらけです。

 

一方で、「こんなくだらないことを聞いたら先輩や上司に悪いな」と思って質問を控えてしまうことも多くあります。そうしたことが積み重なると、業務がスムーズに進まなくなったり、モチベーションが下がったりしてしまいます。

 

そこでLINEでは、オンラインとオフラインの両方で、新入社員が小さな疑問を気軽に相談できる場を設けています。それこそ、“備品の場所”から“交通費の申請”まで、ちょっとした質問がいつでも気兼ねなくできるような環境をつくることで、新入社員に安心感を与えています。

 

 

株式会社ジェイック

HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、オンボーディングを実施しています。ジェイックにおけるオンボーディングの特徴は、多くのメンバーが新入社員の受け入れに関わることです。

 

  • 人事部門(各種レクチャー、3か月後面談)
  • 社長(ウェルカムランチ)
  • 配属事業の統括役員(ウェルカムランチ)
  • 他部門長(入社後の事業レクチャー)
  • ブラザーシスター(組織に馴染むことへのケア)
  • 配属部門の部門長(キャリアや中長期の目標設定、入社1か月後面談)
  • 配属チームの社員(実務のサポート)
  • OJT指導者(業務目標の設定と指導)

 

OJT指導者だけでなく、多くの人が関わることで組織としての歓迎を示すとともに、業務指導とメンタル面、キャリア面等、いくつかの側面でフォローを分散させることで、負担の偏りを減らすとともに、新入社員への関わりを多くしています。

まとめ

オンボーディングは、新卒や中途を問わず“採用した新人”が組織や部署の環境に馴染み、早期のうちに能力を発揮できるようにする一連のサポートプログラムです。

 

オンボーディングを導入・運用することで、社員の定着率UPと早期の戦力化が可能になるだけでなく、OJT指導者や現場の負担も軽減し、また、OJT指導者の力量に左右されづらい受け入れ態勢を実現できます。

 

継続的に採用活動を行なっているようであれば、ぜひ記事を参考に、定着率の向上、早期戦力化に取り組んでください。

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック 取締役 HRドクター 編集長

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。 7つの習慣R認定担当インストラクター、原田メソッド認定パートナー、EQPI認定アナリスト等

⼤カテゴリ:

中カテゴリ:

関連記事

企業の採用・教育に役立つノウハウ

採用・教育にお困りでしたら
ご相談ください

一人でも多くの人生を輝かせ、一社でも多くの企業を元気にする。
そのために、私たちジェイックは存在します。

pagetop